正月 特集

正月
特集
キット
開発
中!
電波解読マシン
特集執筆
加東 宗
Takashi Katou
Piラジオの製作
ある時は測定器,またある時は衛星受信機,そしてまたある時は天文温度計
2016 年 1 月号
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イントロダクション
最新
RF IC×
RF インタープリタ「Pi ラジオ」誕生 ホビー・
宇宙,太陽,気象衛星,電子回路…万物のヒソヒソ声を電波で解説 スパコン
■ ラズベリー・パイで電波を解読!
ハンドル.パネルを
ひっくり返したとき
の足にもなる
定常波出力の
コネクタ
アンテナ
接続用の
コネクタ
電源入力
● 電波もディジタル化して扱う時代が来た
空間を飛び交う電波は,アンテナで電気信号に変換
できます.アンテナで受けた電波は,電気信号の世界
で最も微弱です.しかし,わずかなハードウェアで A
−D 変換できるようになってきています.ディジタル
信号にできれば,あとはソフトウェアで処理できます.
そ れ が ソ フ ト ウ ェ ア 無 線 SDR
(Software Defind
Radio)
です.
● ラズベリー・パイを使ったポータブルなソフトウ
ェア受信機を製作!
受信出力
周波数調整用の
ロータリ・エンコーダ
電源ボタン
写真 1 電波をソフトウェアで解説するポータブル受信機Piラジオ
受信周波数 50 M ∼ 2 GHz,受信帯域幅 30 MHz,感度− 120 dBm(狭
ディジタル I/O をもっていて安価で入手しやすいラ
ズベリー・パイを使って,電波を受信できる無線機「Pi
ラジオ」を製作しました(写真 1).
主要部分を写真 2に示します.
ご覧の通り,
一見しただ
けでは受信機には見えません.高周波回路に付き物だ
ったコイルやフィルタはほとんどありません.
拡張基板
の面積の半分以上はディジタル回路です.アナログ部
帯域 FM 受信)
2GHz Piレシーバ
拡張ボード
ラズベリー・パイ3
液晶画面の裏に配置
写真 2 Pi ラジオは高性能な RF ワンチップ IC と FPGA,そしてコンピュータでできている
PLL やミキサなどワンチップの RF IC でアナログ回路を構成し,ディジタル領域で信号を処理するソフトウェア無線(SDR)を実現
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2017 年 1 月号
特集 電波解読マシン Pi ラジオの製作
イントロダクション
1
2
3
雲の下に日本列島が見える
4
図 1 気象衛星 NOAA の電波を Pi ラジオで受信して得たリアルタイム衛星写真
5
今現在の日本上空の雲の動きを捕らえることができる
6
I 信号
7
受信信号の振幅
受信帯域幅が
30MHzなので
下がっている
Q
信号( I 信号と90°
ずれたローカル信号)
図 3 高周波の波形を見ることもできる
21チャネル
502M
22チャネル 23チャネル
50MHz
周波数[Hz]
24チャネル
る情報を取り出せる.それを「復調」という
552M
図 2 地上デジタル・テレビ放送の電波を観測したところ
チャネル間にわずかに隙間があるのが見てとれる
分は高周波アンプ,I /Q 復調 IC など,ごくわずかです.
● 電波をラズベリー・パイのプログラムで解読する
Pi ラジオは,宇宙から常に地上に降り注ぐ微弱な電
波もしっかりとらえて,電気信号に変換します.太陽
の温度を測ったり,気象衛星からの電波を受信して日
本上空の画像
(図 1)
を取得できます.
スペアナ機能があるので,地デジの電波のようすを
2017 年 1 月号
この波形を元に信号処理で振幅や位相を求めていくと,電波に乗せてあ
観測したり
(図 2),高周波信号の波形を見たり
(図 3)
もできます.ネットワーク・アナライザの機能も実現
できます.航空無線やアマチュア無線の受信も可能で
す.これらの機能はラズベリー・パイ上のソフトウェ
アを書き換えるだけで実現できます.
■ 電波を扱う手段はアナログ回路から
ディジタル回路&ソフトウェアに
● 無線は便利だがアナログ回路の敷居が高かった
遠隔地と情報の交換ができる無線通信は利便性が高
く,興味の対象として捉えても大変魅力的です.スマ
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