私の座右銘 第435回 表紙の人 これまであまり座右の銘など意識したことも無 く、淡々と日々の診療、研究、教育に明け暮れてき たが、自 身のモットーとしてこの For the Patients を挙げさせてもらった。何だ、医者なら当たり前 のことじゃないかと言われそうだが、こと放射線 診療に当たっては重く響いてくる。 私が熊本大学の放射線医学教室に入局した19 81年頃、大学病院の放射線科では 床程度の病 2001年に教授就任後は、放射線科はやはり 画像診断やIVRに専念せねばと思い、病棟の移 はもっぱらターミナルケアや看取りであった。 くの患者さんが病棟で亡くなられ、病棟での仕事 られる患者さんが数多くおられた。そのため、多 り、仮に照射が完遂しても、再発して入院してこ 患者さんが多くおられ、照射中に状態が悪化した 的であった。そのため、病棟には手術後の再発の た患者さんに対して行うものという考え方が一般 手術が中心で、放射線治療は手術ができなくなっ 放射線治療の方が大半だった。当時は癌の治療は 床を有していた。入院されている患者さんは癌の 50 転を機に病床数を 床程度に減らした。また数年 ら晩までパソコンの前に座って、次々に送られて くる大量の枚数の画像に所見を付けるのが専らの 仕事となった。これはこれでかなりきつい仕事で ある。中には難しい症例もあり、時間がとてもか かることもある。その結果、患者さんと接するこ となく大半の時間は読影室に籠もることになって と揶揄さ し ま っ た。 米 国 で は invisible radiologist れることもある。このような環境の中、頭では分 ょうど画像診断の世界ではマルチスライスCTや 診断とIVRに費やすこととなった。その頃、ち イルは大きく変化し、医局員の活動の大半は画像 放射線科、特に放射線診断科としての診療のスタ 像診断医として何よりも大事だと考えている。 めにあるのだという気持ちを忘れない。それが画 識する、そして画像診断はあくまで患者さんのた こうには一人一人の患者さんが居られることを認 表紙の人 山下 康行 ヤマシタ ヤスユキ かっているのだが、つい機械的に仕事をこなして しまいがちである。放射線科だけでなく、麻酔科 や病理など病院の中央部門と言われる診療科は大 なり小なり、同じような状況なのかもしれない。 高速MRIが導入され、画像診断の件数が飛躍的 に増加していた。その結果、多くの医局員は朝か ︵熊本大学大学院生命科学研究部 放射線診断学分野 教授︶ 射線治療の業務が完全に分けられた。その結果、 後には放射線治療科も新設され、診断の業務と放 その中にあって、一枚一枚の画像は患者さんに とって生死をかけた重要な画像であり、画像の向 10
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