豪州株式市場の足元の動向と2017年の展望

2016年11月22日
投資情報室
(審査確認番号H28-TB223)
オーストラリアレポート
オーストラリア経済とリート市場の動向について
豪州株式市場の足元の動向と2017年の展望
 2016年後半の豪州株式市場は神経質な展開続く。7月末以降は資源株が堅調な一方、内需株は軟調な地合い。
 内需株軟調は、①資源株へのセクター・ローテーション、②利益確定の売り、③世界的な金利上昇懸念、などが背景。
 トランプ政権誕生による豪州経済への影響は限定的。トランプ政権のインフラ計画は資源価格を押し上げる可能性も。
 豪企業業績は17年度には回復が予想される。金利上昇が一巡すれば、豪州株の配当利回りが見直されると期待。
インドが追加利下げ 今年4回目
2016年後半にかけて豪州株は神経質な展開
図1:豪州株と豪・米10年国債利回りの推移
5,750
2016年の豪州株式市場は、11月の米大統領選挙の不透明
感や世界的な金利上昇観測の台頭などを背景に、年後半に
かけて神経質な相場展開が続いています。主要株価指数の
S&P/ASX200指数は2016年7月末から11月18日の間に
3.6%の下落となりました(図1)。
資源株が堅調な一方、内需株は軟調な地合い
豪州株が軟調に転じた2016年7月末以降のセクター別の株
5,500
2016年6月24日
英国民投票で
EU離脱派勝利が判明
(倍)
4.5
豪州株(左軸)
4.0
5,250
3.5
2016年11月9日
米大統領選挙
結果判明
5,000
4,750
3.0
2.5
4,500
2.0
価 騰 落 率 を 見 る と 、 素 材 ( +8.2 % ) や エ ネ ル ギ ー
(+2.7%)などの資源株が底堅い上昇を示した一方、通信
(-17.8%)、REIT(-17.1%)、公益(-13.4)などの内
需株の軟調地合いが続いています(図2)。鉄鉱石や石炭
の価格上昇を背景に、豪州株式市場での資源株を見直す動
きが、セクター・ローテーションの面で内需株の抑制要因
となった可能性があります。
4,250
豪10年国債利回り
(右軸)
4,000
16年1月
2016年初から7月まで比較的底堅いパフォーマンスを示し
株価騰落率
S&P/ASX200
情報技術
が高いセクターは長期金利の上昇懸念が嫌気されたこと、
生活必需品
などが指摘できます。特に米大統領選挙後は、米国でのイ
一般消費財
ンフレ観測浮上から世界的に長期金利の上昇圧力が高まり
資本財
4.49
2.14
5.70
1.3
2.83
-2.2
4.10
-2.6
3.88
-10.5
4.28
-11.0
-13.0
公益
-13.4
REIT
-17.1
通信
-17.8
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30
(%)
1.9%の下落となったものの、翌10日には前日比+3.3%の
2016年初~7月末
反発を示すなど、市場全体としては影響は限定的に留まっ
2016年7月末~11月18日
ブルームバーグ
2.81
2.7
ヘルスケア
の結果が判明した11月9日こそS&P/ASX200指数は前日比
ています。
1.0
16年11月
予想配当利回り
8.2
エネルギー
金融(除くREIT)
一方、米大統領選挙後の豪州株式市場は、トランプ氏勝利
16年9月
-3.6
素材
たこと、②通信、REIT、公益など相対的に配当利回り水準
米大統領選挙の豪州株への影響は限定的に
16年7月
図2:豪州株のセクター別株価騰落率
と予想配当利回り
てきたことから、その反動で利益確定の売りが出やすかっ
やすい状況にあります。
16年5月
米10年国債利回り(右軸)
(出所)ブルームバーグ (期間)2016年1月1日∼2016年11月18日
(注)豪州株はS&P/ASX200指数(株価指数)。
利益確定の売りや金利上昇も内需株低迷の背景
このほか、足元の内需株低調の背景としては、①内需株は
16年3月
1.5
2.31
5.61
5.22
6.16
0
2
4
6
8
(%)
2016年11月18日時点
(注)予想配当利回りは12ヵ月先予想。
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合計額については、具体的な商品を勧誘するものではないので、表示することができません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証
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1/2
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図3:各国の米国向け輸出への依存度(2015年)
トランプ政権誕生の豪州経済への影響は軽微
メキシコ
カナダ
米大統領選挙の実体経済への影響については、豪州経済は
主要国の中でも米国向け輸出への依存度が低いことから
(豪州の輸出全体に占める米国向け輸出の構成比は5.3%、
米国向け輸出の対GDP比は0.8%)、トランプ政権誕生に
より米国の通商政策等が変化した場合でも直接的な影響は
軽微に留まると考えられます(図3)。
日本
3.1%
76.7%
20.2%
20.2%
18.0%
中国
3.7%
英国
2.4%
ブラジル
1.4%
14.9%
12.7%
米国向け輸出構成比
11.8%
2.3%
5.3%
0.8%
ニュージーランド
一方、トランプ政権が進める大規模なインフラ投資計画が
実現すれば、世界的な資源価格の上昇(=豪州の交易条件
の改善)を通じて、豪州経済や豪ドル相場にも恩恵が及ぶ
可能性があります。
81.2%
27.0%
豪州
0%
10%
20%
米国向け輸出(GDP比)
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
(出所)UNCTAD、ファクトセット
図4:豪州企業の純利益総額の見通し
2017年には豪州企業の業績動向が注目材料に
当面の市場の注目は、米大統領選後の世界的な長期金利の
急上昇を受けて、トランプ政権による財政政策の行方や米
連邦準備制度理事会(FRB)による追加利上げの有無など
に集まりやすいと考えられます。一方、2017年に入れば、
トランプ政権下での米国の財政・金融政策に関する不透明
感が解消に向かうとみられ、市場の注目は徐々に豪州企業
の業績動向などのファンダメンタルズへ移行するものと考
えられます。
(10億豪ドル)
(前年比、%)
60
40
20
3.5
49.8
前年比伸び率(左軸)
24.8
7.9
180
160
6.3 9.5
120
0
-20
-24.1
-15.8
-6.1
100
-40
80
-60
60
純利益総額(右軸)
-80
40
-100
2017年度は豪州企業の収益回復が予想される
豪州企業が2016年6月期の年次決算の公表を終える中、
2016年度の豪州企業の業績は、主に資源や金融セクターな
どの低調な収益を受けて、足踏み状態となる公算が高まっ
ています。一方、2017年度には、資源価格の回復を受けた
資源セクターの業績改善や、非資源セクターの全般的な業
績回復などを背景に、豪州企業全体の業績は二桁台の伸び
となるとが予想されています(図4)。
11
12
13
14
実績
15
16
推定
17
18
19
20
(年度)
予想
(出所)ファクトセット (注)S&P/ASX200指数採用銘柄ベース。
各年度の利益総額は各年6月∼翌年5月に年次決算期末を迎える企業
の利益を集計。大半の豪州企業の決算期は6月期決算。
予想はファクトセット集計のコンセンサス(2016年10月末時点)。
図5:豪州株の予想配当利回りと豪10年国債利回り
6
(%)
豪州株の予想配当利回り(12ヵ月先)
5
配当の面からの豪州株の投資妙味はなお健在
140
4.49%
4
利回り差
また、足元の豪10年国債利回りの上昇でも、豪州株の予
1.77%
3
想配当利回りとの間には依然として1.77%の利回り差があ
2.72%
2
り、豪州株の投資妙味はなお健在であると考えられます
豪10年国債利回り
(図5)。米国の財政政策への不透明感に伴う豪10年国債
1
利回りの上昇が一巡すれば、配当利回りの相対的な高さか 2013年1月
2014年1月
2015年1月
2016年1月
ら豪州株が見直されると期待されます。
(出所)ブルームバーグ (期間)2013年1月1日∼2016年11月18日
(注)豪州株はS&P/ASX200指数。
●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメントの情報を基に、ニッセイアセットマネジメントが作
成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。実際の投資等に係る最終的な決定はご自身で判断してください。●当資
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な投資成果を示すものではありません。●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行
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