日本基準トピックス 「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理 等に関する実務上の取扱い(案)」(実務対応報告公開 草案第48号)の公表(ASBJ) 2016年12月27日 第317号 ■主旨 2016年12月22日、企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」)は、実務対応報告公開草案 第48号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の 取扱い(案)」(以下、「本公開草案」)を公表しました。コメント募集期限は、2017年2月 22日です。 本公開草案は、公共施設等運営事業において、運営権者が公共施設等運営権を取得 する取引および運営権者が更新投資を実施する取引に関する会計処理等について、 実務上の取扱いを明らかにすることを目的として公表されたものです。 実務対応報告については、公表日以後適用することが提案されています。 原文については、ASBJのウェブサイトをご覧ください。 https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/exposure_draft/pfi2016/index.shtml ------------------------------------------------------------------------- 1.経緯 (1) 検討の背景 2011 年に民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成 11 年 法律第 117 号)(以下、PFI 法)が改正され、公共施設等運営権を民間事業者に設定する制度 (公共施設等運営権制度)が新たに導入されました。その後、2014 年 6 月に閣議決定された 「『日本再興戦略』 改訂 2014」において、当該制度を活用する環境整備のために会計上の 処理方法の整理を行うこととされたため、2015 年 7 月に開催された第 24 回基準諮問会議に おいて、内閣府より会計上の取扱いについての検討を行う事が提案されました。 これを受けて、ASBJ においては 2015 年 12 月より、公共施設等運営事業における運営権者の 会計処理および開示に関する検討を行うこととなり、2016 年 12 月 22 日付で本公開草案が 公表されています。 1 (2) 公共施設等運営事業の概要 公共施設等運営権制度は PFI 法において次のとおり規定されています 利用料金の徴収を行う公共施設等について、施設の所有権を公共主体が有したまま で、当該施設の運営権のみを民間業者に設定する 利用料金の決定等を含めて、民間事業者による自由度の高い事業運営を可能とする ことにより、利用者のニーズを反映した質の高いサービスの提供を目指す 運営権の設定を受けて、公共施設等について運営等を行い、利用料金を自らの収入 として収受することを「公共施設等運営事業」と定義する(PFI 法第 2 条) 公共施設等運営権は物権とみなされる(PFI 法第 24 条) 【図表】 公共施設等運営権制度のイメージ図 出典: ASBJ 作成 「実務対応報告公開草案第 48 号「公共施設等運営権事業における運営権者の会計処理等に 関する実務上の取扱い(案)」の公表 【参考資料】」 2.主な内容 (1) 範囲 本公開草案は、公共施設等運営事業において、運営権者が実施する以下の取引に関する 会計処理および開示に適用することが提案されています(公開草案第 2 項)。 公共施設等運営権(PFI 法第 2 条 7 項に規定する公共施設等運営権)を取得する取引 公共施設等に係る更新投資(PFI 法第 2 条第 6 項に基づき、運営権者が行う公共施設 等の維持管理)を実施する取引 (2) 公共施設等運営権に関する会計処理 運営権者は公共施設等の運営権対価(*1)の支払い方法に応じて、当該運営権対価を無形 固定資産に計上することが提案されています。 運営権対価の支払い方法 無形固定資産の計上額 減価償却の方法 一括払い 運営権対価について、合理的 に見積もられた支出額の総額 (公開草案第 3 項) 分割払い 運営権対価の支出額の総額 の現在価値(*3) (公開草案第 4 項) 運営権設定期間を耐用年数 とする、定額法、定率法等の 一定の減価償却の方法(*2) (公開草案第 8 項) 2 (*1) 管理者等と運営権者との間で締結された実施契約(PFI 法第 22 条に規定する公共施設等 運営権実施契約)において定められた公共施設等運営権の対価 (*2) 一定の条件の下で運営権設定期間を延長できる条項(延長オプション)が定められている場合、 行使の意思が明らかな場合を除き、延長可能な期間は含めない(公開草案第 9 項) (*3) 算定にあたっては、運営権者の信用リスクを反映する(公開草案第 5 項) (3) 更新投資に関する会計処理 更新投資のうち、資本的支出に該当する(所有権が管理者等に帰属するものに限る)部分に ついては、更新投資の性質等に応じて以下の会計処理が提案されています。 更新投資の性質等 無形固定資産の計上方法 減価償却の方法 以下の①・②を満たす場合 ① 実施内容の大半について、 管理者等が運営権者に課 す義務に基づいている ② 取得時に、支出すると見込 まれる額の総額と支出時期 を合理的に見積もることが できる 取得時に、支出すると見込 まれる額の総額の現在価値 を負債として計上し、同額を 資産として計上する (公開草案第 12 項(1)) 運営権設定期間を耐用 年数 とする 、定 額法 、定 率法 等 の一 定の 減 価償 却の方法 (公開草案第 15 項(1)) 上記以外の場合 更新投資を実施した時に、 支出額を資産として計上する (公開草案第 12 項(2)) 更新投資を実施した時よ り、更新投資の経済的耐 用年数(ただし、運営権設 定期間の残存年数以内) にわたり、定額法、定率法 等の一定の減価償却の 方法 (公開草案第 15 項(2)) (4) その他 その他、主に次のような事項について提案されています。 項目 会計処理の方法 公共施設等運営権の減損損失 の認識の判定および測定にお ける資産のグルーピング (公開草案第 10 項) 原則:実施契約に定められた公共施設等運営権の単位 例外:公共施設等ごとに合理的な基準に基づき分割した 公共施設等運営権の単位(*1) プロフィットシェアリング条項(*2) (公開草案第 11 項) 実施契約においてプロフィットシェアリング条項が設けら れる場合、当該条項に基づき各期に算定された支出額 を、当該期に費用として処理 (*1) 管理会計上の区分、投資の意思決定を行う際の単位、継続的な収支の把握がなされている単 位および他の単位から生じるキャッシュ・イン・フローとの相互補完性を考慮して決定する (*2) 実施契約において、運営権対価とは別に、各期の収益があらかじめ定められた基準値を上回 った時に運営権者から管理者等に一定の金銭を支払う条項をいう 3 3.開示 (1) 表示 本公開草案では公共施設等運営権にかかる資産および負債等について次のとおり表示する ことが提案されています(公開草案第 16 項~第 19 項)。 公共施設等運営権は、無形固定資産の区分に公共施設運営権などの内容を示す科目 で表示する 更新投資に係る資産は、無形固定資産の区分にその内容を示す科目をもって表示する 運営権対価を分割で支払う場合に計上する負債は、支払期限に応じて流動負債と固定 負債に区分し、公共施設等運営権に係る負債などその内容を示す科目で表示する 取得時に支出すると見込まれる額の総額の現在価値を資産として計上した更新投資 (第 12 項(1)の方法)に係る負債は、支払期限に応じて流動負債と固定負債に区分し、 その内容を示す科目をもって表示する (2) 注記事項 本公開草案では、次の事項を公共施設等運営事業ごとに注記することが提案されています (公開草案第 20 項)。 (1) 運営権者が実施する公共施設等運営事業の概要(公共施設等運営事業の対象とする 公共施設等の内容、実施契約に定められた運営権対価の支出方法、運営権設定期間、 残存する運営権設定期間、プロフィットシェアリング条項の概要等) (2) 公共施設等運営権の減価償却の方法 (3) 更新投資に係る事項 ① 主な更新投資の内容及び投資を予定している時期 ② 運営権者が採用した更新投資に係る資産及び負債の会計処理の方法 ③ 更新投資に係る資産の減価償却の方法 ④ 更新投資の実施時に、更新投資に係る支出を資産計上する場合、翌期以降に支出 すると見込まれる更新投資のうち、合理的に見積ることが可能なキャッシュ・フローの 金額及びその内容 4.適用時期等 本公開草案では、実務対応報告について公表日以後適用することを提案しています(公開 草案第 21 項)。 4 5.質問事項 本公開草案に対するコメント期限は 2017 年 2 月 22 日です。コメントの募集にあたり、コメント 提出者への質問として、以下の項目が挙げられています。 質問 1 公共施設等運営権の取得時の会計処理、減価償却の方法及び耐用年数、減損損失の 認識の判定および測定における資産のグルーピング、並びにプロフィットシェアリング 条項に基づき各期に算定された支出額の会計処理に関する提案に同意しますか。同意 しない場合は、その理由をご記載ください。 質問 2 更新投資に係る資産および負債の計上、並びに更新投資に係る資産の減価償却の 方法および耐用年数に関する提案に同意しますか。同意しない場合は、その理由を ご記載ください。 質問 3 表示および注記事項に関する提案に同意しますか。同意しない場合は、その理由を ご記載ください。 質問 4 その他、本公開草案に関して、ご意見があればご記載ください。 PwCあらた有限責任監査法人 東京都中央区銀座8丁目21番1号 住友不動産汐留浜離宮ビル (〒104-0061) お問い合わせ: [email protected] 本資料は概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショナル からのアドバイスを受けることなく、本資料の情報を基に判断し行動されないようお願いします。本資料に含まれる情報は正確性または完全性を、 (明示的にも暗示的にも)表明あるいは保証するものではありません。また、本資料に含まれる情報に基づき、意思決定し何らかの行動を起こされたり、 起こされなかったことによって発生した結果について、PwC あらた有限責任監査法人、およびメンバーファーム、職員、代理人は、法律によって認めら れる範囲においていかなる賠償責任、責任、義務も負いません。 © 2016 PricewaterhouseCoopers Aarata LLC. All rights reserved. PwC refers to the PwC Network member firms in Japan and/or their specified subsidiaries, and may sometimes refer to the PwC Network. Each member firm is a separate legal entity. Please see www.pwc.com/structure for further details. This content is for general information purposes only, and should not be used as a substitute for consultation with professional advisors. 5
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