EU Indicators 欧州経済指標コメント:7-9月期英国GDP速報値 発表日:2016年10月27日(木) ~離脱の悪影響はこれから~ 第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 田中 理 03-5221-4527 ・ 国民投票後で初となる7-9月期の英国の実質GDP成長率(速報値)は、前期比+0.5%と4-6月期の同 +0.7%から減速したものの、事前のコンセンサス予想(同+0.3%)を上回る底堅い成長を記録した。 業種別内訳は、農業(前期:同▲1.0%→今期:同▲0.7%)、製造部門(同+2.1%→同▲0.4%)、 建設業(同▲0.1%→同▲1.4%)が揃って落ち込んだ一方、サービス業(同+0.6%→同+0.8%)の 堅調が全体を押し上げた。サービス業の内訳は、流通・宿泊・飲食業(同+1.1%→同+1.1%)、運 輸・倉庫・通信業(同+0.6%→同+2.2%)、ビジネス向けサービス・金融業(同+0.6%→同+ 0.5%)、政府・その他サービス業(同+0.1%→同+0.3%)が揃って増加。 ・ 速報段階のGDP計数は9月の生産・建設・サービス業活動を仮置きしている。そこでは、生産(7 月:前月比ゼロ%→8月:同▲0.2%→9月:同▲0.1%)、建設活動(同+0.5%→同▲0.8%→同▲ 0.4%)が減少の一方、サービス業活動(同+0.4%→同+0.2%→同+0.2%)が増加を想定。9月の PMIが、製造業(48.2→53.4→55.4)と建設業(45.9→49.2→52.3)で業況判断が改善、サービス 業(47.4→52.9→52.6)が僅かに慎重化したことに鑑みれば、想定は決して楽観的な訳ではない。 ・ 投票直後に企業や家計の景況感が急落したが、金融市場の混乱が比較的早期に沈静化したことや、離 脱がまだ先との認識が広がったことから、その後は急回復している。今回のGDP統計でも、サービ ス業の好調が目立ち、ポンド安による外国人観光客の増加や英国民の海外旅行の手控え、雇用環境の 改善が持続していることが、景気を支えている様子が窺える。離脱による景気の下押しは、当初考え られたよりも時間を掛けて顕在化する可能性がある。今後は徐々に離脱の悪影響が出てくると予想。 ■ 英 国 : 実 質 GDP成 長 率 ( 前 期 比 年 率 、 % ) ( %) 8 個 人消費 政 府消費 純 輸出 ■英国:業種別GDP 固 定資本 投資 在 庫投資 実 質GDP成長 率 農 林水産 業 製 造部門 建 設業 サ ービス 業 ( 2013= 100) 120 6 115 4 110 2 0 105 -2 100 -4 -6 13 14 15 95 16 13 出所:英統計局 14 15 16 出所:英統計局 ■英国GDP(前期比年率<%>、括弧内は寄与度<%ポイント>) 名目 GDP 実質 GDP 内需 外需 個人消費 14/7-9月期 14/10-12月期 15/1-3月期 15/4-6月期 15/7-9月期 15/10-12月期 16/1-3月期 16/4-6月期 16/7-9月期 4.3 1.4 1.6 4.9 ▲ 0.4 2.1 4.9 6.0 - 3.3 3.4 1.0 2.0 1.2 2.7 1.7 2.7 2.0 (6.2) (2.3) (2.8) (1.1) (2.3) (1.0) (1.8) (5.7) - 政府支出 5.3 ▲ 0.6 3.2 2.6 3.5 1.7 2.9 3.7 - 0.9 ▲ 1.0 1.8 4.2 2.5 ▲ 0.0 1.8 ▲ 0.0 - 固定資本 投資 5.9 2.8 7.1 3.6 3.7 ▲ 5.1 ▲ 0.5 6.4 - 在庫 (0.8) (1.0) (▲ 1.1) (▲ 1.5) (▲ 0.7) (▲ 0.0) (▲ 0.9) (1.6) - 輸出 (▲ 3.0) (1.0) (▲ 1.8) (0.9) (▲ 1.1) (1.7) (▲ 0.1) (▲ 3.0) - ▲ 5.3 16.8 9.2 ▲ 4.5 ▲ 1.2 18.5 0.5 ▲ 4.1 - 輸入 4.6 11.6 14.4 ▲ 6.8 2.2 10.9 0.8 5.3 - 出所:英統計局 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1
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