基礎電磁気学演習

開講学期:
科目名:
教室:
2015年 前期
基礎電磁気学演習
A―111
担当教員:後藤太一, [email protected]
基礎電磁気学演習
学籍番号:_________
氏名:___________
第03回 電場とガウスの法則
3.1 一様な線密度 [C·m-1]の正電荷が無限に長い直線状に分布しているとき,この直線状電荷から距
離 r 離れた点 P における電場を求めよ.
3.2
無限平面に電荷密度 (>0) [C·m-2]で一様に分布する面状電荷の作る電場を求めよ.
3.3 半径 rB で厚みのない球殻表面に,合計-e (< 0)の電荷が一様に分布
している.中心からの距離を r として以下の問いに答えよ.
(1) r > rB の点にできる電場を,ガウスの法則を用いて求めよ.
(2) r < rB の点にできる電場を,ガウスの法則を用いて求めよ.
(3) さらに球の中心に電気量+e の点電荷を入れると水素原子のモデルに
なる(右下図).このとき合成電場の動径方向成分を,r の関数として図示せ
よ.
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3.1
【問題】 一様な線密度 [C·m-1]の正電荷が無限に長い直線状に分布しているとき,この直線状電荷から
距離 r 離れた点 P における電場を求めよ.また,r の関数として図示せよ.
【解答】
電荷の分布した直線を直線 L と呼ぶことにする.まず,
点 P にできる合成電場の方向が,点 P から直線 L に引い
た垂線にそって外向きであることを示す.
点 P から直線 L に引いた垂線の足を点 O とする.直線
L の任意の点 A に,長さ dx の微小素片を考える.直線 L
の上に,線分 OA と線分 OB の長さが等しくなる点 B をとり,
そこにも長さ dx の微少素片を考える.2 つの微小素片に含
まれる電荷の量は等しく,点 P までの距離も等しいので,
両者が点 P に作る電場の大きさは等しい.それぞれの電
場を直線 L に垂直な成分と,平行な成分に分けると,後者
は打ち消しあう(図参照).すなわち,直線 L 上の任意の電荷が点 P に作る電場のうち,直線に平行な成
分は必ず『反対側』にいる電荷により打ち消されることが示された.
そこで以降は直線 L に垂直な成分だけの重ね合わせを考えればよい.直線 L に沿って x 軸をとり,
x~x+dx の区間からなる微小素片は電荷dx を含む.これが点 P に作る電場 dE の大きさは
dE 
dx
4 0 (r 2  x 2 )
dE  dE cos 
であり,図のようにをとれば直線 L に垂直な成分は,
dx
4 0 (r 2  x 2 )
ここで,図から tan  


1
1
x
であることを用いれば,
d  dx であるから,
2
r
r
cos 
dx
dE  
cos となる.
  x 2 
4 0 r 2 1    
 r 



 1 
4 0 r 

2
 cos  
cos  
cos 
dx

4 0 r 1  tan 2 
2

cos  1
dx
r
1


cos 2 
d 
cos d
2
4 0 r
4 0 r
cos 
となる.
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すべての電荷からの寄与を加えるためには,dE⊥を 
について積分すれば良いので,

E   dE 
4 0 r

2
から

2
まで




  cos d  4 0 r sin  2  2 0 r
2
2
2
となる.
図のように反比例するグラフになる.
3.2
【問題】 無限平面に電荷密度 (>0) [C·m-2]で一様に分布する面状電荷の作る電場を求めよ.
【解答】
無限平面とは,無限の半径を持った円板と考えてよいので,
E // 


(1  cos  0 ) 
2 0
2 0

1 




2
2 
x b 
x
x
ただし, cos  0 
x2  b2


において, b    0 

 の極限をとればよい.
2
したがって,
E // 

2 0

   
1  cos   
 2   2 0

となる.
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3.3
【問題】
3.3 半径 rB で厚みのない球殻表面に,合計-e (< 0)の電荷が一様に分布している.中心からの距離を r
として以下の問いに答えよ.
(1) r > rB の点にできる電場を,ガウスの法則を用いて求めよ.
(2) r < rB の点にできる電場を,ガウスの法則を用いて求めよ.
(3) さらに球の中心に電気量+e の点電荷を入れると水素原子のモデルになる(右下図).このとき合成電
場の動径方向成分を,r の関数として図示せよ.
【解答】
(1) 電荷分布が球対称なので,ガウスの法則で用いる閉曲面 S としては同じ対称性の球面を考える.す
なわち,電荷が分布している球面と中心を共有する半径 r の球の表面を閉曲面に選び,
真空中のガウスの法則
1
 E (r )  n(r )dS  
S
 ( S内の全電荷) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・①
0
を適用して電場を求める.まず左辺の積分を考える.(1)の解答より,S 上では電場の大きさは一定
なので,これを E(r)とする.電場の向きは動径方向で外向きであるから,これは S の各点におけ
る法線方向成分に等しい.したがって S 上の任意の点で E ( r )  n( r )  E ( r ) となる.この量は S 上
で入っていなので,積分の外側に取り出すことができ,
 E (r )  n(r )dS   E (r )dS  E (r ) dS  4r
S
S
S
2
E ( r ) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・②
となる.一方 rB≦r では S 内の電荷量は-e であるから,①式の右辺は 
e
0
となる.これを②式と
等しいとおけば,
4r 2 E ( r ) 
e
0
 E (r ) 
e
( r  rB ) ・・・・・・・・・・・・・・・・③
4 0 r 2
を得る.
(2) 考える領域が 0 < r < rB になっても,電場は系の対称性を反映して球対称になっている.したがって,
閉曲面 S として,問(2)のときと同じ球の表面で,半径だけが 0 < r < rB となったものを選ぶ.今度の S 内に
は電荷がないから,①式の右辺はゼロとなり,

S
E (r )  n(r )dS 
0
0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・④
となる.球対称性のため,この S 上の任意の点で E ( r )  n( r )  E ( r ) となり,その値は S 上では一定で
ある.したがって,④式の左辺の計算結果は②式と同じになる.したがって,
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 E (r )  n(r )dS   E (r )dS  E (r )
S
S
S
dS 4r 2 E (r )  0
となり,
E ( r )  0 (0  r  rB ) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・⑤
を得る.
(3) この問題もガウスの法則を用いて解く.中心においた点電荷も,球殻も,電荷分布としては球対称で
あるから,球殻の内部,外部に拘わらず,電荷も球対称であることは(1)~(3)と同じ.したがって,ガウスの
法則を適応する際に閉曲面 S をこれまでのように半径 r の球に選ぶと,①式の左辺の積分は,r の大きさ
によらず②式になる.あとは①式右辺の S の半径に応じて,
e
(0  r  rB )
    0
(S内の全電荷) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・⑥
0
0 (r  rB )

1
と場合分けすればよい.
0 ≦ r < rB のとき,S 内の電荷は+e であるので,
 E (r )  n(r )dS   E (r )dS  E (r ) dS 4r
S
S
S
2
E (r ) 
e
0
となり,
E (r ) 
e
4 0 r 2
(0  r  rB ) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・⑦
を得る.
rB < r のとき,S 内の電荷は+e + (-e) = 0 であるので,
 E (r )  n(r )dS   E (r )dS  E (r ) dS 4r
S
S
S
2
E (r ) 
0
0
となり,
E ( r )  0 ( r  rB ) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・⑧
を得る.
⑦式と⑧式を図示すると以下のようになる.
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【別解】
中心に+e の点電荷が追加された場合,全体の電場は,球殻が単独で作った電場(問(2)と(3)の答え)
に,点電荷が作る電場を重ね合わせれば求まる.原点にある+e の点電荷が任意の点に作る電場は外
向き動径方向を向いており,
E (r ) 
e
4 0 r 2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・⑨
であることがわかっている.全体の電場は③式と⑤式を重ね合わせれば得られる.その結果,球殻の外
部ではゼロ,内部では⑨式となる.
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