経済数学 (7/15) の略解・補足 今日はラグランジュの未定乗数法とはどういう方法なのか, という話をしました. g(x, y) = 0 の下, f (x, y) の最大値, 最小値を求めよ. という問題に有効な方法です. ラグランジュ関数 L(x, y; λ) = f (x, y) + λg(x, y) を導 入し, L(x, y; λ) の一階偏導関数に関する連立方程式を解くことで最大, 最小の候補を 見つけることができました. 問題 13.1 の解答例. (1) x2 + y 2 = 1 ⇐⇒ x2 + y 2 − 1 = 0 に注意し, f (x, y) = x + y, g(x, y) = x2 + y 2 − 1, L(x, y; λ) = f (x, y) + λg(x, y) = x + y + λ(x2 + y 2 − 1) とおく. L(x, y; λ) の一階偏導関数を計算すると, Lx (x, y; λ) = 1 + 2λx, Ly (x, y; λ) = 1 + 2λy, Lλ (x, y; λ) = x2 + y 2 − 1 だから, Lx (x, y; λ) = 0 (I) ⇐⇒ Ly (x, y; λ) = 0 Lλ (x, y; λ) = 0 1 + 2λx = 0 1 + 2λy = 0 x2 + y 2 = 1. λ を消去するため, (第一式)×y−(第二式)×x を計算して, y − x = 0, 即ち, y = x. これを第三式に代入して, 2x2 = 1, 即ち, y = ± √12 . y = x だったので, (I) の解は (x, y) = ( √12 , √12 ), (− √12 , − √12 ) の二つ. 次に gx (x, y) = 2x, gy (x, y) = 2y より, g (x, y) = 0 x 2x = 0 (II) gy (x, y) = 0 ⇐⇒ 2y = 0 2 g(x, y) = 0 x + y 2 = 1. 第一式, 第二式より, x = y = 0. ところがこれは第三式を満たさない. 故に, (II) には 解がない. 以上より, g(x, y) = 0 の下, f (x, y) が最大値・最小値を取り得るのは, ) ( ) ( 1 1 1 1 −√ , −√ . (x, y) = √ , √ , 2 2 2 2 1 これらを f (x, y) = x + y に代入してみると, ( ( ) ) √ √ 1 1 1 1 f √ ,√ = 2, f −√ , −√ = − 2. 2 2 2 2 √ √ この中で一番大きい 2 が最大値, 一番小さい − 2 が最小値である. 以上より, x2 + y 2 = 1 の下, x + y は • (x, y) = ( √12 , √12 ) のとき最大値 √ 2, √ • (x, y) = (− √12 , − √12 ) のとき最小値 − 2 を取る. (2) f (x, y) = xy + x + y, g(x, y) = x2 + y 2 − 1, L(x, y; λ) = f (x, y) + λg(x, y) = xy + x + y + λ(x2 + y 2 − 1) とおく. L(x, y; λ) の一階偏導関数を計算すると, Lx (x, y; λ) = y + 1 + 2λx, Ly (x, y; λ) = x + 1 + 2λy, Lλ (x, y; λ) = x2 + y 2 − 1 となる. 故に, Lx (x, y; λ) = 0 (I) Ly (x, y; λ) = 0 Lλ (x, y; λ) = 0 ⇐⇒ y + 1 + 2λx = 0 x + 1 + 2λy = 0 (1) x2 + y 2 = 1. λ を消去するため, (第一式)×y−(第二式)×x を計算して, y(y + 1) − x(x + 1) = 0. 左 辺は, y(y + 1) − x(x + 1) = y 2 + y − x2 − x = (y 2 − x2 ) + (y − x) = (y + x)(y − x) + (y − x) = (y − x)(y + x + 1) と変形できる. これが 0 と等しいので, y = x または y = −x − 1 が成り立つ. y = x のとき, 連立方程式の第三式に代入して, 2x2 = 1, 即ち x = ± √12 . 故に, (x, y) = ( √12 , √12 ), (− √12 , − √12 ) を得る. 2 y = −x − 1 のとき, 連立方程式の第三式に代入して, x2 + (−x − 1)2 = 1. これを 整理すると x2 + x = 0. 故に x = 0 または x = −1. y = −x − 1 だから, (x, y) = (0, −1), (−1, 0) を得る. 以上より, 連立方程式 (I) の解は, ( ) ( ) 1 1 1 1 (x, y) = √ , √ , − √ , − √ , (−1, 0), (0, −1) (2) 2 2 2 2 の四つである. 次に, gx (x, y) = 2x, gy (x, y) = 2y だから, gx (x, y) = 0 (II) gy (x, y) = 0 ⇐⇒ g(x, y) = 0 2x = 0 2y = 0 x2 + y 2 = 1. 第一式, 第二式より, x = y = 0. しかし, これは第三式を満たさない. よって, 連立方 程式 (II) は解を持たない. 以上より, g(x, y) = 0 の下, f (x, y) が最大値, 最小値を取り得るのは (2) に挙げた 四つである. これらを代入してみると, ( ) √ 1 1 1 f √ ,√ = √ + 2, 2 2 2 ( ) √ 1 1 1 f −√ , −√ = √ − 2, 2 2 2 f (−1, 0) = f (0, −1) = −1 √ 2 が最大値, 一番小さい −1 が最小値である.1 よっ て, x2 + y 2 = 1 の下, xy + x + y は √ • (x, y) = ( √12 , √12 ) のとき最大値 12 + 2, である. この中で一番大きい 21 + • (x, y) = (−1, 0), (0, −1) のとき最小値 −1 を取る. 注意. 上の問題の (2) について, 連立方程式 (1) を解く際の注意です. 連立方程式で割 り算をする場合, 割る数が 0 にならないかをよく注意する必要があります. 連立方程 式 (1) を解く過程で, (y 2 − x2 ) + (y − x) = 0 √ √ − 2 と −1 の大小比較だが, 2 < 1.5 ぐらいは知っているであろう. これから, 0.5 − 1.5 = −1 である. 11 2 3 1 2 − √ 2 > が出てきましたが, これを y − x で割ったりしてはいけません. これは y − x が 0 に成 りうるからであり, 実際に y − x で割ってしまうと, y = x が抜け落ちてしまいます. 二変数関数の極大極小を求めるときにも言えることですが, 方程式を解く際は, • 0 に成りうるもので割り算してはいけない, • どうしても割り算しなくてはいけない場合, 割る数が 0 に成り得ないことを確 認する必要がある, この二点に注意するようにしてください. 補足 (発展). ラグランジュの未定乗数法には二種類の連立方程式が出てきました. こ れの出所は授業プリントの付録 C(32 ページから 34 ページ) で簡単に説明しています. 興味があり, さらに時間的余裕のある方はそちらをご覧ください. なお, ラグランジュ の未定乗数法の使い方は試験範囲内としますが, プリント 32 ページから 34 ページは 試験範囲外とします. 4
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