早成バイオマス・ケナフ炭化物による 室内ホルムアルデヒドの低減 研究の背景と目的 渡邊 拡 空調機器の普及に伴い、その効率化のためにより高気密な住宅を求めた 結果、室内空気汚染の問題はVOCやホルムアルデヒドなどを含め深刻化し た。しかし、建築基準法の改正によって、建材から室内へのホルムアルデヒド 放散は減少し、室内空気中のホルムアルデヒドの問題は鎮静化しつつある。 しかし、現状の把握は未解決の部分もあるため、測定をする必要が依然とし てある。また、家具などの中における空間の空気汚染問題は、表面化してい ないものの、隠れた問題であり、低減策の指針を得る。 農学研究科 准教授 実際の住空間での汚染物質の実態調査を、捕集管により行う。また低減策 ■ キーワード のモデル実験として、低温恒温器中のデシケータ中において、ホルムアルデ ヒドなどのバイオマス及びバイオマス炭化物の吸着能による低減効果を明ら ・ 住環境 かにする。ケナフは早成植物で、半年あまりで2m近くに成長するため、大き ・ 健康 いボリュームのバイオマス資源の安定した供給が可能である。ケナフは外来 ・ 生活 種であるが、その種子は鋭いトゲを有し鳥に食されることもなく、ほぼ真下に ・ 環境分析 落下する事から、限られたスペース内で栽培すれば生態系への影響はないと ・ 環境材料 されている。また一方で、間伐材は大量のバイオマス資源であるが、林業自 体後継者が不足しており、間伐の作業は現状では不定期にボランティア等で 研究の概要 行われており、定常的に安定した供給を行い難い状況にある。またケナフは その材質特性から軽く、比較的柔らかく、取り扱いがしやすく、加工も非常に 容易である。このことを考慮しても、ケナフを利用することは非常に有意義で あると考えられる。また、ケナフ自体の組織構造的特徴から、非常に多孔質 体であり、多大な吸着能力を有していることが期待される。栽培事態も容易 ■ 技術相談に応じられる関連分野 で、ケナフを炭化して商品化した場合にも低コスト化を実現できる。一方で、実 ・ 材料由来の VOC 測定 際の新築住宅内におけるホルムアルデヒドの問題は沈静化しつつあるが、居 ・ 新築住宅内 VOC 測定 住者が持ち込む家具類には規制がかけられていないため、家具や調度類内 ・ バイオマスの炭化、賦活 部におけるホルムアルデヒドによる汚染は深刻であり、衣類や食器類に付着 したホルムアルデヒドのにおいによる苦情は後を絶っていないのが現状であ る。本研究では、調度類内のホルムアルデヒド濃度の実態を把握しつつ、ケ ナフ炭化物の吸着能を実証し、実際の調度類内ホルムアルデヒド濃度低減 し、より快適な日常生活を送ることを可能にする。 新築住宅内におけるVOCなどの汚染物質については、様々な研究者によ セールスポイント ってその解決策が模索されている。しかし、家具などの内部についてのデー タなどについては得られていない。それらの基礎的なデータ及び解決策の指 針が得られることが可能であると考えられる。また、身近な問題でありなが ら、シックハウスという問題に隠れてきた家具などの中における空間の空気 汚染問題を、一般家庭で簡便に解決できるということを念頭に、入手しやす い材料で吸着させることにより解決できるものと考えられる。従って、身近に あるバイオマスを利用し、汚染物質濃度の低減を可能にする。 バイオマス・炭化物 吸着 揮発成分 イメージ図 VOC シックハウス問題 ホルムアルデヒド 塗料 接着剤 建造物用壁・床材 非木材バイオマス炭化物としてケナフ炭化物を利用し、家具や調度類内部から発生したホルムアルデヒドによ る空気汚染の低減を目的としている実証研究である。環境に配慮した材料・ケナフ炭化物を用い、ホルムアルデ 今後の展望 ヒド低減能に関する具体的なデータを得ることができる。更に、小空間用の家庭用ホルムアルデヒド除去製品の 開発研究を目指している。 ■ その他の研究紹介 過去に取り組んでいた研究 ○ 室内空気中に存在する放射性物質(ラドン、Rn)に関する研究 ○ 住宅の換気回数と、気密度(有効開口面積(隙間))に関する研究 ○ 建築材料から放散する揮発性有機化合物(VOC)及び新築住宅室内VOCに関する研究
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