周術期の深部静脈 栓症予防実施率(外科症例)

周術期の深部静脈⾎栓症予防実施率(外科症例)
アメリカ胸部疾患学会(ACCP) ガイドラインにおける⼀般外科⼿術(予防なし)における症候性肺塞栓の頻度
は1.6%、致死性肺塞栓症は0.9%と報告されている。 「肺⾎栓塞栓症/深部静脈⾎栓症(静脈⾎栓塞栓症)予
防ガイドライン」では、⼀般外科⼤⼿術では、ルーティンな⾎栓予防を⾏うことが強く推奨されている。 低分
⼦ヘパリンや未分画ヘパリンは深部静脈⾎栓症や肺塞栓を明らかに減少させることが⽰されており、また理学的
⾎栓予防法である間⽋的空気圧迫法、弾性ストッキングも深部静脈⾎栓症の発⽣頻度を減少させ、特に出⾎リス
クの⾼い症例では、使⽤を考慮すべきとされている。 また本邦の肺⾎栓塞栓症/深部静脈⾎栓症(静脈⾎栓塞
栓症)予防ガイドラインにおいて、⼿術の⼤きさ、年齢、危険因⼦をもとに4段階(低、中、⾼、最⾼)のリス
クレベルに階層下され予防法が推奨されている。 以上より外科⼿術患者は深部静脈⾎栓症、肺塞栓症のリスク
が⽐較的⾼いと考えられ、適切な予防処置が有効であることから、⼿術を受ける患者には、①低分⼦ヘパリン
(クレキサンなど)または未分画ヘパリン、②間⽋的空気圧迫法、③弾性ストッキングのいずれかを⽤いた予防
法が⾏われるべきである。
4⽉
90%
5⽉
88%
6⽉
87%
7⽉
95%
8⽉
96%
9⽉
92%
10⽉
94%
11⽉
97%
12⽉
93%
1⽉
94%
2⽉
89%
3⽉
94%
92%
H27年度(N=130)
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90% 100%
当院値の定義・算出方法
分⼦: 周術期の深部静脈⾎栓症予防について、
①低分⼦ヘパリン(クレキサンなど)または未分画ヘパリン、②間⽋的空気圧迫法、
③弾性ストッキング
のいずれかが施⾏された外科⼿術患者数
分⺟: ⼿術を受けた外科⼿術患者数(ただし、下肢⼿術などで予防実施不能な症例は除く)
×100(%)
※グラフ中のN数は分⺟の値を⽰しています。
解説(コメント)
外科⼿術における症候性肺塞栓症の頻度は1.6%、致死性肺塞栓症は0.9%と報告されており、いかに肺⾎栓塞栓
症/深部静脈⾎栓症を予防するかが周術期管理において重要であり、ガイドラインでも周術期の深部静脈⾎栓症
予防の実施することが強く推奨されている。昨年度外科⼿術周術期の深部静脈⾎栓症予防実施率は年間平均92%
(89-97%)と⾼い実施率であった。また臨床的肺塞栓⾎栓症の発症も認めなかったことから、適切な周術期
深部静脈⾎栓予防が臨床上⾮常に有効であったと考えられる。
改善策について
当院は緊急⼿術症例が多くほとんどの緊急⼿術症例でも実施できていたが、実施できなかった症例も存在するた
め、そのような症例に対しても関連する医療スタッフ全員が深部静脈⾎栓予防の意識を再確認し、未実施症例を
減らすことが必要である。また、定例⼿術においては、クリニカルパスに取り⼊れており、未実施症例がないよ
うに努めていく。
⽂責:外科主任部⻑
定永 倫明