95 洋ラン 【病害】 4.ウイルス病 〈生態と防除のねらい〉 ラ ン の ウ イ ル ス に は C y M V( シ ン ビ ジ ウ ム モ ザ イ ク ウ イ ル ス )、 O R S V( オ ド ントグロッサムリングスポットウイルス)なとがある。 〈防除法〉 (1)病 株 は 処 分 す る か 、 隔 離 し て 管 理 す る 。 (2)病 株 に 触 れ た 手 は よ く 洗 う 。 (3)発 病 の 恐 れ が あ る 場 合 の 株 分 け や 移 植 に あ た っ て は 、1 株 ご と に 手 や 器 具 を よ く 洗う。 (4)発 病 の 恐 れ が あ る 場 合 、 根 な ど の 洗 浄 は 同 -桶 の 水 で 行 わ な い で 。 流 水 で 1 株 ご とに行う。 5.褐色腐敗病 Burkholderia gladioli pv . gladioli 〈生態と防除のねらい〉 病原菌は細菌であり、気温が高く多湿の環境条件で発病が多い。ランが傷みが多 いと病原菌が侵入し易く被害がひどくなる。防除には排水をはかり湿度の低下をは かることが最も重要である。 薬 害 で 葉 傷 み を 生 ず る と そ の 後 に 病 原 菌 が 侵 人 し 、被 害 を 助 長 し て い る と 思 わ れ るので、薬害が生じないよう、温度、湿度、散布間隔などに配慮して散布する。 〈防除法〉 ○耕種的防除 (1)ほ 場 内 に 水 が た ま ら な い よ う 排 水 を は か り 、 多 湿 に し な い 。 (2)発 病 株 を ほ 場 に 持 込 ま な い 。 発 病 の ひ ど い 株 を ハ ウ ス 内 や 周 辺 に 放 置 し な い 。 (3)発 病 株 は 健 全 株 と 分 け て 栽 培 す る 。 (4)発 病 株 に ふ れ た 手 や 器 材 は よ く 洗 う 。 (5)株 を 傷 つ け な い よ う に 管 理 す る 。 7.苗黒腐病 Pythium ultimum 〈生態と防除のねらい〉 葉、バルブ、根に発生する。葉では、はじめ水浸状の小さい斑点を生じ、株全体 にひろがって黒褐色に腐敗し枯死する。バルブでは淡黄色の病斑を生じ、次第に褐 色から黒褐色になる。本病原菌は被害部に分生胞子と卵胞子をつくる。水によって 伝播する。多湿時に発生しやすい。 〈防除法〉 ○耕種的防除 (1)発 病 株 は 早 く 取 り 除 く 。 (2)株 間 は 十 分 あ け て 通 風 を よ く し 過 湿 に な ら な い よ う に す る 。 (3)発 病 し た ら 、 株 の 上 部 か ら 濯 水 し な い 。 95 96 洋ラン 8.腐敗病 Fusarium oxysporum 〈生態と防除のねらい〉 病原菌は根から侵入し、株は萎ちょうし、ひどくなると枯死する。 〈防除法〉 ○耕種的防除 (1)病 株 は す み や か に 除 去 し 、 ハ ウ ス 内 や 周 辺 に 放 置 せ ず 早 く 焼 却 す る 。 (2)鉢 な ど は 消 毒 し て 使 用 す る 9.葉枯病 Cylindrosporium sp. 〈生態と防除のねらい〉 葉 、花 茎 に 発 生 す る 。葉 で は 、病 斑 は 不 規 則 な 形 で 、灰 色 ま た は 淡 褐 色 に な っ て 、 そ の 上 に 小 粒 点 を 生 ず る 。 病 原 菌 は 16~ 25℃ で よ く 発 病 す る 。 〈防除法〉 ○耕種的防除 (1)葉 を 傷 つ け な い よ う に す る 。 (2)被 害 葉 は で き る だ け 早 く 除 去 、 処 分 す る 。 (3)雨 に あ て な い よ う に す る 。 ○薬剤防除 炭疽病に準ずる。 96 97 洋ラン 10.シンビジウム黄斑病 黒 斑 症 状 Fusarium proliferatum race B 黒 斑 系 統 黄 斑 症 状 Fusarium proliferatum race Y 黄 斑 系 統 Fusarium fractiflexum 〈生態と防除のねらい〉 本病は葉身に発生し、黄斑病徴と黒斑病徴がある。黄斑病徴は、初め水浸状にや や盛り上がった小斑ができ、これが拡大、融合して中央部が黄色で周囲がやや盛り 上がる病斑が形成され、末期には中央部より黒変する。黒斑病徴は、黄変や周囲の 盛り上がりもなく、初めから黒色の斑点が形成され、黒斑周囲にハローを伴うこと もある。 分生子が飛散して末展開葉に感染し、発病する。発生は一年を通して認められる が 、気 温 の 上 昇 す る 4 月 以 降 に 顕 著 と な る 。黄 斑 と 黒 斑 の 病 勢 進 展 に は 違 い が あ り 、 黒斑の病勢進展はメリクロン葉とリード葉ともに急激であるが、黄斑は緩やかであ る。 黄斑病菌は、ナタネ油粕で増殖し伝染源となることが明らかとなっており、菌の 飛散は潅水時に送風を行った場合に助長される。 〈防除法〉 (1)鉢 間 隔 を 広 く し 裁 植 密 度 を 低 く す る と と も に 、夏 季 の 露 地 栽 培 で は 雨 よ け 栽 培 に切り替え、風雨による胞子飛散を防止する。 (2)ま た 、肥 料 を ナ タ ネ 油 粕 か ら 緩 効 性 化 学 肥 料 に 切 り 替 え 、菌 の 伝 染 源 を 減 ら す ことも有効である。 シンビジウム黄斑病菌による黒斑症状 97 98 洋ラン 1 1 . シ ン ビ ジ ウ ム 裏 す す か び 病 Pseudocercospora cymbidiicola 〈生態と防除のねらい〉 最 初 、 葉 裏 に 5~ 10mm 程 度 の 灰 色 の 円 形 病 斑 を 生 じ る の が 特 徴 で 、 そ の 後 、 病 斑 上には褐色~黒色の微細な斑点が形成される。黄斑病菌による黒斑症状とよく似て いることから、正確な診断には組織分離が必要である。 現在のところ、詳細な伝染方法等は不明であるが、多湿条件下で発 生が助長され る傾向がある。 〈防除法〉 (1) 多湿条件下で発生しやすいため、換気を図る。 シンビジウム裏すすかび病菌による黒色円形病斑 【害虫】 5.ランツボミタマバエ Contarinia maculipennis FELT 〈生態と防除のねらい〉 2005 年 9 月 、 福 岡 県 の デ ン フ ァ レ 栽 培 施 設 に お い て 、 偕 を 加 害 す る タ マ バ エ の 幼 虫が発生した。九州大学と沖縄県農業試験場に同定を依頼したところ、ランツボミ タマバエであることが確認された。 本種は、東南アジアにおけるランの害虫で、近年、タイから米国フロリダ州に侵 入しランを加害している。また、オランダの検疫でもタイ産のランの花管から捕獲 さ れ て い る 。 1989 年 に 沖 縄 本 島 の デ ン フ ァ レ で 初 確 認 さ れ た 侵 入 害 虫 で 、 2006 年 1 月 に 、 宮 綺 県 の 洋 ラ ン 栽 培 施 設 に お い て 、 2009 年 1 月 に 三 重 県 の デ ン フ ァ レ 栽 培 施設において幼虫の被害が確認されている。 本 種 は ハ エ 目 タ マ バ エ 科 で 、 終 齢 幼 虫 の 体 長 は 約 2mm で 乳 白 色 、 成 虫 の 体 長 は 約 1.5mm で 蚊 に 似 て お り 、半 ば 開 い た 花 蕾 の 先 に ま と め て 卵 を 産 み 付 け る 。孵 化 幼 虫 は 蕾の中に潜り込み、花弁の内側を食害する。ゴール化したランの蕾には、多い場合 は十数頭の幼虫が寄生することもある。終齢幼虫は体を折り曲げて跳ねて移動し、 地中や鉢上の中で蛹化した後、2~3週間で羽化する。なお、本種は多化性である ため、気温が高く、利用可能な管が存在すれば、1 年を通して発生する。 本種の寄生により、ランの蕾はゴール化して落蕾や奇形花が引き起こされる。加 害された蕾は、開花前に落下するか、開花しても食害部分は水浸状のシミとなるた め商品価値が著しく低下する。 98 99 洋ラン ハワイではラン以外にもハイビスカス、ニガウリ、パクチョイ、トマト、ナス、ジ ャガイモ、ピーマン、ジャスミンなどの蕾を加害することが確認されている。 〈防除法〉 (1)本 種 が 発 生 し て い る ラ ン 栽 培 施 設 で は 、被 害 蕾 や 地 上 に 落 下 し た 蕾 を 速 や か に 除去してビニル袋等に入れ密封して処分する。 (2)棚 下 の 地 表 部 等 に マ ル チ を 張 り 、 蛹 化 場 所 を 被 覆 す る 。 (3)本 種 は 広 食 性 の た め 、施 設 内 の 防 除 を 徹 底 し 、施 設 外 へ の 脱 出 に よ る 拡 散 を 防 く。 〔参考資料] ( 1)『 最 近 , 沖 縄 に 侵 入 し た ラ ン ツ ボ ミ タ マ バ エ と マ ン ゴ ー ハ フ ク レ タ マ バ エ 』 植 物 防 疫 第 5 8 巻 第 5 号 ( 2004) 九 州 大 学 院 農 学 研 究 院 湯 川 氏 外 :216-218 ( 2)『 農 作 物 病 害 虫 診 断 ハ ン ド ブ ッ ク 』 沖 縄 県 植 物 防 疫 協 会 ( 2001) :292 ( 3)『 平 成 17 年 度 病 害 虫 発 生 予 察 特 殊 報 第 2 号 』宮 崎 県 病 害 虫 防 除 ・ 肥 料 検 査 セ ン ター ( 4) Jensen,D.D.( 1950) Notes on the history and ecology of blossom midge, Contarinia lycopersici Felt (Diptera:Cecidomyiidae).Proc.Hawaiian Entomol. Soc.14:91-100 プリムラ類 【病害】 2.斑点病 Ramularia primulae 〈生態と防除のねらい〉 発 生 は 葉 で 、下 葉 か ら 発 病 し 始 め る 。 初 め は 小 斑 点 で あ る が 、や が て 3~ 4mm ぐ ら いの大きさの褐色の円形または準円形の病斑となる。 病斑のまわりは黄色に縁取られる。病勢が進むと葉は枯死し、落葉する。3~5 月の降雨の多いときに発生しやすい。 〈防除法〉 ○耕種的防除 (1)肥 料 切 れ す る と 発 生 し や す く な る か ら 肥 培 管 理 に 注 意 す る 。 (2)雨 天 が 続 く と き に は 、 発 病 葉 は 摘 み と り 処 分 す る 。 (3)種 子 消 毒 を 行 う 。 99 100 プリムラ類 3.斑葉細菌病 Pseudomonas syringae pv. primulae 〈生態と防除のねらい〉 発生は葉で、初めは下葉に水浸状の褐色の小斑点として現れる。病斑はやがて大 きくなり、不規則な円形の病斑となる。病斑のまわりは黄色になる。病斑の大きさ は 5~ 8mm 程 度 で あ る が 、多 数 で き た と き は 融 合 し て 大 型 と な り 、落 葉 し た り 枯 死 し たりする。施設や土壌が多湿のとき発病しやすい。 〈防除法〉 ○耕種的防除 (1)土 壌 が 過 湿 に な ら な い よ う に 注 意 す る 。 (2)発 病 葉 は 早 急 に 除 去 、 処 分 す る 。 ○薬剤防除 軟腐病に準ずる。 4.褐斑病 Alternaria sp. 〈生態と防除のねらい〉 発生は葉で、褐色の斑点ができ、しだいに拡大して病斑上に汚黒色スス状のかび を生ずる。ひどい発生のときは葉が枯死する。 〈防除法〉 ○耕種的防除 発病葉は早急に除去、処分する。 ○薬剤防除 斑点病に準ずる。 5.さび病 Puccinia primulae 〈生態と防除のねらい〉 発生は葉の裏側で、橙褐色の斑点となって現れる。古くなると、斑点は落ちて葉 に穴があく。 発生がはなはだしいと葉が枯れることがある。 〈防除法〉 ○耕種的防除 発病葉は早急に除去、処分する。 100 101 ベゴニア 【病害】 1.斑点細菌病 Xanthomonas campestris pv. begoniae 〈生態と防除のねらい〉 夏から秋に葉に発生する。初め針頭大の暗緑色の小斑点を生じ、しだいに拡大し て 5~ 10mm の 円 形 ま た は 不 正 形 の 病 斑 と な る 。 病 斑 の 色 は 褐 色 ま た は 黒 色 で 、 ま わ りは水浸状で黄色くぼやけている。病斑は雨天には破れて孔があき、また多数の病 斑が融合すると葉は枯死する。 プレジデントカルノーと木立性のレックスベゴニアに発生が多く、ローレインベ ゴニアや球根ベゴニアは発生しにくく、ベゴニア・センパフローレンスと普通のレ ックスベコニアはほとんど発病しないといわれるが、リーガーベゴニアは発病しや すい。 〈防除法〉 ○耕種的防除 (1)弱 い 種 類 や 品 種 は 温 室 内 で 栽 培 し 、 雨 に あ た ら な い よ う に す る 。 (2)カ リ が 欠 乏 す る と 発 病 が 助 長 さ れ る と い わ れ て い る の で 、 施 肥 に 注 意 す る 。 (3)発 病 葉 は 除 去 、 処 分 す る 。 3.茎腐病 Rhizoctonia solani 〈生態と防除のねらい〉 病原菌はリゾクトニアで茎、葉が侵される。茎の地ぎわ部や下葉が侵されると地 上部茎葉は倒状し、枯死にいたる。病患部ではクモの巣状のカビがうすくまといつ いている。立枯病菌であるので、野菜畑の土を用いると発病の恐れがあり多湿条件 下で発病が多い。 ベゴニア・センパフローレンスに多発し、その他の種類では発生が見られない。 〈防除法〉 ○耕種的防除 (1)発 病 株 は 早 急 に 除 去 、 処 分 す る 。 (2)周 囲 へ の 伝 染 を 防 ぐ と と も に 病 菌 を 土 壌 中 に 残 さ ぬ よ う に す る 。 (3)多 湿 に な ら な い よ う に す る 。 ○薬剤防除 土壌消毒の項参照 4.白星病 Cercospora begoniae 〈生態と防除のねらい〉 発生は葉で、初めは小さな斑点となって現れる。この斑点はやがて円形、不正形 の褐色に縁取られた斑点となる。被害葉が伝染源になり、病斑上の胞子によってま ん延する。 101 102 ベコニア 〈防除法〉 ○耕種的防除 (1)発 病 葉 は 除 去 、 処 分 す る 。 (2)か ん 水 は 葉 を ぬ ら さ ぬ よ う に 株 元 に か ん 水 す る 。 パンジー 【病害】 1.べと病 Peronospora violae 〈生態と防除のねらい〉 葉の表面に、はじめ淡黄色ないし退緑色の輪郭が不明確な斑点を生じ、病斑が 拡大すると淡黄褐色に変わり、葉裏に白色霜状のカビを生じる。 15~ 20℃ の 比 較 的 低 温 条 件 で 、茎 葉 が 繁 茂 し て 株 間 湿 度 が 高 ま る と 発 病 し や す い。病原菌はスミレ属植物のみを侵し、被害残渣とともに土中で越年し、卵胞子 が第一次伝染源となる。発病後は病斑上に形成された分生胞子が飛散し、雨滴や 水によって遊走子が遊泳して急速にまん延する。 10~ 11 月 に 発 生 が 多 い 。 株 養 成 期 間 は ハ ウ ス 内 が 過 湿 に な ら な い よ う に 潅 水 、 換気等に注意するとともに、早期発見に努める。 〈防除法〉 ○耕種的防除 (1) 育 苗 や 株 養 成 は 清 潔 な 場 所 を 選 ん で 行 う 。 (2) 被 害 葉 は 早 め に 除 去 、 処 分 し 、 ハ ウ ス 内 の 伝 染 源 菌 量 の 密 度 上 昇 を 抑 え る 。 (3) 多 湿 を 避 け 、 通 風 、 換 気 を 図 る 。 シバ 【病害】 1.葉腐病 Rhizoctonia solani K Ü hn 〈生態と防除のねらい〉 発生は6月ごろからみられ、7~8月にかけて最盛となる。径1m前後のほぼ円 形 で 幅 5~ 10cm の 紫 緑 ~ 暗 緑 色 の 輸 紋 状 斑 を 作 り 、 や が て 褐 色 で あ る リ ン グ 状 の 病 斑を形成する。しかし、リングの内部は淡緑色となるが、枯れることはない。 本病は、朝露や雨滴などがいつまでも乾かないで高温が続き、特に夜間が高温の 場合には激発する。また、酸性土壌で刈り込み同数が多いと発生が助長される。 〈防除法〉 ○耕種的防除 排水を良好にし整地を平均にする。 102 103 シバ 2.ピシウム病 Pythium periplocum 等 〈生態と防除のねらい〉 過 湿 条 件 に な れ ば 季 節 を 問 わ ず 発 生 す る 。特 に 梅 雨 多 湿 時 に 多 発 す る こ と が 多 い 。 症 状 と し て は 、早 朝 や 過 湿 時 に 綿 を 置 い た よ う な 菌 糸 で お お わ れ 直 径 2~ 3cm で 点 在 している場合が多いが、やがて融合して大型となる。 〈防除法〉 ○耕種的防除 (1)排 水 を よ く す る 。 (2)短 く 刈 り 込 ん だ り 、 目 土 を 多 く 入 れ な い よ う に す る 。 P.cynodontis Lacroix ex Desmazi é res バミューダグラス 3.さび病 Puccinia spp. Τ P. graminis Persoon subsp. graminicola Urban ベントグラス P.zoysinae Dietel シバ 〈生態と防除のねらい〉 おおむね春と秋に2回発生する。葉および葉柄部に赤褐色の小さなもり上った病 斑を生じ、後に淡褐色になって枯れる。 〈防除法〉 ○耕種的防除 施肥、潅水を適切にし、生育をよくする。 イヌマキ 【病害】 1.白葉枯病 Phyllosticta sp. 〈生態と防除のねらい〉 初め葉の先から淡緑色に変色し、のち灰褐色から灰白色にかわる。健全部との境 に褐色の帯ができるが、病斑はしばしば褐色帯を越えて基部に向かい、葉の牛分以 上が灰白色に変わり落葉する。 〈防除法〉 (1)病 落 葉 を 集 め て 処 分 す る 。 103 104 イヌマキ 2.胴枯れ症状 <生態と防除のねらい> 樹勢が低下した根株~幹に発生し、胴枯れ症状を引 き起こす。胴枯れした部位の枝が枯れるため、一見胴 枯れ症状に見える。 (※写真1) <防除法> (1)植 栽 時 に 、 根 を 広 げ 傷 ま な い よ う に 植 栽 す る 。 (2)枝 作 り の 際 に は 、 幹 が 締 め ら れ な い よ う に 注 意 す る 。 写 真 1:衰 弱 し た 根 株 ~ 幹 に 発 生 し 胴枯れ症状を引き起こす。 カエデ(モミジ) 【病害】 2.胴枯病 Diaporthe spp. ふらん病 Valsa ceratosperma 粗皮病 Guignardia macrospora 〈生態と防除のねらい〉 苗木、若木、成木に発生する。若木では、移植当年から翌年にかけ。地際部に胴 枯 れ 症 状 を 起 こ す 。ま た 、定 植 木 で は 、小 枝 か ら 太 枝・幹 へ と 胴 枯 れ 症 状 が 移 行 し 、 ついには衰弱枯死する。ヤマモミジ系統の栽培品種に多い。 〈防除法〉 (1)移 植 時 に は 丁 寧 に 掘 取 り 植 栽 す る 。 (2)寒 風 害 、 旱 害 対 策 を 行 う 。 (3)被 害 部 と 健 全 部 を 僅 か に 含 む よ う に 切 除 し 、切 除 部 に ト ッ プ ジ ン M ペ ー ス ト を 塗 布する。 (4)太 枝 ・ 幹 の 切 り 口 に は 、 ト ッ プ ジ ン M ペ ー ス ト を 塗 布 す る 。 (5)穿 孔 虫 の 防 除 を 行 う 。 104 105 カエデ(モミジ) 【害虫】 3.ゴマダラカミキリ 〈生態と防除のねらい〉 カエデのほか、ヤナギ、ヤシヤブシ、スズカケノキ、柑橘類、ナシ、スギなど加 害 植 物 は 50 種 以 上 に 及 ぶ 。幼 虫 が 樹 皮 下 や 材 内 部 を 食 害 し 、地 下 部 ま で 穿 人 す る た め幼木では枯損することも多い。成虫(※写真1)は 緑枝部の樹皮を後食し、枝枯れを起こす。材内の幼虫 は虫糞を樹体外に排出するので加害がわかる。通常1 年1化性で、成虫の発生時期と産卵期は6~8月に及ぶ。 産卵は地上近くの樹皮にかみ傷をつけて行い、孵化幼虫 は最初は樹皮下を食害し、成長と共に材内に穿孔する。 〈防除法〉 (1)成 虫 の 捕 殺 。 写真1:黒色に白い斑点が並んで (2)樹 皮 下 の 卵 や 若 齢 幼 虫 の 打 殺 。 いる (3)針 金 な ど で の 幼 虫 の 刺 殺 。 (4)産 卵 防 止 と し て 、 樹 幹 下 部 を ビ ニ ー ル や 紙 な ど で 被 覆 。 カナメモチ類 【病害】 1.ごま色斑点病 Entomosporium mespili 〈生態と防除のねらい〉 4月下旬から、当年葉に紅色の小斑点を多数生じ、 や が て 2~ 5mm の 灰 褐 色 の 円 斑 に な る 。 病 斑 周 辺 は 鮮紅色に変わり、病斑中央に光沢のある小黒点を生 ず る (※ 写 真 1)。 5 月 頃 に 病 葉 は 一 斉 に 落 葉 す る 。 また、幼茎にも紡錘形の病斑を生ずる。本病はシャ リ ン バ イ 、 カ リ ン 、 ビ ワ 等 の バ ラ 科 ・ナ シ 亜 科 11 属 15 種 の 樹 木 類 に 寄 生 す る の で 、 こ れ ら の 樹 木 が 近 く に植栽されている場合には同時に防除する。最近で は、セイヨウカナメモチでの発生も認められる。 写真1:4月下旬から、当年葉に紅色 の小斑点を多数生じる。ひど くなると 5 月頃には病葉は一 斉に落葉する 〈防除法〉 (1)越 冬 病 葉 と 病 落 葉 を 除 去 、 処 分 す る 。 (2)被 害 が 激 し い 場 合 に は 、 思 い 切 っ た 剪 定 を し て 仕 立 て な お す 。 105 106 サクラ 【病害】 1.てんぐす病 Taphrina wiesneri 〈生態と防除のねらい〉 枝の一部が膨らんでこぶ状となり、そこから不定枝 が 叢 生 し 、 天 狗 の 巣 を 形 成 す る (※ 写 真 1)。 全 体 に 拡 大 すると樹勢が弱まり、寿命を縮める。病巣の葉は、 4月中~下旬にかけ変色し、葉裏面に白粉を生ずる。 病原菌は病枝上で越冬し、開葉期に葉に伝染する。 写真1:枝の一部が膨ら んでこぶ状とな り、そこから不 定枝が叢生し、 天狗の巣を形成 する 〈防除法〉 (1)冬 期 に 病 巣 を こ ぶ の 下 部 の 健 全 部 を 僅 か に 含 め て 切 除 処 分 す る 。切 り 口 か ら 腐 朽 病が侵入しやすいので、切り口に防菌・ゆ合剤を塗布する。 2.幼果菌核病 Monilinia Kusanoi 3.灰星病 Monilinia fructicola 〈生態と防除のねらい〉 両病害とも、開花・開葉期に花、新梢部、若葉及び果実が侵され、熱湯を浴びた ように軟化、褐変腐敗し下垂する。病患部には、灰白色紛状物が形成される。 幼果菌核病は罹病して落下した果実で越冬し、翌春淡褐色小型杯状のきのこを生 じ、胞子を飛散して伝染する。また、灰星病は、秋まで被害が続き、先枯状の被害 枝上で越冬する。 〈防除法〉 (1)冬 期 に 病 枝 条 を 除 去 し 、 落 下 果 実 を 集 め て 処 分 す る 。 (2)毎 年 発 生 す る と こ ろ で は 、 予 防 的 に 殺 菌 剤 を 散 布 す る 。 4.さめ肌胴枯病 5.胴枯病 Botryosphaeria dothidea Valsa ambiens 〈生態と防除のねらい〉 枝幹及び苗木の地際部の幹が侵され胴枯れを起こし て枯れる。病患部はやや陥没し、樹皮に多数のいぼ状 隆 起 物 を 形 成 し 、 さ め 肌 状 を 呈 す る (※ 写 真 1)。 写 真 1:樹 皮 に 多 数 の い ぽ 状 隆 起 物 を 形成し、さめ肌状を呈する 〈防除法〉 (1)枯 れ 枝 や 枯 死 樹 は 除 去 処 分 す る 。 (2)初 期 病 患 部 は 健 全 部 を 僅 か に 含 め て 削 り 取 り 、 防 菌 ・ 癒 合 剤 を 塗 布 す る 。 (3)樹 勢 が 弱 る と 発 病 し や す く な る の で 、 樹 勢 を 強 く す る よ う に 管 理 す る 106 107 サクラ 6.せん孔褐斑病 Pseudocercospora circumscissa 7.斑点病 Cercospora prunicola 〈生態と防除のねらい〉 せ ん 孔 褐 斑 病 は 、 径 2~ 3mm の 褐 色 不 整 円 斑 を 作 り 、 病斑の縁に離層を形成して、病患部が脱落し、虫害に 似 た 症 状 を 呈 す る (※ 写 真 1)。 斑 点 病 は 、 葉 脈 に 区 切 ら れた不整多角形の褐色病斑を形成する。病斑は1葉に 多数形成され、両縁から巻き込み早期に落葉する。 〈防除法〉 (1)伝 染 源 と な る 病 落 葉 を 除 去 ・ 処 分 す る 。 (2)若 木 の 場 合 は 予 防 的 に 殺 菌 剤 を 散 布 す る 。 写 真 1:葉 に 褐 色 不 整 円 斑 を 作 り 、虫 害に似た症状を呈する 【害虫】 1. コスカシバ 〈生態と防除のねらい〉 年1回の発生。幼虫態で樹皮下の食害痕内に白いマユをつくって越冬する。越冬 幼 虫 の 発 育 程 度 は 差 が 大 き く 、 そ の た め 成 虫 の 羽 化 時 期 は 5 月 ~ 10 月 の 長 期 間 に わ たる。 防除は成虫の主な発生時期(6~9月)に殺卵および食入防止をねらって散布す る が 、発 生 期 間 が 長 い の で 数 回 の 散 布 が 必 要 で あ り 、他 害 虫 と の 同 時 防 除 を は か る 。 また秋季の食入幼虫防除も効果が高い。薬剤防除以外に、性フェロモン剤を用いた 交信かく乱も効果が高い。 〈防除法〉 ○耕種的防除 (1)幼 虫 を 捕 殺 す る 。 (2)肥 培 管 理 に よ り 常 に 樹 勢 を 健 全 に 保 つ 。 (3)日 焼 、 寒 害 、 胴 枯 病 、 樹 脂 病 等 が 誘 因 と な る の で こ れ ら の 予 防 対 策 を 行 う 。 被害樹 107 108 サクラ 2.モンクロシャチホコ 〈生態と防除のねらい〉 幼虫がバラ科の葉を食害する。加害樹種はサクラ類、ボケ、アンズ、カイドウ、 ナシ、ビワなどである。年1化で成虫は7~8月頃現れ、孵化幼虫が8~9月に加 害 す る 。幼 虫 は 集 合 傾 向 が 強 い 。老 熟 す る と 55mm に 達 し 、黒 紫 色 に 灰 色 の 軟 毛 を 生 じ る 。頭 胸 部 と 尾 部 を 背 方 に そ り 返 し て 静 止 す る 。9~ 10 月 に 上 中 の 浅 い 場 所 で 蝸 化 越冬する。 〈防除法〉 (1)集 合 幼 虫 を 枝 ご と 除 去 す る 。 (2)越 冬 期 に 地 際 の 蝸 を 落 葉 ご と 集 め て 処 分 す る 。 3.アメリカシロヒトリ 〈生態と防除のねらい〉 北アメリカからの侵入害虫で、都市の公園で主に発生する。蛸で越冬し、成虫は 5月と7~8月の年2回、一部第3化が9月に見られる。幼虫は5齢までは集団で 糸を張って巣を作り葉肉のみを食害する。この時期は食害された葉が白っぽく見え る。6齢以降は単独で行動し葉を丸ごと食うようになる。7齢で老熟し樹皮の割れ 目、家屋の隙問、落葉中などに薄いマユを作って蝸化する。加害樹種はサクラ、ク ワ、スズカケノキ、トウカエデなどの落葉広葉樹であるが、単独で行勣するように なるとシラカシ、シャリンバイ、サンゴジュなど常緑樹も食害するようになる。山 林 な ど へ は 侵 入 し て お ら ず 、シ ジ ュ ウ カ ラ や ア シ ナ ガ バ チ な ど が 有 効 な 天 敵 で あ る 。 〈防除法〉 (1)集 団 期 の 幼 虫 を 葉 ご と 除 去 す る か 、 火 の つ い た 棒 を 使 っ て 巣 を 焼 く 。 (2)樹 幹 に ム シ ロ な ど を 巻 き 付 け 、 そ の 中 に 蛹 化 さ せ て ム シ ロ ご と 除 去 す る 。 (3)落 葉 中 の 蛹 を 除 去 す る 。 4.オビカレハ 〈生態と防除のねらい〉 サクラ、ウメ、モモ、カイドウなどのバラ科樹木の葉を食害する。枝に産付けら れた卵塊で越冬し、幼虫は3月に孵化する。最初は枝に糸を張ってテント状の巣を 作り、昼間は巣の中に集合し夜間に巣外の葉を食べる。終齢近くになるとテントか ら出て分散する。樹上で蛹化し、5月下句~6月に羽化産卵する。 〈防除法〉 (1)巣 の 中 の 幼 虫 を 枝 葉 ご と 除 去 す る か 、 火 の つ い た 棒 を 使 っ て 巣 を 焼 く 。 (2)卵 塊 を 潰 す 。 108 109 サクラ 5.リンゴカミキリ 〈生態と防除のねらい〉 成虫は5~6月に加害枝から脱出し、サクラの葉脈を後食する。細い枝にかみ傷 を付けて産卵し、孵化幼虫は枝の内部を食い進み、数力所から糞を樹皮外に排出す る。被害枝は枯れ下がる。越冬は枝の中で老熟幼虫か蛹態ですごす。1世代に2年 かかる。サクラのほかモモ、リンゴ、ナシなどを加害する。 〈防除法〉 (1)成 虫 を 捕 殺 す る 。 (2)被 害 部 の 枝 を 幼 虫 ご と 切 り 取 る 。 サルスベリ 【病害】 2.すす病 病原菌未詳 〈生態と防除のねらい〉 新葉の展開後、葉や茎枝の表面が黒色すす状物で覆われる。病原菌は、アブラム シ類やカイガラムシ類の排出物を栄養源として繁殖する。 〈防除法〉 (1)ア ブ ラ ム シ ・ カ イ ガ ラ ム シ 類 の 駆 除 を 行 う 。 (2)窒 素 過 多 に 留 意 し 、 通 風 を 良 く す る 。 3.褐斑病 Pseudocercospora lythracearum 〈生態と防除のねらい〉 葉に黒褐色でやや角形の斑点が作られ、のち拡大して周縁不整となり健全部との 境界も不明瞭になる。病葉は黄変して早期に落葉する。うどんこ病やすす病と併発 して被害が激しくなる。 〈防除法〉 ( 1) 病 落 葉 を 集 め て 処 分 す る 。 4.環紋葉枯病 Cristulariella moricola 〈生態と防除のねらい〉 6月頃から葉に灰白色の3cm大のはっきりした輪紋状斑点を生ずる。本病は夏 以降に多発し、湿潤時に急速に病状が進展し、乾燥時には停止する。病斑裏面には 白色虫卵状ないし糸くず状で粉状の繁殖体が多数形成され、また黒色の菌核を生ず る。病落葉上に作られる菌核で越冬し、翌年の伝染源になるものと思われる。 〈防除法〉 (1)病 落 葉 を 集 め て 処 分 す る 。 (2)本 病 原 菌 は 多 犯 性 の 菌 で 、 他 の 雑 草 や 雑 木 に も 発 生 す る の で 留 意 す る 。 109 110 サルスベリ 【害虫】 3.コイチャコガネ 〈生態と防除のねらい〉 サルスベリのほかクリ、ケヤキなどの葉を成虫が食害する。幼虫の発生源となる 芝 生 な ど が 近 い と 、被 害 が 多 く な る 。成 虫 で 越 冬 し 、5 ~ 6 月 に 飛 来 し て 食 害 す る 。 成虫は灯火に集まり、幼虫は芝生などの根や腐食質を食う。 〈防除法〉 幼虫発生を防ぐことに努める。 共通害虫コガネムシ類の項参照 シャクナゲ 【病害】 2.葉斑病 Pseudocercospora handelii 〈生態と防除のねらい〉 梅 雨 頃 か ら 当 年 葉 に 5~ 10 ㎜ 前 後 の 不 整 多 角 状 な いし円状の褐色病斑を生ずる。病斑には灰緑色すす か び 状 物 が 多 量 に 形 成 さ れ る (※ 写 真 1)。 病葉の一部が着生したまま越冬し、翌春の伝染源と なる。西洋シャクナゲの挿し本育苗苗畑で大発生す る。 写 真 1:梅 雨 頃 か ら 当 年 葉 に 不 整 多 角 状 な い し 円 状 の 褐 色 病 斑 を 生 ず る 。病 斑 に は灰緑色すすかび状物が多量に形成 される 〈防除法〉 (1)病 葉 を 切 除 処 分 す る 。 (2)挿 し 木 の 穂 は 、 無 病 穂 を 選 定 す る 。 3.根腐病 Phytophthora cinnamomi 〈生態と防除のねらい〉 育苗中に発病して根は変色腐敗し、茎は地際部表皮が褐変する。病原菌は発病土 壌およびり病植物中に生存し、降雨などの水滴により飛散・伝染する。高温多湿条 件で発病が多い。 〈防除法〉 (1)無 病 土 壌 に 植 栽 し 、 多 湿 に な ら な い よ う に 育 苗 す る 。 (2)病 株 は 除 去 処 分 す る 。 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