解答例(1) 前回の問題 • 資産総額が1000万円、事故の危機 – 事故が起こる確率は5%、すべての資産を失う • – 事故が起きないときの資産:x1 – 事故が起きたときの資産:x2 保険会社は次のような保険を販売する 1) 保険にH口加入すると – 保険1口、5万円の保険金、1万円の保険料 – 個人の効用関数 u log x 事故の起こる確率:0.05 1) 保険H口加入したときの期待効用 2) 最適な保険加入口数 3) 保険会社の期待収益 x1 1000 H , x2 5H EU 0.95 log(1000 H ) 0.05 log(5H ) 2) 期待効用をHで微分してゼロとおく 0.05 1 1 0.95 0, H 50 H 1000 H 解答例(2) 3) 保険会社の期待収益 0.95 H 0.05 5H 0.7 H 35 モラルハザードとエイジェンシー理論 期待収益は35万円 モラルハザード インセンティブとリスク エイジェンシー関係 • エイジェンシー関係(Agency) – Principal-agent関係ともいう – 依頼人(Principal)と代理人(Agent)との関係 – 時間や技術の制約のため、他人にしてもらう • 依頼人 – 雇う側、仕事をさせる側、使用者 • 代理人 – 雇われる側、実際に仕事をする人、被使用人 エイジェンシー関係の事例 • さまざまな場面で見られる。 プリンシパル 依頼人 株主 経営者 銀行 地主 政府 有権者 エイジェント 弁護士 経営者 労働者(従業員) 借り入れ企業 小作人 納税者 政府 1 エイジェンシー問題 • エイジェンシー問題 – プリンシパル・エイジェント問題ともいう – 依頼人と代理人の利害が一致しない場合に発生 – 代理人は依頼人の望んだように行動するとは限 らない • エイジェンシー問題の例 – サボる労働者 – 過剰な修理、過剰な検査 – 勉強しない学生? 情報の非対称性 • エイジェンシー問題 – 代理人の行動(努力)が観察できる – → 適切な報酬 → 望みの行動 • 情報の非対称性 – 代理人の行動(努力)が観察できない • 代理人が依頼人の利害を無視 • → モラルハザード 金融機関のモラルハザード • 銀行と預金者 – 預金者 依頼人 – 銀行 代理人 • 銀行 銀行の利益 • 預金 – 利子は決まっている – → 預金者への支払額は一定: P • 融資 – 企業の経営内容や返済能力の査定して融資 – ハイリスク・ハイリターンへの投資の傾向 – なんで? – 返済額 r が変動 順調 → 契約どおり:R – 不調 → 返せるだけ • 銀行の利益 – r-P 企業と銀行の倒産 • 銀行は返済額 r が大きいほど儲かる – 倒産のリスクがあっても r が大きい融資 • 多くの融資先が倒産 – 返済額がゼロ → 銀行の損失 → 銀行も倒産 – ただし銀行経営者(株主)に賠償責任はない • リスクをとっても、得はしても損はしないので、 銀行経営者は、ハイリスク、ハイリターンの貸 付をする場合がある 預金保険 • 預金保険 – 金融機関などが破綻した場合に、預金を保護し て預金者を守る仕組み • ペイオフ制度 – 預金保険で保護する預金の上限を設けて、それ を超えた分は保障しない制度 – 貯蓄性の預金は上限1千万円 2 預金者のモラル・ハザード • 預金保険がない場合の預金者の行動 – 銀行が破綻すれば預金は戻ってこないかもしれ ないので、金利だけではなく、銀行の健全性も考 慮する • 預金保険がある場合 – 破綻しても預金が戻ってくるので、金利だけで銀 行を選ぶ – 劣悪な金融機関に資金が集中する場合がある – なんで? 優良金融機関の淘汰 金融機関の行動 • 預金者から集めた預金を運用 • リスクの高い運用 – 成功すれば利益が大きい – 失敗してたとえ倒産しても、預金保険が面倒を見 てくれる • リスクの低い運用 – 成功も失敗もなく、利益も低い • 失敗しても預金者の損失まで補償する必要 がないので、銀行はリスクの高い危険な投資 火災保険のモラルハザード • 優良な金融機関 • 火事が起こるかもしれない – 健全な経営 – 資産の安全性に配慮した運用 – 保守的な資産運用 – 預金金利は高くできない – 状態1:無事 所得X 確率 (1-p) – 状態2:火事 所得Y 確率 p • 火の用心で、火事の確率が下がる – 火の用心の費用 e – e↑ → p↓ • 不良金融機関 – リスキーな投資 – 預金金利は高い → 預金を集めやすい 期待効用の無差別曲線 無保険時の火の用心 x1=x2 x2 確実線 x1 O 3 保険に加入 医療保険 • 保険業界が競争的 • 病気になる確率 P – 期待所得を保証する保険 – → 火事があってもなくても期待所得 – すべてのリスクは保険会社がとる • 保険によってリスクが完全に回避 • 医療は一定の限界費用cで提供 – 医療の供給曲線はcのレベルで水平 • 保険がないときの均衡 – 火の用心を行わない → 火事増加 – ← してもしなくても期待所得を得られる 医療の需給 価格 – 医療の需要曲線は右下がり – 価格はcで、医療の需要量はx0 – 期待支出: Pcx0 医療保険に加入 • 医療費がただになる保険に加入 D – 価格がゼロなので、医療はx1需要 – 保険会社の期待支払額: Pcx1 S E • 保険会社の利得 G c – 保険業界が競争的 → 利潤はゼロ – 保険料として、Pcx1を課す D’ O x0 x1 余剰分析 今日の問題 • 無保険の場合 – 余剰は⊿DSE • 保険加入後 – 余剰=⊿DSE-⊿ED’G • 余剰の変化 – 余剰の変化=加入後の余剰-加入前の余剰 – =-⊿ED’G – 保険加入により、余剰の損失 4
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