11月消費統計

経済分析レポート
2016 年 12 月 27 日
全6頁
Indicators Update
11 月消費統計
需要側から見た個人消費は緩やかに減速基調
エコノミック・インテリジェンス・チーム
エコノミスト 岡本 佳佑
エコノミスト 小林 俊介
[要約]

2016 年 11 月の家計調査によると、実質消費支出は季節調整済み前月比▲0.6%と 2 ヶ
月連続で減少した。一方、振れの大きい住居や自動車などを除いた実質消費支出(除く
住居等)も同▲0.7%と 2 ヶ月連続で減少した。

実質消費支出の動きを費目別に見ると、「教養娯楽」(前月比▲5.2%)、「光熱・水
道」(同▲4.1%)、「住居」(同▲4.5%)などが前月から減少した一方、「交通・通
信」(同+12.4%)や「諸雑費」(同+5.0%)などが増加した。

引き続き労働需給がタイトな状況の中、非製造業を中心とした労働需要の高まりから雇
用者数が継続的に増加しており、マクロの賃金(=一人当たり賃金×雇用者数)が押し
上げられている点が個人消費の好材料だ。一方、生鮮食品価格の高騰や原油価格の上昇
は実質賃金を押し下げるため、個人消費の重石となる。先行きの個人消費は、上記のプ
ラス・マイナスの両要因が綱引きするような状況の下、横ばい圏で推移すると予想して
いる。
図表 1:各種消費指標の概況
2016年
出所
8月
9月
10月
11月
前年比
▲ 4.6
▲ 2.1
▲ 0.4
▲ 1.5 総務省
実質消費支出
家計調査
前月比
▲ 3.7
2.8
▲ 1.0
▲ 0.6 総務省
実質消費支出(除く住居等)
前月比
▲ 2.3
2.1
▲ 1.5
▲ 0.7 総務省
前年比
▲ 2.1
▲ 1.7
▲ 0.2
#N/A
経済産業省
商業動態統計 小売業
前月比
▲ 1.2
0.3
2.5
#N/A
経済産業省
消費総合指数
前月比
▲ 0.9
0.8
0.4
内閣府
百貨店売上高
前年比
▲ 6.0
▲ 5.0
▲ 3.9
▲ 2.4 日本百貨店協会
コンビニエンスストア売上高
前年比
0.6
▲ 0.0
0.2
0.5 (一社)日本フランチャイズチェーン協会
スーパー売上高
前年比
▲ 2.9
▲ 3.2
0.6
0.8 日本チェーンストア協会
外食売上高
前年比
▲ 1.7
1.5
5.3
1.7 (一社)日本フードサービス協会
旅行取扱高
前年比
▲ 0.3
▲ 7.1
観光庁
(注)百貨店売上高、コンビニエンスストア売上高、スーパー売上高の前年比は店舗数調整後。
(出所)各種統計より大和総研作成
株式会社大和総研 丸の内オフィス
〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー
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2/6
2016 年 11 月の実質消費支出は 2 ヶ月連続で減少。緩やかに減速基調を辿る
2016 年 11 月の家計調査によると、実質消費支出は季節調整済み前月比▲0.6%と 2 ヶ月連続
で減少した。また、振れの大きい住居や自動車などを除いた実質消費支出(除く住居等)も同
▲0.7%と 2 ヶ月連続で減少した。需要側から見た個人消費は緩やかに減速基調を辿っている。
10 大費目別の動き:6 費目が前月から増加
実質消費支出の動きを費目別に見ると、10 大費目中 6 費目が前月から減少した。減少した費
目を寄与度の大きい順に並べると、
「教養娯楽」
(前月比▲5.2%)、
「光熱・水道」
(同▲4.1%)、
「住居」(同▲4.5%)、「家具・家事用品」(同▲7.9%)、「食料」(同▲0.8%)、「被服
及び履物」(同▲4.1%)であった。「教養娯楽」では、このところパック旅行費への支出が減
少しているようだ。生鮮食品等の価格上昇などを背景に、家計が節約志向を強める中、旅行な
ど不要不急な支出を抑制している可能性が指摘できる。「光熱・水道」では、電気代やガス代
への支出がマイナスに寄与したとみられる。10 月は全国的に温暖な気候であったため、暖房な
どの使用が伸びなかったことが、翌月払である電気代やガス代の支出減につながったと推測さ
れる。
一方、前月から増加したのは「交通・通信」(前月比+12.4%)、「諸雑費」(同+5.0%)、
「保健医療」(同+0.2%)の 3 費目であった。「交通・通信」の大幅増は、振れの大きい自動
車等購入が急増したことが主因と考えられる。また、「諸雑費」については、他の諸雑費の増
加がプラスに寄与したとみられる。
なお、「教育」は前月から横ばいであった。
図表 2:実質消費支出の推移
図表 3:実質消費支出の費目別寄与度
(2015年=100)
(前月比、%、%pt)
120
5
115
3
110
1
105
-1
100
-3
95
-5
90
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011 (月)
13
14
実質消費支出
15
16
実質消費支出(住居等を除く)
(注1)季節調整値。
(注2)「住居等」とは住居、自動車等購入、贈与金、仕送り金。
(出所)総務省統計より大和総研作成
(年)
-7
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011
13
食料
家具・家事用品
交通・通信
諸雑費
14
15
住居
被服及び履物
教育
消費支出
(出所)総務省統計より大和総研作成
16
光熱・水道
保健医療
教養娯楽
(月)
(年)
3/6
消費者マインドは再度、緩やかに悪化
2016 年 11 月の消費動向調査によると、消費者態度指数は前月差▲1.4pt と 2 ヶ月連続で低下
した(図表 4)。指数の内訳を見ると、2 ヶ月連続で 4 項目の全てが低下。4 項目を低下幅の大
きい順に並べると、「雇用環境」(同▲2.3pt)、「耐久財の買い時判断」(同▲1.4pt)、「暮
らし向き」(同▲1.3pt)、「収入の増え方」(同▲0.6pt)であった。秋口まで改善傾向を示
していた消費者マインドは、再び緩やかに悪化しつつあるもようである。
また、「資産価値」に関する意識指標は同▲2.6pt と、7 ヶ月ぶりに低下した。11 月調査の調
査基準日は 11 月 15 日。11 月 8 日(米国時間)の米大統領選挙でトランプ氏が勝利したことを
受け、その後の日経平均株価は急上昇を演じたが、調査基準日時点では、株高よりも金融市場
に対する先行きへの不安の高まりの方が強く意識されていた様子が、「資産価値」に関する意
識指標に反映されているとみられる。
なお、足下の日経平均株価が年初来高値圏で推移していることなどに鑑みると、12 月の「資
産価値」に関する意識指標は上昇に転じる公算が大きい。
図表 4:消費者態度指数の推移
6
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
(前月差、寄与度、pt)
(pt)
48
46
44
42
40
38
36
34
32
30
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011 (月)
2013
2014
暮らし向き
雇用環境
消費者態度指数
2015
2016
(年)
収入の増え方
耐久消費財の買い時判断
消費者態度指数(水準、右軸)
(出所)内閣府統計より大和総研作成
好悪両要因の綱引き状態の下、先行きの個人消費は横ばい圏で推移する見通し
引き続き労働需給がタイトな状況の中、非製造業を中心とした労働需要の高まりから雇用者
数が継続的に増加しており、マクロの賃金(=一人当たり賃金×雇用者数)が押し上げられて
いる点が個人消費の好材料だ。一方、生鮮食品価格の高騰や原油価格の上昇は実質賃金を押し
下げるため、個人消費の重石となる。先行きの個人消費は、上記のプラス・マイナスの両要因
が綱引きするような状況の下、横ばい圏で推移すると予想している。
4/6
消費・概況①
実質消費支出の費目別寄与度
実質消費支出(家計調査、二人以上世帯)
(前月比、%、%pt)
(2015年=100)
120
10.0
115
5.0
110
0.0
105
-5.0
100
-10.0
95
-15.0
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011 (月)
13
14
食料
家具・家事用品
交通・通信
諸雑費
15
住居
被服及び履物
教育
消費支出
90
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011 (月)
16
(年)
光熱・水道
保健医療
教養娯楽
13
14
実質消費支出
15
16
(年)
実質消費支出(住居等を除く)
(出所)総務省統計より大和総研作成
(注1)季節調整値。
(注2)「住居等」とは住居、自動車等購入、贈与金、仕送り金。
(出所)総務省統計より大和総研作成
費目別実質消費①
費目別実質消費②
(2015年=100)
150
125
140
120
(2015年=100)
115
130
110
120
105
110
100
100
95
90
90
80
85
70
80
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011
13
食料
14
住居
光熱・水道
15
家具・家事用品
16
被服及び履物
保健医療
14
交通・通信
15
教育
16
教養娯楽
(月)
(年)
諸雑費
(注)季節調整値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
基礎的支出と選択的支出
勤労者世帯の実質可処分所得と平均消費性向
(%)
86
(2015年=100)
108
106
84
104
82
102
80
100
78
98
76
96
74
94
72
92
70
68
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011
(月)
13
14
15
16
(年)
勤労者世帯の可処分所得
(注)季節調整値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
13
(年)
(注)季節調整値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
90
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011
(月)
平均消費性向(右軸)
(前年比、%)
10.0
5.0
0.0
-5.0
-10.0
-15.0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 (月)
15
16
(年)
基礎的支出
(出所)総務省統計より大和総研作成
選択的支出
実質消費
5/6
消費・概況②
大型小売店業態別商品販売額
商業動態統計小売業販売額の推移
(前月比、%、%pt)
(2010年=100)
130
10.0
7.5
125
5.0
120
2.5
0.0
115
-2.5
110
-5.0
105
-7.5
100
-10.0
95
-12.5
-15.0
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011 (月)
13
14
15
各種商品小売業
飲食料品小売業
機械器具小売業
燃料小売業
16
(年)
90
85
織物・衣服・身の回り品小売業
自動車小売業
その他小売業
小売業計
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011 (月)
13
14
合計
(出所)経済産業省統計より大和総研作成
(出所)経済産業省統計より大和総研作成
業種別小売販売①
業種別小売販売②
(2010年=100)
120
(2010年=100)
130
115
120
110
110
105
100
100
90
95
80
90
70
85
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011(月)
13
14
15
小売業計
織物・衣服・身の回り品小売業
その他の小売業
(年)
16
スーパー
60
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011(月)
(年)
16
15
百貨店
13
14
15
16
(年)
各種商品小売業
飲食料品小売業
自動車小売業
機械器具小売業
燃料小売業
その他小売業
(注)その他小売業は二輪自動車小売業、自転車小売業、家具・じゅう器小売業など。
(出所)経済産業省統計より大和総研作成
(注)その他の小売業は自動車小売業、機械器具小売業、燃料小売業、その他小売業。
(出所)経済産業省統計より大和総研作成
GDPベースの民間最終消費支出と消費総合指数
消費者マインド
(DI)
(DI)
65
48
60
46
55
44
50
42
45
40
40
38
35
36
30
34
25
32
(兆円)
330
(2011年=100)
112
110
320
108
106
310
20
30
12345678910
11
1212345678910
11
1212345678910
11
1212345678910
11
1212345678910
11
1212345678910
11
1212345678910
11(月)
10
11
12
13
14
15
景気ウォッチャー調査 現状判断DI 家計動向
景気ウォッチャー調査 先行き判断DI 家計動向
消費者態度指数(訪問調査、右軸)
消費者態度指数(郵送調査、右軸)
(出所)内閣府統計より大和総研作成
16
104
300
102
100
290
98
280
96
(年)
94
270
05
06
07
08
09
10
民間最終消費支出
(出所)内閣府統計より大和総研作成
11
12
13
14
15
消費総合指数(右軸)
16
(年)
6/6
消費・協会統計
新車販売台数
テレビ消費額と出荷台数
(万台)
40
(万台)
21
19
35
17
30
25
20
15
10
250
200
15
150
13
100
11
50
9
0
7
-50
5
12345678910
11
1212345678910
11
1212345678910
11
1212345678910
11
1212345678910
11
1212345678910
11
1212345678910
11 (月)
10
11
12
13
14
15
16
(年)
普通乗用車+小型乗用車
(前年比、%)
300
-100
12345678910
11 212345678910
11 212345678910
11 212345678910
11 212345678910
11 212345678910
1 1(月)
11
12
13
家計調査
軽自動車(右軸)
14
15
家計消費状況調査
16
(年)
JEITA
(注)家計調査と家計消費状況調査の値は当該CPIで実質化。
(出所)JEITA、総務省統計より作成
(注)季節調整は大和総研。
(出所)日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会統計より大和総研作成
百貨店売上の寄与度分解(品目別、全店舗ベース)
スーパー売上高の寄与度分解(品目別、全店舗ベース)
(前年比、%、%pt)
15
(前年比、%、%pt)
15
10
10
5
0
5
-5
0
-10
-15
-5
-20
-25
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011 (月)
(年)
13
14
15
16
衣料品
身の回り品
食料品
食堂喫茶
商品券
総額
(出所)日本百貨店協会統計より大和総研作成
雑貨
サービス
-10
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011 (月)
(年)
13
14
15
16
家庭用品
その他
食料品
衣料品
住関品
サービス
その他
総販売額
(出所)日本チェーンストア協会統計より大和総研作成
コンビニ売上高(店舗数調整前)
外食市場売上高
(前年比、%、%pt)
8
(前年比、%、%pt)
10
8
4
6
4
0
2
0
-4
-2
-4
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011 (月)
13
14
客数
15
客単価
16
売上高
(出所)日本フランチャイズチェーン協会統計より大和総研作成
(年)
-8
1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011
13
14
客数
15
客単価
(出所)日本フードサービス協会統計より大和総研作成
売上高
16
(月)
(年)