ブラジル中銀は4年ぶりの利下げを決定

2016年10月21日
投資情報室
(審査確認番号H28-TB182)
新興国レポート
オーストラリア経済とリート市場の動向につい
ブラジル中銀は4年ぶりの利下げを決定
 ブラジル中銀は0.25%の利下げを決定。食品価格下落や財政健全化の進展などによるインフレ環境の改善が背景。
 ブラジル中銀は緩やかで段階的な金融緩和を進めながら、物価や財政の状況次第で利下げの幅やペースを検討。
 景気後退期は終盤に差し掛かる。金融緩和や物価安定などから、17年の経済成長率は1.3%へ回復が予想される。
 金融市場はテメル政権の政策の進展を好感。株価は2012年4月以来の高値へ上昇し、レアル相場も安定傾向。
インドが追加利下げ 今年4回目
ブラジル中央銀行は政策金利の引き下げを決定
図1:ブラジル中銀の政策金利とインフレ率
(%)
ブラジル中央銀行は10月18-19日(現地時間)の金融政
16
策委員会(COPOM)において、政策金利を0.25%引き下
14
げ14.00%とする決定を下しました(図1)。利下げは
2012年10月以来、4年ぶりとなります。
ブラジル中銀では声明文において、足元の食品価格下落や
財政健全化進展などによるインフレ環境の改善を利下げ判
断の要因として挙げました。ブラジル中銀のインフレ見通
12
10
8
4
標中心値(+4.5%)を下回る前年比+4.3%へ、2018年末
2
には同+3.9%へ低下が予想されています。
0
先行きの金融政策に関して、ブラジル中銀は「緩やか
で段階的な金融緩和」を進めるとしながら、インフレ鈍
化の行方や財政健全化審議を注視しつつ、今後の利下げ
の幅やペースを検討する方針を示しました。
ブラジル下院が10月10日に歳出上限法案を大差で可決
したことで、今後の財政健全化法案の審議と実行が早期
上限 6.5%
インフレ目標(中心=4.5%)
13
14
15
16
2016年末には13.50%へ、2017年末には11.00%へ引
また、10月14日に国営石油会社ペトロブラスがガソリ
ン・ディーゼル価格の引き下げと国際市況に連動した新燃
料価格体系への移行を公表したことは、今後のインフレ安
きましたが、新価格体系によりペトロブラスが燃料価格決
定の独立性を維持することは、同社が2017年にも計画す
る燃料小売事業の売却に弾みがつく可能性があります。
17
(年)
18
図2:ブラジルの燃料小売価格の推移
(レアル/リットル)
4.5
2016年10月14日 ペトロブラス
国際市況連動の燃料価格体系を公表
4.0
ペトロブラスの経営悪化や政府財政の悪化
を受けて値上げ・増税を実施(2013~2015年)
3.5
インフレ抑制のため燃料価格を統制
3.0
ガソリン小売価格
2.5
2.0
定を促す要因となると期待されます(図2)。従来、ブラ
ジルの燃料価格は政府からの強い介入を受けて決定されて
3.0%
(出所)ブラジル中銀、ブラジル地理統計院(IBGE)
(期間)政策金利:2013年1月1日∼2016年10月19日
拡大消費者物価指数(IPCA):2013年1月∼2016年9月
(注)基準シナリオは政策金利とレアル相場を一定と仮定した見通し。
インフレ見通しは10月19日時点。
き下げられると予想されています。
ペトロブラスは燃料価格の引き下げを公表
3.9%
4.3%
下限 2.5%
に進む公算が高まりつつあります。ブラジル中銀集計の
市場コンセンサス(10月14日時点)では、政策金利は
6.0%
6
し(基準シナリオ)では、インフレ率は2017年末には目
財政健全化が今後の金融緩和のカギを握る
14.00%
インフレ率
(IPCA、前年比)
ブラジル中銀
インフレ見通し
(基準シナリオ)
ブラジル中銀
政策金利
ディーゼル小売価格
1.5
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
(出所)ブラジル石油監督庁(ANP)
(期間)2005年1月1日∼2016年10月9日
(注)新価格体系での価格引き下げは2016年10月15日より適用。
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ブラジルの景気後退期も終盤に差し掛かる
足元のブラジル経済は、2014年からのマイナス成長が続
図3:ブラジルの実質GDP成長率(実績と市場予想)
(前年比、%)
6
いているものの、景気後退期は終盤に差し掛かりつつある
模様です。市場コンセンサスによれば、実質GDP成長率は
4
2016年下期にはマイナス幅が一段と縮小し、2017年には
2
プラス成長への転換が見込まれています(図3)。通年でのブ
0
ラジルの実質GDP成長率は、2016年の-3.2%から2017年
市場予想
(10月14日時点)
-2
には+1.3%へ回復が予想されています。
実質GDP成長率(実績)
-4
金融緩和と物価安定が個人消費や投資を促進へ
足元では、政権交代に伴う政策転換への期待やインフレ改
善などを受けて、企業や消費者の信頼感が改善基調にあり
ます(図4)。今後、財政政策の面では財政健全化のため
引き締め型の施策が採られる可能性が高いものの、ブラジ
2016年4-6月期
前年比-3.8%
-6
12
13
14
15
(出所)IBGE、ブラジル中銀
(期間)2012年1-3月期∼2017年10-12月期
(2001年=100)
125
業による設備投資を促すと考えられます。
120
金融市場では、8月末のテメル政権の発足以降の政策の進
(中立=50)
65
60
消費者信頼感指数
(左軸)
115
55
50
110
展が好感され、株価とレアル相場の持ち直し基調が続いて
105
います(図5)。主要株価指数であるボベスパ指数は10月
100
18日には63,782ポイントと2012年4月以来の高値へ上昇
95
しました。一方、レアルの対米ドル相場は足元では1米ド
90
ル=3.17レアル前後へ緩やかに持ち直し、対円相場も1レ
(年)
17
図4:ブラジルの消費者・企業信頼感指数
ル中銀による金融緩和やインフレの安定化が個人消費や企
金融市場はテメル政権の政策の進展を好感
16
改善
45
40
企業信頼感指数
(鉱工業、右軸)
悪化
12
13
14
(出所)ブラジル全国工業連盟
35
15
30
(年)
16
(期間)2012年1月∼2016年9月
アル=32円台で安定的な推移が続いています。
図5:ブラジルの株価と為替相場の推移
ブラジル中銀は為替介入ポジションの縮小進める
ブラジル中銀は足元でのレアル高局面を活用し、2013年
から2015年にかけて積み上げた米ドル売り・レアル買い
60,000
1.5
2016年8月31日
ルセフ大統領の弾劾決定
ボベスパ指数
(左軸)
2.0
2016年5月12日
テメル暫定政権発足
介入のポジションの縮小を進めています。2016年初には
1,081億米ドル あったブラジル中銀の通貨スワップ介入
残高は、10月18日時点では約3分の1以下の306億米ドル
(レアル)
65,000
55,000
2.5
50,000
3.0
まで縮小しています。これは、ブラジル中銀が為替市場へ
の介入姿勢を強めたルセフ政権下とは異なり、テメル政権
下では為替相場を市場の需給に委ねる変動相場制への志向
45,000
40,000
4.0
レアルの
対米ドル相場(右軸)
が強いことを示しているとみられます。
(関連新興国レポート)
10月13日付 「ブラジル下院が歳出上限法案を大差で可決」
10月11日付 「ブラジル地方選挙で連立与党が躍進」
3.5
レアル高
35,000
15年1月
レアル安
4.5
15年7月
(出所)ブルームバーグ
16年1月
16年7月
(期間)2015年1月1日∼2016年10月19日
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