カタフラクトを乗り回す主人公が居ないから私が乗り回す為の

カタフラクトを乗り回
す主人公が居ないから
私が乗り回す為のIS
銭湯妖精 島風
︻注意事項︼
このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので
す。
小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を
超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。
︻あらすじ︼
日本の某県某所に、少し変わった姉を持つ極々普通の少年がいました
少年は、入試当日に受験会場で迷子になってしまいました
うっかり迷い込んだ部屋に有ったISを何気なく触ってしまった彼は、女性にしか動
かす事の出来ない筈のISを動かしてしまい、彼の波乱な人生が始まってしまいました
まぁ今回の主人公は、そんな彼では無く、彼の身辺警護をする為にIS学園に入学す
る事になってしまった少女です
神ってのは随分と気紛れらしい │
目 次 年相応って凄い難しいよね │││
1
│││││││││││││
│││││││││││││││
今日から高校生だ │││││││
予習って大事 │││││││││
こんにちはコロネさん │││││
55
49
43
36
再会、彼には十数年振り、私には数年振り
始まりの国で彼女と会う ││││
プロローグもこれでお終い │││
か
そろそろプロローグにも飽いた頃だろう
8
14
21
30
?
神ってのは随分と気紛れらしい
西暦2016年の暮れの事、自称人類最底辺の俺は広告業の下請けの下請けとして生
きる為に仕事をした後、いつもの様に自宅で寝いた筈なのだが、気が付いたら何か小説
とか漫画に良くありそうな如何にもな空間に立っていた
そんな訳で俺が勝手に結論を出していると
るぐらいだし
某ゾンビが出てくるゲームをした数日後に夢でゾンビ相手に無双したりした事があ
自分で言うのもアレだが、俺は影響されやすい方なんだと思う
何かに影響されたんだろう、多分
だから最近は就寝前に携帯小説とかを読む事が多いので最近読んだ神様転生モノの
ぶっちゃけ俺は自称オタクで小説やアニメ、漫画を読む事が好きなのだ
﹁・・・・疲れてんのかな﹂
1
﹁いやぁ待たせちゃってゴメンね∼﹂
の方を向き、出方を伺う
そんな声が背後から聞こえ、振り向くと そこには如何にも神様な人が立っていた
とりあえず無言で彼
﹁・・・・・・﹂
﹂
?
フェイスで表情を繕いトオルの出方を伺う
言い方がアレで少しイラっとしたが、四捨五入したら三十路の俺は得意のポーカー
﹁は、はぁ・・・﹂
﹁君の名前を聞いても、もうすぐ意味を成さないから名乗らなくて良いよ
自称神様が名乗ったので、俺も名乗ろうとしたらトオルが手を出して制して
﹁は、はぁ・・・俺は﹂
﹁初めまして、ボクは自称神様のトオル。宜しく﹂
まぁ普通に人見知りして喋り掛けれないだけなんだけど
?
君には お詫びとして別の世界へ転生させてあげる事になったんだ﹂
?
特典は此の箱ね﹂
?
目の前に浮かぶ紅白の箱を見て、どうせ夢ならばと俺は迷い無く紅の箱に手を突っ込
﹁行先は此の箱から引いてね
そう言いトオルは箱を取り出し
でね
﹁君の前にボクが現れたのは君が死んでしまったからだ、少し此方の不手際が有った様
神ってのは随分と気紛れらしい
2
み中に入っている紙を1枚引く
﹁インフィニット・ストラトス・・・か﹂
これは当たりなのか
﹂
の箱に手を突っ込もうと思ったが一旦止め
﹁これって、何枚まで引いていいんだ
?
﹁白紙のハズレクジばかり入ってるから鷲掴みしていいよ
﹁そうか、分かった﹂
﹂
まぁバイオとかフリーダムウォーズとかゴッドイーターよりはマシだろうと考え、白
?
﹁うわ∼結構エゲツないね君は﹂
トオルな面白そうに そう言い
あ、はい﹂
﹁じゃぁ確認しようか、そのままクジを離して
﹁え
?
?
綺麗に並ぶ
﹁えーっと、総数は30位かな
んじゃ、ご開帳∼﹂
トオルに言われた通り手を開くとクジは重力に逆らいヒラヒラと舞う様に宙を飛び
?
﹂
改めて精神集中して箱に手を突っ込み文字通りクジを鷲掴みにして手を引き抜く
?
3
トオルが指をツイっと振ると二つ折りになっていたクジが開く
その殆どが白紙のハズレクジだったが、当たりクジも存在した
﹁えーっと ﹃思考加速A+﹄
﹃マルチタスクS﹄
﹃反応速度向上SS+﹄
﹃アナティカル
る機体は量産機、しかも練習機なのだ
カタフラクト スレイプニールが登場するアニメ、アルドノア・ゼロは主人公達の乗
だが、彼等の駆ける戦場の多くを占めるのは量産機だ
ロボットアニメの多くは、敵より勝る機体を駆る事が多い
イイからな﹂
﹁ならカタフラクトのスレイプニールにして欲しい、量産機が専用機を倒すのはカッコ
?
﹂
それにどうせ夢だ、俺に都合が良いのも何ら不思議では無い
宝クジは当たらないのだが、金銭以外は何故か良いやつが当たる事が多い
実は昔から引き運だけはやたら高かったりする
は﹂
エンジン﹄
﹃専用機﹄
﹃身体能力向上A+﹄
﹃IS適性S│﹄かぁ、本当にエゲツないね君
?
﹁専用機の要望はあるかな
神ってのは随分と気紛れらしい
4
対する敵は専用機であり、攻略するには一癖も二癖もある奴等ばかりだ
それに魅せられてしまった俺は、量産機が専用機に勝利する事が好きになった
だからこそ、俺はスレイプニールを選ぶ
何故なら、量産機で専用機に勝利した時にカッコイイから
の設定を練っていたよね
それを参考に調整しておくから安心して
﹂
?
感じる
幸い週末で休みなので少しイラ付きながら身体を動かし起き上がるが、何か違和感を
﹁・・・・・・﹂
るから朝日が入ってくる事も無い筈・・・なのだが
俺は夜間仕事をしている為、日中でも寝れる様に雨戸を閉めた上でカーテンもしてい
俺の目にはカーテンから溢れた朝日を捉える
目を開ける
笑顔で手をヒラヒラと振るトオルを見た瞬間、目の前が真っ暗になって、ボンヤリと
﹁そろそろ時間だね、んじゃ良い人生を﹂
俺が頷くとトオルが斜め45度を見て
﹁分かった﹂
?
﹁分かったよ、君って真面目にIS世界でカタフラクトやモビルスーツをIS化した時
5
﹁・・・・・アレ
﹂
・・・私か
﹂
?
があるのだ
俺は・・・私は
?
に可愛らしい装いになっていて尚且つ身体が全体的に縮んでいて、自分の知らない記憶
近視の俺にしてはハッキリと見える部屋の中、本棚やゲームに囲まれた筈の内装が妙
?
分からない
今が夢で、未だに変な夢の延長なのか
さっきまで見ていたのか全て夢で、今が現実なのか
嗚呼、気持ち悪い・・・何処から何処迄が夢なんだろう
﹁・・・アレ
?
になっていた
ぜんせ
ま
﹁夢から醒めて新しい今日を始めよう﹂
い
一先ず身体を再び起こし、壁に掛かった時計を見ると、子供でも起きて行動する時間
﹁・・・・・さっきまでのは夢、今が現実・・・ぽい﹂
暫くそのまましていると、頭が醒めて来たのか気持ち悪さが和らいで行き
起こした身体を再び倒し天井を見つめる
﹁・・・・・・気持ち悪い﹂
神ってのは随分と気紛れらしい
6
7
自分に言い聞かせる様に私はベッドから起きて身支度を始めるのだった
前世の記憶
年相応って凄い難しいよね
変な 夢 を見てしまった為に何か変にモヤモヤした感じのまま私、ツェツィーリエ・
M・ヒュームレイは元々口数が少ない方なのに、尚更口数が減り
両親共働きの為、預けられた保育園では必要以上に動かず絵本をずっと読み漁り、飽
きたら空をボンヤリ眺める日々を過ごしている
故に先生からの評価は、大人しく無口のボンヤリした娘となっている様だった
そんな感じでスクスクと成長した私は保育園から幼稚園へと移り、幼稚園でもボンヤ
リと過ごすのだろうと思っていたら、そんな事は無かった
﹂
いつもの様に絵本を読もうと考え、適当なモノを本棚から取って、天気も良いので木
一緒に遊ぼうぜ
?
!
陰ででも読もうと移動を始めた瞬間、彼は現れた
﹁・・・いい﹂
﹁おまえ、なんでいつも絵本ばかり読んでるんだ
年相応って凄い難しいよね
8
何故かは知らないが、私には目の前の彼が輝いて見えた
いつも1人で絵本を読み、誰とも話しをしようとせず、必要以上の運動もせず、積極
的に行動する事も無い私に声を掛ける園児なんて彼以外には居なかった
﹂
だからなのか、私には彼が眩しく見えた
よし行こう
だから断ったつもりだった
ちょっっまっ﹂
﹁今、良いって言ったな
﹁えっ
!
彼等は直ぐに私に慣れ、私にも友達が出来た
無口な私に最初は彼等も戸惑った、だが子供とは単純らしい
ず、私は彼に従い彼等の輪に入る事にした
本気で抵抗したら、すぐに解ける程度の強さで掴まれた手を解く気持ちは何故か起き
ウンドの方へ進んで行く
ワザとなのか、本当に間違えているのかは分からないが、彼は私の手を引っ張りグラ
?
?
9
晴れたら彼、織斑一夏の誘導の元 グラウンドや遊具で遊び、雨の日は屋内で絵本を
読んだりした
願っ
て
そんな日々を過ごす内に、私の内のモヤモヤとした物が気にならなくなってきた事に
気がつく
トモダチ
彼が居て彼等が居る、そんな日々が永遠に続くと私は思っていた
イチカ
﹁・・・織斑・・・一夏﹂
だが、世界は そんなに都合が良い訳じゃない様で、小学校に上がる直前、私は両親
の転勤の都合で産まれた地を離れなければならなくなった
﹂
﹁・・・さようなら・・・織斑一夏、またいつか何処かで﹂
!
それから可もなく不可もない毎日を送っていた小学四年のある日、以前に月で発見さ
でイジメられない程度には交友関係を築く事に成功した
新天地で私は小学校に入学し、彼によって多少は改善されたコミュニケーション能力
一夏に見送られ父が運転する車で故郷を後にする
いつか何処で必ず会える、不思議とそんな予感がして私は少しの寂しさを感じながら
旅立つ日の朝、わざわざ私の家を訪れた一夏と再会を約束する
﹁あぁ、さようならエリ、またな
年相応って凄い難しいよね
10
11
れていた文明遺跡の調査中、遺跡の何かの装置が起動し、暴走を始めた
偶然か必然か、丁度何年か振りかの彗星大接近と重なり、暴走した装置が高火力の高
射砲に連動していたらしく彗星を打ち砕き、進路を変え地球へと降り注ぐコースを取っ
てしまう
各国は大いに慌てる、無数の大小の破片の落着点は予測が困難だからだ
小さい破片ならば多少はマシ、だが大きい破片が国内に落ちた瞬間、最悪国そのもの
が地図から消える
そして地球の生物は絶滅への一歩を踏み出す事になる
誰もそれは望む訳はなく、こんな時ばかり各国は手を取り合い核弾頭を搭載したロ
ケットを打ち上げ、彗星を破砕した
その筈だった、だが核弾頭の数が足りなかったのか、そもそもの計算が間違っていた
のた、破片の一部が残り地球へと降り注ぐ
各国は一か八かの賭けに出る
保有する弾道ミサイルをありったけ打ち上げ、破片を大気圏突入直前で破砕し、少し
でも被害を減らす努力をした
努力の結果は失敗とは言えないが成功にするには酷い有り様だった
少なくない犠牲を出し、尚も増える破砕による被害、そんな中、日本に向け弾道ミサ
年相応って凄い難しいよね
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イル約2000発が発射されてしまう
各国のミサイル発射施設も破片による被害を受け、誤作動により発射されてしまった
のが原因だった
そして日本に約2000発のミサイルを撃ち落とす余力は残されていなかった
そんな絶望を拭い去る様に、彼女は現れた
純白の騎士の如きその姿をした彼女は、日本へやってくる約2000発のミサイルの
悉くを斬り払い、ミサイルの他に降り注ぐ破片を荷電粒子砲で撃ち落とし、日本を救っ
て見せた
後に白騎士事件と呼ばれる事になる事件の後に白騎士の開発者、篠ノ之束はインフィ
ニット・ストラトスことISを発表、世界は少しずつ歪んでいた
ISには大きな欠点が存在する、それは完成を優先したが為に女性のみにしか扱えな
い事だ
それでも各国はISを欲しがる
何故なら、先の破片処理により核兵器の殆どを消費してしまっているからだ
またいつ破片が到来するかは分からない現実に破片処理の名目でISの開発がされ
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て行く
ブレーキとして、ISの心臓部、コアをブラックボックス化させ、篠ノ之束以外がコ
アの製造が出来なくした
有る意味それは正解で有り、間違いでも有った
ISは貴重品で戦争に用いられる事は無かった、だがコアの絶対数が限られている以
上、其処には選民思考が生まれ
ISに乗れる女性は偉い、ISに乗れない男性は偉くない
そんな女尊男卑な風潮が生まれ満悦して行く
とはいえ、本当に偉いのはIS搭乗者に選ばれたエリート中のエリートだけなのだが
世界は確実に、少しずつ歪み始めていた
?
月で発見された遺跡に残された出土品の中にはISと同等の性能を発揮出来る動力
に基づき、ISに対抗する為のIS以外の兵器開発を始める
そしてIS管理局と名付けられた組織は、ISを戦争に用いてはならないと言う理念
れ、私の両親は 其方に転職した
またアラスカ条約締結後、IS関連の不正 及び 犯罪を取り締まる機関が組織さ
が初代ブリュンヒルデとなった
後にはISを用いた世界大会、モンドグロッソが開催され、私の幼馴染の姉 織斑千冬
その代わりに対隕石群への対策や建前スポーツへの使用が始まり、IS発表から数年
本来の目的たる外宇宙を目指す事は、残念ながら無理そうだ
そんな感じの内容になる
内容をザックリと纏めれば、ISを戦争に用いてはならない
約が締結される
世界が確実に着実に正確に徐々に歪んで行く中、IS関連の世界条約たるアラスカ条
そろそろプロローグにも飽いた頃だろうか
そろそろプロローグにも飽いた頃だろうか?
14
15
S 第1世代カタフラクト ク
マルチフォームスーツ
炉が有り、既存の技術及び一部IS技術を用いて M
サントスが完成した
転職した関係で私はIS管理局附属の学校へ転校したのだが、場所は普通に日本では
無くアメリカだった
とはいえ、IS管理局は特殊機関であり多国籍軍みたいな感じで、女尊男卑 及び 男尊女卑等の思考に囚われていない 又は 極々低度の人達で構成されているので、国
籍がよく分からない状態になっていた
働く大人が多い分、家族も多くなり、学校に通う子供も多くなると言う訳だったりし
た
ISの登場で世界共通語が日本語優待になったのは私的には助かったが、とりあえず
英語は勉強しておいた
私が転校してから数年後の事、父がカタフラクトの教導官をしているので何気なくカ
タフラクトのパイロットになる夢を抱き、両親に相談してみたら
両親は2人共微妙な表情をしてしまった
まぁ2人共軍属だが、流石に1人娘が軍属に成りたいと言ったら微妙な表情になるか
と考えて、1人納得する
とりあえず、IS管理局のカタフラクトパイロット養成プログラムを受けさせて貰え
る様に頼み
中学進学する時にカタフラクトパイロット養成コースに進学した
なんで養成コースが有るかと言えば、後進育成は大切だかららしい
そんな訳でカタフラクトのパイロットになる為に勉強を続け、学年主席の座を手に入
れる事が出来た
そんな私に両親が第2回モンドグロッソ決勝戦のする日のチケットを取ってプレゼ
ントしてくれた
千冬さんが2連覇を掛けた試合の為、私が興味を持っていたのを知っていた様だった
そんな訳で、またまた休暇を取る事が出来た父と2人で開催国のドイツへと飛行機に
乗り込んだ
母は輸送空母の艦長な為、休暇を取り損ねたらしく、凄く悔しそうだった
普段は私と同じであまり表情を変えない人なのだが
そんな訳で私達親子はドイツの地に降り立ち、一先ず予約したホテルへとチェックイ
ンする
﹁乗り慣れない飛行機は、やっぱ疲れるな﹂
そろそろプロローグにも飽いた頃だろうか?
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そう言い父親は部屋の窓から外を眺めながら身体を伸ばす
﹂
飛行機の中では殆ど寝ていたので私の場合は寝疲れただけかもしれないが
﹁・・・確かにそうかも﹂
﹁まだ昼前だけど、どうする
私の父は あまり器用では無い、寧ろ不器用な人間だと思う
だから、これは暗に空腹か否かを訪ねているつもりなのだろう
﹁・・・会場までの道程を確認しながら、良さそうなお店を探すのは・・・
﹁そうだな、そうするか﹂
そう言い私の頭を不器用に撫でる
﹂
?
﹂
そんなこんな父と色々と普段しない様な話も交えながら話をして、会場への道程を歩
私の両親は2人共長身の分類に入る為、モロに私は遺伝しているらしい
﹁へぇ、遺伝かもな
﹁・・・この前、165越えてた﹂
﹁お前、あっという間に大きくなっちまったな﹂
の不器用な愛情表現なので素直に受け取る
中学生にもなって親に頭を撫でられるのは少し複雑な気持ちになるが、これも父なり
?
?
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いて確認し、道すがら見つけた店で食事を取った
本場のドイツ料理は私の想像以上の美味しさだった
そんな訳で翌日、身支度を整え会場へ向かう
チケットを使い中に入り指定された席に座って辺りを見渡す
これはマズいと思い、父に素早く連絡を入れて護身用に持たされていたスタンガンを
られて出てきた
3人現れ、トイレに入り数分もしない内に、完全に意識が無い様子の一夏が3人に抱え
なんか嫌な予感がし始め、少し辺りを注意深く見ていると、如何にもな黒服を着た男が
どうせならビックリさせてやりたいと言う悪戯心だったのだが、様子を伺っていると
彼を追いトイレから彼が出てくるのをトイレから死角の場所に身を潜め様子を伺う
すると、彼は知ってか知らずかトイレの方へ向かったので少し歩くスピードを上げ、
彼に再会の挨拶をしようと立ち上がり、距離を詰める
あの日、再会を約束した織斑一夏を
そして神様の悪戯か、遠くに懐かしい顔を見つける
視界いっぱいに広がる人波、その熱気を感じる
﹁・・・・凄い﹂
そろそろプロローグにも飽いた頃だろうか?
18
﹂
ポケットから出し、一先ず1番近い男の真後ろに回り体勢を低くして最速で近付き延髄
にスタンガンを食らわせ昏倒させる
﹁・・・その人は置いて行って貰う、代わりに この人を持って帰って
﹁止まれ、このガキを殺すぞ
スタンガンを捨てて両手あげろ﹂
一夏を盾にした方を向くと、拳銃を一夏の頭に突き付けていた
ンガンを当て行動を阻害し、廻し蹴りを もう1人の顎に叩き込み、昏倒させて再び ナイフを扱う様に姿勢を低くし一気に距離を詰め、一夏を盾にしようとした方にスタ
﹁・・・交渉決裂の様なので、コレでやってしまいましょう﹂
なら、腹を潜るしかない
いので多少の音は紛れてしまう
前方には黒服の男が2人と気絶してる幼馴染、後ろにはISの会場で、かなり騒がし
左右はコンクリートの壁、上は天井で見た感じ少し脆そう
どうするか考えながら辺りをザッと確認する
長い時間は掛けられない、1人目が復活する可能性が高いからだ
これで諦めてくれるなら良し、無理ならスタンガンで無力化するだけ、とはいえ余り
スタンガンを構え残り2人に威嚇する様にスタンガンをバチバチ鳴らして見せる
?
19
?
スタンガンを投げ捨て大人しく両手をあげ、出方を伺う
おい、起きろウィル、ジャック﹂
そろそろ父が来ても良い頃なんだけども、援軍はまだらしい
動いたら殺すからな
?
お嬢ちゃん﹂
﹁ジャック、そいつも連れて行く、見られちまったしな﹂
る
少しずつ後退り出口へ向かう男と、私が昏倒させた2人がフラフラと復活し起き上が
﹁動くなよ
?
?
これは後で父に説教されるな、とか揺れて纏まらない思考の中考えた
め、担ぎ上げられ私は一夏と共に誘拐されてしまった
体格差が激しい為、私は床に倒れ弾みで頭を打ち視界が揺れ、無抵抗の私に手錠を嵌
1番最初にやった男が睨みながら私を殴る
﹁おーよ、さっきは やってくれたな
そろそろプロローグにも飽いた頃だろうか?
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なので、とりあえず膝を使い猿轡と目隠しをズラして辺りを見渡す
あと後ろで手を拘束されているので、少し腕がつりそうだ
と細い金属が有れば外す事が可能だろう
さてどうしたものか、触った感じ手錠の構造に特異な事は無いから、針か針金とか割
る
そして、目隠し越しに日差しを感じないから恐らく室内で監禁されていると推察され
だ
金属が擦れる音と肌に触れた感触と温度から推察すると、どうやら鎖も追加された様
積まれ、そこそこ長い時間を掛けて移動した後、車から降ろされ何処かに運ばれた
手足を手錠で拘束され、猿轡と目隠しまでされた私と意識を失ったままの一夏は車に
プロローグもこれでお終い
21
まだ意識が無い様子の一夏を数m先に発見し、今自分がいる場所が何処かの倉庫の様
な場所にいる事を確認して使えそうな物が無いか探す
幸い廃材ばかりで使えそうな物が直ぐに見つかり、足で上手く回収し、手早く手錠を
外し鎖は南京錠で閉めてあったのでピッキングの要領で南京錠も外し入り口を見張る
黒服にバレない内に一夏へ近寄り揺する
﹁・・・起きろ、起きろ織斑一夏﹂
軽く頬を叩くと、ゆっくり目を開けて驚いたのか目を見開き声を出そうとしたので、
左手で一夏の口を塞ぎ声を出すなとジェスチャーをすると彼は素直に頷く
一夏の鎖の南京錠も外して彼を自由にすると
﹁・・・今、鎖を解く﹂
﹂
?
﹁織斑一夏、貴方と私は彼処に居る黒服によって誘拐されている、恐らくは身代金・・・
隠れる
近くに落ちていた手頃な縄と鉄パイプを拾い上げて投棄されているコンテナの影へ
﹁・・・それは脱出してからゆっくり話そう、こっち﹂
静かに鎖を解きながら彼が私に尋ねる
﹁なぁ、どっかで会った事は無いか
プロローグもこれでお終い
22
では無く貴方の姉、織斑千冬の2連覇を阻止したい誰の思惑と私は考えている、だから
一刻も早く此処を脱出する必要がある﹂
私が小声で説明すると、一夏は悔しそうな表情をして少し項垂れるが直ぐに顔を上げ
頷く
をどうにかして脱出した方がいい
﹁どうにかしてって、どうすんだ
?
﹂
?
少し戸惑いながら彼が頷きそう言うので
﹁お、おう、俺は何をしたらいい
﹁これを使って2人まで拘束出来るから、私がどうにかしてして見せる、ついてきて﹂
戻る
で、此方を伺う様子も無いので、ささっと移動し、手錠を二つ回収してコンテナの影へ
コソッとコンテナの影から黒服を伺うと、入り口でずっと暇そうに立っているだけ
﹁・・・今考えてる、待って﹂
﹂
板を外すとなると恐らく音が黒服に聞こえてしまう、なら思い切って出入り口の彼等
て脱出は難しい、だから彼処の黒服をどうにかしてしまわないと脱出は不可能﹂
﹁残念ながら出入り口は黒服が居る彼処だけ、出入り出来そうな窓には板が打ってあっ
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﹁大丈夫、私に任せて
し辺りを確認する
もしもの時は、これで彼奴等を殴ってくれれば良い、貴方は自分
へ頭突きをして怯んだ所を一本背負いの要領で投げ、関節技を極める要領で手錠で拘束
を取り出そうとしているウィルの足を払い、体勢を崩した所に立ち上がる勢いを着け顎
て後ろに回り足を払い投げる要領で地面に倒し、手早く手錠を右手と右足に嵌め、拳銃
きっちり3秒カウントし、進行方向に居たジャックに飛び膝蹴りを見舞い、隙を突い
指を立てカウントする
私は不満そうな彼にを無視し、ゆっくり黒服の死角に着き
やるから﹂
﹁カウント3で奇襲を仕掛けて2人は拘束する、貴方は一目散に逃げて、私は私で上手く
鉄パイプを彼に渡して、壁伝いに移動し
が逃げ切る事だけを考えて﹂
?
後の1人とガラの悪そうな女が1人立っていて、ガッツリ目が合ってしまった
2人並んで走り、黒服が使っていた車を発見したので警戒しながら進むと、黒服の最
﹁お、おう﹂
唖然としていた一夏の背中を叩き、走り始める
﹁もう1人は居ないみたい、今の内に逃げる﹂
プロローグもこれでお終い
24
﹁・・・一夏、私が隙を作るから、逃げて﹂
たらダメだったよなぁ
つー事は女の方は殺しても大丈夫って事だよな
ビル、ウィル
?
?
は残念ながら私には無い﹂
﹁お前を囮にしろって言うのか
﹂
﹁・・・一夏、私が食い止めてる間に逃げて、今貴方を守りながらISを相手にする余裕
た
父づてでドイツ警察へ通報はされている筈だからもう時期だとは思うんだけど、困っ
それに千冬さんが決勝を辞退してしまう
これはマズい事になった、手持ちの道具だけじゃ一夏を守り切れ無い
ビルと呼ばれた黒服はバタバタと仲間の方へ走って行く
そう言い女の方はISを纏い、此方をニタリと笑みながら見てくる
﹁は、はい﹂
とジャックを連れて来い﹂
?
﹁ちっ、これだから男はつかえねぇーんだよ。まぁいい確か織斑一夏は人質として殺し
私の言葉に食い下がろうと一夏はするが、彼方は許してくれる訳もなく
﹁いや、でも﹂
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﹁違う、貴方が邪魔なだけ﹂
食い下がろうとする一夏に嘘をつき、まだ余裕の笑みを浮かべて此方を観察している
ISの女を睨む
﹁一丁前に睨むんじゃねーよ、ガキが﹂
そう言い女が一気に距離を詰めながらショートブレードを取り出し突き出して来た
ので、一夏を突き飛ばしわたしも飛び退くが、軽く左腕に触れた様で、血が出る
﹁一夏逃げて、早く﹂
縄を両手で張り促す、正直いつまで持つか私も自身は無いのだ
﹁安心しろ、お前を殺した後にゆっくり追いかけて捕まえてやるからよ﹂
﹂
﹁性格悪いオバさんだな・・・行け一夏、出来たら早めに味方を呼んで欲しい﹂
﹁くっ、クソ
間合いを図り相手の出方を伺う
﹁それはどうも﹂
余裕の笑みを浮かべるオバさんに、かなりムカつくが集中し
?
?
も増えるから、せいぜい長生きしてくれよ
﹂
お前が長生きすればするほど、あのガキの逃げられる時間
一夏が走って行くのを視界の端で捉えつつ目の前の敵に集中する
!
﹁んじゃ、今から殺すからな
プロローグもこれでお終い
26
どうせIS相手では逃げ切る事は困難、致命傷や有効打を与える事は生身では、ほぼ
不可能
ならどうにかして時間を稼ぐしかない訳だ
私の気を知ってか知らずかオバさんはショートブレードで斬りつけてきた
﹂
クソがぁ
﹂
軌道を読みギリギリで躱し、縄をオバさんの首に掛け、体重を全て掛けて引っ張り気
道を締める
﹁おちろ、おちろ
!!
オバさんが私へショートブレードでトドメを刺そうとしてきたので、最早此処までか
き取れない
オバさんはイライラしているのか何か叫んでいるのだが、意識が混濁しているのか聞
完全に脳を揺らされ猛烈な吐き気と激痛を知覚しながら身体が全く動かせない
に叩きつけられ何度か転がる
オバさんの右ストレートを喰らい骨が軋む嫌な音を聞きながら数m吹っ飛び硬い地面
だが努力虚しくISのシールドバリアによって縄は焼き切れ、私は空中に投げ出され
私を振り払おうと暴れ始めるオバさんに対して私は必死に縄を引く
﹁かはっっクソが
! !!
27
おい
﹂
と思った瞬間、白銀のISがオバさんを吹っ飛ばして、オバさんは逃げて行った
﹁おい、大丈夫か
!?
﹂
?
?
今から凄く憂鬱になってしまうが、自分で巻いた種、謹んで受ける事にしよう
母さんの事だ、きっと凄い雷が落ちる事になる
﹁・・・はい﹂
帰ったら説教を覚悟しとけ﹂
どうやら包帯で左側を覆っているので左眼が見えてない様だ
ていた
身体を起こし左側へ顔を向けると、そこには不器用な私の父が心配そうに椅子に座っ
﹁・・・父・・・さん
﹁やっと起きたかツェリ、全く心配させやがって﹂
何気なく呟くと
﹁・・・知らない天井﹂
次に目を覚ますと病院の、ベッドの上だった
意識はプツリと切れた
久しぶりに聞く幼馴染の姉の声は相変わらず、良く通る良い声だと思った瞬間、私の
?!
﹁無茶してんじゃねーよ、母さんも心配してたぞ
プロローグもこれでお終い
28
﹁父さん、一夏は
﹂
?
そう思い、私は病室の窓の外に広がる空へと目を向けた
﹁良かった、本当に﹂
その言葉を聞き安堵する
﹁アイツなら無事だ、お前の活躍で目立った怪我もない﹂
29
じて大泣きしてしまった
そんなこんな自宅に帰ると、母に心配された後に盛大な説教をされ、確かな愛情を感
いない
カタフラクトのパイロットになる道は少し遠くなったかも知れないが、私は悔いては
の治療法は無いらしい
どうやら私の左眼は完全に失明しているらしく、今の技術では再び視力を取り戻す為
る
私の左眼は医療用の眼帯で覆われていて相変わらず距離感が掴み辛い思いをしてい
一点を除いえ傷の殆どは目立つ傷跡になる事は無く、父は少し安堵した様子だった
て2週間程入院し父と共に病院を後にする
その後、数箇所骨にヒビが入っていた上に頭に強い衝撃を受けていた為、大事を取っ
始まりの国で彼女と会う
始まりの国で彼女と会う
30
と両親の友人の医師に言われ、二つ返事にお
それから再び夢に向かって努力をしていると、1年程経って左眼をアナティカルエン
ジンと言う臨床試験中の義眼にしないか
﹂
姿勢を正して真っ直ぐ校長を見据えると
﹁・・・校長先生、何の御用でしょうか
くなる
不思議に思いつつ校長室に入ると、父の直属の上官と校長が居たので余計に分からな
呼ばれてしまった
そんな日々を過ごしていたある日の事、特別何か悪さをした訳では無いのに校長室に
数ヶ月早く訓練機での実機訓練をさせて貰える事になった
それから私は努力を重ね、シミュレーター訓練で高成績を叩き出したので同級生より
使用者からしたら見えるなら多少の不便ぐらいの認識でしかない
まだまだ試作機なので演算負荷や神経への負担の軽減が課題らしい
様々な機能を使う事が出来る物だ
アナティカルエンジンは失った視力を補うだけでは無く脳の未使用領域を使用して
取り戻す事が出来た
願いして一緒に両親の説明と説得をして貰い、無事に手術は成功し、私は左眼の視力を
?
?
31
﹁ヒュームレイ君、君を呼び出したのはIS管理局より君へ任務が与えられるからだ﹂
相変わらず威厳たっぷりの声でそう言う校長
ですが私は未だ学生でIS管理局の部隊には所属していません﹂
校長は深く息を吐き肩を竦めるので、私が疑問に思っていると
る事も出来ない状況になってしまった﹂
し、君は誰が見ても文句のつけられない成績と功績を残している、有能な人材を遊ばせ
﹁確かにそうだが、何れはカタフラクトのパイロットとしてIS管理局に所属するのだ
私がそう言うと校長は頷き
﹁私に任務、ですか
?
君を特例でカタフラクト部隊の訓練兵枠
?
﹂
?
これは間違いなくチャンスだ
そう父の直属の上官が言う
うだろうか
は最大限のバックアップと、君用にスレイプニールを1機用意する事になっている。ど
に一次採用し、警護任務について貰う事にした。拒否権もあるが、了承してくれた場合
候補として名が複数人の口から上がってね
身辺警護を出来る者を派遣する事になり、成績優秀で人柄に目立った悪い所の無い君が
府と協力して彼の保護と安全の確保をする事を決定した。そして、IS管理局から彼の
﹁一昨日、日本で初の男性IS適合者が現れた、適合者の名前は織斑一夏、我々は日本政
始まりの国で彼女と会う
32
この話を受けたらカタフラクトのパイロットになる夢に大きく近く、任務を無事に遂
行すれは正規パイロットになる事も夢では無い
それに幼馴染の身を守るのは当然だ
﹂
?
良い返事を期待して待っている﹂
?
﹁・・・失礼します、織斑教諭はおられますか
﹂
歩いて数分で目的地たる職員室に到着し、扉を開け
校門から中に入り案内板を見て目的地を目指す
﹁・・・広いな﹂
り継ぎIS学園に到着する
そして三月末、私は両親と同級生に見送られ日本へと旅立ち、空港から公共機関を乗
慣らしをしたり、様々な訓練を受けた
レイオンに代替え中で練習機として払い下げられている第二世代機スレイプニールの
翌日、話を受ける旨を伝え、それから数ヶ月の間、用意された現在順次第3世代機ア
か了承して貰い
その返事を聞き私は頭を下げてから校長室を出て、その夜両親に話て説得をして何と
﹁あぁ、構わないよ
御返事をしても構わないですか
﹁・・・分かりました、私としては引き受けたいと考えていますが、両親に相談してから
33
?
﹁私だが・・・あぁそうか今日だったな、付いてきてくれ﹂
﹁はい﹂
知ってると思うが私は織斑千冬、IS学園の警備部門の責
ススッと千冬さんの後に続き、私達は生徒指導室に入り対面して座る
﹁遠路遥々御苦労だったな
﹁あ、あぁ
お前ツェリか、見違えたぞ
﹂
?
さん﹂
﹁またお世話になります、ご迷惑をお掛けすると思いますが、お許しください。千冬お姉
私が名乗ると、千冬さんが不思議そうな表情をし始めたので
します﹂
﹁管理局より派遣されました、ツェツィーリエ・M・ヒュームレイです。よろしくお願い
任者をしている。序でにお前が所属する1年1組の担任でもある﹂
?
教師では無く、昔馴染みのお姉さんの顔になり嬉しそうに頷いてくれた
!
と言う事は数年前に一夏を助けてくれたのは、お前だったのか。ありがとうツェ
?
千冬さんに頭を上げさせ、私が頭を下げる
﹁頭を上げてください、結局私は何も出来ませんでした、すみません﹂
そう言い千冬さんは頭を下げる
リ、感謝している﹂
﹁ん
始まりの国で彼女と会う
34
﹁頭を上げてくれツェリ、お前のお陰で一夏は怪我も無く無事だった、充分だ﹂
そう言い私の頭を上げさせる
私は今度こそ守りきると心に誓った
真っ直ぐ私を見てそう言う千冬さんを見て、私は少し報われた気がした
﹁お前には感謝しても仕切れない、本当にありがとうツェリ﹂
35
再会、彼には十数年振り、私には数年振り
千冬さんとの親睦を深めた後、私は寮の鍵を貰い部屋に大きい荷物を置き、ボストン
バッグに必要最低限の衣類や物を詰めて、寮を後にする
外出届と外泊届を提出し、IS学園を離れ公共機関を乗り継ぎ生まれ故郷に辿り着く
懐かしい気持ちになりながら歩いていると、やはり変わった場所も多くあり少しだけ
寂しさを感じてしまう
そんなこんな歩いていると、見慣れた彼の家に辿り着く
十数年振りの織斑家への訪問なので一度深呼吸をして、インターホンのボタンを押す
﹂
?
とりあえず仕事含みの訪問の為、一応は敬語で尋ねる
﹁織斑一夏さん宅は此処で間違いないでしょうか
数秒して一夏の声がインターホンから聞こえたので
﹁はい﹂
再会、彼には十数年振り、私には数年振り
36
﹁え
あー・・・そうですけど、なんですか
﹂
?
少し戸惑っている様で曖昧な言葉で尋ねてくる
?
﹂
?
と、彼は少し驚いた表情をする
?
﹁あ、あんた﹂
織斑一夏、前に見た時より間抜けな表情だぞ
?
風景は、あの日と同じに見える。なぁ一夏、君は あの日の約束を覚えているかな
﹂
﹁ソファは、あの頃のまま・・・流石にテレビは変わっているか・・・だが窓から見える
そんな彼を見据え
呆けていた一夏が正気になり私を追ってリビングに入ってくる
﹁あ、ちょっ勝手に何で入ってるんだよ、あんた﹂
上がり込みリビングに入る
彼の胸を軽く手の平で押して道を開け、中に入り靴を脱いで揃え脇に寄せてから家に
﹁なにかな
﹂
曖昧な言葉と共に玄関が開き数年振りの一夏を眼にし、門を抜け彼の前に移動する
﹁は、はぁ・・・今鍵を開けます、どうぞ﹂
中に入れて貰えますか
﹁IS管理局から派遣された貴方の身辺警護を担当する者です、色々と説明したいので
37
?
約束
あんた とか
﹂
ボストンバッグを床に置き、彼に尋ねる
﹁え
?
?
降参とばかりに両手を上げで一夏は私に尋ねてくる
﹁うーん・・・あんた、やっぱり何処で会った事が有るんだよな
何処だ
﹂
?
あのエリか
﹂
﹂
?! ?
﹂
?
﹁あー、本当に災難だよ、なんで俺なんだ﹂
﹁にしても、災難だったね
そんなこんな一夏が飲み物を用意してくれて、2人でソファに座り雑談をする
一夏は物凄く嬉しそうにそう言う
﹁あぁ久しぶりエリ、本当に久しぶりだな﹂
﹁あぁ、エリだよ。久しぶり一夏、また会えたね﹂
私の言葉に一夏は目を見開き、凄く驚いた表情で聞き返してくる
!?
エ・M・ヒュームレイ、君にはエリと名乗った方が分かりやすいか
﹁まぁ十数年振りだから仕方ないかもな、ならば名乗ろうか。私の名前はツェツィーリ
?
彼は物凄く戸惑っている様で、ワタワタした後に腕組みをして考え始める
﹁あぁ﹂
?
﹁ツェツィーリエ・・・エリ・・・お前、エリなのか
再会、彼には十数年振り、私には数年振り
38
ガックリと肩を落とす彼の肩をポンポンと叩き慰め
﹂
﹁でも、これから暫くは一緒にIS学園に通うんだろ
?
そう言う
﹁・・・ありがとう、一夏﹂
私は、やっぱりこの笑顔が好きで、守りたいと感じる
だから私は再び決意する一夏を必ず守ると
?
私が勝手にそんな事を考えていると
あぁうん、まぁね。千冬さんにも会ってきたよ﹂
﹁ボストンバッグを持ってるって事は、今日戻ってきたのか
﹁ん
?
﹂
苦笑する私に一夏は、1番最初に私を誘ってくれた あの日と同じ笑みを浮かべて ?
なら、また色々一夏にやろうぜ
﹁この辺りは随分と変わってしまったね、少し寂しさを感じるよ﹂
彼の気が少しは紛れた様なので良かったと考え
﹁エリ・・・ありがとう﹂
君は私が守るから安心して欲しい﹂
﹁さっきも言ったけど私はIS管理局から君の身辺警護の任を賜って来たんだ、だから
39
そう言い、私は荷物の中から寮の鍵と寮の規則が書かれている紙を取り出し
﹂
﹁とりあえず、これが寮の鍵と規則とか書かれてる紙。ちゃんと読む様に﹂
彼に渡すと微妙な表情になり
﹁確か部屋の都合が付かないから暫く家から通うって聞いたんだけど
話に夢中になっていると、窓の外は真っ暗になっていた
を話した
話、IS管理局に両親が転職した話、私がカタフラクトのパイロットを目指している事
それから私達なお互いの空白を埋める様に様々な話をした、小学校に上がってからの
一夏は私の説明に、そう言う物かと納得してくれた様で、ふーんと頷いた
﹁安全面を考慮して無理矢理調整して貰った、と聞いている﹂
?
少しドキッとした気がしたが私の気の所為だろう多分
﹁・・・そう、だね。お言葉に甘えるよ一夏、ありがとう﹂
﹁今日は泊まってけよエリ、まだ話足りないし﹂
追加装備を受領する予定だったのだが、少しばかり手遅れっぽい
私としては挨拶と少し話をしてIS管理局の日本支部に行きスレイプニールの試作
﹁・・・しまった、話に夢中になり過ぎた﹂
再会、彼には十数年振り、私には数年振り
40
41
そんな訳で一夏の好意に甘え、織斑邸に一晩泊まる事になった
テキパキと家事をこなす一夏は宛ら主夫で、謎の洗練さが見えて驚いた
一夏の作った夕飯に再び驚いたのは言うまでも無く、私より上手く出来ていて、密か
に敗北を味わったのは秘密だ
夕飯後、私達は再び夜が更けるまで話をした
私が引っ越した後、千冬さんの勧めで剣道を始めた事、その道場の娘と友達になり剣
道で切磋琢磨した事、その娘の姉は篠ノ之博士であり、千冬さんとは親友である事、I
Sが世に出て要人保護の為に一家は この街を離れる事を余儀無くされてしまい彼女
は転校して行った事、入れ代わりに入って来た転入生と友達になった事
本当に様々な事を話た
本当はIS学園には行きたくない
何で自分が
そんな愚痴も一夏は吐き出してくれた
再会、彼には十数年振り、私には数年振り
42
私には彼の愚痴を聴くぐらいしか出来なかった
だが、必ず守る。命に代えても必ず守る
そして支えようと心に誓った
のまま着ている
I
C の技術を発展開発したらしい
IS学園の制服は改造有りらしいのだが、わざわざ改造するのが面倒だったので初期
登校する
暫く日本支部で慣らしを行い、入学式の朝 再び織斑邸に行き一夏と共にIS学園に
何せIS相手のデータが取り放題なんだから
要は開発中の試作品をテストして改善点とかを報告してくれって事だ
上手く使えば無用な犠牲を減らす事も出来る装備だと私は考えている
聞いた話では A
アクティブ・イナーシャル・キャンセラー
で使用する為にアンカーを空間で固定出来る様に細工をした試作品だ
今回受領した試作追加装備は宇宙空間で使用していたアンカーユニットを大気圏内
を受領し直ぐにスレイプニールに装備して具合を確かめる
翌日の朝、一夏手製の朝食を食べた後、私は管理局日本支部に出向き、試作追加装備
今日から高校生だ
43
ただリボンよりネクタイの方が好みなのでネクタイをしている
﹂
まぁそんな訳で一夏と私はIS学園へ向かっているのだが、一夏の表情は余り宜しく
ない
言い表すなら土気色に近い
﹁・・・一夏、やはり気が重いか
?
間違い無く日本代表に選出されていただろうと噂されている人だ
この山田先生は見た目こそ頼り無さ気だが、元日本代表候補で千冬さんが居なければ
目の前には巨乳の山田先生が気合いを入れて自己紹介をしている
そんな訳で入学式を終え、HRが始まる
管理局と学園の手回しで私と一夏は同じクラス、隣の席になっている
学園に到着したらクラス分けを見てクラスへ行く
それから一夏の気を紛らわせる為にIS以外の話をしながらIS学園へ移動し、IS
見るからに無理をしていそうな表情だが、私は敢えて触れないで無言で頷く
けられないし、頑張ってみるよ﹂
﹁あー・・・まぁな、正直行きたくないのが本音では有る、けど俺のワガママで迷惑も掛
今日から高校生だ
44
そんな山田先生の自己紹介の後に続くクラスメイトの自己紹介を聞き流しつつ一夏
を伺うと、顔が青白くなってきていた
﹂
そんな一夏に順番が回って来て山田先生の呼び掛けに気付いていないので軽く肩を
揺らす
お、おう﹂
﹁・・・一夏、自己紹介の順番。一夏
﹁え
﹂
!!
そんな下らない事を考えていると、引っ叩かれた一夏が頭を押さえながら振り向き
千冬さんは忍者らしい
おかしいな、この人がいつ現れたか私には知覚出来なかった
そんな一夏の頭を黒い何かで引っ叩く千冬さん
なにを言うかと思ったら、それだけ言い何故かキメ顔をしている
﹁以上です
一夏は一度言葉を切り、次に何かを言おうか考えた後
﹁お、織斑一夏です・・・﹂
が深呼吸し
何とか再起動した一夏が立ち上がり後ろを向き、一度クラスメイトの視線にたじろぐ
?
?
45
﹁なんだ千冬姉か、関羽かと思ったぜ﹂
﹁織斑先生だ馬鹿者、座れ﹂
ズバンと再び黒い何かで一夏を引っ叩き注意する
痛みに唸る一夏を座らせ
私を見て千冬さんが言ったので立ち上がり後ろを向き
﹁次は、お前からだ﹂
﹁・・・ツェツィーリエ・M・ヒュームレイです、特技は特にありません。趣味は読書と
料理、他様々です。将来の夢はカタフラクトの正規パイロットになる事、よろしくお願
いします﹂
最後にお辞儀をして着席をすると、千冬さんは無言で頷いたので、とりあえずは合格
らしい。良かった
そんな訳でクラスメイト全員の自己紹介が終わり、千冬さんが口を開く
﹂
?
なんという軍隊思考なんだろう
かりついて来い、いいな
育てる事だ、私の言葉にはハイかイエスで答えろ。1年なんぞ、あっという間だ しっ
﹁諸君、私が1年1組の担任の織斑千冬だ。私の仕事は諸君を約1年間で使える人材へ
今日から高校生だ
46
まぁISは扱いを間違えてはいけないモノだからこそなんだろう
そんな事を私はクラスメイトの返事を聞きながら思う
それから千冬さんが今後のスケジュールを軽く説明し、チャイムが鳴る
﹂
?
﹂
?
彼女とは直接の面識は無いがデータベースに載っているので私は知っている
中には私を射殺さんとばかりに鋭い殺気を向けてくる人もいる
まぁ別に困らないが、やはり実質女子校の唯一の男子生徒には興味があるらしい
これは一夏と知り合い認定された様だ
そんなこんな一夏と喋っていると、私まで視線を感じる様になった
ち嘘じゃないかも知れない
まぁ少し顔色も良くなっているので千冬さんの一撃が目覚ましになったのは、あなが
﹁それはそれで大丈夫じゃないんじゃ
﹁まだ大丈夫だ、千冬姉の一撃が良い目覚ましになったし﹂
﹁・・・大丈夫かい
その背中を見送り、クラスメイトの視線を一身に受けている一夏へ向き
そう言い山田先生と千冬さんは教室を後にする
﹁ではHRを終了する﹂
47
今日から高校生だ
48
彼女の名前は篠ノ之箒、篠ノ之束博士の実妹で一夏の幼馴染
分類上は私も幼馴染に成るが、それは置いておくとして
彼女は政府の都合で各地を転々としたのでISが少し嫌いな様だが、彼女もまた保護
の名目でIS学園に入学してきた様だ
そして6年振りに再会した一夏に親しげに話掛ける邪魔者が居る、それが私
まぁそんな感じの事を考えて私へ殺気を送っているんだろう
これはこれで、後々面倒な事にならないか少し心配だ
予習って大事
あれから特に何も起こる訳でも無く1限目の授業が始まる
1限目は山田先生が担当するらしく、彼女が教壇に立っていて、千冬さんは教室の入
り口付近に立ち私達生徒を鋭い目で見ている
内容はISの基礎の基礎の部分らしい
カタフラクトパイロットを志すに辺り、当然ISを相手する事も視野に入れた授業を
受けて来たので、このISの基礎は既に覚えている
此処までで分からない所は有りますか
﹂
そんな訳で余裕の有る私はチラリ一夏を横目で見てみると、一夏の顔色がデスラー総
統みたいになっていて仕切りに周りを見ていた
これは必読の参考書を読んでいない可能性が高い
大丈夫ですか
?
流石に山田先生も一夏の異変に気付いた様で
﹁お、織斑君
?
山田先生の優しい言葉に一夏は申し訳なさそうに汗をかきながら答える
﹁・・・全部分かりません﹂
?
49
﹂
流石に山田先生も全部分からないなんて答えが返ってくるとは思っていなかった様
で物凄く驚いた表情をして
少し動揺しながら山田先生は教室を見渡し尋ねる
﹁え、えぇっと・・・織斑君以外にも、此処までで分からない所が有る人は居ますか
?
当たり前だが、事前に予習していれば分かる内容な為、クラスメイトの誰1人として
手を挙げる人は居なかった
﹂
﹂
そんな光景に見かねてか千冬さんが沈黙を破り口を開く
参考書って黄色くてやたら分厚いヤツ
﹁織斑、事前に配布した必読の参考書はどうした
﹁え
?
?
席
簿
黒くて薄い本の様なモノで一夏の頭を引っ叩く
出
一 夏 の 言 葉 を 聞 い た 瞬 間、 千 冬 さ ん は 一 瞬 で 間 合 い を 詰 め 一 夏 へ
﹁・・・古いタウンページと間違えて捨てました﹂
それを聞いた一夏は、汗を滴らせながら絞り出す様な声で
﹁そうだ﹂
?
﹁え
あー・・・あの量を1週間は無理・・・﹂
痛みで机に突っ伏す一夏を見下ろしながら千冬さんは言う
﹁間違えるな馬鹿者、再発行してやるから1週間以内に覚えろ﹂
予習って大事
50
?
﹂
一夏が異議申し立てをしようとした瞬間、千冬さんの眼光が鋭くなり
﹁私は、やれ と言った筈だが
﹁う、はい﹂
が現れ
﹂
﹁・・・ちょっといいか
﹁箒
?
屋上に辿り着き2人は向き合ったまま沈黙が訪れ、変な空気が広がる
一応私は一夏の警護をする為に居るので直ぐに2人を追い掛け屋上へ向かう
そう言い一夏は立ち上がり箒と共に教室を出て行く
﹁分かった﹂
﹁此処では落ち着いて話も出来ん、ついて来てくれ﹂
彼の問い掛けに無言で頷き
?
﹂
まだ軽くデスラー総統みたいな顔色で机に突っ伏す一夏へ声を掛けようとしたら箒
そんな訳で一夏以外特に躓く事もなく授業は順調に進み、1限目が終了する
自業自得とはいえ、少し可哀想なので勉強を教えてあげようと勝手に考える
千冬のプレッシャーに負け、一夏は力無く頷く
?
51
箒は何故呼び出したのに無言なんだろうか
そんな訳で一夏が空気に耐えられずに口を開く
その言葉を聞いた箒は嬉しそうな表情になり
﹁ひ、久しぶりだな箒、すぐに箒って分かったぞ
﹂
﹂
?
?
流石に﹂
?
な
織斑一夏くん
﹂
﹁悪かったな、でもお前 仕方なくないか
﹂
﹁ふぅん、私に会っても、私がヒントを出したりするまで分からなかったのは誰だったか
何言ってんだよ みたいな表情の一夏がそう言ったので
﹁幼馴染を忘れる訳ないだろ
モジモジとしながら自分の髪の毛の毛先を弄りながら言う箒に一夏は
﹁よ、よく覚えていたな
?
私の言葉に気不味そうな表情を代わり
?
て
﹂
コイツはエリ、俺の1番最初の幼馴染だ﹂
随分と親し気だな
﹁あぁ箒とは面識は無いんだったな
?
一夏からの紹介を聞いた箒は驚いた表情をした後すぐに不機嫌な表情になったのは
?
?
一夏が私に弁解している様子を見た箒は再び不機嫌そうな表情になり私を睨み付け
?
?
﹁・・・一夏、そいつは何者だ
予習って大事
52
無視して
﹂
?
﹁な、なんで知っているんだ
﹂
﹁なんでって新聞に載ってたし﹂
一夏が首を傾げて箒へ言うと
﹁なんで新聞なんか読んでるんだ
確かに新聞ぐらい誰でも読むだろう
!?
!?
﹁いや、新聞ぐらい読むだろ﹂
﹂
微妙な空気を察知したのか一夏が箒に話を振る
﹁あ、そうだ。全国大会優勝おめでとう箒﹂
根が真面目な様で少し睨みながらも自己紹介してくれた
﹁・・・篠ノ之箒だ﹂
てくれると嬉しい。よろしく﹂
﹁改めて、私はツェツィーリエ・M・ヒュームレイ、こんなだけど日本人だから仲良くし
一夏の返事を聞き頷き箒の方を向き
﹁ん、分かった﹂
他の人に紹介する時は気をつけて
﹁一夏、今更改めさせるつもりはないけれど、正しくはエリじゃなくて、ツェリだから。
53
まぁ顔が少し赤いから照れ隠しなんだろうけど
﹁まぁ兎に角、優勝おめでとう﹂
なんか急にしおらしくなった気がするのは気のせいだろうか
﹁う、うむ。ありがとう﹂
そんな事を考えつつ口を開く
そう考えると合点が行く
恋敵か如何かを警戒している訳だな
道理で私を睨んで来ると思った
多分気のせいじゃない、箒な一夏の事が好きなんだろう。勿論 異性として
?
﹁そうだな、行こうぜ箒﹂
﹁・・・そろそろ鐘が鳴る、千冬さんの一撃を味わいたくない。教室に戻ろう﹂
?
少し不安要素が増えた気がしたけど気のせいと思いたい
そんな訳で3人揃って屋上から教室へ帰る
﹁う、うむ﹂
予習って大事
54
こんにちはコロネさん
あれから授業に遅れる事も無く無事に2限目の授業を受けた後に案の定グッタリし
ている一夏の肩を軽く叩き慰め
﹂
?
せいだろうか
い
?
セ シ リ ア・オ ル コ ッ ト
一夏は軽い調子で金髪の美少女に返答する
﹁俺に何か用か
﹂
まぁ私も目付きが少しばかりキツイから勘違いされやすいから気のせいだと思いた
?
座っている私達を見下ろしている彼女の視線が、私達を見下してる気がするのは気の
﹁少し宜しくて
そんな感じで話をしていると、急に金髪の美少女が私達の目の前に現れる
﹁サンキュ、エリ﹂
﹁本当に悲惨だね一夏、私が教えてあげるから元気を出して﹂
55
﹁まぁ何て品のない お返事なのでしょう﹂
何が気に入らなかったのかは分からないが、オルコットは大袈裟な身振りで そう言
う
﹂
﹁大体、イギリス代表候補の わたくし セシリア・オルコットに話し掛けられるだけで
も光栄な事ですのに、貴方それを理解していますの
﹂
な返答をする一夏に感心していると、一夏が私の方へ向き
﹁へぇ、それはラッキーだ﹂
思ったより冷静
?
﹂
?
?
げて尋ねてくる
オルコットのセリフを食い、一夏は嫌味では無く本当に疑問を感じている様で首を傾
﹁ふぅん、そのエリートの代表候補って千冬姉より凄いのか
﹂
一夏へ分かりやすく説明をすると、オルコットが反応して勝ち誇った顔をし
と勝ち抜いて来たエリート中のエリートになる訳、分かった
門で、必ず専用機が与える国家代表、そして その国家代表のタマゴの代表候補は色々
﹁・・・ISのコアは現在、総数が約470個程しか無いからIS搭乗者になるのは狭き
あ、これは冷静な訳では無く、イマイチ理解して無いだけだった様だ
﹁なぁエリ、代表候補って凄いのか
?
?
﹁そうエリートなのですわ、だから﹂
こんにちはコロネさん
56
国家代表なら兎も角、代表候補は各国で何人か居るし﹂
﹁元日本代表だった上にブリュンヒルデとして名が通っている千冬さんは凄くない、か
な
﹁また来ますわ、覚えていなさい
の始業の鐘が鳴り
﹂
私達のやり取りを聞いてオルコットは頭に来た様で何かを言おうとした瞬間、3限目
﹁へぇ∼﹂
?
﹂
?
﹂
?
﹁何で俺
俺はしな﹂
突然の事に一夏は戸惑っている様で、数秒後 再起動した一夏が立ち上がり
千冬さんが そう言うとクラスメイトの大半が一夏を推す声を上げる
否権は無いからな﹂
1年間は変更出来ないので、そのつもりで居ろ、自薦他薦は問わん。他薦された者に拒
﹁それでは授業を始める前に、クラス代表を決める。一度決まれば余程の事が無い限り
違い千冬さんが教壇に立つ様だ
そう言い肩を竦めていると、山田先生と千冬さんが入って来て、1限目と2限目とは
﹁さぁ
﹁何だったんだ
何とも見事な捨て台詞を吐いて自分の席へ帰って行く
?!
57
!?
﹁勝手に立つな馬鹿者、それに拒否権は無いと言った﹂
﹂
音速を超えているのか と錯覚しそうな程のスピードで一夏を出席簿で引っ叩き、一
このまま他薦1人だと織斑の無投票当選になるが
夏は痛みと衝撃で椅子に強制着席させられる
﹁他に居ないか
?
﹂
?
クラス代表になるべきは、このイギリス代表候補 セシリア・オル
で机を叩く音が聞こえ
明らかに私にやらせようとする千冬さんの口撃を寸前で辛うじて躱していると、背後
﹁・・・それはクラスメイトの皆さんに判断して頂きましょう、織斑先生﹂
踏む事になる訳だ。ヒュームレイ、クラス代表になれば効率良く経験値が貯まるぞ
﹁クラス代表は文字通りクラスの代表として各試合に出て貰う、なので必然的に場数を
千冬さんは、面白そうに目を細め
﹁ほう﹂
﹁な、なら俺はエリ・・・いや、ツェツィーリエを推薦する﹂
千冬さんが教室を見渡していると、一夏が復活し
?
!!
﹁ほう﹂
そう言い立ち上がり千冬さんへ異議申し立てをする
コットの他に有りませんわ﹂
﹁納得いきませんわ
こんにちはコロネさん
58
私の時とは違い、千冬さんは不愉快そうに目を細める
国家代表の
恐れ入る、今貴様
それに気付いていないのかオルコットは、あろう事が一夏を貶し始め、いつの間にか
日本を貶し、如何に自分が素晴らしいか、優れているかを語り始める
﹁そこまでだ小娘、高々15年生きただけで既に選ばれた人間気分か
がしている事は祖国の誇りを汚し、陥れる事だ。貴様には厳罰をせねばな
意味も、代表候補の意味も、まるで分かっていない。もう喋るな座れ﹂
せる
﹁・・・織斑先生、クラス代表は投票で決めますか
?
﹂
?
あ、はい﹂
﹁織斑、構わないな
﹁え
?
﹂
?
いて言っている
私がスレイプニールに乗っていて、IS代表候補並みに搭乗時間が長い事を分かって
あー絶対ワザとだ、この人
決めるのはどうだ
﹁そうだな、此処はIS学園、決めようとしているのはクラス代表だ。なので、模擬戦で
私は多数決に誘導する為に千冬さんへ尋ねる
﹂
堪忍袋が切れた千冬さんが教卓を叩き、オルコットへ言い、有無を言わせずに着席さ
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一夏は急に振られ、状況が把握出来ていないまま頷く
それにより、私は一夏と模擬戦をする事が決定してしまった
けるのだった
そんな訳で授業が始まり、早速面倒事になったなと考えつつテキストを捲り授業を受
る、テキストを開け﹂
﹁では、アリーナの貸し出し申請をしておく、日時は追って伝える、以上。では授業に入
こんにちはコロネさん
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