10月11日号 実用化段階を迎えたセルロースナノファイバー

2016/
グローバル・マーケット・
トピックス
10/11
投資情報部
半杭 亮一郎
実用化段階を迎えたセルロースナノファイバー(CNF)
 CNFの主な特長は、高強度・軽量、熱による膨張・収縮が少ない、高気密性、透明性等
 政府は2030年にCNFを1兆円市場に育てる構想、自動車部材向け等の用途開発に期待
 関連ノウハウがある製紙会社が取り組みで先行、従来のサンプル供給から量産化の動きへ
鉄の1/5の軽さで強
度が5倍以上、炭素
繊維に迫る性能
植物からつくられる新素材「セルロースナノファイバー」(以下、CNF)の実用化が進
み始めている。CNFは、木材等の植物繊維を薬剤による化学処理や物理的な力を
加える機械処理によってナノ(ナノは10億分の1)レベルまでほぐした極細の繊維状
物質。繊維1本の直径は数ナノ~数十ナノメートルしかないが、鉄の5分の1の軽さ
で5倍以上の強度を持つといわれ、炭素繊維に迫る性能を備える。さらに、高気密
性や透明性のほか、熱による変形が少ないこと、化粧品や食品等に混ぜると粘り気
を持たせられること、植物由来のために環境負荷が小さいこと等も、CNFの主な特
長として挙げられる。森林資源の豊富(国土面積の約3分の2が森林)な日本では原
料調達が容易というメリットもあろう。一方、現状でCNFの製造コストは1キログラム当
たり数千~1万円程度とされ、鉄や樹脂はいうまでもなく、同3,000円程度とされる炭
素繊維等と比べても高いのが課題。ただ、年間数千トン規模の量産化段階に入れ
ば現在の技術でも製造コストは同1,000円を切れるともいわれている。政府は革新的
な製造方法の開発により、将来的に同500円程度にまで引き下げる目標を置く。
樹木からセルロースナノファイ バーを取り出す過程
樹木
木材
チップ
伐採・
チップ化
セルロース
ナノファイバー
木材繊維
(パルプ)
パルプ化
木材繊維を
取り出す
ナノ化(微細化)
束になっている
木材繊維をほぐす
出所:各種資料よりみずほ証券作成
すでに増粘剤等とし
て実用化、自動車・
電子機器等へ の 用
途拡大に期待
このように、軽くて強い等のさまざまな特長を備えるCNFは、幅広い分野で利用が見
込まれている。すでに実用化されている用途には、ボールペンインクの増粘剤、繊
維表面に消臭効果のある銀等の金属イオンが吸着しやすいことを生かした紙おむ
つシート等がある。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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グローバル・マーケット・トピックス
今後のCNFの用途分野として、市場規模の観点から特に注目されているのが、自
動車や電子機器の部材、建築資材等への活用であり、樹脂やゴムにCNFを混ぜた
複合材の開発等が進められている。例えば、自動車部材にCNFを添加した高強
度・軽量の樹脂素材を使えば、車の燃費性能向上に貢献するとの期待が高い。
CNFを使った透明シートをつくり、高温状態でも縮みにくいフレキシブルディスプ
レー素材等として実用化を目指す動きもある。また、化粧品や食品といった安全性
が必要な分野への用途拡大も想定される。酸素を通しにくい性質から食品包装材
への活用のほか、ユニークなところではCNFを混ぜて真夏の炎天下でも溶けにくい
ソフトクリームをつくる等の利用法も考えられている。
政府のCNF活用推進の動きでは、今年6月決定の「日本再興戦略2016」において
も、国際標準化・製品化に向けた研究開発を強化することを明記。目標としては、自
動車部材向け等のニーズを取り込むことによって、CNF関連材料の市場を2030年
に1兆円規模に育成することを掲げている。
セルロースナノファ イ バーの特長と用途
特 長
期待される用途
軽量(鉄の5分の1)でありながら高強度(同5倍以上)
自動車部材、住宅建材、内装材、強化ゴム素材
熱による変形が少ない(ガラスの50分の1程度)
半導体封止材、プリント基板
比表面積が大きい
集じんフィルター、紙おむつ用消臭シート
高気密性
食品包装材
水中で粘性を示す
化粧品、食品、塗料、インク
高い透明性
フレキシブルディスプレー素材
出所:各種資料よりみずほ証券作成
政府のセルロースナノファイ バーによる新市場創造戦略
(円/㎏)
ー
製セ
造ル
コロ
ス
ト ス
イナ
メ ノ
フ
ジ ァ
イ
バ
10,000
~5,000
7,000
~4,000
機械
解繊品
第1世代
ー
ー
セルロース
ナノファイバー
生産規模イメージ
解繊
工程
(自動車部材、情報電子材料、包装材料、 建
築材料、食品用増粘剤、高機能フィルタ ー等)
化学
変性品
乾燥
脱水
工程
第1世代
量産効果
乾燥
脱水
工程
~1,000
~500
2030年セルロースナノファイバー関連
材料の市場創造目標:1兆円/年
革新的製造技術
の開発
次世代
表面修飾
解繊
工程
現在
2020年
100㎏/日(1系列)
1t/日(1系列)
250t/日(1系列)
2030年
30~50t/年
600~900t/年
150,000~225,000t/年
出所:経済産業省「平成25年度製造基盤技術実態等調査(製紙産業の将来展望と課題に関する調査)報告書」よりみずほ証券作成
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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グローバル・マーケット・トピックス
製紙会社がCNFの取
り組みで先行、日本
製紙や 中越パ ル プ
は量産設備を稼働へ
CNFの実用化・量産化に主に取り組んでいるのは製紙会社や、製紙会社と関連の
ある製品を手掛ける化学メーカー等である。CNFは紙の原料である木材パルプから
つくれるため、関連ノウハウのある製紙会社は有利な立場といえる。
日本製紙(3863)は、2007年からCNF製造技術の開発を本格化。13年10月には岩
国工場(山口県)に年間生産能力30トンの実証設備を導入してサンプル出荷等を
進めてきたが、一定の需要が見込めると判断し、世界最大級という同500トンの量産
設備を17年4月稼働予定で石巻工場(宮城県)に設置することを決めている。その
ほか、江津事業所(島根県)に食品・化粧品向けCNFに特化した同30トン(将来は
100トンまで増産可能)の量産設備を17年9月稼働予定で導入することも決定。15年
10月には子会社の日本製紙クレシアからCNFを使った紙おむつを発売している。
また、王子HD(3861)は、2013年3月に三菱化学と共同でCNFを使った透明シート
を開発。軽量で紙のように折りたためるため、必要なときに開いて使用できる大型
ディスプレーや太陽電池等への応用を見込む。15年11月には化粧品にも使われる
安全な薬品であるリン酸による化学処理法を用いた製造プロセスを確立し、富岡工
場(徳島県)で同製法を活用した年間生産能力40トンの実証設備を今年後半に稼
働。化粧品原料を手掛ける日光ケミカルズとは、CNFを用いた新たな同原料の開発
を進めている。
さらに、中越パルプ工業(3877)は、2017年4月稼働予定で川内工場(鹿児島県)に
年間生産能力100トンの量産設備を導入する。大王製紙(3880)は、新エネルギー・
産業技術総合開発機構(NEDO)と組み、低コスト製造法を確立する事業の一環とし
て、今年4月に三島工場(愛媛県)に研究用生産設備を稼働。同社は愛媛大学とも
CNFを使った食品等向け包装材の量産技術について共同開発を行っている。
主なセルロースナノファイバー関連銘柄
王子HD(3861)
… 2013年にCNFを使った透明シートを三菱化学と共同開発、電子デバイス向け等にサンプル出荷を
行っている。リン酸を使った「リン酸エステル法」と呼ばれる製法の実証設備を今年後半に稼働
日本製紙(3863)
… 17年4月に「TEMPO触媒酸化法」という化学製法による年間生産能力500トンの量産設備を稼働予
定。15年10月には子会社からCNFを使った高い消臭機能を持つ大人用紙おむつを発売
北越紀州製紙(3865)
… CNFを使った工業用フィルターの試験提供を始め、病院等の需要を開拓すると報じられている
中越パルプ工業(3877) … 13年にCNFのサンプル出荷を開始。17年4月には樹脂複合化用に年間生産能力100トンの量産設
備を稼働予定。水の衝突圧でパルプを解きほぐす「水中対向衝突法」と呼ばれる製法を採用
大王製紙(3880)
… 16年4月に年間生産能力が最大100トンとなるCNFの研究用設備を稼働。省エネルギー型の製造
プロセスの研究開発を加速させるとともに、サンプル供給量を増やし、早期の事業化を図る
第一工業製薬(4461)
… 14年にCNFの実証設備を稼働。13年6月より三菱鉛筆(7976)と実用化を検討してきたCNFをインク
増粘剤として採用したボールペンは15年3月に北米、同年9月に欧州で発売
星光PMC(4963)
… 14年10月にCNFの実証設備を導入、樹脂の補強材となるCNFのサンプル出荷を行っている
(注)上記銘柄はみずほ証券が任意で選定したもの
出所:各種資料よりみずほ証券作成
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2016/10/11
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一般社団法人第二種金融商品取引業協会
広告審査番号 : MG5690-161011-13
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