36 血液学的検査項目で使用する外部精度管理試料の作製方法の検討 ◎永渕 大輔 1)、松永 茉利子 1)、中島 真由美 1)、原 めぐみ 1)、内田 尚美 1) 佐賀県医師会 成人病予防センター 1) 【目的】 ③CPDA 液希釈液試料で経時的に減少したが、 佐賀県医師会臨床検査精度管理事業で使用 他の希釈液では一定、もしくは増加する結果 する血球は、2 名のボランティア血を血液分析 となった。WBC は、全個体で経時的に減少し 装置用の希釈液(Sysmex 社:セルパックⅡ) たが、その変化は一律ではなく、減少するタ で調整している。血算用の試料作製について イミングや変化量は個体により異なっていた。 は「血球の経時的変化には個体間差があり、 PLT は、CPDA 液以外の希釈液に、1 名のみ経 試料作製時の希釈液は工夫が必要」との報告 時的な減少がみられた。 がある。試料としての安定性に不明な点があ 【考察】 るため、外部精度管理試料作製の方法につい 各希釈液間に明らかな差は認めなかったが、 て検討を行った。 比較的緩やかな経時的変化をみせたのは④血 【検討内容】 漿希釈試料であった。血漿は現行よりも安定 対象項目は、赤血球数(RBC)、白血球数 した希釈液であることが推察される。 (WBC)、血小板(PLT)、ヘモグロビン ③CPDA 液希釈試料では、Ht 値が経時的に減 (Hb)、ヘマトクリット値(Ht)。希釈液は 少したため、精度管理事業で使用する未調整 ①生理食塩水、②リン酸緩衝生理食塩水、 の試料は、集計結果に影響している可能性が ③CPDA(輸血用パック内の赤血球保存液)、 考えられた。WBC の変化を男女別、年代別に ④ボランティアの血漿、⑤セルパックⅡ(現 比較すると、20 代男性と、20 代女性の 行法)を用意し各希釈液で濃度調整後、経時 WBC は緩やかに減少したが、その他の個体は、 的変化について調査した。提供者は男 2 名 一定期間安定しており、WBC の安定性は、年 (共に 20 代)、女 2 名(20 代、50 代)の計 齢、性別に関係はなく、個体差によるものと 4 名。 考えられた。PLT は、経時的に凝集が起こっ 【検討方法】 たため、減少したことが推測された。 精度管理事業では 400ml 輸血パック 【まとめ】 (CPDA 加)に採血し、EDTA-3K 溶液を加え 結果より、希釈液に血漿を用いることで安 た後、一方の血液をセルパックⅡで濃度調整 定した試料提供ができることが考えられたが、 を行う。今回は、EDTA-2Na 採血管で複数本採 大量の血液が必要となり、血液提供者の負担 取後、輸血パックと同じ比率になるように が大きくなる。今回の検討結果を基に、作成 CPDA 液を混和し、ベース血とした。これを、 方法を工夫する必要がある。個体間差におい 各希釈液を用いて濃度調整後、多項目自動分 ては、WBC、PLT について経時的変化に個体 析装置 Sysmex 社製「XE-5000」を使用し、 間差がみられたため、試料を作成する際には 8 日間連続で測定を行った。 事前に調査を行う必要があると思われる。 【結果】 RBC、Hb は希釈液、個体に関わらず、変化は 連絡先:0952-31-8832(内線:632) 認められなかった。Ht は全個体において、 [email protected] 37 LPIA ジェネシス D ダイマー試薬の基礎的検討 ◎平島 史隆 1)、出口 稔 1)、納戸 一美 1)、後藤 さおり 1) 福岡市医師会 臨床検査センター 1) 【はじめに】 あり、良好な結果であった。 D ダイマーは線溶系マーカーであり、凝固線 6)プロゾーン:PZ 試料を用い、倍々希釈にて 溶亢進の際に増加する。DIC の診断や深部静脈 プロゾーンを確認した。直線性範囲内までの 血栓症(DVT)の除外診断、血栓症の診断 測定値低下がなく、516μg/mL まで Antigen および経過観察の指標として有用な検査項目 Excess(抗原過剰エラー)が付加されることを確 である。今回、2015 年 10 月に LSIメディエンスよ 認した。 り発売された LPIA ジェネシス D ダイマーの基 7)共存物質の影響:干渉チェック・ A プラス 礎的検討を行う機会を得たので報告する。 (シスメックス)を用いて共存物質の影響を確認し 【試薬と機器】 た結果、ビリルビン F、ビリルビン C は ① 検討試薬および測定装置:LPIA ジェネシ 50mg/dL まで、溶血ヘモグロビンは ス D ダイマー(LSIメディエンス)、全自動血液凝固 500mg/dL まで、乳びは 5000 ホルマジン濁度ま 測定装置 CS-5100(シスメックス) で測定値に影響は認められなかった。 ② 対照試薬および測定装置:エルピアエー 8)相関性:患者血漿 50 例を用い、対照試薬を ス D-D ダイマーⅡ、全自動免疫血清検査シス x として相関を求めた結果、回帰式は y=0.981x テム LPIA-NV7(LSIメディエンス) + 0.046、相関係数 r は、0.995 であった。 【方法および結果】 【考察】 1)同時再現性:コントロール血漿 2 濃度を 今回、CS-5100 を用いての LPIA ジェネシス 20 回測定した CV は 0.66~2.00%であった。 D ダイマーの基本性能評価を行った。再現性・ 2)日差再現性:コントロール血漿 2 濃度につ 希釈直線性・検出限界・正確性・プロゾー いて、初日のみキャリブレーションを実施し ン・干渉物質の影響・相関において良好な結 10 日間測定した結果の CV は 1.45~2.62%であ 果が得られ、日常の臨床検査に有用と考えら った。 れた。 3)希釈直線性:高値試料及び、濃度調整試料 また今回、検体がなく検討が出来なかったが、 を用いて、10 段階希釈における希釈直線性を LPIA ジェネシス D ダイマーは、対照試薬(エ 確認した。70μg/mL 付近までの直線性が確認さ ルピアエース D-D ダイマーⅡ)と比較して、採 れた。 血管内凝固の影響を受けにくい試薬である。 4)検出限界:濃度調整サンプルを作製し、各 検査センターは採血管内凝固の際、再採血の 濃度 10 回測定した結果、0濃度の平均値+ 取り直しに時間がかかるため、検査センター 2SD と 0.257μg/mL の平均値-2SD は重ならな において LPIA ジェネシス D ダイマーは有用な かった。 試薬であると考えられる。 5)正確性:コントロール物質を用い、10 回測 定を行い、表示値の中央値に対し乖離の差を 持って評価した。乖離率は 3.4%であった。メ ーカー添付文書内に記載されている数値内で 連絡先 092-852-1506 (内線 2672) 38 血小板の 4℃と 22℃保存下における血小板膜糖蛋白の変化 グリチルリチン酸(GDP)+ビタミン E(VE)の添加効果 ◎河野 克海 1)、福島 摩紀 1)、大館 拓真 1)、立木 里奈 1)、菊池 亮 2) 熊本保健科学大学保健科学部医学検査学科 4 年生 1)、熊本保健科学大学 2) 【目的】 の抗原量(平均蛍光強度)をフローサイトメ 我々の血小板濃厚液(PC)の長期保存に関 ーター(FCM)で測定した。 するこれまでの研究で(1)保存経過に伴い 【結果および考察】 血小板細胞膜のスポンジ状変化と細胞内顆粒 22℃48 時間保存後では無添加と GDP+VE 添 の脱顆粒などの変性が起こることを電顕像で 加の両群とも CD42b 抗原量が有意に低下する 観察、(2)4℃振盪保存 PC は 22℃振盪保存 血小板と低下しない血小板の二相性となった。 に比べて血小板凝集能が高く保持されている 一方、4℃保存では二相性にならず、 こと、(3)細胞膜保護作用とアラキドン酸 CD42b 抗原量は軽度の低下であった。4℃ 代謝抑制作用を併せ持つグリチルリチン酸二 GDP+VE 添加群では抗原量は低下せず二相性 カリウム(GDP)を 22℃振盪保存 PC に添加す もみられなかった。CD61 抗原量は有意な変化 ると、血小板凝集能が高く保持される PC 例が はみられなかった。GPⅠbα(CD42b)は あることなどを明らかにしてきた。一方、日 vW 因子受容体として機能しており、血小板の 赤中央研究所の一杉らは、第 63 回輸血細胞治 コラーゲンへの粘着に関与するため、22℃保存 療学会総会(平成 27 年)で、『細菌汚染防止 血小板はコラーゲン粘着に何らかの影響があ の観点からは低温保存が望ましいが、冷蔵保 るのかも知れない。 存血小板は輸血後の生体内寿命が短いとの報 【連絡先】 告があり、冷蔵保存血小板の質的変化の可能 [email protected] 性がある』として、PC をポリプロピレンチュ TEL:096-275-2137 ーブ(PPチューブ)に入れて 4℃で 48 時間静置保 存した後に 37℃に加温すると、血小板細胞膜 糖蛋白 GPⅠb 複合体の一部が切断を受けてい ることが考えられ、冷蔵血小板の細胞膜成分 の質的変化が生体内寿命に影響を与えている 可能性が指摘された。我々の研究で用いてき た譲渡 PC は、献血者の血清 ALT 値が 61 以上 の「ALT 落ち PC」であったが、平成 28 年 4 月から 101 以上への見直しがあり、譲渡が困 難となった。よって、今回の検討では健常者 から ACD-A 加採血した多血小板血漿(PRP) を PPチューブ4 本に分注し、無添加対照(PBS 添 加)、GDP(3mM )+ ビタミン E(0.4mg/mL)添加で 4℃と 22℃で 48 時間振 盪保存した後 37℃にて 30 分間加温し、血小板 膜糖蛋白 GPⅠbα(CD42b)と GPⅢa(CD61) 39 血小板凝集能とABO式血液型別VWF抗原・活性との関係について ◎福迫 日向 1)、松井 優美 1)、吉田 優奈 1)、米村 綾那 1)、相原 隆文 2) 美萩野臨床医学専門学校 学生 1)、美萩野臨床医学専門学校 2) 【目的】 DP、COLL凝集能は小、中、大凝集塊が 血液ゼミでは、血小板凝集能、特に自然凝集 全凝集塊に占める割合により-2~+2 の 5 段 について基礎検討を行って来たが、今回は、 階 Class 評価、またRIST凝集能は最大凝集 ABO式血液型別に Von Willebrand Factor 率にて評価した。 Antigen、Activity(以下VWF抗原、活性)と 3.Von Willebrand Factor Antigen、Activity ADP、コラーゲン(COLL)、リストセ test KIT:凝集能に用いたPPPの残り 50μL チン(RIST)凝集能を測定し、血小板凝 を ELISA 法にて測定(参考値 75%~150%) 集能との関連性について検討を行った。 【結果】 【対象・機器・試薬】 ①学生 20 名の自然凝集陽性者は3名(陽性率 1.対象:本校学生 20 名(ABO式血液型各 15%)②A型血液のVWF抗原平均値は 96.8 5 名、平均年齢 20.6 歳)、および教職員 9 名 %、VWF活性平均値は 76.7%、自然凝集能 (自然凝集既陽性者、平均年齢:50.8 歳) 平均値は 7809、ADP凝集能平均値 0.17、C 2.機器:血小板凝集能測定装置PA-20( OLL凝集能平均値 0.67、RIST凝集能平 興和株) 均値 89.5%③同様にB型のVWF抗原は 100. マイクロプレートリーダー:CHROMAT- 6%、活性 81.4%、自然凝集能 12055、ADP E MODEL4300(プラクティカル株) 凝集能 0、COLL凝集能 0、RIST凝集能 3.試薬:真空採血管は日本BD社、血小板 86.4%④O型VWF抗原は 33.6%、活性 24.6 凝集惹起物質としてADP2μM(エム・シー %、自然凝集能 6482、ADP凝集能 0、CO ・メディカル)、コラーゲン1μg/ml(エ LL凝集能 0、RIST凝集能 85.4%⑤AB ム・シー・メディカル)、リストセチン 12mg 型VWF抗原は 88.2%、活性 55.2%、自然凝 /ml(ナカライテスク)を用いた。 集能 19885、ADP凝集能 0、COLL凝集能 4.Von Willebrand Factor Antigen、Activity 0.2、RIST凝集能 94.8%であった。 test KIT:ナカライテスク(株) 【考察】 【方法】 ①惹起物質としてADP、COLL、RIS 1.検体採取:真空採血管にてクエン酸Na Tを用いた凝集能と血小板自然凝集及び各血 血として 5ml採血。 液型との間には関連性は認めなかった。 2.血小板凝集能測定 ②VWF抗原・活性と血小板自然凝集及び各 ①多血小板血漿(PRP)は 150G,10 分、乏血 血液型との間では、O型血液と負の相関を示 小板血漿(PPP)は 2000G,10 分遠心分離。 し、自然凝集陰性者との間にもやや相関を認 ②PRPをPPPで血小板数 25 万/μlに調 めたが、それがO型血液に起因したものかは 節後、自然凝集 10 分間、ADP、COLL、 今後の検討課題としたい。 LIST凝集は7分間凝集能を測定。③自然 凝集は惹起物質を添加せずに攪拌のみで小凝 集の出現 Max 値 20000 以上を陽性と判定。A 美萩野臨床医学専門学校 093-931-5201
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