大谷 和季(おおたにかずとし)さん 北海道釧路湖陵高等学校 理数科 2年

①「アメリカでつかみ取りたいこと」
北海道釧路湖陵高等学校 理数科 2 年 大谷 和季
先日、修学旅行で大阪に行く機会があった。自分の住む街では見たことのないものに驚
いたが、一番驚いたのは、大阪は相容れない街だと感じたことだった。そう思った理由は、
北海道の言葉と比べて荒々しさのある威勢のいい大阪弁と、見たことのないほどの人混み、
釧路とはまるで違う速さで流れる時間を感じ、せわしないと思ったからだ。街中に張り巡
らされている交通網が細かく刻む時刻や、古くからの商売人の気質がそうさせているのだ
ろうか。大阪での1時間はあっという間だった。
「これが大阪か」と、大阪の洗礼を受けた気分だった。
そして、大阪での数時間の滞在で“相容れない”と思ってしまうのに、何も知らない、
言葉も通じない土地に行ってホームステイをして、現地の人々と交流することなど私にで
きるのだろうかと、不安に駆られた。私は将来、医師不足が懸念されている地域での医療
や、国境なき医師団の活動に従事したいと思っている。夢が叶えば、たくさんの街を訪れ
るだろう。こんな夢があるのに、一つの都市を、
「相容れない場所だ」と片付けていいのだ
ろうか。将来、たくさんの街、たくさんの言葉や宗教、たくさんの人種と関わるときに、
“相
容れない”と片付けていては、患者様や地域住民の方々と信頼関係は築けないだろうし、
いい医療を提供できるはずがない。これから訪れるだろう沢山の土地になじむことの練習
となるのがこのホームステイプログラムだと思い、今回応募する決意を固めた。
日本のプロ野球チーム、北海道日本ハムファイターズに、アメリカ出身のブランドン・
レアードさんという選手がいる。彼は来日二年目で、日本での生活は長くはない。しかし
彼は、ヒーローインタビューの時に、「アリガトウゴザイマス」と、簡単な言葉ではあるが
日本語を話す。そして、彼の好きな食べ物は寿司であり、「スシダイスキ~」という言葉が
とても印象的で、ファンにも愛されている。私には、彼から学ぶべきことがあった。彼の
インタビューを見ていると、彼が日本人に受け入れられる理由がわかってくる。日本語を
話せる、もしくは話そうとして努力しているということと、一つの日本の伝統を愛してい
るということだ。
その土地の言語を話せるということは、その土地の人々と、直接にコミュニケーション
をとれるということだ。現地の言葉を知っていたら、自分の国に興味を持っていると思っ
てもらえるし、
“あなたとコミュニケーションがとりたい”という思いも伝わりやすく、受
け入れてもらいやすくなるだろう。そして、もしも私がこのプログラムに参加できるなら
ば、英語だけの環境に身を置くことができる。私は英会話スクールに通っていて、英会話
が大好きだ。私の通っている英会話スクールの先生は日本人で、まだまだ拙い私の英語が
詰まったときには助けをくれる。しかし、ホームステイや語学研修では、助けてくれる人
はいないだろう。だから私は、英語だけの環境でしかできない悔しい思いをたくさんした
い。自分の英語がどこまで通用するのか試してみたい。そして、自分が持つ最大限の英語
力、表情、身振り手振り、すべてを駆使してどこまでコミュニケーションが取れるのかを
知り、今後の英語力の向上のためのばねにしたい。日本では体験できないことを経験し、
日本では伸ばせない英会話能力を伸ばすことができることを、とても楽しみに感じる。あ
らためて英語を学びなおす覚悟で行こうと思う。
また、このプログラムで伸ばすことができる力は英語の力だけではない。南加道産子会
の方々には、会員の方々だからこそご存知のことがあるはずだ。アメリカでの生活でお困
りになったことや、受け入れてもらうためになさった努力を聞き、将来、外国を訪れる際
に役立てたい。現地高校への体験入学では、その土地の価値観をつくりあげているといっ
てもよい教育を生で感じ、多くの人種が混在するカリフォルニアで、多くの価値観を尊重
しあうには、どんな教育がなされているのかを知りたい。その工夫に気付けば、将来、海
外の国を訪れる際に、自分と価値観の違うその国の人を尊重し、良い人間関係を築くこと
ができるようになるだろう。
世界には貧しい国がたくさんある。私たちには当たり前である、学校に行くこと、十分
な食事をとって健康に生きることができない人々が大勢いる。その人々に寄り添うために、
私は国境を越えた“優しさ”をつかみとりたい。カリフォルニアで学んだことは、今まで
接したことのない文化や、その中に生きる人々との壁を取り払う“優しさ”になると思う。
そして、私が学んだことを沢山の日本人に知ってもらい、貧しい国々と力をあわせ、すべ
ての人々が安心して生きることができる社会を作りあげていきたい。世界を変えるための
第一歩を、このプログラムで踏み出す。