リサーチ TODAY 2016 年 9 月 26 日 みずほ総研の「節約志向指数」は、年内の物価低迷を示唆 常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創 日経MJによる恒例の今年上期のヒット商品番付によると、東の横綱は「安値ミクス」となり、家計が安値志 向に戻ったことが示された。2014年の頃に「プチ贅沢」など、多少とも高値の商品が好まれていたこととは大 きく違い、今企業が再び安値戦略に戻っている。今年、みずほ総合研究所がCPIと家計調査から算出した 家計の節約志向指数は、最近の家計の低価格品指向を端的に示す結果となった。同指数は2014年に一 旦低下したものの、2016年に入って以降も高い水準にあり、家計はいまだ節約志向から脱していない。 また、家計の節約志向の高まりは、物価の下押し要因にもなっているようだ。下記の図表は日本のコア CPIの動きを示しているが、生鮮食品を除いた物価全体の動きを示すコアCPIは、2015年夏以降マイナス 基調で推移している。こうした動きの背景には、原油価格の下落の影響があるものの、原油価格の影響等 を除いた米国基準コアCPIでみた物価上昇率も低迷していることから、物価下押しの一因に家計の節約志 向の高まりがあると考えられる。 ■図表 :コアCPIと米国基準コアCPI推移 2.0 (前年比、%) コアCPI 1.5 米国基準コアCPI 1.0 0.5 0.0 -0.5 -1.0 13/1 13/7 14/1 14/7 15/1 15/7 16/1 16/7 (年/月) (注)コア CPI は生鮮食品を除く総合指数、米国基準コア CPI は食品(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数。 (資料)総務省「消費者物価指数」よりみずほ総合研究所作成 みずほ総合研究所は、家計の節約志向指数と物価見通しに関するリポートを発表している1。当社が家 計の節約志向を数値で把握出来るよう開発した節約志向指数は、CPIと家計調査で共通品目となる138品 目を比較し、CPIと平均単価の前年比伸び率の差をCPIのウェイトを用いて指数化したものだ。CPIは決まっ 1 リサーチTODAY 2016 年 9 月 26 日 た商品の単価の変化を示すが、家計調査は商品の限定を行わず、家計が実際に購入したものの平均単 価を示す。従って、家計の節約志向が強まり、より安い商品をより多く購入すれば、CPIよりも平均単価の伸 びは下振れしやすく、その結果、節約志向指数は上昇する。下記の図表を振り返ると、2014年には先述の 「プチ贅沢」ブームが訪れたが、2015年以降、再び低価格志向が強まっていることがわかる。 ■図表 :節約志向指数と消費者物価の推移 6 (前年比、%) (%pt) -3 CPI(138品目) 節約志向指数(右目盛) 節約志向低下 3 -2 0 -1 -3 12/1 13/1 14/1 15/1 16/1 節約志向上昇 0 (年/月) (注)節約志向指数は CPI と家計調査で共通品目となる 138 品目を比較し、CPI と平均単価の前年比伸び率の差を CPI(2015 年基準)のウェイトで指数化。CPI との比較のため、節約志向指数は逆目盛で表示。節約志向指数、 CPI ともに 12 カ月後方移動平均。 (資料)総務省「消費者物価指数」、「家計調査」よりみずほ総合研究所作成 また、節約志向指数とCPIには5~7カ月程度のラグで高い相関がある。家計の節約志向を受けて、企業 の価格戦略が見直され、店頭物価に適用されるまでの期間が約半年程度になると試算される。上記の図 表で、節約志向指数が2016年半ばまで高い水準にあることを考えると、少なくとも年内は家計の節約志向 が物価の下押し圧力になると見込まれる。ここで節約志向の脱却が遅れると、物価上昇のタイミングはさら に後ズレする可能性もある。物価の先行きを展望するにあたり、原油価格や為替の動向に加え、この指標 に示された家計のマインドにも注目する必要がある。また、物価の方向を占う面からも、今回の節約志向指 数は有効であると考えている。 1 有田賢太郎 「家計の節約志向指数と物価見通し」 (みずほ総合研究所 『みずほインサイト』 2016 年 8 月 25 日) 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき 作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 2
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