海外安全対策情報 1 治安・社会情勢 (1)殺人件数は,2015年5月以降

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海外安全対策情報
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治安・社会情勢
(1)殺人件数は,2015年5月以降14ヶ月連続で,前年同月数を上回る傾向が続いている。
また,2015年は,4年ぶりに前年比で増加したが,2016年6月末時点において,2015
年を更に10%上回るペースで殺人事件が発生している。連邦政府による治安対策は,犯罪組織主
要人物の相次ぐ逮捕等,一定の成果をあげている一方, 対立する犯罪組織間の抗争もしくは治安当
局と犯罪組織間の戦闘は,白昼を問わず発生しており,現場付近の一般市民が銃撃戦に巻き込まれ
たり,流れ弾による被害を受けたりする可能性がある。
(2)強盗,窃盗等の一般犯罪被害は,首都メキシコ市を含め昼夜を問わず引き続き発生している。
公共輸送機関である地下鉄,ミクロブス(ペセロ等の扉のついていない乗り合いバス)内でも犯罪
が多発しており,流しのタクシー(リブレ)の運転手や,運転手と結託した共犯者らによる強盗事
件も発生していることから,それらの公共交通機関の利用は避けるべきである。
また,携帯電話アプリを使用して手配した車両の乗務員による強盗事件等も報道されていること
から,その使用には十分に注意をする必要がある。
(3)外務省はゲレロ州アカプルコ市の治安に関する注意喚起(海外安全情報(スポット情報)4
月28日付け)を発出している。同市では犯罪組織の対立等により殺人事件が相次ぎ,治安が著し
く悪化していることから,同所への渡航・滞在には注意を要する。
(4)外務省はオアハカ州,ゲレロ州,タバスコ州及びミチョアカン州における CNTE(教育労働者
全国協議会)の抗議活動に関して注意喚起(海外安全情報(スポット情報)6月22日付け)を発
出している。CNTE は,バリケードによる道路封鎖,空港の閉鎖,デモ行進等を引き続き実施してお
り,また,これらの騒乱に乗じた略奪行為なども発生しているため,これらの抗議活動やデモ行進
等には決して近づくことがないよう,報道等を通じて最新の治安情報の入手に努め,状況に応じて
適切な安全対策を講じる必要がある。
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一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
(1)全国一般犯罪
内務省(SEGOB)が発表した第1四半期(4~6月)の犯罪発生件数報告によれば,総
犯罪発生件数は394,509件と前期(本年1~3月)と比較し10.6%増加した。犯罪
種別の内訳は以下のとおり。
ア
窃盗
138,696件(前期比
3.1%増)
イ
殺人
4,950件(前期比
11.0%増)
ウ
強盗
42,032件(前期比
5.1%増)
エ
強姦
3,447件(前期比
18.2%増)
オ
誘拐
272件(前期比
10.5%増)
(2)メキシコ市一般犯罪
メキシコ市においては,第1四半期(4~6月)の総犯罪発生件数は45,531件と,前
期(本年1~3月)と比較して8.7%増加した。犯罪種別の内訳は以下のとおり。
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ア
窃盗
19,229件(前期比
4.7%増)
イ
殺人
231件(前期比
6.9%増)
ウ
強盗
5,123件(前期比
4.3%減)
エ
強姦
179件(前期比
90.4%増)
オ
誘拐
13件(前期比
30.0%増)
(3)邦人被害事案
邦人被害一覧(2016年)参照
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テロ・爆弾事件発生状況
(1)邦人被害事案
届け出なし。
(2)邦 人 以 外の 被 害事 案
ア
4月11日午後5時30分ころ,ミチョアカン州サモラ市にあるスーパーに,バイクに乗
った犯人等が侵入し,店内から金銭を奪い,商品棚に爆発物を投げつけたものの作動しなか
った。その後さらに別のスーパーに,同様の犯人等が侵入し爆発物を投げつけ爆発し,その
後小規模の火災が発生した。
イ
5月5日未明,メキシコ市ベニトフアレス区ナポレス地域にあるコンサルタント会社の事
務所に爆発物が投げ込まれた。爆発により出入口が被害を受けた。
ウ
5月20日,メキシコ市南部のトラルパン区にある INR(国立リハビリセンター)に,爆
破予告の匿名電話があり,患者・職員併せて 150 名程度が避難した。その後治安当局が現場
へ駆けつけ,現場を操作したが爆発物と見られるものは発見されなかった。
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誘拐・脅迫・恐喝事件発生状況
内務省が発表した犯罪発生件数報告によると,誘拐届出件数は2013年に過去最高であり,
その後減少傾向にある。しかし,依然として職場や自宅のみならず,ホテル客室への電話による
脅迫事件が発生している。
(1)邦人被害事案
なし
(2 ) 邦 人 以 外の 被 害事 案
ア
4 月1 3 日 未明,ベラクルス州ミナティトゥラン市で,州の治安当局により同市の公立病
院の元院長である女性医師と他1名の女性医師,計2名が解放された。元院長等は約2週間前
に同市で誘拐された後に行方がわからなくなっていた。
イ
5月28日夜,ギリシャのサッカーチームでプレイする元メキシコ代表のサッカー選手が,
タマウリパス州シウダッ・ビクトリア市でのパーティーからの帰宅途中で武装グループに拉
致された。タマウリパス州政府の発表によれば,被害者は事件発生の24時間後に治安当局
により救出された。被害者は軽傷を負っているものの生命に危険はないとされる。身代金の
支払いなどの詳細は不明。
ウ
6月30日,メキシコ州ネサワルコヨトル市で,同市の警察官3名と女性1名からなる恐
喝グループが逮捕された。恐喝被害者は自らと家族の身の安全と引き換えに,複数回に渡り
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計10万ペソ程度を要求されており,同市近郊の村の土地を売却して得た金を渡すところだっ
た。受け渡し時,容疑者らは治安当局が現場にいることに気づいたために衝突となり,車両
で逃走しようとしたが周囲を囲まれたため投降した。
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日本企業の安全に関わる諸問題
2015年には,邦人を被害者とする強盗事件が合計16件(うち8件がけん銃使用,4件が
刃物使用)発生,前年比で6件増加したが,2016年6月末時点で既に9件(うち2件がけん
銃使用,3件が刃物使用)発生しており,2015年を更に上回るペースで邦人被害が発生して
いる。強盗犯に頭部を切りつけられて重傷を負ったケースの他,大声をあげる等して抵抗したた
め,暴行を受け負傷したもの,他には奪われた被害品を取り返そうとしたため暴行を受けたケー
スがある。強盗事件等に遭った場合は,抵抗する・大声をあげる・逃げる等,犯人を刺激するよ
うな行動はくれぐれも避ける必要がある。また,強盗被害の多く(2015年16件中12件,
2016年9件中5件)が日没後に発生しており,日没後の屋外における行動については,細心
の注意を要する。
一方で,犯罪組織による殺人事件等凶悪犯罪の被害者は,大半が敵対する組織や治安当局であ
り,日本企業や在留邦人が直接の攻撃対象となり,被害が発生しているわけではない。しかし,
今後,いずれかの犯罪組織が一極支配する状況や,治安当局の取締り強化によって一部の犯罪組
織が弱体化するなど,いわゆる負け組が発生した場合又は,犯罪組織が解体され統制がとれなく
なった場合,分派的な活動が行われるようになり,一部の者が,外国人や外国企業をターゲット
とした誘拐や恐喝及び強窃盗などの犯行に及ぶ場合なども想定されうる。また,犯罪組織間の抗
争がレストラン等の公共の場で行われることもあり,邦人が巻き込まれ,被害に遭う可能性もあ
る。
以上