税理士が妻に青色専従者給与、 必要経費か否かをめぐり争い 税理士が

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関連法人で役員を兼務する期間の扱いが問題に
税理士が妻に青色専従者給与、
必要経費か否かをめぐり争い
税
理士事務所を経営する納税者がその生計を一にする妻に支払った給与をめぐり、同
給与を必要経費に算入することができるか否かが問題となった税務訴訟で、納税者
が敗訴する判決が下されていたことが明らかとなった(東京地裁平成 28 年 9 月 30 日判決)
。
裁判所は、税理士事務所に従事する一方で関連法人の代表取締役の地位にあった納税者の
妻は「他に職業を有する者」に当たることから青色事業専従者には該当しないと判断。妻
に対する給与を否認した課税処分は適法であるとした。税理士事務所の経営に税理士の妻
が従事するケースが多く見受けられるなか、本特集では、他の職業を有する妻が青色事業
専従者に該当するか否かが問題となった本件に関する裁判所の判断内容などを紹介する。
納税者の妻、税理士事務所に従事する一方で、関連法人の役員兼務
税理士などの個人事業者が生計一の配偶者
い者その他当該事業に専ら従事することが妨
に対して支払う給与は、原則として必要経費
げられないと認められる者」(所令 165 ②
に算入することはできないが(所法 56)
、生
二)に該当すれば、他の職業に従事する期間
計一の配偶者が「青色事業専従者」に該当す
も事業専従期間に含めることができる。
れば、個人事業主が生計一の配偶者に対して
今回紹介する裁判事例で問題となったの
支払うその事業に関する給与は必要経費に算
は、税理士である納税者(原告)が経営する
入することができる(所法 57 ①)。
税理士事務所の業務に所長代理として従事す
青色事業専従者とは、青色申告者(居住
る一方で、役員として関連会社 3 社の業務に
者)と生計を一にする配偶者その他の親族で
も従事していた納税者の妻が「青色事業専従
専らその居住者の営む事業に従事する者のこ
者」に該当するか否かという点である。
とで、その事業専従期間がその年を通じて 6
事実関係をみると、納税者の妻は平成 12
月を超えるなどの一定の要件を満たす必要が
年 5 月に納税者と婚姻をし、納税者と生計を
ある。
一にする配偶者となった。税理士業や不動産
ただし、
事業専従期間の算定にあたっては、
貸付業等を営む納税者は、その税理士事業に
生計一の配偶者その他の親族が他の職業を有
関する青色事業専従者給与の支給について、
する期間は原則として事業専従期間に含まれ
妻を青色事業専従者、支給期間等を平成 12
ない一方で、
「その職業に従事する時間が短
年 6 月以後、仕事の内容・従事の程度をコン
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No.666 2016.11.14
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【図表 1】 妻が役員を務めていた関連 3 法人の業務内容および妻の仕事内容
業務等の内容
納税者の妻の仕事内容
・不動産の賃貸借管理・その代理仲介など
A 社 ・納税者の妻は代表取締役(従業員は 5 名程)
従業員が作成する報告書のチェックや取引銀行回
り、通帳記帳、経費関係の支払い・毎日の入出金
・事務所の場所は税理士事務所とは別の場所
の記帳指示・確認、契約書のチェックなど
・経営コンサルタント業務など
取引先銀行回り、通帳記帳、毎日の入出金記帳の
B 社 ・納税者の妻は取締役(従業員なし)
指示・確認、家賃入金管理や所有物件等のチェッ
・事務所の場所は税理士事務所と同一の場所
ク及び指示など
・建築コンサルタント業務など
取引先銀行回り、通帳記帳指示、毎日の入出金記
C 社 ・納税者の妻は取締役(アルバイト 3 名)
子供
の財
がら
理由
税処
帳指示、所有物件・車両の点検・確認・指示など
・税理士事務所のある建物内の一室を事務所として使用
【図表2】 税理士である納税者が妻に支払った給与が否認されるまでの経緯(概要)
税理士業に関する青色事業専従
者 給 与として 、平 成 2 1 年 分 は
675万円、平成22年分は572
万円、
平成23年分は530万円の
給与を支給して必要経費に算入。
納税者
(税理士事務所長)
役員報酬として、平成21年分
は960万円、平成22年分は
9 2 0 万 円 、平 成 2 3 年 分 は
960万円を支払う
(報酬額は
3社合計)
。
納税者の妻
(所長代理・補佐)
関連法人3社
(不動産管理会社等)
税務署
納税者の妻は、関連法人3社の役員としてその法人の業務に従事しており、納税者の
税理士業に専ら従事しているとは認められないため、青色事業専従者に該当せず。
→ 妻に対する給与全額の必要経費算入を否認するなどの課税処分
相続人
ピュータ関係・経理・所長代理、給料(月額
た。これに対し税務署は、納税者の妻は他に
70 万円)を支給する旨などを記載した法令
職業を有しており、納税者の営む税理士事業
所定の届出書を所轄税務署長に提出していた。
に専ら従事するとは認められないことから青
納税者の妻は、納税者の税理士事業に関す
色事業専従者に該当しないと判断し、妻に対
る青色事業専従者給与の支給を受ける一方
する給与の必要経費算入を否認する内容など
【図表3】
相続人の答述(被相続人と協議した旨)の信用性を審判所が認めた理由
で、代表取締役などの役員を務める関連法人
の課税処分を行った(図表 2 参照)。
▶貸付金の額が4億円超であったことからすると、相続人が相続税の負担を軽くすべく、その多額な貸
3 社(業務の内容などは図表 1 参照)から役
これを不服とした納税者は、納税者の妻は
付金を少しでも減らしたいと考えることは自然であること
※ 納
(
員報酬を受け取っていった。
「事業に専ら従事することが妨げられないと
▶仕訳2等の貸方に計上された資産の大半は、ほとんど価値がないか存否が明確でないかあるいは価値
が著しく低下しているかのいずれかであったこと
納税者は、事業所得の計算上、妻に関する
認められる者」に該当するから必要経費算入
▶親という立場である被相続人が、相続人の相続税負担を軽減するために、自らの多額の貸付金を減
青色事業専従者給与の額として、平成
21 年
が認められる「青色事業専従者」であるなど
少させることについて応じることも一般的には十分に考えられること
分は 675 万円、平成 22 年分は 572 万円、平
と主張し、裁判所に対して課税処分の取り消
▶被相続人と相続人との間で協議があったことを証する書類等は作成されていないが、親子間の協議
成 23 年分は 530 万円をそれぞれ必要経費に
しを求めた。
であることなどを考慮すると不自然とまでは言えないことなど
算入したうえで所得税の確定申告を行ってい
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申告手続き
5
※ 「お
1枚
から切
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【図表 3】 妻が青色事業専従者に該当するか否かに関する裁判所の判断内容
・所得税法 165 条 2 項 2 号の規定は、居住者の営む事業に従事する同条 1 項の親族につ
き、「他に職業を有する者」である期間は原則として事業専従期間に含まれないとしつ
つ、それらの者のうち「その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事す
裁判所の
法令解釈
ることが妨げられないと認められる者」を例外的に除くものとしている。
・このような規定によれば、その例外に該当するかどうかについては、他の職業に従事す
る時間がおよそ短く、当該事業に専ら従事することが妨げられないことが一見して明ら
かであるかどうか、さらには、上記に当たらない場合を含め、当該事業及び他の職業の
性質、内容、従事する態様その他の諸事情に照らし、実質的にみて当該事業に専ら従事
することが妨げられないと認められるかどうかによって判断するのが相当である。
⬇
・1 日の業務のうち、税理士事務所の勤務時間は 7 〜 8 時間程度であるのに対し関連法人
3 社での勤務時間は合計で 2 時間 30 分以内であり、特に代表取締役を務める A 社の業
務を中心として種々の事務について相応の業務量があった(税理士事業に専ら従事する
ことが妨げられないことが一見して明らかであるということは困難である)
。
・納税者の妻は、所長代理ないし所長補佐として税理士事務所の税務・会計業務に従事し
裁判所の判断
ていたところ、納税者の妻は関連法人の業務と税理士事務所に関する業務とを主として
自宅または税理士事務所で行っていたことになるのであるから、各業務の性質、内容、
従事する態様等に照らし、納税者の妻の関連法人の業務について納税者の税理士業に専
ら従事することが妨げられないものであったとまでは認め難いというべきである。
→妻は税理士事業に関する青色事業専従者には該当せず。
(妻に対する給与の必要経費算入を否認した課税処分は適法)
地裁、他の職業に従事する期間が短い者等に該当せず
裁判所は、まず、事業専従期間に含まれる
の地位にあった関連会社に関する納税者の妻
「その職業に従事する時間が短い者その他当
の業務は相当の事務量があること自体は否定
該事業に専ら従事することが妨げられないと
し難く、これらの業務は主として自宅又は税
認められる者」
(所令 165 ②二)に該当する
理士事務所において従事していたことなどか
かどうかについて、「他の職業に従事する時
ら当該事業に専ら従事することが妨げられな
間がおよそ短く、当該事業に専ら従事するこ
いことが一見して明らかということは困難と
とが妨げられないことが一見して明らかであ
指摘。また、各業務の性質、内容、従事する
るかどうか、さらには上記に当たらない場合
態様等に照らし納税者の妻の関連会社の業務
を含め、当該事業及び他の職業の性質、内
について納税者の税理士業務に専ら従事する
容、従事する態様その他の諸事情に照らし、
ことが妨げられないものであったとまでは認
実質的にみて当該事業に専ら従事することが
め難いなどと指摘し、納税者の妻は青色事業
妨げられないと認められるかどうかによって
専従者には該当しないと判断。妻に対する給
判断するのが相当である」という法令解釈を
与の必要経費算入を否定した課税処分は適法
示した。
であると結論付けた(なお敗訴した納税者は
そして本件について裁判所は、代表取締役
控訴を提起している)。
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