理解するための - e

理解するための
ボケ症状を示すお年寄りの特徴を次のようにま
は、この特徴にあてはまる例である。
かりなのに、﹁今日は一日中家にいた﹂というの
ハ・1原則
とめてみた。
記憶障害はボケの最も基本的な症状で、﹁記銘力
第1法則”記憶障害に関する法則
一番最後に残った記憶の時点になる。
ていく現象をいう。﹁その人にとっての現在﹂は、
での記憶が、現在から過去にさかのぼって失われ
﹁記憶の逆行性喪失﹂とは、蓄積されたこれま
低下﹂﹁全体記憶の障害﹂﹁記憶の逆行性喪失﹂と
いう、3 つ の 特 徴 が あ る 。
たびに忘れてしまうからである。
とである。同じことを何十回繰り返すのは、その
とをいう。ボケのお年寄りは、身近に世話してく
に対してひどく出て、時々会う人には軽く出るこ
ボケの症状がいつも世話している最も身近な人
第2法則時症状の出現強度に関する法則
大きな行為そのものの記憶を失ってしまうこと
れる介護者を絶対的に信頼しているからボケ症状
﹁記銘力低下﹂とは、ひどい物忘れが起こるこ
を﹁全体記憶の障害﹂と呼ぶ。外出から帰ったば
特集・アルツハイマー型痴呆
105CLINICIAN’99No.486
杉
第5法則口感情残像の法則
自分にとって不利なことは認めないで、ボケが
第3法則目自己有利の法則
ように、お年寄りがそのとき抱いた感情が相当時
に目に入った光が消えたあとでも残像として残る
るが、感情の世界はしっかり残っていて、瞬間的
をひどく出 す の だ と 考 え る と よ い で あ ろ う 。
あるとは思えないほど、素早く言い返してくるこ
間続くことをいう。
いったり、聞いたり、行動したことはすぐ忘れ
とをいう。知的機能が低下して相手の気持ちが理
ら、そのような言動こそボケそのものと考えるべ
あるひとつのことに集中すると、そこから抜け
第6法則“こだわりの法則
解できないため、平気でいってしまうのであるか
きであろう。
第4法則 ” ま だ ら ボ ケ の 法 則
あらわしたものである。
りすればするほど、こだわり続けるという特徴を
出せない。周囲が説明したり説得したり否定した
正常な部分とボケの部分とが必ずまじりあって
あれば行わないような言動をお年寄りがしている
なくて振り回されることにあるが、﹁常識的な人で
混乱の原因の一つに、ボケか本気かが見分けられ
のである、という内容の法則である。
の特性や生活歴などを考えれば十分理解できるも
ボケ症状のほとんどすべては、知的機能の低下
第7法則”ボケ症状の了解可能性に関する法則
存在しているというものである。介護上の大きな
場合、それはボケの症状である﹂と割り切ること
が大切である。
﹁介護に関する原則﹂はこのような特徴を示す
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年寄りが形成している世界を理解し大切にする。
お年寄りに対する付き合い方を述べたもので、﹁お
︵川崎市・川崎幸クリニック
担を軽くすることにもなる。
れることが上手な介護のコツであるし、 介護の負
院長︶
その世界と現実とのギャップを感じさせないよう
にする﹂。お年寄りの気持ちを理解して一旦受け入
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