2016年度診療報酬改定を受けて4月からすべき看護部の現場対策 ②

病棟機能選択期限の
2018年に備えて
2016年度診療報酬改定を受けて
4月からすべき看護部の現場対策 ②入院編
看護部が主導する診療報酬アップ戦略
連載
第8回
地域医療構想を見据えた医療計画
に伴う2016年度診療報酬改定
入院医療の機能分化
●患者病態(患者像)に応じた評価
「重症度,医療・看護必要度」
(以下,
第10回社会保障制度改革国民会議
看護必要度)は,病態や治療等に合わ
資料(2013年)に一般病棟の病床数
せ重症度,看護の必要性を測り,看護
の現状(2010年)と2025年の病床数
業務を測るものさしとなり,その必要
の将来像が示され,必要な病床数を踏
度に応じて看護師の配置数を算出(調
まえた機能分化・連携を推進すること
整)することを目的としています。看
を目的とした地域医療構想が打ち出さ
護必要度の数値が高く,その患者割合
れました。また,各医療機能に応じた
が多い病床(病室)では,看護師の配
医療資源の投入を把握するため,2014
置がより多く必要であり,重要である
年10月に「病床機能報告制度」が開
ことを示しています。そのため,ICU,
始されました。自主的に自院の医療設
HCU,その他一般病棟および一般病
備や人員,手術の実績件数や診療報酬
棟の指標の取り扱いの「総合入院体制
の算定実績を提示し,将来の病床を自
加算」や「地域包括ケア病棟」
「回復
ら推移させた結果を表すものとなりま
期リハビリテーション病棟」等にも用
した。
いられています。療養病棟は,「医療
2016年度診療報酬改定(以下,今
区分・ADL」が患者病態の指標になり
改定)では,2018年の医療と介護の
ます。
同時改定,第7期医療計画を踏まえた
●精緻な測定数値の影響
次の①〜⑤が着眼点となります。病床
今改定は,看護必要度の指標をより
機能においては,①各病床機能が担う
精緻にし,そのデータを基に病床機能
べき患者病態(患者像)に応じた評価
分化(病床必要数)を導き出す方向も
と,②医療機能の体制が主となります
示しているのではないかと考えます。
(資料1)
。5疾病5事業では,③精神
DPCデータ提出では,
「Hファイル」
疾患等の受け入れや,④認知症に伴う
として看護必要度の測定結果が平成
項目,在宅の必要量も指標となること
28年10月1日から始まることになり
より,⑤退院⽀援のさらなる強化,切
ます。病床機能報告制度においては,
れ目のない医療提供を鑑みる項目が主
ICU・HCUの看護必要度は報告不要で
となります。
したが,Hファイルには必要になるた
な め かわ
長面川さより
株式会社ウォームハーツ 代表取締役
株式会社医療情報科学研究所 代表取締役
学校法人川口学園 埼玉女子短期大学 客員准教授
東京大学医学部附属病院 保険診療指導顧問
東北薬科大学病院 保険診療指導顧問
昭和大学病院医事課退職後,1999年オフィスナメカワ設立。診療報酬に関するコンサルティング業務,検定問題作問,
レセプト精度診断,開業サポートなどを行う。2004年から株式会社医療情報科学研究所 代表取締役および2016年よ
り株式会社ウォームハーツ 代表取締役兼任。専門分野である診療報酬請求を基に,より早い情報収集・問題点抽出・
分析・改善などの立案を行い,クライアントと共に課題に取り組んでいる。
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資料1 入院医療の機能分化・強化
地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化を図るため,入院医療について,機能に応じた適切な評価の
推進と手厚い医療に対する評価の充実を実施。
医療機能ごとの患者像に応じた評価
医療機能の強化のための評価
○特定集中治療室用の「重症度,医療・看護
必要度」の見直し
○総合入院体制加算について,
「重症度,医
療・看護必要度」
(A,
C項目)の基準を導
入
○特定集中治療室等における薬剤師配置を
評価
特定集中
治療室等
○一般病棟用の「重症度,医療・看護必要度」
の見直し
○重症患者を受け入れている10対1一般病
棟を評価
○地域包括ケア病棟入院科の包括範囲から,
手術・麻酔に係る費用を除外
○療養病棟入院基本科2について,医療区分
2・3の患者受入れを要件化
○療養病棟における医療区分2,3の患者像
のよりきめ細かく適正な評価
○総合入院体制加算における,認知症・精
神疾患患者の受入体制の評価
○7対1病棟の在宅復帰率の基準の見直し
○看護職員・看護補助者の手厚い夜間配置
を実施している医療機関の評価
7対1病棟等
地域包括ケア病棟
回復期リハビリ
テーション病棟 等
療養病棟等
○回復期リハビリテーション病棟における,
リハビリテーションの効果に応じたリハビ
リテーション料の評価(アウトカム評価)
○療養病棟において,急性期等から受け入れ
た患者の在宅復帰をより適切に評価するよ
う,在宅復帰機能強化加算の要件を見直し
厚生労働省:平成28年度診療報酬改定の概要,2016年3月4日版
め,1患者ごとに日々の入力が反映されます。
と示されています(疑義解釈その1)
(資料2)
。
現行の基準の経過措置が終了後の新たな基準の
※疑義解釈その1で示されていないものの中
測定評価をより精緻に行うために,専門職の記
に,管理ではなく「使用」等については,看
録を活かすことも対策の一つとなります。
護職員,看護職員以外双方とも記されていま
●評価項目と専門職の記録の反映
せん。
評価項目:
「A項目:モニタリング及び処置等」
ポイント カルテ,看護記録,その他職種の
「B項目:患者の状況等」
記録も評価の根拠となります。記録方法につい
「C項目:手術等の医学的状況」
ては,手引きに「院内規定を設ける等」工夫を
評価場所:A項目の放射線治療とC項目は,病
棟以外であっても院内で行われた治療を評価
の場所とすることが可能です。C項目の判断基
準は,術当日から期間に含むことになります。
※事務職員・看護補助者は転記や入力代行を行
うことは可能です(疑義解釈その1)。
療養病棟 医療区分・ADL区分の評価
ポイント 「 手術の開始時刻及び終了時刻が0
療養病棟入院基本料の所定点数は,
「看護師
時をまたぐ場合」
,手術が終了した日を「手術
の配置による施設基準の届出(1と2)
」と「医
当日」として評価することになります(3月
療区分・ADL区分」により点数が分かれていま
31日疑義解釈その1)
。
す。今改定においては,療養病棟2(看護職員
評価者:看護師以外であっても院内研修を受け
配置25対1)について,新たな基準として「医
た医師・薬剤師・理学療法士等も可能です。
療区分2,3」の患者割合が5割以上の規定が
ポイント 評価の手引きには,看護職員以外
が実施する可能性のある項目は「看護職員等」
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することと記されています。
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平成28年10月1日より開始されます。
資料2 重症度,医療・看護必要度
A項目
1 創傷処置 (①創傷の処置〈褥瘡の処置を除く〉,②褥瘡処置)
2 呼吸ケア(喀痰吸引のみの場合を除く)
(★)
3 点滴ライン同時3本以上の管理
4 心電図モニターの管理
5 シリンジポンプの管理
6 輸血や血液製剤の管理
7 専門的な治療・処置
①抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)
(*)
②抗悪性腫瘍剤の内服の管理(★)
③麻薬の使用(注射剤のみ)
(*)
④麻薬の内服,貼付,坐剤の管理(★)
⑤放射線治療(*)
⑥免疫抑制剤の管理(★)
⑦降圧剤の使用(注射剤のみ)
(*)
⑧抗不整脈剤使用(注射剤のみ)
(*)
⑨抗血栓塞栓薬の持続点滴の使用(*)
⑩ドレナージの管理
⑪無菌治療室での治療
8 救急搬送後の入院(*)
B項目
9 寝返り
10 移乗
11 口腔清潔
12 食事摂取
13 衣服の着脱(★)
14 診療・療養上の指示が通じる
15 危険行動(★)
★印…「定義」に「看護職員等」明記あり
無印…「留意点」に「看護職員等」記載あり
*印…評価者が限定されていないもの
●医療区分2,3の対象者や定義(資料3)
一部改定となり,評価者への変更点の周知が
必要となります。
●医療区分2の対象者拡大
指定難病患者は平成27年7月より306疾患
となり,医療区分対象者が改定になり,特定疾
患治療研究事業のスモンは医療区分3,指定難
病の306疾患は医療区分2になります。
ポイント 対象疾患により条件(規定)が異
なります。
・指定難病については,次の①または②のいず
れかに該当することが必要です。
①医療受給者証が交付されているもの
②特定医療費の支給認定に係る基準を満たす状
態であることを医療機関において確実に診断
されたもの
・都道府県における「特定疾患治療研究事業の
対象疾患」
「先天性血液凝固因子障害等治療研
究事業実施要綱の対象疾患」については,医
療受給者証を交付されている患者が対象です。
●医療区分の定義等変更の疑義その1に留意
●平成28年10月1日の経過措置後の基準に
満たない病棟の算定
・評価表医療区分3の「38.酸素療法を実施し
ている状態」において,①常時流量3L/分
ポイント 療養病棟2の基準を満たさなくて
以上を必要とする患者に対して1日の中で酸
も入院料5%減で算定できる対象
素流量が変動し3L/分を下回る場合は,医
※平成28年3月31日時点で継続して療養病棟
療区分2に該当となります。酸素療法につい
1または2を届け出ている病棟に限り,次の
ては「毎月末において,酸素療法を必要とす
abcともに平成30年3月31日まで5%減の
る状態に該当しているか確認を行い,その結
入院料で算定できる経過措置があります。
果を診療録等に記載することが必要です。
療養病棟2の規定:①看護職員配置25対
1,②医療区分2,
3の患者割合が5割以上
a:①のみを満たす病棟,b:看護職員配
置30対1以上で②のみを満たす病棟,c:
看護職員配置数30対1で①②ともに満た
さない病棟
・評 価表医療区分2の「33.うつ症状に対す
る治療を実施している状態において,
「精神
保健指定医」により処方の医師は常勤,非常
勤に限らないことになります。別の医療機関
の医師の対診でもよいことになります。ま
た,別の医療機関において精神保健指定医に
よる処方された場合であっても該当します。
➡続きは本誌をご覧ください
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