各国比較:EU

第12回 各国比較:EU
公共政策大学院
鈴木一人
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参議院選挙に関して
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小選挙区(一人区)と大選挙区(2-6議席)の混合
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一人区での野党共闘
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前回(2013年)与党29対野党2→今回与党21対野党11
無風の2人区、激戦の複数区
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与野党複数候補→党内競争の難しさ(票割)
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接戦における第三党の存在
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幸福実現党の獲得票数>与野党の票差
比例代表
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非拘束名簿式→候補者名と党名の選択が可能
集票戦術への影響
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都市と農村、組織票と無党派層
団体票(労組など)を集中させやすい→党内順位に影響
政党の得票が少ないと個人が大量得票をしても当選しない
選挙制度による戦術の混在と混乱→経路依存的問題
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比較の視点
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近代国家の成立過程
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制度の比較
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現代にいたる国家体制がどのようにできたのか
制度形成からその継続→経路依存性(path dependence)
選挙制度、行政制度、政党制など
制度の特徴を理解する→体系化された規範(政治文化)
政策の比較
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特定の政策に焦点をおいて比較する
どのような政策に優先順位をつけているのか
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EUの成立過程
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普仏戦争、第一次、第二次世界大戦
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没落していく欧州の再生
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欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC:1952年)
欧州経済共同体(EEC:1958年)
冷戦の一角としてのEU→EU=NATO=CE体制
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仏独の和解を永続的なものにする→主権のプール化
CE→欧州評議会:欧州人権規約などを制定
冷戦の崩壊→旧共産圏の安定
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EU拡大→EU市場に入る代わりにEUルールを受諾
統合の深化→単一通貨、シェンゲン協定
「規制帝国」→ユーロ官僚による支配
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EUの制度的仕組み
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EUは国際機関なのか?
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加盟国による機関→一国一票ではない(加重投票制)
国家による拒否権の剥奪→特定多数決
EUは国家なのか?
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単一市場、単一通貨、共通外交政策…
「民主主義の赤字」→民主主義による制御ができない
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欧州官僚による立案→理事会の決定→欧州議会での承認
欧州アイデンティティ→動ける者と動けない者
欧州委員会
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総局(DG)ごとに異なる権限
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農業政策、通商政策、競争政策(独禁法)などは強い
教育政策、文化政策、福祉政策、外交防衛政策などは弱い
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政治文化・規範
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Ever Closer Union
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四つの自由
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ブリュッセルでの会議→エリート間のSocialization
多様性の中の統合
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単一市場でのモノ、ヒト、カネの移動の自由と創業の自由
日常的なコンタクト
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政策ごとの統合を進め、限りなく連合に近づいていく
各国のアイデンティティや文化を残したまま統合
「大文字」の統合と「小文字」の統合
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大文字の統合:恒久平和、豊かさ、グローバルな存在感
小文字の統合:日常に不可欠になる欧州
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特殊な(sui generis)な政体
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民主的な「正統性」の欠如
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新自由主義的な原理
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EUが結果を生み出す限り人々が受け入れる「正当性」
リーマンショック、移民の流入→「正当性」の毀損
グローバル化の調整→日米との競争、域内の保護の失敗
単一市場における競争原理→「負け組」の救済は国家
単一市場を機能させるための規制→抑圧的
エリートと非エリートの格差
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欧州で活躍できるエリートと置いてけぼりの非エリート
EU拡大による「安いエリート」の大量移動
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