オーストラリアREIT市場の動向と今後の見通し (2016年7月~2016年9月)

2016年10月26日
オーストラリアREIT市場の動向と今後の見通し
(2016年7月~2016年9月)
足もとのオーストラリアREIT市場
~過去1年間、リスクオフ時も底堅い推移~
リーマンショック以降、上昇基調が続くオーストラリアREIT市場ですが、ゼロ金利やマイナス金利、量的金融緩和などの大
胆な金融政策を実行した日米欧のREIT市場と比較すると出遅れ感があります(左下グラフ参照)。
一方、オーストラリアREIT市場の過去1年間のパフォーマンスは、日米欧のREIT市場を上回り(右下グラフ参照)、中国の景
気減速懸念や原油安などを背景に世界的に投資家のリスク回避姿勢が強まった2016年1-2月においても底堅く推移しました。
8月には米金融政策の不透明感から世界的に長期金利が上昇し、低金利環境のもと選好されてきたREIT市場が世界的に調
整する局面もありましたが、今後の米国の利上げペースが緩やかになるとの見方が広がったことなどから9月末にかけてや
や値を戻しました。
各国・地域のREIT指数の推移
(2004年12月末~2016年9月末、月次)
300
(2015年9月30日~2016年9月30日、日次)
140
オーストラリア
250
130
米国
欧州
200
120
150
米国
日本
110
日本
100
100
50
90
オーストラリア
※2004年12月末を100として指数化
0
04/12
06/12
08/12
10/12
12/12
14/12
欧州
※2015年9月30日を100として指数化
80
15/9
(年/月)
15/11
16/1
16/3
16/5
16/7
16/9 (年/月)
※各国・地域のREIT指数はS&PグローバルREIT指数(現地通貨ベース、配当込み)の各国・地域のインデックス
(出所)S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
良好なファンダメンタルズ ~賃料と空室率の動向~
今後も上昇が期待される商業施設のテナント賃料
オーストラリアのショッピングセンターは上位REITによる寡
占化が進んでおり、テナント空室率は低水準で推移してい
ます。また、REITの一般的なテナント契約は、インフレ率に
連動して毎年賃料の見直しが行なわれるため、テナント賃
料は安定的に上昇しやすい環境にあります。
足もとの基調インフレ率(2016年4-6月期)は、依然として
RBA(オーストラリア準備銀行)の目標レンジである2~3%
を下回っていますが、小売売上高は引き続き拡大傾向にあ
り、RBAの利下げによる消費拡大の下支えが見込まれるこ
とから、オーストラリアREITは引き続き賃貸料収入の増加や
配当成長が期待されます。
※小売売上高は2006年3月を100として指数化
※消費者物価指数は2006年1-3月期を100として指数化
※テナント月間賃料は、シドニーとメルボルンの賃料の平均値
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
オーストラリアの小売売上高、消費者物価指数
および商業施設のテナント賃料の推移
(小売売上高:2006年3月~2016年6月、四半期)
(消費者物価指数:2006年1-3月期~2016年4-6月期、四半期)
(テナント月間賃料:2006年6月~2016年6月、半期)
(豪ドル/平方フィート、月額)
160
小売売上高(左軸)
20
140
17
消費者
物価指数(左軸)
120
14
100
11
テナント月間賃料(右軸)
80
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
8
16 (年)
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、
証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。
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オフィスの空室率は低下傾向、賃料は上昇
オーストラリア最大の都市シドニー、第2の都市メルボルンともに、オフィス賃料は概ね上昇傾向、空室率は低下傾
向となっており、オフィス市場は堅調に推移しています。特に、シドニーでは需給のひっ迫から足もとでは賃料が急
上昇しています。
シドニーおよびメルボルンのオフィス空室率の推移
シドニーおよびメルボルンのオフィス賃料の推移
(豪ドル/平方フィート、月額)
(2006年1-3月期~2016年4-6月期、四半期)
(2006年1-6月期~2016年1-6月期、半期)
(%)
4.5
12
4.0
10
3.5
8
3.0
6
2.5
4
シドニー
メルボルン
2.0
1.5
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
シドニー
メルボルン
2
0
16 (年)
06
07
08
09
10
11
12
13
14
16 (年)
15
(出所)Bloombergデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
魅力的な配当利回りとNAV倍率
~バリュエーションは引き続き良好~
配当利回りは⾼⽔準、NAV倍率も良好な⽔準を維持
オーストラリアREITの配当利回りは4.4%と、日米欧のREITと比べて相対的に魅力的な水準を維持しています。また、
NAV倍率は2016年6月末時点で1.33倍と、リーマンショック前の水準と比較して低位にあり、過熱感は見受けられません。
NAV倍率 NAVとは、保有不動産の時価ベースの純資産で「Net Asset Value = 純資産価値」の略です。NAV倍率は一口当たりのNAVの
何倍までREITが買われているかをみる指標です。数値が1倍未満であると、投資口が保有不動産の時価より割安に評価されているということを
意味します。
主要国のREITと国債の利回り差
5
(2016年9月末現在)
(%)
4.4%
REIT配当利回り
10年国債利回り
3.8%
3.8%
4
4.2%
3.1%
3
2
オーストラリアREITのNAV倍率の推移
1.9%
1
1.8
1.6%
-0.1%
0.2%
オーストラリア
利回り差
2.2%
利回り差
利回り差
利回り差
米国
日本
英国
フランス
3.1%
3.0%
4.0%
※各国のREIT配当利回りは、S&PグローバルREIT指数の各国の実績配当利回り
※利回り差は小数点第2位を四捨五入
(出所)S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスおよびBloombergのデータを基に三井住
友トラスト・アセットマネジメント作成
1.21
1.04 1.03
0.84
1.33
1.33
1.35
1.0
0.8
-1
2.5%
1.51
1.2
0.7%
利回り差
割⾼
1.68
1.6
1.4
0
(2005年~2016年、年次)
(倍)
2.0
0.90
1.23
1.15
割安
0.6
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年)
※S&P/ASX300REIT指数ベース、2016年は6月末現在
(出所)レッグ・メイソン・アセット・マネジメントのデータを基に三井住友トラスト・
アセットマネジメント作成
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、
証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。
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豪ドル相場の動向と背景
~インフレ圧力の低下と底堅い経済~
インフレ動向の様⼦⾒姿勢から政策⾦利
は据え置き
RBAは10月4日、フィリップ・ロウ総裁就任後初となる金
融政策理事会において、政策金利を1.50%で据え置く決
定を下しました。
注目されたロウ総裁の声明文では、「5月と8月の金融
緩和を受けて、政策姿勢の維持が持続的な経済成長と
インフレ目標の達成と整合的である」と述べられ、前回の
理事会でのスティーブンス前総裁の声明が概ね踏襲さ
れました。これは新総裁就任後も、RBAの金融政策の継
続性が保たれていることを示唆していると考えられます。
経済成⻑は内需と輸出拡⼤がけん引
オーストラリアの2016年4-6月期の実質GDPは前期比
+0.5%、前年同期比の実質GDP成長率は+3.3%と安定し
た経済成長の持続を示しました。
実質GDP成長率への需要項目別の寄与度をみると、
民間消費や政府消費などの内需が安定的に経済成長
を下支えしている傾向がみられます(右中図)。
また、資源開発ブームの一巡によって総固定資本形成
(設備投資など)は減少傾向が続いているものの、近年
は鉄鉱石や液化天然ガス(LNG)などの輸出拡大が経済
成長のけん引役となっています。純輸出による実質GDP
成長率への寄与度は、4-6月期が+2.2%ポイントと1-3月
期の同+1.7%ポイントから拡大しました。
⾜もとの豪ドルは底堅く推移
7月以降、豪ドルの対米ドル相場は概ね1豪ドル=0.75
米ドル付近を比較的安定して推移しています。
過去、1豪ドル=0.75~0.80米ドルの為替水準ではRBA
は「豪ドル相場は一段と下落する公算」や「豪ドル相場は
ファンダメンタルズ価格の多くの推定値を上回っている」
などの言及を声明文に盛り込み、豪ドル高への警戒姿
勢を示す傾向がみられました。
しかし2016年4月以降のRBA理事会では、豪ドル相場
が1豪ドル=0.75米ドル前後で推移する中、「豪ドル高は
経済の調整を複雑にする可能性」とのソフトな言及に留
まっています。鉄鉱石価格の回復などによるオーストラリ
アの交易条件の改善が、RBAの豪ドル高への警戒姿勢
の緩和要因となっている可能性があり、現在の豪ドル水
準はRBAにとって心地よい水準にあると考えられます。
また米ドル円相場も安定的に推移していることから、足
もとの豪ドルの対円相場は1豪ドル=76~78円前後で安
定的に推移しています。
RBAの政策金利と基調インフレ率
(%)
(基調インフレ率:2006年1-3月期~2016年4-6月期、四半期)
(政策金利:2006年1月1日~2016年10月4日、日次)
8
政策金利
基調インフレ率
(前年比)
6
インフレ目標
レンジ(2~3%)
4
2
1.50%
0
0.00%
実質政策金利
(政策金利-基調インフレ率)
-2
06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年)
※基調インフレ率は消費者物価指数のトリム平均値と加重中央値の平均により算出
(出所)RBA、オーストラリア統計局(ABS)のデータを基に三井住友トラスト・アセットマ
ネジメント作成
オーストラリアの実質GDP成長率寄与度
(2014年1月1日~2016年3月31日、日次)
(2010年1-3月期~2016年4-6月期、四半期)
(前年同期比、%)
6
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
純輸出
在庫
政府消費
民間消費
総固定資
本形成
実質GDP
10
11
12
13
14
15
16
(年)
(出所)ABSのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
豪ドル相場の推移(対円、対米ドル)
(1996年9月30日~2016年10月4日、日次)
(米ドル)
1.2
対米ドルレート(右軸)
豪ドル高
1.0
(円)
140
120
100
0.8
80
0.6
対円レート(左軸)
60
豪ドル安
40
96/9
99/3
01/9
04/3
06/9
09/3
11/9
14/3
0.4
0.2
16/9
(年/月)
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、
証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。
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世界1位
最⾼格付
⾯積は⽇本の約20倍
世界2位
住みやすい都市
5年連続*
国債格付
Aaa
⾯積
約769万平⽅km
1⼈当たり名⽬GDP
メルボルン
※ムーディーズ⾃国通貨建⻑期債
(2016年9⽉末)
※2015年
※2016年10⽉
オーストラリアの人口の推移
(百万人)
51,181⽶ドル
※⼈⼝1,000万⼈以上の国が
対象(2015年)
都市別人口構成比率
(1990年~2020年、年次)
(2015年6月末現在)
30
2013年〜2016年
で100万⼈増
25
予測値
34.9%
20
15
10
政府債務残⾼
先進国中で38%と低⽔準
2019年には
約2,500万⼈突破
する⾒通し
90
95
00
05
10
ダーウィン
※⽶国105%、⽇本248%
※対GDP⽐、2015年
0.6%
ホバート
0.9%
20 (年)
15
⼈⼝は
5⼤都市に
20.7%
集中
シドニー
その他
メルボルン
19.0%
アデレード
ブリスベン
パース
5.5%
8.6% 9.7%
*エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が発表する住みやすい都市ランキング(2015年)。世界140都市の住みやすさを「安定性」、「医療」、「文化と環境」、「教育」、「都
市基盤」の5項目について評価。メルボルン以外も、アデレードが5位、シドニーが7位、パースが8位など、オーストラリアの4都市が上位10都市にランクイン。
※構成比率は端数処理の関係で合計が100%にならない場合があります。
(出所)IMF(国際通貨基金)「世界経済見通し2016年10月」、国連「World Population Prospects(The 2015 Revision)」、オーストラリア統計局、外務省のデータを基に三井住友ト
ラスト・アセットマネジメント作成
オーストラリアREITについて
オーストラリアREITは、世界3大REIT市場の1つとして知られており、米国、日本に次ぐ第3位の市場規模となっていま
す。またオーストラリアのREITは、主にショッピングセンターなど商業施設が約5割を占めていますが、近年では商業施
設以外でもデータセンターや文書の保管施設など多様な不動産を保有するREITやガソリンスタンドを中心に保有する
REITが上場されており、オーストラリアREIT市場の活性化が期待されます。
世界のREIT市場の国別構成比率
(時価総額ベース)
オーストラリアREIT市場の
用途別構成比率
その他
(2016年9月末現在)
フランス
その他
4.2%
11.4%
英国
3.1%
産業⽤施設
11.1%
4.5%
オースト
ラリア
7.3%
⽶国
⽇本
8.7%
64.0%
オフィス
11.3%
(2016年9月末現在)
約5割が
商業施設に
投資しています
商業施設
47.4%
分散型
27.1%
世界3⼤
REIT市場の
1つ
(ご参考)2016年の主なオーストラリア
REIT新規上場投資法人概要
アイアン・マウンテン
主に⽂書やデータの保管施設などを運営する情
報管理会社。⽶国内で保有する多様な不動産
がREITとして承認され、オーストラリアに上場。時
価総額は約129億豪ドル(約9,938億円)。
ビバ・エナジーREIT
ロイヤル・ダッチ・シェルを含む425ヵ所のガソリンス
タンドを保有するREIT。平均リース契約年数は
15.3年と⽐較的⻑く、稼働率も100%と⾼⽔
準。時価総額は約17億豪ドル(約1,276億円)。
※世界REIT市場の国別構成比はS&PグローバルREIT指数の各国インデックス、用途別構成比はS&PオーストラリアREIT指数のデータを使用。分類はS&Pダウ・ジョーンズ・
インデックスに基づきます。構成比率は端数処理の関係で合計が100%にならない場合があります。2016年の主なオーストラリアREIT新規上場投資法人概要は作成日時
点の情報に基づきます。時価総額は2016年9月末現在の当該日の為替レートを基に三井住友トラスト・アセットマネジメントが円換算しています。
(出所)S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスおよびレッグ・メイソン・アセット・マネジメントのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
※上記は特定の有価証券への投資を推奨しているものではありません。
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、
証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。
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ご参考資料
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