重症度, 医療・看護必要度 に基づく 記録指導と研修の進め方 2016年度診療報酬改定に基づく 記録指導と研修のポイント 昭和大学横浜市北部病院 病棟師長 原 泰江 1984年昭和大学医学部付属看護専門学校卒業後,昭和大学藤が丘病院CCU,呼吸器,循 環器内科病棟,外来勤務を経て,2001年より部署責任者。2007年産業能率大学情報経 営学部情報経営学科卒業(通信課程) 。2008年より昭和大学横浜市北部病院,放射線 科,呼吸器センター,内科・耳鼻科混合病棟勤務。2013年看護要度プロジェクトリーダー 2014年重症,医療,看護必要度委員会,委員長2014年看護管理研修セカンドレベル修了。 2006年度の診療報酬改定では,病院の入院 集合教育と電子カルテの入力システムに付帯し 基本料の施設基準として,看護管理の観点から ている「ガイド」から入力業務を行い,病棟の 各病棟の入院患者の「重症度・看護必要度」に 責任者や係長がチェックしています。記録に関 係る評価を行い,実情に合わせた適正な配置数 しては,看護計画に関するフォーカス記録のた の確保が求められることとなりました1)。この め,日々のケアや患者の状態が見えにくい記録 診療報酬改定において,人員配置のみならず, となっていました。そのため,記録基準の改訂 患者に提供される「医療・看護必要度」として, を行い, 「デイサマリ」として,患者状態やア 詳細な評価判定が現在まで求められています。 セスメント,ケアの内容が分かるような記録記 評価判定は,院内研修指導者が「看護必要度 載へ変更しました。2015年度には, 「重症度, 院内研修指導者」の資格を有し,その有資格者 医療・看護必要度委員会」がさらなる「教育」 が院内研修を行い,それを受講しテストに合格 「監査」の強化に取り組み,病院組織として医 した看護師・助産師のみ評価判定ができます。 師と事務を含めたプロジェクトチームも立ち上 2016年度の改定では,院内研修を受けた医師, げ,合同での検討会が行われ,特に医師の指示 薬剤師,理学療法士も評価判定者として参加で にかかわる内容の協力体制も決定されました。 きることになりました。今回の改正では,一般 2016年度の診療報酬改定では,A,B項目 病床での変更が大きいため,その部分を中心に の変更とC項目の追加がなされ,重症度・医療, 述べます。 看護必要度のレベル4と5の患者割合は,15% 診療報酬改定をめぐる 当院の体制 当院は許可病床数689床,平均在院日数10.6 められる入院管理料の制度において,適正な「評 価」と「記録記載」の教育が重要になります。 地域中核病院です。看護師数は708人で,看護 2016年度重症度, 医療・看護必要度の変更の要点 部での規定を受けて,2013年より全看護職員 2016年度の変更に関しては,6月10日に日 に向けて集合研修を実施しています(2016年 本看護協会出版会より『看護必要度(第6版)』 5月現在)。 が出版されました。 2014年度の診療報酬改定で,評価内容とそ ▶A モニタリング及び処置等 れに伴う記録記載の正確性が,入院管理料の要 一般病棟における変更点として, 「A モニタ 件として求められています。看護部内で医療・ リング及び処置等」の項目では, 「中心静脈圧 看護必要度プロジェクトチームを立ち上げ,重 測定(中心静脈ライン) 」が削除されています。 症度,医療・看護必要度における評価と記録記 この項目は,循環器・呼吸器疾患の病棟で扱う 載上の問題点を検討しました。評価に関しては, ことが多いですが,最近では急性期の循環動態 日,救急センターで2次救急を受け入れている 2 から25%へ変更されました。より機能分化が求 看護人材育成 Vol.13 No.3 のモニタリングは特定集中治療室で短期的に行 病棟へ入院した場合は「評価あり」となります。 い,一般急性期で使用する頻度は減少している 救急車で転院の搬送を行う場合の緊急搬送は該 印象です。2014年度に追加された「専門的な 当しますが,予定搬送は該当しないとの解釈が 治療処置」と,2016年度その中に入った「無 出ているため,評価時に搬送目的を明確にして 菌治療室での治療」と,「救急搬送後入院(2 おく必要があります。 日間)」により相殺されています。 ▶B 患者の状態等 今回の診療報酬の改定における詳しい内容に 「B 患者の状態等」の項目では, 「寝返り」 関する研修は2016年7月以降に予定されてお の動作が「起き上がり」と「座位保持」を網羅 り,院内の評価入力システムに付帯されている しているため統合され,削除されました。 「ガイド」と『看護必要度(第6版)』が頼りで 「危険行動」と「診療・療養上の指示が通じ すが,正確に解釈するには,院内指導者研修を る」は,HCUでの使用が一般病棟へ追加されま 受けることが必須です。 した。 「危険行動」は, 「治療・検査中のチュー 現在分かる範囲では,「無菌治療室での治療」 ブ類,点滴ルートの自己抜去,転倒・転落,自 には,6時間という治療時間の制限があり, 「ド 傷行為」および看護師が「そのままにすれば, レナージ管理」と同じ解釈が必要だということ 危険行動に至ると判断する行為」と定義づけら です。時間制限のある項目は,院内研修でも理 れています。判断は,過去1週間以内の記録に 解されにくい項目でテスト点数が低く,実践で 基づいて行います。また, 「危険行動を予防す もOJTで確認をしていますが,評価が正確にで るための何らかの対策を講じた場合」となって きていない割合が高い項目です。 いるため,離床センサーマットや離床ベッドの 「無菌治療室での治療」は,移植や白血病, 使用,安全帯やミトンの使用が必要になります。 再生不良性貧血や重症型免疫不全症候群などの 今回の追加で誤った評価になりやすいのが, 疾患に,無菌室で医師の指示に基づき6時間以 「大声を出す」 「病室で喫煙をする」 「暴力行為」 上の治療を行った場合と定義されています。抗 は迷惑行為であり,危険行動には含まれないと がん剤治療による骨髄抑制のグレードⅣでの使 いうことです。時間制約があり,かつ自傷は危 用も該当すると判断できますが,疑義解釈に明 険行動で,他害は迷惑行為であることを周知す 言はありませんでしたので確認が必要です。ま るには,時間を要すると思われます。また,危 た,施設基準として,空気清浄度がISOクラス 険行動を判断するには1週間の期間があるた 7以上で,かつ常時無菌水の供給が可能である め,記録記載が重要になります。1週間以内の と記されているため,施設設備を確認しておく 危険行動がどの時点で記載されているのかがあ 必要あります。 いまいだと,正確な評価ができなくなります。 「救急搬送後の入院」は,救急車と救急ヘリ 記録記載の手順を決めておくか,記録システム が対象で,入院後の重症度は問わないとされて として分かりやすく提示する手段が必要だと思 います。しかし,入院病棟は救命救急センター われます。 やICU・HCUへの入院は対象に含めないので周 「診療・療養上の指示か通じる」は, 「指示内 知が必要です。特に,一般病棟内の一部にHCU 容や背景疾患を問わず,診療・療養上の指示に 加算の病床を有している場合は,区分をしっか 対して,理解でき実行できるかどうかを評価す りする必要があります。実際に入力評価を監査 る項目である」と定義されています。医師の指 してみると,一般病棟で3日目に評価を変更し 示である,安静の範囲,食事制限,服薬,検査 忘れている事例が見られますので,周知が必要 前の前処置など幅広くあります。一度でも守れ です。直接手術治療や血管内治療を行って一般 ない状態にあり,記録に残されている場合を評 ➡続きは本誌をご覧ください 看護人材育成 Vol.13 No.3 3
© Copyright 2024 ExpyDoc