起立動作誘導システム 九州工業大学 大学院生命体工学研究科 人間知能システム工学専攻 教授 和田 親宗 1 従来技術とその問題点 起立動作を支援する装置 ・パワーアシスト ・残存能力とは無関係 周囲の支援があれば起立可能な場合 ・残存能力を活用(対象者自身の力で立ち上がる) ・機能維持 2 立ち上がり動作 屈曲相 伸展相 :体重心 広い支持基底面 (椅子部と足部) 対象者(高齢者・障がい者) 伸展相はできるのに 屈曲相ができないために 立ち上がり不可 (要因:恐怖回避行動etc) 狭い基底面 (足部) 屈曲相をサポートすることで起立可能 屈曲相における動作を適切に誘導できれば、介助者の 手を必要とせず、自身の力で立ち上がることができる 3 屈曲相における重心位置を 推定し、画面や音声で動作 を適切に誘導するシステム 体幹角度 データ 剛体 モデル 水平方向 重心位置 基底面内 か判断 使用者に 呈示 4 慣性センサ 体幹部 大腿部 下腿部 椅子への 荷重 足部への 荷重 5 6 システムの有用性評価 ●被験者: 健常男性5名 ●立ち上がり動作パターン(各5試行): ① ② ③ ④ システム不使用 足部の基底面 ●測定筋: 前脛骨筋(TA) ,大腿直筋(RF) ,腓腹筋(GC) ,脊柱起立筋(ES)の4筋 ※立ち上がり動作が矢状面に対して対称であると仮定し,右側の筋の筋電図 を測定 ●評価方法: 各筋の最大随意収縮時の筋活動(MVC)を測定し,各パターンでの立ち上がり に要した筋活動を%MVCとして評価 7 有用性評価結果(EMG) 大腿直筋(RF) 脊柱起立筋(ES) 腓腹筋(GC) 前脛骨筋(TA) 前脛骨筋:足関節の背屈に作用する筋 大腿直筋:膝関節の伸展に作用する筋 腓腹筋 :足関節の底屈に作用する筋 脊柱起立筋:体幹の伸展に作用する筋 代表例:被験者A TA RF TA ① RF GC GC ES ES ③ 時間[s] 時間[s] TA RF TA ② RF GC ④ GC ES ES 時間[s] システム不使用 時間[s] 8 有用性結果のまとめ 筋活動を%MVCとして求め検定を行った結果 パターン①では被験者全員全試行で立ち上がることができなかった 腓腹筋、脊柱起立筋は被験者によって傾向が様々 前脛骨筋、大腿直筋に関しては ・パターン②が③、④に比べ有意に高い値を示した ・パターン③、④間には有意な差はなかった ① ② > ③ ④ ≒ 脊柱起立筋 腓腹筋 大腿直筋 前脛骨筋 システムを使用しても自然な立ち上がり動作に 近い筋活動で立ち上がることが可能 9 新技術の特徴・従来技術との比較 • 従来技術は、残存能力の活用を想定していな い場合がある。 • 本技術では、残存能力を活用して、患者自身 の力で起立動作を行うことができる。ただし、 適用患者の制限あり。 • 従来技術の中には、利用場面の制限がある ものや大がかりなものもある。 • 本技術のシステム構成はシンプルであり、い つでもどこでも利用できる。 10 想定される用途 • 病院や施設等で、起立動作訓練を行っている 場面。 • 自宅で当事者が単独で起立動作を行う場面。 • 医療関係者でない介護者が、起立動作を補 助する場面。 • 残存能力に応じた周囲支援機器の制御。 11 実用化に向けた課題 • 現在、矢状面(前後方向の平面)内でのみ、シ ステムは有効。3次元空間、すなわち身体が 左右に振れた場合についてのシステム開発 が必要。 • 実際の患者による評価が必要。 • センサ装着状態によっては、誘導タイミングが ずれる点。 12 誘導タイミングのずれ補正方法の提案 体幹の初期角度をリンクモデルに代入し 初期のCOG水平面位置を推定 体幹の前傾によるCOGの 前方移動を推定 Z Y 初期のCOGの水平面位置を推定するために体幹初期角度が必要 13 誘導タイミングのずれ補正方法の提案 従来手法 • 静止時の慣性センサの3軸の加速度成分→初期角度 • センサの初期角度=体幹初期角度 課題 • 課題点慣性センサの装着角度がずれる • センサの初期角度≠体幹初期角度 • 体幹初期角度がずれる →COGの位置推定に影響 提案 • 身体への拘束が少ない計測方法を用いて 体幹初期角度を推定する 14 誘導タイミングのずれ補正方法の提案 体幹角度と足圧値 1000 体幹屈曲開始 140 臀部離床 130 120 110 600 100 400 90 角度[degrees] 荷重[N] 800 80 200 70 0 60 0 1 2 3 4 5 6 時間[s] 足部荷重 椅子部荷重 体幹角度 • 静止状態において,足圧値,椅子部荷重に 変動がなく,身体の全荷重値と釣り合ってい ると考えられる →足圧値から体幹初期角度を推定可能 床反力計 床反力計 15 誘導タイミングのずれ補正方法の提案 床反力計のデータを用いて,体幹初期角度推定モデルの精度検証を行う 赤外線カメラ 赤外線反射マーカ 被験者数 健常若年者10名 試行回数 10回 反射マーカ位置 肩峰,腸骨稜,大転子,膝関節,外 果,踵骨,中足骨 左右計14か所 検証範囲 計測開始後1秒間(静止時) 検証方法 推定値,慣性センサを真値(モーショ ンキャプチャ)とのRMSE値を比較 慣性センサ Z Y 床反力計 床反力計 16 誘導タイミングのずれ補正方法の提案 180 170 160 150 140 130 120 110 100 90 80 1 2 3 ** 20 RMSE値[degrees] 体幹角度[degrees] 体幹角度の推定値と真値(被験者B) 0 4 ** ** B C ** ** * * ** * E F G H I J 15 10 5 0 A D 時間[s] 被験者 真値(モーションキャプチャ) • 体幹屈曲開始後の4.63[s]において 釣り合いが保てず推定不可 • 静止時では,真値との誤差1%で推定 慣性センサ 15 RMSE値[degrees] 体幹初期角度推定モデル **:p<0.01 *:p<0.05 全被験者のRMSE値 体幹初期角度推定モデル ** **:p<0.01 10 5 0 慣性センサ 体幹初期角度推定モデル 誤差が減少し,有意差がみられた 17 企業への期待 • 小型軽量センサの開発。 • センサの身体への装着方法の開発。 • 誘導タイミングの補正方法の開発。もし足底圧 を用いるのであれば、その計測方法の開発。 • 使いやすく安定稼働のソフトウエアの開発。 • コンピュータを使わないシステムの開発。例え ばセンサ単体の中にすべてを組み込むなど。 • 周囲支援機器との連動。 18 本技術に関する知的財産権 • • • • • 発明の名称 出願番号 公開番号 出願人 発明者 :起立動作誘導システム :特願第2013-119718 :特開第2014-236786 :九州工業大学 :和田親宗、藤本司 19 産学連携の経歴 • 2005年-2006年 (株)エーエスエー・システムズと共同研究 • 2007年、2009年、2012年~ (株)有薗製作所と共同研究 • 2008年-2010年 (株)ロジカルプロダクトと共同研究 • 総務省 戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE) • (財)北九州産業学術推進機構 中小企業産学官連携研究 開発事業 • 国土交通省 移動支援サービス技術研究支援事業 • 科学技術振興機構 A-STEP 20 お問い合わせ先 九州工業大学 イノベーション推進機構 産学連携・URA領域 知的財産部門 客員教授 尾仲 武基 TEL 093-884-3499 FAX 093-884-3531 e-mail [email protected] 21
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