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フ
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【病害】
1.こぶ病
Erwinia hervicola pv.millettiae
〈生態と防除のねらい〉
梅 雨 頃 か ら つ る に 豆 粒 大 、 淡 緑 色 の 二 ぶ を 生 ず る (※ 写 真 1)。 こ ぶ は 次 第 に 肥 大 し 親
指大となり、年々肥大してこぶし大のがんしゅ状となる。
こぶには穿孔虫が侵人することが多く、内部が腐敗・
空洞化し枝枯れを生ずる。激害株は樹勢が著しく衰退する。
枝状、幹部、葉柄などの損傷部に昆虫類などにより
本菌が運ばれ発病すると考えられる。
〈防除法〉
(1)太 い 茎 の こ ぶ は 、 僅 か に 健 全 部 を 含 め て 削 り 取 り 、
抗生物質で処理した後に癒合促進剤を塗布する。
小さなつるに発生したこぶは、冬季整枝するときに
写 真 1:こ ぶ は 年 々 肥 大 し て こ ぷ し 大
のがんしゅ状となる
切除処分する。
2.さび病
Ochropsora kraunhiae
〈生態と防除のねらい〉
夏以降葉裏に淡黄色~黄褐色の粉塊を生じ、のちに褐色かさぶた状物に変わる。
かさぶた状物から中間寄主であるケシ科のキケマン属野草であるムラサキキケマン、
ミヤマキケマンなどに伝染する。 4~5月頃キケマン属からフジに伝染する。
〈防除法〉
(1)秋 に な る と よ く 目 立 つ 病 気 で あ る が 、成 長 に 大 き な 影 響 は な く 秋 に 病 落 葉 を 集 め
て処分する程度でよい。
【害虫】
1.フジツボミタマバエ(フジツボフクレフシ)
〈生態と防除のねらい〉
フジのつぼみに虫こぶを生じ、正常に開花しなくなる。越冬は幼虫態で加害株近
くの土中で過ごし、早春に蛹化・羽化後、花芽に産卵する。花房の成長と共に虫こ
ぶ内部で幼虫は発育し、開花時期に虫こぶから脱出落下し落葉中に潜り次年まで過
ごす。一般に古い株に見られるが、植本鉢で育てたフジにも発生することがある。
〈防除法〉
(1)虫 こ ぶ と な っ た つ ぼ み を 取 り 除 く 。
(2)越 冬 場 所 を 無 く す た め 、 フ ジ 樹 下 の コ ケ や 草 を 取 り 除 き 掃 い て お く 。
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マ
ツ
類
【病害】
1.マツノザイセンチュウ病
Bursaphelenchus xylophilus
〈生態と防除のねらい〉
夏期お盆すぎから旧葉が黄変し、新葉も急激に萎凋、褐変枯死する。
材線虫は、5月中旬頃から7月下旬頃(ピーク6月中旬)に前年の枯死材から羽
化脱出してくるマツノマダラカミキリの体内に保持されて、健全なマツの樹冠に運
ばれ、当年~3年枝に付けられたカミキリのかみ痕(後食痕)から侵人し、樹体内
をすみやかに移勤して樹を衰弱させ、約1~2ヶ月後に発病する。新しい衰弱枯死
木には、マツノマダラカミキリが産卵して、樹皮下で成育、9月下旬頃から材内に
穿入し、蛹室を作って越冬、翌年5月中旬頃から体内にマツノザイセンチュウを保
持して羽化脱出し、再びマツノザイセンチュウを伝搬する。
〈防除法〉
(1)マ ツ 植 栽 地 周 辺 部 (2~ 3km)を 含 め 枯 損 木 を 、 翌 春 4 月 下 旬 ま で に 伐 倒 処 分 す る 。
(2)大 切 な マ ツ に は 、 5 月 下 旬 ~ 8 月 上 旬 ま で 5 mm 目 の 網 を か ぶ せ る 。
(3)5 月 下 旬 か ら 予 防 的 に 薬 剤 を 散 布 す る 。
2.針葉先枯れ症状
病原不明
〈生態と防除のねらい〉
秋 遅 く か ら 、当 年 針 葉 先 端 部 が 黄 変 し 、冬 期 に は 赤 褐 変 す る 。最 初 1 枝 が 侵 さ れ 、
激しい時には樹全体に及ぶが、枯死することはまれで、翌春にはきれいな芽が吹い
てくる。生理的な原因ではないかと考えられている。
〈防除法〉
(1)排 水 を 良 く し 、 中 耕 ・ 施 肥 な ど 樹 勢 を 良 く す る 。
(2)土 壌 改 良 が 可 能 な 場 合 に は 、 少 し ず つ 土 壌 を 改 良 す る 。
3.葉枯病
Pseudocercospora pini-densiflorae
4.葉ふるい病
5.赤斑葉枯病
Lophodermium conigenum L.iwatense L.pinastri
Dothistroma septospora
6.ペスタロチア葉枯病
Pestalotiopsis disseminate P.foedans
P.neglecta P.populi-nigrae
〈生態と防除のねらい〉
マツ類には葉枯性の病害が多い。症状は様々で春から秋口にかけて感染し、その
年に発病するものから、翌春に病状がでるものまである。苗本、幼本での発生が多
く、激しい場合には枯死する。着生病葉と病落葉で越冬し、翌年の伝染源になる。
〈防除法〉
(1)着 生 病 葉 と 病 落 葉 を 除 去 、 処 分 す る 。
(2)苗 木 や 毎 年 発 病 す る 株 に は 、 予 防 的 に 薬 剤 を 散 布 す る 。
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マ
ツ
類
【害虫】
1.マツノマダラカミキリ
〈生態と防除のねらい〉
マツノザイセンチュウを媒介し材線虫病を引き起こす。加害材部に蛹室を作り幼
虫で越冬、5月に蛹化、6~7月に羽化脱出する。ザイセンチュウは羽化時に材か
ら虫体に乗り移り、気管腔に集まる。成虫は健全マツの当年枝樹皮部分を後食し、
その時ザイセンチュウは尾端から後食傷を通って材内に侵人し、材線虫病を引き起
こす。産卵対象木は衰弱木や枯れて問もない木であり、発病した被害木は好適な産
卵 対 象 木 と な る 。 成 虫 は 風 に 乗 っ て 長 距 離 を 移 動 す る が 、 前 年 の 被 害 林 か ら 2km 以
内は特に危険である。通常1年一化であるが、冷夏や寒冷地、遅い産卵の場合は羽
化まで2年かかることもある。
〈防除法〉
(1)被 害 木 を 成 虫 の 羽 化 脱 出 の 前 ま で (4 月 頃 ま で )に 伐 倒 処 分 す る 。
(2)後 食 期 に マ ツ に 防 虫 ネ ッ ト を か け る 。
(3)被 害 木 の 移 勣 を 行 わ な い 。
2.マツカレハ
〈生態と防除のねらい〉
各種マツ類、ヒマラヤシーダ、カラマツを加害する。通常年1化性だが暖地では
2化のこともある。成虫は7~8月に羽化し、雄は活発に飛ぶが、雌は羽化した樹
上に留まり交尾を行い、針葉上に卵塊を産卵する。孵化幼虫は集団で新梢の葉の片
面だけを食うが、二齢以降は分散する。越冬は樹皮の間や落葉中だが、暖地では針
葉の付け根などで越冬し、樹上に留まる場合が多い。3月頃から食害を再開し、6
月下旬から7月にかけて樹上でマユを作り蛸化する。年2化の場合は新成虫が、産
卵 さ れ た 年 の 9 月 頃 羽 化 し 、越 冬 は 若 齢 幼 虫 で 行 う 。ク モ 類 、サ シ ガ メ 、寄 生 バ エ 、
ウイルスなど天敵は多い。マツは全葉食害されても翌年被害 が無いと回復するが、
2年激害が続くと枯死する。年2化性の場合も枯死しやすい。放置マツ林が発生源
となりやすい。越冬幼虫防除のためのコモ巻きは暖地では効果が低い。
〈防除法〉
(1)卵 塊 や 若 齢 幼 虫 を 枝 ご と 除 去 す る 。
(2)マ ユ を 集 め て 処 分 。
3.マツノゴマダラノメイガ
〈生態と防除のねらい〉
成 虫 は 通 常 6 ~ 7 月 と 8 ~ 9 月 の 年 2 同 発 生 す る 。産 卵 は 葉 上 に 10 個 程 度 並 べ て
行われ、孵化幼虫は2齢まで針葉内部を食べ、その後集団で虫糞をつづって巣を作
り食害を行う。越冬は巣の中の中齢幼虫ですごし、蛹化も巣の中で行う。
〈防除法〉
(1)つ づ っ た 針 葉 ご と 幼 虫 を 除 去 す る 。
(2)ラ イ ト ト ラ ッ プ に よ る 成 虫 の 捕 殺 。
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マ
ツ
類
4.マツノシンクイムシ類
〈生態と防除のねらい〉
マツノシンマダラメイガ、マツノマダラメイガ、マツアカマダラメイガなどがあ
り、いずれも新梢や球果の内部を食害する。新梢の枯死で気づくことが多い。年2
~3回の発生で、新成虫は5月頃から発生し、成木よりも幼木に被害が多い。
〈防除法〉
(1)被 害 部 や 被 害 球 果 (ヤ ニ が で て い る )を 切 り 取 り 処 分 す る 。
5.ハバチ類
〈生態と防除のねらい〉
マツノキハバチ、マツノミドリハバチ、マツノクロハバチ などがおり、マツノキ
ハバチは年1化、マツノミドリハバチは年3化、マツノクロハバチは年2化 と言わ
れている。いずれも集団で針葉を加害し、産卵は針葉内に行われるので、産卵され
た針葉は退色する。
〈防除法〉
(1)産 卵 さ れ た 新 葉 や 集 団 幼 虫 を 取 り 除 く 。
キンモクセイ、ギンモクセイ、ヒイラギ
1.先葉枯病
Phomopsis sp.
2.炭疽病
Colletotrichum sp.
3.褐斑病
Phyllosticta osmanthicola
〈生態と防除のねらい〉
秋頃から目立ち始める。炭そ病は葉縁から発生し、褐色のち灰褐色の葉枯病斑を
形成することが多く、先葉枯病は、最初葉の先端部が淡褐色に変色し、しだいに基
部 に 向 か っ て 2~ 3cm 枯 れ 進 む 。褐 斑 病 は 、秋 お そ く か ら 当 年 葉 の 葉 先 や 葉 縁 に 淡 褐
色~黄褐色斑を生じる。病葉は、越冬翌春に病状が進展して夏頃までに全て落葉す
る。いずれも樹勢が衰退すると多発する。
〈防除法〉
(1)冬 期 に 病 葉 を 摘 み と り 処 分 す る 。
(2)施 肥 、 敷 き わ ら 等 に よ り 樹 勢 回 復 を 行 う 。
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キンモクセイ、ギンモクセイ、ヒイラギ
4.さび病
Zoghouania phillyreae
〈生態と防除のねらい〉
葉 裏 に 白 色 で 短 円 筒 状 隆 起 を 群 生 し 、葉 裏 で は 陥 没 、葉 表 で は 円 丘 状 に 膨 ら ん だ 5
~ 10mm 大 の 円 い 患 部 を 生 じ る 。 幼 茎 に も 発 生 し 新 梢 部 が 変 形 す る 。 後 に 患 部 は 黒 変
する。中間寄主はなく、全世代をこれらの上で形成し、病苗・病樹の移動で分布が
拡散する。
〈防除法〉
(1)被 害 葉 、 被 害 梢 を 除 去 、 処 分 す る 。
(2)病 苗 、 病 樹 を 持 ち 込 ん だ り 、 移 動 し な い よ う に 注 意 す る 。
4.イボタガ
〈生態と防除のねらい〉
イボタ、モクセイ、ネズミモチ、ヒイラギなどのモクセイ科の葉を食害する。
土中の蛹で越冬し、2~3月に羽化する。幼虫は黄緑色の大型イモムシで、4~
5月に見られ、体から数本の黒色のひも状突起を持つが終齢では消失する。5月~
6月上旬に地上に下り蛹化する。
〈防除法〉
(1)幼 虫 の 捕 殺 。
5.オリーブアナアキゾウムシ
〈生態と防除のねらい〉
幼 虫 が イ ボ タ 、ネ ズ ミ モ チ 、オ リ ー ブ の 材 部 を 食 害 し 、被 害 が 激 し い と 枯 死 す る 。
成 虫 は 3 月 下 句 か ら 11 月 ま で 長 期 間 活 勣 し 、成 虫 ま た は 幼 虫 で 越 冬 す る 。春 に 産 卵
されたものはその年の夏から秋にかけて羽化するが、夏以降の産卵では羽化は翌年
の初夏となる。成虫は夜行性で、昼間は被害木の凹所や枝の基部に静止している。
産卵は地際部の樹皮下に多い。
〈防除法〉
(1)成 虫 の 捕 殺 。
(2)地 際 部 に 紙 を 巻 く な ど の 産 卵 防 止 。
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キンモクセイ、ギンモクセイ、ヒイラギ
6.ヘリグロテントウノミハムシ
〈生態と防除のねらい〉
成 虫 は 体 長 3 mm 程 度 の 小 形 の ハ ム シ で 、 成 虫 で 越 冬 す る 。 3 ~ 4 月 に 新 芽 や 新 葉
に産卵し、幼虫は扁平で葉肉中にを食べる潜葉性である。1ヶ月程度で幼虫は寄生
木を離れ土中で蛹化する。6月頃羽化し地上に出現する。羽化後は活発に葉を摂食
す る 。食 害 量 は 成 虫 の 方 が 多 い 。産 卵 は 通 常 春 だ が 、新 芽 が あ れ ば 夏 や 秋 に も 行 う 。
よく似た種にテントウノミハムシがいるが、モクセイ科の中でもトネリコ類など
落葉樹を好むとされる。
〈防除法〉
(1)越 冬 成 虫 の い る 落 葉 や 表 土 の 一 部 の 除 去 。
(2)蛹 化 場 所 の 寄 生 木 下 の 土 を 1 cm 程 度 の 深 さ で 入 れ 返 る か 掘 り 起 こ す 。
(3)8 月 以 降 の 刈 り 込 み は し な い 。
ヤナギ類
【病害】
1.葉さび病
Melampsora spp.
〈生態と防除のねらい〉
新 葉 展 開 後 ま も な く 発 病 レ 5 月 上 旬 ~ 7 月 上 旬 及 び 9 月 下 旬 ~ 10 月 下 旬 に 多 い 。
葉の裏に黄粉を生じ、感染を繰り返す。秋口から黄粉にかわって暗赤褐色のかさぶ
た状物が作られる。激しいと葉は枯死し、翌年の花弁が分化しない。病原菌は、病
落葉中で越冬し、翌春中間寄主(ケシ科植物、ユキノシタ科植物、カラマツ)に伝
染して、中間寄主葉上に黄粉を形成して、ヤナギに感染する。
〈防除法〉
(1)枯 れ 枝 、 落 葉 等 を 除 去 、 処 分 す る 。
(2)毎 年 発 病 す る 場 所 で は 、 予 防 的 に 殺 菌 剤 を 散 布 す る 。
【害虫】
1.ヤナギハムシ
〈生態と防除のねらい〉
成虫、幼虫ともヤナギやポプラ類の葉を食害する。上中で越冬した成虫は新葉を
加害するのでこの時期の被害が大きい。4月頃葉裏に数十卵を塊状に産卵する。幼
虫は初めは集団で葉肉を網目状に食べ、成長とともに分散する。5月頃葉裏に尾端
で下垂し蛹化し、5~6月に新成虫が羽化する。
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〈防除法〉
若齢幼虫期に群生している幼虫を枝ごと取り除く。
ヤナギ類
2.カミキリムシ類
〈生態と防除のねらい〉
ヤナギを加害する主なカミキリは、ゴマダラカミキリ、クワカミキリ、シロスジ
カミキリなどである。産卵場所は、ゴマダラカミキリでは地上から1m程度までが
多 く 、 シ ロ ス ジ カ ミ キ リ は 直 径 10cm 程 度 の 部 分 、 ク ワ カ ミ キ リ は 直 径 10~ 15mm の
枝に多い。産卵は樹皮にかみ傷を付けて行う。いずれも幼虫は材内を食害し、成長
とともに下方に食い進み、ゴマダラカミキリは根部まで食害する。虫糞を樹体外へ
排出するため被害がわかることが多い。卵から成虫までの期間は、ゴマダラカミキ
リが1年だが、クワカミキリやシロスジカミキリは2~3年を要する。
〈防除法〉
(1)成 虫 は 捕 殺 す る 。
(2)産 卵 期 、 若 齢 幼 虫 期 に 寄 生 枝 部 を 除 去 。
(3)孔 道 内 の 幼 虫 の 捕 殺 。
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