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技術委員会 第1分科会
保湿性の評価方法の確立(その8)
副委員長
城 文希
香粧品業界では、香粧品による保湿作用について、既にいくつかの試験方法が確立されている。
一方、繊維業界では、衣類分野において、種々の加工により保湿効果をうたった製品が市販されて
はいるが、ヒトの皮膚そのものに対する保湿性の評価方法が存在していないのが実情である。
そこで第1分科会では、2008 年より「繊維による保湿性の評価方法」を確立すべく、種々の検
討を行い、冬季における下腿すね部の角質水分量、経皮水分蒸散量を試験前後(初期と4週間後)
に計測・比較することによって、保湿性の評価が可能であることを既報にて明らかにしている。
この保湿性の評価方法を用いて、これまでに、皮膚の保湿性向上効果として有効性が確認できた
条件は以下の表における、No.1∼No.3 の条件である。
試験
No.
1
2
3
4
5
透湿度
0
1500
1500
15000
15000
通気度
0
0
0
0.21 以下 0.6∼0.8
2.5
仕様
(横通気有)
試験品
PE-film
事例
評価
保湿効果
結果
(角質水分量)
ムレ
備考
6
実施時期
○
(有り)
低透湿 film
保水 pad
通気性小
通気性中
通気性大
低透湿 coat
(水有)
のカバー
のカバー
のカバー
○
○
△∼○
△∼○
○ (無し)
○ (無し)
○ (無し)
秋冬シーズン
(11 月∼3 月)
今回、No.3 の条件において、保水する水分量の影響を、保水無しも含めて確認した。
また、これまでの検討で、皮膚の保湿効果は、角質水分量を測定することで、確認されているが
過剰な水分を皮膚に与えることによるムレは、被験者のアンケート結果からの評価である。
そこで、過去に検討した、「湿潤下における皮膚刺激性」は、春夏シーズンにも検証できることか
ら、改めて今回の保湿試験条件で確認する事で、皮膚への影響を詳細に調査することを試みた。
以上
-1-
技術委員会 第2分科会
低刺激製剤の D-SQUAME ® による評価試験
委員
田村 耕一郎
第 2 分科会では 2013 年より、微弱な刺激性評価における皮膚表面形態変化を捉える評価法とし
®
て、D-SQUAME による角層鱗屑評価の有用性に着目した基礎検討を行ってきた。これまでの結果
®
より D-SQUAME による評価は簡便な操作で微弱な刺激性変化を捉えられる一方で、データのばら
つきの大きい評価法であったため、ばらつきの要因特定、角層採取部位差、季節変動、測定環境な
®
ど特性把握に努め、昨年までに D-SQUAME の評価法基礎検討を完了した。本年度は、D-SQUAME
®
を微弱な刺激性の評価法として有効活用するために、低刺激モデル処方の洗浄剤(表 1)を用いた
®
実使用における D-SQUAME の刺激性評価について検討した。
®
検討 1 として、D-SQUAME の有用性を確認するために、製剤による連続洗浄試験での皮膚表面
形態の変化について鱗屑指数(Desquamation Index;D.I.)、角層水分量、経表皮水分蒸散量(trans
epidermal water loss;TEWL)を指標に評価した。同意の得られた 10 名にて低刺激モデル処方
①および②を用いて試験を実施した(表 1)。皮膚測定(角層水分量、TEWL)および鱗屑採取は、
1 日目(洗浄前)、8 日目(洗浄前)および 15 日目に 22 1℃, 40 10%の恒温恒湿室で 15 分間安
静後に行った。洗浄は 1 日 2 回、14 日間連続で処理した。洗浄方法はポンプフォームにより一定
量吐出した洗浄剤を前腕 4 5cm の範囲に押し付けない程度に 100 回擦った。その後 37℃の温水
500mL で 30 秒かけて洗い流した。ブランクとして温水による洗い流しのみの試験区を設定した。
試験の結果、処方①、②およびブランク間では角層水分量、TEWL および D.I.において有意な差
®
がみられなかった。このことから 14 日間連続洗浄の方法は D-SQUAME の評価に適していないこ
とが示唆された。
検討 2 として、刺激の有無を確認した上で洗浄試験を実施するために、活性剤の種類と量目を変
更して処方を設計し、12 名にて 24 時間パッチテストを実施した。被験物質は処方②、および処方
②より刺激の高いことが想定される処方③、④および⑤とした(表 1)。パッチテストは 1%水溶液
で実施した。試験の結果、試験した被験物質間では皮膚刺激指数に有意な差がみられず、想定した
皮膚刺激を確認出来なかった。
検討 3 として、被験物質の刺激性を適切に評価できる方法を決定するために、「リンスオフ製品
の皮膚刺激性評価の検討(2009-2012 年)」で刺激物質ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)に対して
D.I.に変化を認めた 8 回連続洗浄による方法にて評価した。処方①、③、陽性対照として処方⑥を
用いて 4 名にて洗浄試験を実施した。1 日目、4 日目および 7 日目に皮膚測定、および鱗屑採取を
行った。洗浄は 1 日目の皮膚測定・鱗屑採取後に 8 回処理を行い、2 日目以降の洗浄は行わないこ
ととした。試験の結果、SLS においては 4 日目に角層水分量が有意に減少していたが、D.I.に有意
な差がみられなかった。洗浄モデル処方においても測定項目においては有意な変化はみられなかっ
た。
®
低刺激製剤の D-SQUAME による評価試験で行った各検討において、適切な評価系の確立に至ら
なかったが、検討 3 での SLS における水分量変化、また季節的な要因による影響の可能性も考慮す
ると、更なる検討の余地があることが示唆された。今後は季節的な要因を明らかにするため、発汗
が抑えられる冬季に確認試験を実施する予定である。
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表1
洗浄製剤モデル処方の活性剤純分
単位:%(w/w)
成分名
処方①
処方②
処方③
処方④
処方⑤
処方⑥
オレフィン(C14-16)スルホン酸 Na
-
-
1.11
2.22
3.33
-
ココアンホ酢酸 Na
0.81
0.39
0.39
0.39
0.39
-
ココイルメチルタウリン Na
0.4
1.5
0.76
-
-
-
-
-
-
-
-
10
ラウリル硫酸 Na(SLS)
-3-
技術委員会 第3分科会
粘着テープの皮膚刺激性の評価(その9)
−保湿剤によるテープ刺激の低減効果−
副委員長
市位 政嗣
第3分科会では1989年の発足以来、粘着テープの皮膚刺激について様々な角度から検討を重ねて
いる。近年は引張貼付(伸縮性)及び貼付方向に関して検討を重ね、引張貼付では引張応力が高い
ほど、 TEWL及び発赤ともに高い傾向となり、貼付方向では、横方向の方が、常にテンションが
かかり続けるため、縦方向よりも刺激が強くなると考えられるという結果を得ることが出来た。
本年度は、新しいテーマを「保湿剤によるテープ刺激の低減効果」として、保湿剤を塗布した腕、
塗布しない腕双方に不織布テープとPEテープを反復して貼付した際の皮膚刺激を評価し、「保湿
剤塗布がテープ刺激に有効か」の検証を行っている。本テーマは、年齢や疾病等によって皮膚状態
の良くない方や皮膚がデリケートな方にスキンケアを施すことにより、刺激によって粘着テープの
使用が制限されていた方々にも快適に粘着テープを使用していただける可能性の検証を目的にし
たものである。
<本年度検討内容>
基本的な試験方法
① 保湿剤をヒルドイドローションとし、片方の腕に1週間塗布した後、両前腕にテープを反復
して貼りつける。
② テープは不織布テープとPEテープの2種類の比較を行う。
③ 測定毎に保湿剤あり、保湿剤なしの皮膚に対するテープ粘着力を測定する。
④ テープを貼る前と剥離後の皮膚の水分量、水分蒸散量を測定する。
⑤ 剥離したテープの角質細胞剥離面積を測定する。
上記方法をもって保湿剤の有無によるテープ刺激の低減効果を予備的に確認し、保湿剤の塗布の
タイミングや季節の影響等に関して若干の知見が得られたので報告する。
-4-
TOF-SIMS による皮膚浸透経路の分析
日本メナード化粧品株式会社
研究技術部門
皮膚科学第二研究グループ
主幹研究員
総合研究所
山羽 宏行
皮膚に適用する製剤の開発において、皮膚浸透性の評価は、その製剤に含まれる有効成分が目的
の部位まで浸透していることを確認し、製剤の有効性を担保するために重要である。また、皮膚に
対する安全性評価においても、製剤または製剤に含まれる物質の皮膚浸透性を評価することは、刺
激性や感作性の原因を確認する有効な手段のひとつとなる。
本研究では、皮膚に塗布された成分の角質層における浸透経路や速度を解析することを目的とし
て、テープストリップによる角質の採取と TOF-SIMS(Time-of-Flight Secondary Ion Mass
Spectrometry)による解析を組み合わせることで、角質層に浸透した成分の分布を低侵襲的に可視
化することに成功したので紹介する。
従来、皮膚における物質の浸透量や浸透速度の評価には、実験動物や摘出皮膚に試料を適用し、
皮膚中に浸透した成分を抽出し、定量装置を用いて測定する方法が一般的である。この方法では浸
透した成分の総量は測定できるが、皮膚内部に浸透した成分の分布は観察できない。分布を観察す
るためには、ラジオアイソトープや蛍光標識された成分を適用し、組織切片を用いて解析する方法
が用いられているが、解析できる物質が限定され、倫理的な観点から人体に直接適用して観察する
ことは困難であった。
今回の発表では、皮膚浸透性評価の対象物質として、医薬部外品の有効成分であるリン酸 L-アス
コルビルマグネシウム (APM)と dl-α-トコフェリルリン酸ナトリウム(VEP)を選択し、対象物
質を塗布した皮膚からテープストリップを連続して行い、各テープストリップ標本を TOF-SIMS
解析に供した。標本の表面から放出されたそれぞれに特異的なイオンを用いて 2 次元マッピングし
た結果、テープ、角質細胞、並びに角質層に浸透した APM および VEP の平面分布が確認され、
APM および VEP の浸透経路を可視化することが可能となった。また、テープストリップするまで
の時間や枚数を変えることにより、浸透速度や深さ方向の濃度変化を解析することも可能であった。
本研究の皮膚浸透性評価方法は、角質層中の成分の分布を低侵襲で、対象物質に標識を付加するこ
となく直接検出できることから、安全性および効率性の面からも有効な方法であると考えられる。
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衣類の汗臭の原因解明と製品への応用
花王株式会社
ハウスホールド研究所第1研究室
グループリーダー(主任研究員)
牧 昌孝
1.衣類から発生する汗臭に着目する背景
近年の家庭洗濯を取り巻く環境変化に伴い、生活者の洗濯も変化している。2011 年には、生活
者が汚れ落ちだけでなく、衣類から嫌なニオイ(生乾き臭)が発生することを気にしておりその不
満を解消しきれていない実態があった。更に近年では気候の温暖化傾向や節電への意識の高まりも
あり、汗のニオイを気にする生活者が目立ってきた。そこで、生活者がニオイをどのように感じ、
不満を解消するためにどのような行動をしているかを調査にて確認した。
生活者が普段気にしている衣類のニオイを調査した結果、対象者の 56.6%が「洗濯後、使用し
ていない衣類に嫌なニオイがする」経験をしていた。気になるニオイの中では、
「生乾きのニオイ」
の経験率が 86.1%と最も高いが、次いで高い「汗のニオイ」の経験率は 68.1%で、スポーツウエ
ア、Tシャツなどの衣類では「生乾きのニオイ」よりも「汗のニオイ」の方が経験率が高いことが
分かった。汗のニオイは、自分自身が不快に感じることはもちろん、外出先で周囲の人に気づかれ
たら恥ずかしい、子どもの衣類が臭っていたらかわいそうなどの不安も感じるため、ニオイ課題の
大きさとしてはより深刻と考えられた。洗濯後の衣類で気になる汗のニオイの予防や対処法として
「抗菌タイプの洗剤を使う」「使用後時間をおかずにすぐに洗濯する」などの工夫は見られるが、
十分に満足できておらず、日常の洗濯でニオイの課題を解決できることが望まれる。
2.衣類から発生する汗臭(着用汗臭)の原因物質と主な原因菌の特定
衣類の着用汗臭に関して、その原因物質と原因菌を詳細に解析し、ニオイ発生機構を明らかにす
ることを目指した。
一般家庭より洗濯後のTシャツ、肌着等23着を回収し、試験衣類とした。試験衣類を成人男性
が着用して運動を行った。試験衣類は、それぞれ所定の部分を着用前、着用後に裁断し、解析用の
サンプルとした。(★詳細な実験法は省略・・・)専門パネラーによる官能評価から、23着のう
ち16着の試験衣類において着用後にニオイ強度の増加が見られ、着用後に生活者が汗のニオイと
表現するニオイは、主に脂肪酸様臭と表現された。臭気成分分析から、この脂肪酸様臭は短鎖、お
よび中鎖の複数の脂肪酸に由来することが確認された。一方、試験衣類上の細菌の解析を行ったと
ころ、着用前後ともに Micrococcus 属細菌や Staphylococcus 属細菌等が高頻度で検出され、多くの
試験衣類で優占していた。特に Micrococcus 属細菌は、高い脂肪酸様臭生成能を有することも確認
できた。これらの結果から、Micrococcus 属細菌は衣類の着用汗臭発生の主原因菌であることが示
唆された。また、Micrococcus 属細菌は洗濯後着用前から高頻度で菌数も多く存在していたことから、
衣類の着用汗臭の抑制には、着用中に原因菌を増殖させないことに加えて、日々の洗濯の中で、原
因菌を衣類から除去することが重要であると考えられた。
3.着用汗臭(原因菌)を防ぐ衣料用洗剤の開発
着用汗臭を抑制する技術を搭載した「アタック Neo 抗菌 EX Wパワー」を2016年1月に改
良新発売した。ニオイ菌研究を基に花王が独自に研究開発した「ロングパワー抗菌成分」により、
-6-
3 大悪臭(※) の主な発生原因となるニオイ菌を 99%抑制することに成功した。ニオイ菌の中で
も、着用・洗たくを繰り返すたびに衣類に蓄積していく、これまで抑えることができなかった汗臭
菌 まで抑制するので、洗たく物を干す時に気になる生乾き臭はもちろん、着用中の衣類の汗のニ
オイや、靴下のニオイも防ぎ、一日中高い消臭効果が続くのが特徴である(※3 大悪臭;生乾き臭、
汗臭、くつ下臭)。
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薬事承認アパレル製品の開発について
―弾性ストッキングの事例―
岐阜大学 地域科学部
非常勤講師 庄 健二
1.はじめに
アパレル業界の生き残り策として、高齢化社会を迎えて、拡大する健康・医療分野の新市場への進出、
すなわち、「医療機器」として「薬事法」に承認されたアパレル製品の開発が進められている。
また、靴下業界においても「医療機器」周辺も含めて以下のような靴下類の開発も行われている。
なお、本講演で取り上げる事例は、
「肺血栓塞栓症」、いわゆる「エコノミー症候群」予防のための「弾
性ストッキング」である。
2.「弾性ストッキング」の「薬事法」上の定義
「一般医療機器」としての「弾性ストッキング」は,「四肢(手足)の静脈血、リンパ液のうっ滞を
軽減又は予防する等、静脈還流の促進を目的に使用される医療用の弾性ストッキング(腕用の弾性スリ
ーブも含む)、末梢から中枢に向かい漸減的に圧迫を加える機能を有する。」と定義されている。
3.アパレル業界の「薬事法」対応
2004 年には「弾性ストッキング」が上記の通り「一般医療機器」として「薬事法」に承認されたた
め、
「弾性ストッキング」と一般品の「雑品(靴下)」との明確な区分基準を厚生労働省から求められた。
このため、一般の靴下業界団体においても文言等の表示と表記の「自主基準」も制定された。
4.表示と表記の「自主基準」から「業界基準」へ
「雑品(靴下)」には、人体への処置や効果を類推させる文言は不可であり,美容や見た目に関する
文言のみが使用できるとする「自主基準」は「業界基準」に格上げされている。
5.「弾性ストッキング」への「健康保険」適用による新市場出現
2004 年 4 月より「肺血栓塞栓症予防管理料」が新設され、305 点=3,050 円の保険点数が病院側に
付くようになった。
「肺血栓塞栓症」予防のために、病院側から患者へ「弾性ストッキング」が貸与(実
質的には無償支給)され、静脈学会の「肺血栓塞栓症予防ガイドライン」の制定も相まって、新たな「弾
性ストッキング市場」が生まれてきたのである。
6.結論と今後の課題
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「弾性ストッキング」市場は、いったん参入してしまえば、「薬事法」による参入障壁によって守ら
れる魅力的な新市場でもあるため、国内靴下メーカーの新規参入も相次いでいる。こうした「医療機器
市場」の特性をよく理解して参入戦略を構築しなければならない。
また、「弾性ストッキング」は「医療機器」である以上、品質の保証と安全管理には細心の注意が
必要である。不具合があっても生命への危険は少ないとされるが、表示、表記の不備によっても、市場
からの回収事例も発生しているからである。
以上
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市民発の生活美学運動
∼思想の継承と探究∼
株式会社良品計画
代表取締役会長
金井 政明
高度成長を成し遂げた日本が何故、高度成熟社会を築けなかったのでしょうか?1980 年の日本
で、セゾングループの総帥であり文化人でもあった堤清二氏と氏のブレーンであった日本を代表す
るクリエイター達が目指したより良い消費社会とより良い生活者の像が、無印という立場と良品と
いう価値観を生み出しました。私達はその思想を継承・探究し、日本にとどまらず世界に向けて「感
じ良いくらし」について市民の中から考え続けています。
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