英国のEU離脱問題が石油・天然ガス開発に 与える影響について 2016年7月21日 調査部 古藤 太平 1 本日の報告内容 1. はじめに 2. 石油・天然ガス需給に与える影響 3. 産業、企業に与える影響 4. スコットランドの英国からの独立問題 に関する報道 5. その他、石油・天然ガス開発動向に関 連する報道、等 6. 結び 2 はじめに (1) 英国とEUの関係 • 1952年 欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC) ベルギー、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、 オランダ、ドイツ • • • • 1967年 1973年 1993年 1999年 欧州共同体(EC) 英国がECに加盟 欧州連合(EU) 単一通貨ユーロ導入 英国は参加せず • 2016年 英国が国民投票でEU離脱を選択 3 はじめに (2) • 6月23日 英国民投票 • 27-28日 欧州理事会 • 28日 スコットランド議会、EU残留方針 • 7月5日 保守党党首選出投票 • 13日 メイ首相就任 • 15日 エネルギー・気候変動省再編発表 • 年内(?) 離脱通知 • ~2018年末(?) 離脱協議/合意 4 石油・天然ガス需給に与える影響 (1) 市場への影響 • 投票結果が判明した直後、原油価格は一旦 下落したものの1週間程度のうちに落ち着いた かに見られた。 • 7月5日にイタリアの金融機関の不良債権問題 が報道されたのを契機に英国のEU離脱問題 がEU全体の問題に影を落とすのではないかと の懸念が拡がり、(株式市場や英ポンド為替 相場と共に)原油価格も下落し、その後も不安 定な動きが続いている。 5 石油・天然ガス需給に与える影響 (2) ドル/bbl 別添カラー資料5あり 原油価格の推移(2016年5月~7月) 54 52 50 48 46 44 42 40 WTI Brent Dubai 6 石油・天然ガス需給に与える影響 (3) 市場の注目ポイント • 分かれる見方 石油・天然ガス市場はグローバルなので英 国とEUとの関係はあまり影響しない。 前例の無い長期に亘るEU離脱交渉過程に よる不確実性/先行き不透明感が原油・天 然ガス市場に良くない影響が及ぶ。 • 英国のEU離脱問題により、市場の注目点が 需給均衡というファンダメンタルな要因から短 期的な憶測にシフトするか 7 産業、企業に与える影響 (1) • 石油・天然ガス開発 米ドル建ての油価が堅調に推移すれば(ポ ンド為替相場の下落により)原油生産者にと ってはポンド建て収入が増えるが、英国内 向けに天然ガスを供給する企業にとっては 新規の開発投資が難しくなる。 英ポンド以外での収入を主とする企業(BP、 Shell等)にとっては英国内の投資が容易とな る可能性もあるが、先行き不透明感の及ぼ すマイナスの影響も。 8 産業、企業に与える影響 (2) • シェールガス開発 英国は天然ガスを中心に45%のエネルギー 需要を輸入に頼っており、安定供給を確保し ようとするのなら国内のシェールガス開発が 進むことになろう。(Lord Teverson, IOD 7/14) • 労働市場への影響 サービス産業にとっては労働者の自由な往 来が制限されることは問題となることから、早 急に体制を整えて対応する必要がある。 9 産業、企業に与える影響 (2) 別添カラー資料6あり 英国原油生産(2010~2015) 千b/d 1,500 1,300 1,100 900 700 500 2010 2011 2012 North Sea 2013 Other 2014 2015 IEAに基づき作成 10 スコットランドの英国からの独立問題に関する報道 (1) • スコットランド独立の住民投票 6月23日の国民投票においてスコットランドは 残留支持派が多数(62%)を占めた。スコット ランド国民党は再度英国からの独立是非を 問う住民投票を実施することを主張。 ただし、前回の住民投票時(2014年9月)は油 価が1バレル当り90ドル台であった。英国か ら独立してEUに残留するには収入源を確保 する必要がある。 11 スコットランドの英国からの独立問題に関する報道 (2) • 北海油田開発 スコットランド国民党が住民投票を再度要求し ている。スコットランドの独立は北海油田開発 の管轄にとって不安定要因と考えられることか ら、新規の開発投資が滞る可能性がある。 他方、既に生産を行っている油田については ポンド安によるコスト押下げ効果と相俟ってむ しろ生産が加速されるという見方も。 (PON 7/18) 12 その他、石油・天然ガス開発動向に関連する報道 (1) • 環境・気候変動問題 新体制下では、石油・天然ガス開発の所管は エネルギー・気候変動省からビジネス・エネル ギー・産業戦略省に統合されることに (一部はビジネス・イノベーション・技能省に移管) 環境・気候変動問題の優先順位が下がり温暖 化効果ガス排出削減への対応が注目される。 また、EUにとっても環境・気候変動問題の負担 配分や実施時期について再検討する必要が 生じるとの見方もある。 13 その他、石油・天然ガス開発動向に関連する報道 (2) • 米国 英国のEU離脱が石油・天然ガスの需給構造に 影響することはないが、英国内で生産する米 企業にとってはコスト減となる。 • ロシア 英国は欧州・ロシアの天然ガスを必要としてお り、欧州・ロシアも英国市場を必要としている。 • イラン 英国がEUの枠組みの中で提供しようとしてい た取引の決済に影響が出るかも知れない。 14 まとめ (1) 今後の注目ポイント • 英国内の議論の収斂の方向性 まずはEU離脱に関する英国内の議論がどの ように収斂していくのか。 欧州理事会に対する離脱の通告の時期 英国がどの関係から離脱し、どのような関係 を維持し、或いはどのような関係を構築しよう とするのか、不確かなことが多い。 15 まとめ (2) • 石油・天然ガス開発への影響 エネルギーの供給確保や経済の安定化の為 に英国の新政権がどのような政策を打ち出し てくるか。 北海油田やシェールガス開発への投資促進 環境・気候変動問題への対応 スコットランドの独立問題への対応 16
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