学習メモ

現代社会
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第 29 回
国際社会と人類の課題 [国際経済のしくみと動向]
貿易と外国為替
学習のねらい
日本の経済は世界の貿易に依存している。その貿易は、自由な
貿易と、政府が制限する保護貿易がせめぎあっている。今回は、
その貿易と、貿易のための支払いを決済するための外国為替市場
の仕組みなどについて考えていく。
講師
佐藤安信
世界と日本の貿易
国境を越えた取引を貿易という。2000 年代は欧米諸国、NIES(新興工業経済地域)、中国な
どの新興国が国内の好景気に支えられ、貿易が増大した。NIES とは、アジアでは、韓国、台湾、
香港、シンガポールなどである。
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2008 年までには、世界の貿易額は 2000 年の約 2.5 倍になったといわれる。この間、日本
も新興国向けの輸出が大きく増加した。
日本は、原材料を輸入し、国内で加工して製品を輸出する、加工貿易で発展してきた。輸出額
や輸入額の国内総生産(GDP)に占める割合、これを貿易依存度というが、これは日本では近
年 15%前後となっている。つまり、日本の経済は、この貿易に依存しているといえる。
自由貿易と保護貿易
自国の産業を保護するために、貿易を当事国の政策で制限する 「保護貿易」 に対し、そのよう
な制限をしないで自由に行わせることを「自由貿易」という。
自由な競争によって経済的に豊かになれる反面、豊かな先進国と貧しい途上国の固定化が進ん
でしまったという批判もある。自国産業の保護も大事だが、政府による保護政策は、かえってそ
の産業の競争力を奪い、自立できない事態にも陥るという意見もある。
他方、企業自らが国際分業のメリットを生かして多くの国で現地法人を設立して活動する、多
国籍企業として活躍している。このために、既にある海外の会社を買収したりすることが増えて
きている。日本企業が生産拠点を海外に移す動きは、日本の国内の産業の空洞化がおこるとして
懸念されている。
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29 貿易と外国為替
外国為替市場
貿易のために必要な外国通貨を交換する場を「外国為替市場」といい、この為替の交換レート
を為替相場という。
日本の輸出額が多くなると、日本ではより多くのドルを円に替えるためドルが相対的に安く、
円が相対的に高くなる。現在はこの外国為替相場は「変動為替相場制」を取っている。この為替
相場の変動を利用して差益で儲けようという投機がヘッジファンドと呼ばれている。世界中から
巨額の資金を集めて、短期間で高い運用益を目指すため、為替レートに大きな影響が出ている。
これを是正するために、公的介入という、政府と日本銀行による為替市場での通貨の売買への介
入がおこなわれることもある。
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