2016年11月21日 投資情報室 (審査確認番号H28-TB221) J-REITレポート 日銀が国債金利の上昇をけん制 日銀が「指し値オペ」で国債金利の上昇をけん制 日銀は11月17日、あらかじめ決めた価格(固定利回り)で金融機関から国債を無制限に買 入れる「指し値オペ」を実施。米国金利に連動する格好で上昇傾向となっている日本の長期 金利上昇をけん制する狙いがあるものと思われる。 トランプ次期大統領の財政拡張的な政策や12月13∼14日のFOMC(米連邦公開市場委員 会)での米利上げ実施の有無等を巡る世界的な金利上昇圧力の強さから判断して、「指し値 オペ」の効果は当初は限定的になる可能性も。 日銀は11月17日、あらかじめ決めた価格(固定利回り)で金融機関から国債を無制限に買入 れる「指し値オペ」(長期と短期の金利を共に操作するイールド・カーブ・コントロールの 手段として、9月21日の金融政策決定会合で導入を決定)と呼ばれる公開市場操作(オープ ン・マーケット・オペレーション)(注)を実施しました。(注)中央銀行が行なう代表的 な金融調節手段のひとつで、債券や手形等を売買することで市場に流通する通貨量を調整す る(買入れの場合は資金供給、売却の場合は資金吸収)。 トランプ次期大統領が掲げる大幅減税(法人税を35%から15%に引き下げ)やインフラ投資 の拡大(10年間で過去最大となる1兆米ドルを投資)等の政策を巡って米国国債金利が急上 昇し、その流れが日本の債券市場にも波及しています(11月17日の10年国債金利は上記9月 21日の金融政策決定会合日を上回る水準まで上昇)【図表1】。日銀は当オペによって長期 金利の上昇をけん制し、市場に落ち着きを取り戻させようとしているようです。 日米のCPI(消費者物価)動向【図表2】等から判断して、日本の金利が米国の金利に連動 して急上昇するような状況にはないと思われます。しかし、当面はトランプ次期大統領の財 政拡張的な政策や12月13∼14日のFOMC(米連邦公開市場委員会)での米利上げの有無 等を巡って、世界的に金利上昇圧力の強い状態が続きそうです。 図表1:日米10年国債金利の推移 図表2:日米消費者物価の推移(前年同月比) データ期間:2016年9月1日∼2016年11月17日(日次)(%) (%) (%) 2.4 0.4 2.5 0.3 2.0 0.2 1.5 データ期間:2015年4月∼2016年9月(月次) 米国10年国債金利(左軸) 2.2 日本10年国債金利(右軸) 2.0 日本のCPI(除く食品・エネルギー、前年同月比) 米国のCPI(除く食料・エネルギー、前年同月比) 1.8 0.1 1.0 1.6 0.0 0.5 -0.1 0.0 1.4 09/01 09/16 10/01 10/16 10/31 11/15 (月/日) 15/4 15/6 15/8 15/10 15/12 16/2 16/4 16/6 16/8 (年/月) 出所)図表1∼2はブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成 ●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的と するものではありません。実際の投資等に係る最終的な決定はご自身で判断してください。●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作 成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資 収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。 ●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。●投 資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。●手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商 品を勧誘するものではないので、表示することができません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 商 号 等:ニッセイアセットマネジメント株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第369号 加入協会:一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会 1/2 J-REIT市場への影響と見通し J-REIT市場が調整している主要因は金利上昇観測にあると思われる。日銀の「指し値 オペ」が効果を発揮する等で債券市場が落ち着きを取り戻すまで、J-REIT市場は軟調 な展開を続ける可能性も。 良好な不動産市況等を背景に、J-REITの業績拡大は今後も続くものと思われる。イー ルドスプレッド(J-REITの予想配当利回り−10年国債金利)が拡大する等、割安感・ 売られ過ぎ感が強まっていると判断される。 12月13∼14日のFOMCで米利上げが決定されれば不透明要因が後退し、J-REIT市 場は回復基調に入るものとみている。 金利上昇観測等を嫌気し、J-REIT市場は調整色を強めています。金利の上昇でJ-REI Tの配当利回りの相対的な魅力度が薄れる、借入費用の増加でJ-REITの収益が圧迫され る等の懸念が背景にあるものと思われます。外国人投資家等、一部では投資資金をJ-REI Tから株式市場へシフトさせる動きもみられるようです【図表3】。 日銀の「指し値オペ」等の効果で金利の上限がある程度明らかになるには今しばらく時間を 要するものと思われ、J-REIT市場は当面軟調な展開を続ける可能性もありそうです。 投資口価格(株価)の下落や配当額の増加(J-REIT業績の改善)でJ-REITの予想配 当利回りが金利(10年国債金利)を上回るスピードで上昇し、イールドスプレッド(J-RE ITの予想配当利回り−10年国債金利)は拡大傾向となっています【図表4】。J-REIT の予想配当額(指数ベース)(前年同月比)は8%程度の増加を続けています(2016年10月 末時点)。全国商業地の基準地価(2016年7月1日時点)が9年ぶりに前年比プラスとなる等 回復傾向にある不動産市況が急に悪化するとは思われず、J-REITの業績は当面増加傾向 を続けるものとみています。 上記FOMCで米利上げが決定されれば、先行きの不透明感が後退するものと思われます。 日銀の「指し値オペ」の効果も現われ始め、当面の金利の上限がある程度明らかになるもの と考えます。仮にそうなれば、業績拡大観測や割安感等を支援材料に、J-REIT市場は東 証REIT指数ベースで1,800ポイント台回復を目指す動きになるものとみています。 図表3:J-REITと国内株式市場動向 図表4:J-REITの予想配当利回り等推移 データ期間:2016年8月31日∼2016年11月17日(日次) (%) データ期間:2016年9月1日∼2016年11月17日(日次) 3.85 108 イールドスプレッド J-REIT 予想配当利回り 3.80 国内株式 104 3.75 3.70 100 3.65 3.60 96 3.55 3.50 92 08/31 09/15 09/30 10/15 10/30 11/14 (月/日) (※1)J-REIT:東証REIT指数、国内株式:TOPIX指数 (※2)2016年8月31=100として指数化 09/01 09/16 10/01 10/16 10/31 (※)イールドスプレッド =J-REIT予想配当利回り−10年国債金利 11/15 (月/日) 出所)図表3∼4はブルームバーグ、不動産証券化協会のデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成 ●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的と するものではありません。実際の投資等に係る最終的な決定はご自身で判断してください。●当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作 成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資 収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。 ●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。●投 資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。●手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商 品を勧誘するものではないので、表示することができません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 商 号 等:ニッセイアセットマネジメント株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第369号 2/2 加入協会:一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会
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