Dragonborn vs OverLord (どらごんぼーんvsおーばーろーど) ID:94853

Dragonborn vs OverLord (どらごんぼーんvsおーばーろーど)
溶けない氷
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DF化したものです。
小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作
品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁
じます。
︻あらすじ︼
ソウル・ケルンでお義母様からのクエストをこなしていたドヴァー
キンは相変わらず唐突に異世界に飛ばされてしまう。
この世界の常識がちょっと欠けたために、そこで巻き起こる数々の
珍事件とは・・・
ドヴァーキン、また異世界へ行く │││││││││││││
目 次 │││││││││││││││││││││
1
│││││││││││││││││││││
サングイン │││││││││││││││││││││││
精霊で遊ぼう
ガゼフ頑張る │││││││││││││││││││││
出会い │││││││││││││││││││││││││
ワバジャック
6
13
17
24
29
!!
!
ドヴァーキン、また異世界へ行く
どこまでもどこまでも荒野と荒野とか墓場、雷雲に雷雲が今日も今
日とて続くソウル・ケルン。
知らない人から見れば地獄だし、現に亡霊とかアンデッドとかアン
デッドとかがうろつき回っている。
ぶっちゃけどう見ても地獄です。
そんなソウル・ケルンを一頭の馬に乗った人間が駆けていく。
いや、ただの馬と人間では無い。
馬の名前はアクヴァル、ソウルケルンに囚われた死霊の馬である。
スカイリムをよく駆け回っている。
人間の方は・・・というかもう人間じゃない、吸血鬼の王になった
男。
彼はドヴァーキン、世界を貪るアルドゥインを倒した伝説の同胞団
の導き手にして伝説のアークメイジにして伝説の聞こえし者にして
伝説のナイチンゲールにして以下略。
事はこうである、妻のセラーナの母上様のヴァレリカから錬金に使
いたいのでソウル・ケルンに最近生えている魂のニルンルートを採取
してきてほしいというものだった。
高貴な吸血鬼の王の仕事にしては只の雑用係のような気がする。
彼はモラグ・バルへの反逆者。
支配を司るデイドラの王その人からメイスと吸血鬼の王の力を授
かり、この世に破壊と混乱をもたらさ・・・なかった。
伝説の錬金術師の腕をふるって、吸血鬼達に人を襲わずとも生きて
いける植物由来の吸血の薬を開発し人間と吸血鬼の共存を図ったり
もした。
まぁ分からず屋で糞ったれのシルバーハンドやドーンガードや人
間を見下し食料としか見ないアホな吸血鬼がドヴァーキンを暗殺し
ようとしてきたが伝説の暗殺者〟聞こえし者〟でもある彼に敵うは
ずもなく片っ端から喉笛をかっ切られて魂はソウル・ケルンに囚わ
れ、体はナミラの指輪装備で美味しくもぐもぐ。
1
殺した相手の血は薬に、肉は料理に、魂は符呪に、骨になったらス
ケルトンにして荷物持ち係という余さず塵まで錬金に有効活用する
ドヴァーキンの冷酷さには確かに世界は震え上がった。
ここ1年くらいは嫁と綺麗に掃除した家になったヴァルキハル城
でイチャイチャしていた。
だいたい、パパ上殿が嫁と娘から愛想を尽かされたのは星霜の書に
のめり込んで家の掃除ができないズボラさも手伝ってたんじゃない
だろうか。
王の城なのに家中に食い滓が散乱するわ、蜘蛛の巣は張り放題、ス
キーヴァは繁殖し、壊れたら壊れっぱなし。
ぶっちゃけ汚家でした。
というアホな吸血鬼は説得する
伝説の大工スキルを活かしても城を清潔にリフォームするのに3
週間もかかった。
なお荒れ果てた感じがいいんだ
のもめんどいので
片っ端から伝説級の﹃モラグ・バル︵撲殺︶﹄した。
元からアンデッドだが死霊にしたら文句も言わない、今は門番にし
てるよ。
そんなこんなで今日も今日とてソウル・ケルンですっかり馴染みに
なった死者の商人やデイドラの商人と取引を終えたドヴァーキンは
奇妙な空間に開いた穴に気がつく。
・・・・・嫌な予感しかしないので無視して進もうとしたその瞬間、
凄まじい吸引力で乗っていたアクヴァルごと吸い込まれてしまっ
た・・・
どこだここはと気づけばドヴァーキンは何処とも知れない森の中
に立っていた。
そこでふと気づく、ああまた何処かのデイドラの王子の悪戯に引っ
かかったのだ・・・と
またサングインの悪ふざけか、この前も飲み屋で一緒に飲み明かし
たら気づいたら、この吸血鬼の王が真っ裸でソルスセイムのホーカー
の巣の真ん中で寝ていた・・
2
!
いや、シェオゴラス
ワバジャックでホワイトランにチーズの雨を
降らせたのがまずかったのか
いやぁむしろ喜びそうなんだがなぁ。
ドーンブレーカーをタンスの隅に放っておいたメリディアか
正直、心当たりが多すぎて全くわからない。
夜の森でじっくり考えても仕方ないのでアクヴァルと使い魔を召
喚して移動することにした。
︵そういえばかれこれ半年くらい寝てないな︶
夜が明け、朝になりドヴァーキンは眠気を覚えた。
吸血鬼は夜行性なのだ、大抵の吸血鬼は日に当たると深刻に体力も
落ちるがドヴァーキンにとってはちょっと暑いなくらいにしか感じ
ない。
馬を駆ってから一時間ほど経つと向こうに城壁が見えてきた、城塞
都市なのだろう高い壁だ。
と言ってもドヴァーキン自らが改装し強化したヴォルキハル城に
比べれば貧相なものだが。
スカイリムでは見かけたことのない壁、この事実にドヴァーキンは
戸惑う。
︵今回はまた随分と遠くまで飛ばされたものだな・・・早く帰れればい
いのだが︶
まずはここがどこかを知らなければならない。
とはいえ今のドヴァーキンは吸血鬼。
症状は薬で抑えられているとはいえ、人里に歓迎される存在ではあ
るまい。
あまり目立たないようにしなければと思い、吸血鬼の王族の鎧は目
立ちすぎる事に気付いたドヴァーキンは着替える事にした。
その奇妙な仮面をつけた大男が入ってきた時、衛兵詰め所は騒然と
なった。
骸骨の馬を駆る黒一色の禍々しい鎧に身を包んだ男、まるで地獄か
ら飛び出した悪魔の騎士だった。
門の前で馬を降りると地獄の馬はどこかへと消えてしまったが、男
3
?
?
?
は消えない。
右手にはこれまた禍々しい彫刻が施されたメイス。
﹁ま、街にはどういった用件で・・﹂
﹂
男の発する凄まじい圧力に尋問するはずの衛兵長も冷や汗が止ま
らない。
﹁・・・・・・・・・・仕事で、通航料は幾らですかな
男の発する圧力に衛兵長は即座に銅貨で3枚ですと答えてしまっ
た、更に危険なマジックアイテムの検査がありますとも。
すると男は
﹁銅貨・・・・すまないが今持っている通貨はこれだけだ、両替しても
らえるかな。
それと危険なマジックアイテム・・・いや特には無いな﹂
と言って金貨を取り出した。
衛兵長は少々お待ちをと言って通航料の釣りを差し出すと通して
しまう。
﹂
︶
﹁それと、この街には冒険者組合があると聞いたのだがどちらですか
な
と黒い鎧の男が尋ね、ありがとうと残して去って行った。
︵・・・このあたりではデイドラの鎧はそんなに珍しいのかな
ば誰でもできる。
もっともドヴァーキン程の伝説の鍛冶職人が手がければ普通の物
とは一線を画する。
これに伝説の符呪をも加えれば、いかなる物理的攻撃も魔法も疫病
や毒も撥ね退ける伝説の鎧が出来上がる。
もっとも吸血鬼のドヴァーキンに毒や疫病は効果が薄いが。
デイドラの執事に預けておいたデイドラの鎧一式、これこそがこの
ドヴァーキンの脳内では人里で目立たない装備筆頭だったらしい。
確かに碧水晶や金ぴかのドワーフも負けず劣らずに目立つが・・・
このドヴァーキンは吸血鬼となり、嫁と家に引きこもっているうち
に世間様の常識からずれてきたらしい。
4
?
デイドラの鎧は確かに高価だが作ること自体は手馴れた職人なら
?
?
︵それにしても通行税とはな・・・・この辺りはスカイリム程治安が良
くないようだ︶
街に入るのに通行税をとられる、なんてリフテン以来ではないだろ
うか。
もっとも、あの時には﹃モラグ・バル︵威圧︶﹄で払わなかったが。
︵それにしてはあの衛兵の装備、あまりいい代物ではなかったな︶
危険な地域では衛兵の装備もそれに見合ったものになるはずだが
彼らはあまり仕立ての良くない武器鎧を装備していた。
あれではスカイリムの小規模な山賊すら武器には少なくともオリ
ハルコンを使うものが居るというのに品質の良くない鉄では・・・と
伝説の鍛冶職人の目で見てしまう。
︵ま、意味のないことか・・・︶
と、デイドラの鎧を装備したままヴァンパイア・ドヴァーキンが
入って行ったのはリ・エスティ│ゼ。
自身はホワイトランの自宅向かいの酔いどれハインツでサングイ
ンと飲みくらべする普段着なので気づいていないがこの世界の人間
には﹃モラグ・バル︵威圧︶﹄しっぱなしも同然だ。
5
ワバジャック
ドヴァーキン冒険者組合にやってきた。
挨拶だよ﹃モラグ・バル︵威圧︶﹄
受付嬢が倒れたよ
冒険者組合というものについて考えてみると要は街の人間の依頼
を一括して受け付け
それを冒険者がこなして報酬を受け取るといったものらしい。
冒険と言ってもドラウグルやファルメルで一杯の遺跡に突っ込ん
だり・・・
と言ったものは殆ど無いらしい。
顔を何故か引きつらせていた受付の女性から勧められた初心者冒
険者向けの講義の内容はそんなものだった。
そこで受付の女性に近頃オブリビオンに関わる奇妙な現象が確認
いえ、それだけでは・・・具体的に
されていないかさりげなく尋ねてみた。
﹂
﹁奇妙な現象に関わる依頼ですか
はどのようなものでしょうか
?
大抵この程度の事件はスカイリムでは毎年のよう
実際に文字こそ読めないが銅級冒険者に与えられる仕事は薬草採
りレベルらしい。
つまり同胞団でいえば剣や盾を先輩に届ける仕事から始める新入
とはいえ、自分の冒険者ランクは銅にしか過ぎない。
全く奇妙な世界だなと思った。
に起きている気がする・・・
そうだろうか
﹁いえ・・・そのような事件は聞いたことがありませんが・・・﹂
顔を引きつらせて
ゴのタルトに変わったり、とにかく奇妙な事件だと伝えるとますます
大量発生したり空から焼けた犬が降ってきたり、人間がチーズやイチ
るやつと説明したらますます引いていた︶がうろついてたり、人狼が
︵女性はドレモラを知らなかったので真っ赤な顔をして角を生やして
そう言われたのでドヴァーキンは空間に裂け目が現れてドレモラ
?
6
!!
?
取だとか街道に現れた〟モンスタぁ〟とかいう野獣の駆除くらいら
しいのでそんなものだろう。
いきなり砦に屯する山賊を皆殺しにしてこい、さっさと行け、でき
なきゃ死ね。
くらい平然と言われていたスカイリムの帝国軍の入隊試験に比べ
ればかなり穏健だなと思った。
クエストアイテム
〟銅のプレート〟を手に入れた
・・・・
冒険者組合の建物を出たドヴァーキンは午後を過ぎたところだが
まだ陽は高く、
人間の生活リズムに合わせで行動するために夜まで派手な行動は
慎もうと思った。
こちらの方にもお馴染の武器屋、錬金店、雑貨商があるらしいので
まずは商店街を見て回ろうと思った。
こ の 地 方 で は デ イ ド ラ の 鎧 は 珍 し い と い う こ と に 気 づ い た の で
アークメイジのローブに革の腕当て、ブーツ、更にモロケイの仮面を
被ってごまかすことにした。
この地方では銀貨や銅貨という物があるらしい。
まさに驚きだ
銀はシルバーハンドの武器
スカイリムでは何を売るにも買うにも金貨だったドヴァーキンか
らすればかなり驚きだ。
銀や銅をお金に使う
!
無い鉱物だけに興味がわいた。
伝 説 の 鉱 石 掘 り で も あ る ド ヴ ァ ー キ ン は 興 味 が 湧 い た の で セ プ
ティム金貨を冒険者組合の近くで営業していた両替商に両替してく
れと言ったところ見たことも無い金貨だと言われてしまった。
﹁旅のものでね、遠方の国で使われている金貨なんだが﹂
と伝えると美術商では無いので金の重さに応じた交換しかできな
いと言われてしまった。
7
!
銅に至っては稀に見かける装飾品に使われてる程度で、あまり縁の
や宝飾品に使われているが、
!
ではそれで良いと伝えるとセプティム金貨1枚は銀貨200枚の
価値が有るが、
手数料がかかるので198枚と交換してもらった。
こちらの金貨はセプティムと比べて半分くらいの重さらしい。
銀貨を持ったドヴァーキンはまず武器屋に向かった。
スカイリムは危険だと言われている、ドヴァーキンにとってみれば
街道を外れればともかく街道沿いに旅しさえすれば精々、狼やサーベ
ルキャットや山賊にトロル、時々ドラゴンが襲ってくる程度なのでそ
んなに危険とは思えないが。
何と言ってもどこだろうと武器と防具は旅の基本、膝に飛んできた
矢も防げない防具で出歩くなんて考えられない。
・・・・・
王都の武器屋でも一番大きい店にやってきたドヴァーキンはそこ
の陳列棚に並んでいた商品を見て
8
︵目ぼしいものは無いな︶
という判断を下した。
並んでいるのは何れも鋼鉄が殆どで慣れ親しんだドワーフ製もエ
ルフ製も無い、黒檀に至っては聞いてみたがそんな物は聞いたことが
無いと店主に怒られてしまった。
オリハルコン製という名前からオーク製はあるらしいがミスリル
やアダマンタイトという聞いた事がない鉱物からできた武器もある
らしいがこの店には置いていないらしい。
あまりにも高価なのでオーダーメイドでしか作っていないそうだ。
上等そうなガラスケースに入ったオリハルコン製の剣をじっと見
ながら、ため息をついている男と目があった。
もっとも仮面をつけているので向こうからは見えないが。
ドヴァーキンは男の事はともかく店員に鍛冶道具はどこに置いて
いるのかとどこかと尋ねた。
﹂
無論、武器を作るのに借りたいんだが﹂
﹁鍛冶道具なんざどうするんだ
﹁
?
と答えると男はあっけにとられていた。
??
客は武器屋には武器を買うために来るのであって、作るために来る
んじゃないと訳のわからない答えだった。
と、店にいた戦士らしい男の目がドヴァーキンがこれを研ぎたいの
だがとカウンターに置いたノルドの剣に落ちる。
﹁貴公、素晴らしい業物をお持ちですな﹂
と、ドヴァーキンの剣を見て賞賛の声を挙げた。
モラグ・バルのメイスは目立つらしいのでデイドラ執事にうっかり
預けたまま忘れていたノルドの剣を装備するドヴァーキン。
自分の種族の誇りでもあるノルド様式の剣を褒められて悪い気は
しなかった、もっとも山賊から剥ぎ取った代物だということは置いて
おいて。
ドヴァーキンは男の下げている剣を見てもいいかと尋ね、鞘から抜
いてみると
︵・・・・造りがガサツだな。鍛造も荒いし使われている鉱石の質も良
た。
成る程、この男は言ってみればこの街の従者のようなものなのだ
な。
自分も9つの要塞の従者になったのでよくわかる。
なった前と後では態度がガラッと変わったのだから。
だが、それにしてはこの男の装備は貧相だ。
山賊ならともかく、従者ともあろう者がつけていい装備ではない。
男・・ガゼフという者が話すにはこの度、戦士を率いて町々を荒ら
す山賊の征伐に出かけることになったが貴族派の妨害で王国の秘宝
9
くない︶
見れば、目の前の男が同胞団の男たちと同じく歴戦の勇士だという
事はわかる。
﹂
今ならともかく、あの頃の皆からは﹃貧弱な坊や﹄と呼ばれてしまっ
た未熟な自分では敵わない程の戦士なのだろう。
このような店に足を運んでいただくとは
店番をしていた店員がその男の顔を見て椅子からたち
﹁せ、戦士長殿
!
と男に自分の時とは打って変わって礼を尽くした態度を取り始め
!
の装備の使用許可が下りなかった。
あまつさえ王国を守るこの戦いを私事呼ばわりされ軍を動かす事
もできなかったのだという。
どこの世界にもあるのだな、そういう内輪揉めが。
自分にしても吸血鬼の王になったら古株の吸血鬼に謀反を起こさ
れそうになった、まぁ結局は全員﹃モラグ・バル︵撲殺︶﹄する事になっ
たが。
ここの上級王はそう簡単にはいかないらしい、面倒なことだ。
﹂
それにしても従者か・・・・上級王の従者ともなればかなり情報が
知らされている筈・・・
ここは恩を売っておくのもいいだろう。
鍛冶職人だとは・・・・・﹂
﹁もしよければ、私が剣と鎧を鍛えましょうか
﹁お主が
いがその造りは今まで見た騎士の鎧が何だったのかと言う程。
ガゼフは呆気にとられるしか無い、確かに魔法の力こそ感じられな
﹁なんと・・・見事な・・・﹂
今の時点では。
時点では王国の至宝と比べても遜色は無い。
素材こそありふれた鋼鉄だが、素材の良さを極限まで引き出しこの
え上げた。
これを研ぎ、叩き鍛えて更に強化し伝説級のスチールメイル一式を鍛
それを見ていたガゼフはますます驚いてみせるが、ドヴァーキンは
ンゴットを取り瞬く間に鋼鉄の剣と盾鎧一式を鍛え上げた。
と、鍛冶服と手袋、指輪に首飾りをつけると、そこにあった鋼鉄のイ
ドヴァーキンはなら実証してみせましょうと鍛冶場に入っていく
驚いたように顔を見合わせる二人だったが
ります﹂
﹁ああ、故あってこの格好をしておりますが私は鍛冶職人もやってお
にも鍛冶職人には見えまい。
今のドヴァーキンの見た目は明らかに怪しい魔術師である、お世辞
?
だが、この程度で終わるドヴァーキンでは無い。
10
?
﹁ところでアルケイン符呪器はどこにあるか知っているか
ないので
﹂
﹂
﹁しかしドヴァーキン殿は魔術師とおっしゃられたが杖はお持ちでは
後、台所のオーブンの修理や地下の清掃とかも。
ければならないのだ。
自分は一刻も早く帰らなければならない、そして中庭の塀を直さな
なに気長だとは思えない。
セラーナも4000年以上の眠り姫だったが起きている今はそん
このような例ではクエストは長期間に渡る例が多い。
クンダが見えないことから別の世界だと考え始めていた。
ドヴァーキンはこの世界は慣れ親しんだ2つの月のマッサーとセ
︵拠点を作るにしても、製作道具一式は欲しいな︶
なぜか屋外にほったらかされている例もあるくらいなのだが。
的だ。
大魂石が必要で魔術師の領分だと考えられているがある程度は一般
ドヴァーキンは不思議に思う、アルケイン符呪器は確かに製作に極
どこぞの遠方の国の宮廷魔術師なのだろうか
と仮面
︵あの鍛冶の腕前、それに明らかに強力なマジックアイテムのローブ
成る程、成る程とガゼフは変に納得したようになっている。
ただ・・・王宮の秘宝殿にならばあるやもしれませんが﹂
にもありません。
﹁宮殿・・・ですか。いえ、私の知る限りではそのような者はこの王国
ける五芒星と水晶がついた器械だと問うが
ドヴァーキンは王の宮殿や古代遺跡にある魔法の力を装備品につ
これにも面食らってしまった。
が返ってくる。
と、当然のように店員に尋ねるがそんなものは知らないという答え
?
なと思い
何故、杖を一本しか持ち歩いているないのかと不思議に思ったもの
11
?
そう言われれば街中で見かけた数少ない魔術師は杖を持っていた
?
だったが冒険者組合でそれとなく聞いてみると、どうやら杖を媒体に
魔法を行使するらしい。
位階魔法というもので素人や達人魔法みたいなものかと思ったが
もっと細かく分かれていたのが印象的だった。
を装備した
一本で色々できる杖
と、思ったが流石に魔術師が杖一本で一つの魔法というのは変だと
思い・・・
あ、あるじゃないか
ドヴァーキンはワバジャック
?
いつの間にかチーズを召喚できるようになった優れものだ・・ある
いは・・相手をチーズにするのか
12
!!
!
出会い
流石に街中でワバジャックを使う気にはなれなかった。
空から巨大なチーズが降ってきて街を押しつぶしたり、井戸の飲み
水がスクゥーマになったりしたら目も当てられない。
ガゼフにあれこれと道すがらアルケイン符呪器について説明した
ドヴァーキンはそのような物は見たことが無いと言われてしまった。
それどころか武器に永続的な魔法を込めるなどというのは王国で
は滅多に行われないのだとも言われてしまった。
そ の よ う な 高 度 な 技 術 は 帝 国 か 法 国 く ら い で し か 行 わ れ て お ら
ず・・・
﹁お恥ずかしいことですが、我が王国ではその・・・魔術師はあまり重
用されておりませんでして﹂
さもあらん、スカイリムでも魔術師はあまり歓迎されていない。
ノルドで魔術師を志すものも少ない、まぁノルドは魔法より斧の方
を好むというのもあるが。
とはいえ、戦闘に向けて武器と防具に符呪をするのはごくありふれ
たことだが。
﹁そうですかそれは弱りましたね・・・では、このあたりで人気の無い
静かな場所はありませんか。
符呪を行うには静かな場所で集中する必要がありますので﹂
それなら、と戦士長のガゼフは自分の家を使ってくれて構わないと
答えた。
本心から言えば、優秀な職人だと見込んだドヴァーキンをその出来
栄えによっては王国のお抱え職人として囲い込みたいという思惑も
あった。
戦士長の従僕が作ったプレートメイルを外の荷馬車に積み込んで
やってきたのは街にある戦士長の家。
︵ほう・・・なかなかいい家だな︶
自分が初めて買ったブリーズホームよりはずっと広いし手入れも
行き届いている。
13
入ってみたが、華美な装飾のない素朴な家の内装が主人のガゼフの
人となりを示している。
この街で見かけた貴族の華美な装飾がケバケバしい屋敷に比べ、小
ぶりだがジョルバスクを思い起こさせる。
ドヴァーキンはこっちの方が好みなのだ。
ガゼフは家の外で待っていた兵士らしい男と話した後
﹁ドヴァーキン殿は、2階の客間を使われるとよろしいだろう。
私はこれから兵の詰め所で部下達の編成にでかけるので夜には戻
るが、必要なものがあったら使用人に言ってくれ﹂
そう言ってガゼフは馬で出かけて行った。
﹁それでは、これから鎧に魔法の力を込めるのでしばらく一人で集中
させてもらいたい﹂
そう言ってドヴァーキンは2階に上がるとドアを閉め、持ち物のH
aven bagを取り出すとその中にそそくさと入った。
14
まさか誰もありふれた布袋に人が入るとは思わないだろう。
袋の中にはこの王国の宝物庫ですら及びもつかない金銀財宝が山
のようにうず高く積もり足の踏み場もない。
ドヴァーキンは旅の間で手に入れた宝物やガラクタなどは片っ端
からこのバッグに放り込んでいる。
金貨だけで一体何十万枚あることやら。
とはいえ、ヴォルキハル城の至宝、最愛のセラーナに比べれば路肩
のゴミでしかないが。
﹂
﹁それにしても・・・・あんな粗末な装備しか売っていないとは・・・
いや、ここの装備が高度すぎるのか
正直、あの程度の防具に符呪をする必要などないと思い、この世界
符呪器に近づき、横に置いてある宝箱から中魂石を取り出す。
ればやっつけ仕事もいいところだったが。
あの適当に作ったスチールメイルにしてもドヴァーキンにしてみ
符呪も加えれば単体でドヴァーキンに勝つ職人はいないだろう。
から無理もない。
ドヴァーキンの鍛造技術はスカイリムでも1、2位を争うと評判だ
?
では貴重かもしれない魂石を大量に消費する気にはなれない。
黒い星があるのがあまり大量の人間を殺すのはまずいだろう。
スカイリムと違って山賊という手軽な補給源が豊富にあるとは限
らないのだ。
趣味で作った毛皮の鎧ですらあれよりはマシだろうが、見栄えとい
うものもある。
ドヴァーキンは符呪上昇の
重装・体力・弓術・水中呼吸・両手武器・魔法耐性・毒・疾病・・・
などの重戦士向けの符呪を鎧につけていくと程なくして伝説級符呪
の施された鎧と炎と体力吸収の両手剣が完成した。
ガゼフの重戦士としての潜在能力の高さもあることだし、話に聞い
た大抵の山賊に遅れをとることはまずあるまい。
この世界では王国の至宝ですら及ばないだろう装備だがドヴァー
キンは
15
﹁まぁまぁだな﹂
実際に、彼がアルドゥインとの決戦に使ったドラゴンプレートの鎧
に比べれば紙のように貧弱で頼りない。
とはいえ、ありふれた素材で作った品物にしてはそんなには悪くあ
るまい。
︶
料理鍋でエルスウェーアフォンデュを肴にホニングブリューの蜂
蜜酒を一杯引っ掛けて自分の仕事に満足する。
︵そういえば・・・この世界には蜂蜜酒はあるのだろうか
﹁ス チ ー ル メ イ ル の 符 呪 は 終 わ っ た の で こ の 鎧 と 武 器 を ガ ゼ フ 殿 が
くると言っていたのを思い出したがまだ日は高かったので
一杯引っ掛けて外に出るとドヴァーキンは戦士長は夜には帰って
ない。
魂石や蜂蜜酒といった必需品は節約しなければならないかもしれ
︵ドレモラ商人に仕入れてもらうよう頼んでおくか︶
ワインやエールでは駄目なのだ。
蜂蜜酒が流れているのは嘘じゃないのだ。
ノルドには蜂蜜酒は欠かせない、吸血鬼になろうがノルドの血液に
?
帰ったら渡しておいてくれ﹂
と使用人に一言言っておくと、また屋敷から走り去ってしまった。
とにかく落ち着きのない男だとは嫁からもよく言われている。
・・・・・・・
しばらく走って繁華街にやってきたドヴァーキンは改めてこの王
都が広いことを痛感した。
︵それにしても賑やかな街だな。ソリチュードくらいはあるかもしれ
ん︶
ドヴァーキンはどこに行くのも走る、別にノルドはどこに行くにも
︶
走る民族じゃないが。
︵うん、あれは
露店で菓子を売っているところを通り過ぎたところに小ぶりな子
供がいた。
仮面をつけているのが異様だが、この地方では外出するときに仮面
をかぶる風習でもあるのか
イビルアイのドヴァーキンへの第一印象がこれである。
︵︵変なお面・・・・・・︶︶
にこう思った
・・・・その子供もドヴァーキンの被っている仮面を見て両者互い
?
確かにアンデッドの被っていたものを剥ぎ取ったので趣味はお世
辞にも良くないが・・・
16
?
ガゼフ頑張る
﹁おっと、失礼。珍しい魔法の仮面だったものでね、つい見とれてし
まったよ﹂
事実、ドヴァーキンから見れば魔法の光を仄かに放って見えるイビ
ルアイの仮面はかなり珍しかった。
ドラゴンプリーストの仮面と比べれば光は淡いが、貴重なマジック
アイテムだということはわかった。
︵あんな符呪アイテムがあるとはな、結構この世界もこのあたりでは
知られていないだけで符呪はありふれているのかもしれない︶
アークメイジのローブを着て去っていくドヴァーキンを見ながら
︶
イビルアイは不審げな目を向けていた。
︵あいつ、いったい何者だ
イビルアイは齢250歳の大吸血鬼である、吸血鬼の力はほぼその
年齢に比例する。
ドヴァキンがイビルアイのマジックアイテムの仮面に直感的に注
不釣り合いにも程があるぞ︶
目したように、イビルアイもドヴァキンが装備する凄まじい魔力の込
だが銅で、あの装備
められた数々の装備に驚いていた。
︵王国の冒険者か
?
﹂
それぞれが時空を歪ませるほどの魔力を持つ。
﹁イビルアイ、こんなとこで何してるの
と、よく知った声に呼ばれて振り返る
な・・﹂
それならさっき組合で聞いたけどね。
﹁豪 華 な 装 備 の 新 人 戦 士 に 魔 術 師
金持ちの道楽にしても変な話だ
とんでもなく豪勢な装備の新人戦士だって﹂
﹁変な銅級冒険者
スターがあまりにも奇妙なもんだったんでな・・﹂
﹁ん、ラキュースか・・・いやな、さっき通りがかった銅のマジックキャ
?
なんて覚えないし
彼らの認識は間違ってはいない、この世界では普通は魔術師は剣術
?
17
?
ドラゴンプリーストの仮面はドラゴンから定命のものに与えられ
?
?
剣士は剣士に専念する。
ラキュースは神官でありながら剣もある程度は使う、ある程度は。
ドヴァキンのように剣も魔法も鍛冶も吸血鬼も人狼もスゥームも
符呪も錬金も盗賊業も弓も商売も夜の営みも全てが超一流なのがお
かしいのだ。
そう中二病と250歳児が話をしている間にもドヴァキンは相変
わらず忙しく走り回りあちこちの露店や店に顔を出してはいろいろ
と買い物をしていく。
︵牛肉とバター、ニンニクにミルクに塩は欠かせないな。できるなら
オーブンのある家も買いたいところだが・・︶
スカイリムではなぜか直ぐになくなってしまっていた食品を買う
ドヴァキン。
ガーリックパンやニンニクたっぷりのビーフシチューが好物だけ
にオーブンが無いのは寂しい。
というパンに肉や野菜を
18
スイートロールも作れないし・・・・あ、ワバジャックがあった。
露店で売っていた串焼き肉やハンバガ
挟んだ食べ物も買ってみた。
︶
く、只の回復薬でも金貨にして最低でも1、2枚の価値があるらしい。
姿を消していられる透明の薬や水中呼吸の薬といったものではな
︵それだけ絶大な効果があるということか
きたが魔法のポーションは結構な値がするらしい。
それにだんだんとこの世界の物価基準が買い物を通してわかって
そこまでの時間は無い。
ジェイ・ザルゴあたりなら興味を持つかもしれないがドヴァキンに
い。
ものだがこの世界では魔術溶液に魔法を溶かし込んで作るものらし
おおよそ、ポーションというものは素材を2、3種類混合して作る
たな︶
︵あちこち見て回ったが・・・ポーションにしても大したものは無かっ
ちなみにドヴァキンは伝説の美食家でもある、本物は殺した。
︵このテリヤキというのは美味いな、帰ったら早速作ってみよう︶
?
?
それならば体力を一口で全回復させるのも当然だろう。
︵いずれにしろ・・不用意に錬金薬を使うのは考えものだな︶
ドヴァキンの伝説の錬金スキルを持ってすればトロールですら一
滴で即死する毒薬を作れる。
そんな危険な物を作る技術が広まれば必ず悪用するものも出てく
るだろう・・・
シシスの栄光のために悪用した本人が言うことではないが。
一通り市場を歩いて回ったドヴァキンはもう陽が落ちかけている
ことに気づき
︵そういえば、あの戦士長はもうそろそろ戻っただろうか・・・︶
と思い、ガゼフの家に戻ることにした。
宿屋も見て回ったが、あの安っぽい宿屋ではドヴァキンは満足でき
ない。
H a v e n B a g の 中 の 方 が マ シ だ。 F o u r S e a s o
ns Innとまではいかなくともウィンキングスキーヴァ並みの
部屋とノルド流のサウナくらいつけるべきだ。
調理鍋やオーブンも自由に使えないのでは話にならない。
・・・・
ガゼフの家に戻ったドヴァキンは家の使用人から戦士長は既に山
賊の討伐に向かったという話を聞いた。
更に手紙と金貨の入った袋を手渡されてしまったが・・・
手紙は読めないので使用人に読んでもらうと・・・・
﹃ドヴァキン殿、またも山賊が現れ王国民が虐殺されたとの報が入っ
た。
事は一刻を争うのでこのような形でしか謝意を示せず申し訳ない。
貴公の鍛えた鎧に剣、確かに頂戴いたしたが目を見張るほどの逸
品。
いずれきちんとした形で礼を示したく思うが、生憎手持ちの金はこ
れだけしかない。
あ の 武 具 に 見 合 う 額 と は 到 底 思 え ぬ が せ め て も の 礼 と 思 い 受 け
取ってほしい。
19
使用人には言ってあるのでこの家も自由に使っていてくれて構わ
ない﹄
ドヴァキンは金貨にして500枚を受け取ったがこれが多いのか
少ないのかは判別がつきかねる。
ガゼフの事を律儀な男だとも思い、実際問題として拠点の必要性を
痛感していたドヴァキンはガゼフの家を当面の行動拠点にさせても
らおうと思った。
村を助けたモモンガに、馬を下りて頭を下げる戦士長に周りがどよ
めいた。
だがモモンガ自身も目の前の戦士長の装備に目を奪われていた。
いや、ナザリックの基準でいえばごく普通と言えるがこの世界での
︶
HP自然回復に水中呼吸、防御・攻撃・
基準からはとてつもなく逸脱していた。
︵〟上級道具鑑定〟・・・な
対毒、魔法上昇にHP吸収、火属性ダメージだと
ユグドラシル並みの追加効果てんこ盛りの装備を目にして、モモン
ガはこの世界の人間が弱いという認識を改める。
︵流石は戦士長というだけはあるか・・・〟遺産級〟の性能はあるマ
ジックアイテムで全身を固めるとは、この世界のレベルは思っていた
ほど低くないということか・・・︶
一方でガゼフは装備した鎧と剣に驚くばかりだった、全身鎧はかな
りの重量があるはずなのにまるで体が逆に軽くなったように感じい
つもよりも素早く、普段着を着ているよりも身軽に動けるようになっ
ている。
︵報酬が安すぎたと恨まれていないといいがな・・・︶
このような凄まじい性能の装備はそもそも金で買える代物ではな
いだろう。
それこそ法国か帝国の宝物殿の再奥に安置させられるべき代物で、
不敬にもガゼフは王国から貸し与えられた至宝の装備が唐突に安っ
ぽく思えてきた程だ。
しばらくして法国の漆黒聖典と対峙したガゼフの部下は召喚され
た天使たちの攻撃で重傷を負うもの多数。
20
!
!
だが魔法耐性強化のガゼフ自身は鎧がこの攻撃を吸収し、鎧自体の
防御力とガゼフの身体能力に重装上昇も合わせて突破に成功。
天使たちに接近戦を挑んだガゼフの剣の技は籠手に込められた両
手武器上昇の効果もありことごとく打ち破り、隊員は第3位階の攻撃
魔法の〟ファイアボール〟や〟チェインライトニング〟を放つもこ
れも炎耐性、雷撃耐性のアクセサリーで緩和。
中距離から距離をとって戦おうとするも強化されたガゼフは間を
一気に詰め、次々と隊員は倒れていった。
更にニグンが召喚した︿威光の主天使
ドミニオン・オーソリティ
﹀に苦戦しつつもこれを撃破。
灼熱の追加効果が込められた剣は恐怖に目を開いたニグンの首を
跳ね飛ばし、その体と首を燃やし尽くした・・・・
︵危ないところだったな・・・︶
全身に傷を受け、満身創痍でもはや剣を杖代わりにしなければ立つ
こともできない状態でガゼフは思う。
これだけの強力な装備を持ってしても、苦戦した〟漆黒〟
自分を抹殺するために例え王国の装備を持ち出されても確実に暗
殺できる実力者を揃えてきたのだろう。
法国にとっての誤算は二つ、恐るべき力を持ったナザリックの出
現。
そして最後のドラゴンボーンにして吸血鬼の王にして伝説の以下
略の出現。
モモンガは
﹁デミウルゴス、配下のエイトエッジアサシンに連絡しろ。
あの戦士長に監視の目をつけ、この世界の強者とその周辺の戦力を
測るのだ。﹂
リモートビューで見ていた限りではあの漆黒何チャラはそんなに
強い敵ではないように感じられた。
むしろ、ガゼフの装備の方がよっぽど気になった。
︵あの剣、シャルティアのスポイトランスの劣化verといったとこ
21
ろか
だが、二つの能力を同時に持たせるのは結構なレアアイテム扱いだ
よな・・︶
性能は遺産級だが能力が同時に二つというのはその中でも比較的
生産に手間がかかる。
無論、より上位の伝説級や神器級なら基本スペックでのごり押しは
可能だが。
一方でドヴァキンは・・・・
アルヴァクを召喚し、馬を走らせること20km
20kmというがソウルケルンの馬はこの世界のスレイプニルに
も匹敵する駿馬。
デイドラの鎧に身を包み、夜の草原を死霊の馬に乗ってかける姿は
死神そのもの。
瞬く間に目的地に到着したドヴァキンは
﹁お、いたいた﹂
1km先の真夜中の闇だが吸血鬼の王にとっては昼間よりも余程、
視界ははっきりしている。
みたいな連中の幹部の
街中で聞いたスクゥーマもどきの売人に黒い粉の取引について聞
き出したドヴァキンはこの街の盗賊ギルド
一人が取引の場に現れるらしい。
六腕の一人のなんとか言う奴を奴隷にしようと現れたのだ。
そこで最初の手がかりの取引場所に用心棒として現れる八本指の
ど知っているはずもない。
残念ながらドヴァキンが締め上げた街の売人は幹部連中の場所な
えてもいたのだが。
う奴は殺し、使えそうな奴は吸血鬼にして支配すればいいと単純に考
する事が近道だと考えたドヴァキンは最初は﹃八本指﹄の連中を逆ら
そのためには非合法な事に慣れた盗賊ギルドのような連中を支配
ており、
情報収集の必要性を〟聞こえし者〟でもあるドヴァキンは重視し
?
22
?
﹁なんだっけ
エロ
セロ
そうゼロだ﹂
?
填しながらドヴァキンはそう呟く・・・
チンピラを入れてあるアズラの黒い星でモラグ・バルのメイスを充
﹁楽しみだ、使えるフォロワーがちょうど欲しかったところだしな﹂
なかなか強いらしいが・・・・所詮は定命の者。
?
﹁モラグ・バル︵笑顔︶﹂
23
?
精霊で遊ぼう
﹃Laas Yah Nir﹄
ドヴァキンのオーラウィスパーによって半径数十kmの全ての生
物のオーラを感知し近くをはっきりさせる。
﹁ふむ、20人か﹂
八本指の麻薬取引に来た人員は売り手と買い手を合計して20人
程度。
ドヴァキンはどんな殺し方をしようかと考え、今回は得意な弓を
使ってみようと考える。
﹃神弓:ゼフィール﹄を構え、更に射撃に適したナイチンゲールの鎧を
装備する。
﹁ナイチンゲールは夜に鳴く﹂
灯りひとつない真夜中に1km離れていようとナイチンゲールに
かかれば目の前の藁人形を撃ち抜くのも同然。
更にドヴァキンの伝説級弓術と合わせ、その早打ちは並ぶものがな
い。
﹃ Tiid Klo Ul﹄
ドヴァキンは時に命じて時間を止める。
瞬時、ドヴァキンは弓に矢をあてがい弦を引きしぼり矢を放つ。
ただの鋼鉄製の鏃にすぎないが、空力特性に優れた矢は超高速で麻
薬ディーラーの元へと向かう。その数二十本、時を止めていたために
時間差はほぼ0。
・・・・・
その気配に気づいたのは彼の天賦の才能か、闇に身を置くものの経
験のなせる技か。
周囲を警戒していた者たちの中では最も間違いなく、六腕最強のゼ
ロはそれを察知できたのだろう。
一瞬の間すら置かず次々と男達の膝を狙ったかのように飛来する
矢。
24
!
黒塗りのそれは闇に溶け込んで人間の目で捉えられようはずもな
い。
ゼロは飛来する矢をギリギリ体を捻って回避する事に成功したが
他の男達はそれほど運も実力もなく飛来した矢を膝に受けて膝から
下をもぎり取られる。
﹂
超音速で飛来した矢だ、まともに受ければ脆い人間なぞ簡単に木っ
端微塵になる。
﹂
俺の足がぁァぁ
﹁ガァァァァ
﹁足が
この暗闇で矢の飛んできた方向を察知し、建物を盾にしようという
ゼロは咄嗟に身を翻し、建物の陰に入った。
る。
夜に男達の悲鳴があちこちから響くが、真の恐怖はそこから始ま
!
!
蒼の薔薇
いや、連中に弓使いはいないはずだ、じゃァ朱か
判断力と素早さは流石は六腕最強の怪物。
︵何者だ
︶
!?
?
当然だろう、どこの世界に単独で20本の矢を同時に暗闇の中の1
km先の膝に当てることのできる人間が存在するというのか。
ゼロは咄嗟に知覚・身体強化のポーションを飲み次の襲来に備え
る・・・・
︵ほう、一人は避けたか。どうやらあれが話しに聞くなんとかいう奴
だな︶
建物の陰に入ったとしても無駄な事、オーラウィスパーにかかれば
例え地中でもその存在は完治できる。
ドヴァキンはアルヴァクに跨り、19人の男が呻いている場へと乗
り付けた。
す る と 建 物 の 裏 に コ ソ コ ソ と 隠 れ て い た 男 が 馬 の 足 音 を 聞 き つ
け・・・
壁の裏側から壁ごと貫いて強烈な拳の一撃を見舞ってきたが、ド
ヴァキンはそれを
25
!
頭によぎるのは2つの王都のアダマンタイト級冒険者チーム。
?
﹁Fus﹂の一言ではじき返し男、ゼロは吹き飛ばされた。
吹き飛ばされても空中で体制を整え地面に綺麗に着地したのはさ
すがというべきか。
ドヴァキンも感心する、最弱のスゥームでもスケルトンの群れ程度
ぎで試してみたが並みの人間なら一言で
なら木っ端微塵になる威力があるのにこの男は耐えてみせた。
王都に来るまでに追い
かった。
それとも朱の方か
﹂
﹁テメェ・・何者だ。蒼か
何を言っているんだ
﹂
?
囲で待機しているはずだ。
﹁冒険者・・・ああ、これのことか
﹂
魔法を使えるレンジャーなぞ最低でも白金級、だとしたら仲間が周
い・・・・
スゥームに吹き飛ばされ肋骨が痛む、何本か折れているかもしれな
ムを魔法だと思っていた。
ゼロは目の前の男の装備からレンジャー系統だと考え、先のスゥー
俺を捕まえようって腹だろうがそうはいかない、死ぬのはお前だ﹂
﹁どうせお節介な冒険者連中の一味だろうが。
﹁
?
だが、ゼロはドヴァキンの余裕とは裏腹に内心焦りと驚愕を隠せな
バラバラにできることは証明されている。
?
?
・・・正直、この男でどれくらい遊べるのか見てみたい気がしたの
肉体と知識だけ従者化するだけのつもりだ。
別にそんな気はない、只殺して魂はソウル・ケルン送り。
だな﹂
お断りだよ、化け物。テメェらの仲間になるなんざ死んでもごめん
﹁何かと思えば、まさか化け物へのスカウトとはな。
と、ドヴァキンは面を外し、爛々と赤く光る目と牙を見せた。
二つ、お前を捕まえに来たわけではない﹂
﹁お前は勘違いをしている、一つ私は冒険者ではない。
銅のプレート。
とドヴァキンが見せたのはあろうことか最弱の冒険者の証である
?
26
?
でドヴァキンは左手を虚空に向けた。
瞬時、闇が裂けてそこから彼の冷たい従者が姿を表す。
召喚﹁氷の精霊﹂
﹁何かと思えば、テメェ召喚術士だったのかよ。ならなぁ
﹂
ゼロは瞬時に距離を詰め、ドヴァキンに襲い掛からんとする。
召喚術士を倒せば召喚されたモンスターは消えるのがセオリー。
それに召喚術士は肉体的に戦士よりも弱いのが常識。
だが、召喚された氷の精霊は一瞬で拳を振り上げ、ゼロの前に立ち
はだかった。
ゼロの拳と氷の精霊の拳が合わさると吹き飛ばされたのはゼロの
方だった。
単純に言えば、氷の精霊の方が遥かに質量が大きい。
そしてその氷の硬さは今まで彼が打ち砕いてきたミスリル程度と
は桁が違う。
︵この硬さ、オリハルコン並みかよ。こいつが奴の切り札ってわけか︶
これだけの強力な召喚モンスターを使役できるのは噂に聞く法国
の神官戦士並みだろう。
ゼロは召喚術士に攻撃を加えれば勝機はあると考え、精霊の周りを
スピードでかくらんしようとするがその巨体に反して素早い氷の精
霊はゼロに休む暇を与えない。
ましてや氷の精霊と違い、ゼロは生きている人間だ。
化け物
﹂
腕力という天賦の才が加わった時に奇跡が起こった。
ゼロの渾身の一撃が硬い氷の精霊の軸を捉えた。
巨体と耐久力の高さから一撃では効果が薄いそれも2撃、3撃と加
﹂
えるうちにヒビが大きくなっていく。
﹁これが、俺の力だぁぁぁぁ
一閃、大地を揺るがし轟音を轟かせるゼロの一撃が氷の精霊を打ち
砕いた。
27
!
打ちあうたびにスタミナと体温をごっそり持って行かれる。
﹁人間様を・・・なめるなよ
!
だが、ゼロの凄まじい膂力と並外れた運動神経そして生まれ持った
!
!
ゼロも疲弊し、その拳は凍傷を負っている。
だが彼には勝利はもう目前だという確信があった、あれだけ強力な
召喚獣を呼び出せばもはや召喚士は精神力を使い果たし何もできま
いと。
MPの切れた後衛など前衛の一撃で粉砕される。
・・・・・・・・・・・・・・・
﹁よくやったな、ではもう一度だ﹂
﹂
と、ドヴァキンは今度は2体の氷の精霊を召喚した。
﹁な、なんだそりゃぁぁぁぁぁ
夜の闇に響くのはゼロの悲痛な叫びだった。
28
!
サングイン
あの後、ゼロのHPが文字どおりゼロになる直前まで﹁氷の精霊﹂で
タコ殴りにした後
﹃モラグ・バル︵撲殺︶﹄したドヴァキン。
死体を吸血鬼の従者で蘇生させフォロワーにするとゼロが生気の
﹂
無い瞳をして立ち上がった。
﹁起きろ、お前は何だ
﹁ご主人様、あなた様の奴隷です﹂
﹁よし、では私に他の幹部の名前と居場所を教えるのだ﹂
六腕、そして八本指の知りうる幹部の名前と住所を挙げるゼロの抜
け殻。
魂を黒い星に囚われた今のゼロは、記憶と経験はそのままの空っぽ
な器にすぎない。
とはいえ、これから八本指を支配下に置きスカイリムへの帰還を果
たすまでの使い捨てとしては上出来だろう。
﹁よろしい、では取引は襲撃されたがお前が撃退し取引自体は成功し
たと連中には伝えろ。
そこいらに転がっている奴は私が始末しておこう﹂
﹁はい、ご主人様﹂
そう言って膝から下を吹き飛ばされて呻いていた元手下を次々と
木から逆さに吊り下げ魂縛の肉屋のダガーで喉笛を掻っ切るドヴァ
キン。
流れ出た血は壺に満たして血抜きをしそこに薬草を加えて血の薬
を次々と作っていく。
薬草で作ることも可能だがここに必要な材料があるとは限らない。
更に19人の人間の装備を剥ぎ取り、皮を剥ぎ取って肉をパーツご
とに保存箱に入れていく。
ナミラの司祭でもあるドヴァキンにとっては兎を捌くのも人を捌
くのも同然。
なら腐ってそのままに打ち捨てられるより有効活用すべきだろう。
29
?
ノクターナル様のご加護あらたかな鎧を汚したくなかったのでま
たしても着替えるドヴァキン。
肉屋のエプロンにブーツ、手袋、更になぜかLeatherFac
eまでかぶって作業するドヴァキン。
どう見てもamerican psychoです、ありがとうござ
いました。
しばらくすると吊り下げられた19体の骸骨と材料がどっさり採
れたので料理をすることにした。
調理鍋に塩となんか色々とスクゥーマを混ぜていく。
蜂蜜酒を飲みながら料理するのは危険です
﹁ デ ス ペ ル に 銀 の イ ン ゴ ッ ト、上 質 の ル ビ ー に 吸 血 鬼 の 遺 灰 に ス
イートロール。
後は煮込んで待つだけ、簡単だな﹂
流石は伝説の美食家だけあってレシピも常人とは違う。
30
どこからともなくリュートを取り出すと、伝説の吟遊詩人のスキル
を駆使して歌い始める
〟完敗をしよー、和歌さーと佳子に クナーンの時はnow終わり
をtu│ge│ru│〝
だが、その美声に誘われたのか思わぬ来客を受けてしまった。
怪しい、というか木に死体が吊り下がっているど真ん中で悪魔に生
贄でも捧げるような格好で
料理しながら歌い踊る人間のどこに怪しくない要素があるという
のか。
そして、現れたのはなんと予想を覆してサムことサングインさん
だった。
﹂
ま、そんなことはどうでもいいか﹂
﹁イェーイ、相変わらずはっちゃけてるようだな。定命の者よ。
いや、今はもう違うのか
﹁やぁ、飲んで歌って馬鹿騒ぎしていくかい
﹁当然だろ、ほれ酒も持ってきたぞ・・・しかし野郎二人じゃつまらん
きたいことはあったが真面目に付き合うだけ無駄だと知っている。
サングインの性格をよく知っているドヴァキンからすれば色々聞
?
?
と思って
色々連れてきてやったぞ﹂
サングインが手をサッと振るとそこには巨大なテーブルに座った
呑め飲め
﹂
酒飲みと酒飲みと死体やドラウグル、ドレモラやシーカー後色々二足
歩行じゃない奴が現れました。
﹁ハハハハハ、今日も無礼講だ
みんなで酔いましょう。
作者も酔っ払っいながら書いているので何が何だかわかりません、
その後は王都で嘔吐するまで二次回の予定です。
でした。
最後はみんなで殺し合いをして朝になったらお開きにするつもり
みんな、とても楽しそうです。
トゥッーしています。
知 っ た よ う な お 爺 さ ん が ワ バ ジ ャ ッ ク で ホ ン ニ ャ ラ を ト ゥ ル ッ
み潰されました。
テーブルの下ではトロールが酔いつぶれていたところを巨人に踏
ブルに撒き散らしています。
あるものはテーブル向かいのドレモラに叩き割られて脳髄をテー
みました。
あるものは本に没頭しているシーカーにブラッドワインを突っ込
あるものは隣にいた飲み仲間で食事を始めました。
あるものは酔って割れたワインボトルで殴り合っています。
がっている荒野であちこちに灯りを盛大につけて飲み始めました。
サ ン グ イ ン と ド ヴ ァ キ ン と 愉 快 な 飲 み 仲 間 た ち は 死 体 が 吊 り 下
!
武器を捨てておとなしく投稿しろ
﹂
ところがそんな場所に不幸にも蒼い女性たちが駆けつけてしまい
ました。
﹁そこの怪しい連中
!
八本指の麻薬密売部門が大規模な取引をするという情報を得て急行
していた。
本来ならば、もっと早く到着していたはずだが情報を仕入れるはず
31
!
ラキュースを始めとする蒼の薔薇のメンバーはこの日、この場所で
!
だった密売人の一人が突然殺害されたために場所の特定に時間がか
かってしまった。
無論、殺害したのはドヴァキンだが。
﹁かつてのhero,垢のラグなる ロリクsted kara 旨
を刈ってやってきたー﹂
そんなラキュースに目もくれずにドヴァキン一行は赤のラグナル
を歌いながら飲み食いで盛り上がっていた。
あちこちに死体、切り取られた首、腸が飛び散っているが真のノル
ドはそんなことは気にしないのだろう。
32