授業科目名 担当教員名 開講曜日・講時 サブタイトル 絵画とものがたり

授業科目名
絵画とものがたり
担当教員名
鈴木 堅弘
開講曜日・講時
金曜4限
サブタイトル
日本の絵巻から文化・歴史・社会を読む
授業の目的・到達目標
(1)絵画を通じて日本文化を深く理解し、その多様性と独自性に対して意識的になれる。
(2)絵巻の読み方を認識し、描かれた「ものがたり」を説明できるようになる。
(3)美術史の学術方法である図像学(イコノグラフィー)を理解する。
(4)絵画に対する鑑賞能力を養うと共に、絵・物語からその時代の歴史的習慣や宗教的心情を読み解く視座を身につける。
(5)社会の国際化が進むなかで、日本文化に対する知見を広げていく。
授業の概要
日本は、世界でも類をみないほど多様な絵画に満ちあふれた国である。なかでも絵巻は、中世から近世にかけて数多く作ら
れ、説話絵巻、物語絵巻、縁起絵巻、戦記絵巻など多種多様な主題や表現を描く。その本質は、世相に流行した王朝文学
や仏教説話などの「ものがたり」を絵にしたものであり、当時の人間観や思想観が色濃く反映されている。
そこで本講義では、図像学(イコノグラフィー)という考え方を用いて、絵巻に描かれた絵と物語を相互に読み解くことにより、
日本の伝統的文化、習慣、信仰、思想、風土とはどのようなものであるのか、その多様性と独自性を理解する。また、絵画を
〈見る〉のではなく〈読む〉ことに重点をおき、図像や物語からその時代を生きた人びとの考え方や心のあり方まで見極める美
術鑑賞の方法を学ぶことを目的とする。
授業計画
本講義では、毎回、開始から20分間は、各テーマに関する文化史的な概要説明を行い、その後、絵巻に描かれた図像や物
語を具体的に読み解いていく。各講義は基本的には絵巻を取り上げるが、各回のテーマによっては、寺社参詣曼荼羅や仏
教説話画などの絵画資料を考察の対象とする。また日本絵画の特徴を相対的に捉えるために、西欧絵画の図像資料を用い
ることもある。
なお、各回の授業内容・テーマは、次のようになる。
第1回:ガイダンス ―〈美術〉とは何か、〈ものがたり〉とは何か―
第2回:絵画の読み方と図像学 ―〈絵巻〉とは何か、〈春画〉とは何か―
第3回:神仏と極楽浄土 ―「当麻曼荼羅縁起絵巻」を読む―
第4回:地獄と苦しみ ―「六道絵」・「地獄草紙」を読む―
第5回:山と信仰 ―「富士参詣曼荼羅図」を読む―
第6回:海とあの世 ―「熊野那智参詣曼荼羅図」を読む―
第7回:蛇と愛欲 ―「道成寺縁起絵巻」を読む―
第8回:死と時間 ―「九相詩絵巻」を読む―
第9回:鬼と境界 ―「酒呑童子絵巻」を読む―
第10回:動物と遊戯 ―「鳥獣人物戯画」を読む―
第11回:皇后と湯屋 ―「東大寺大仏縁起絵巻」を読む―
第12回:稚児と男色 ―「秋夜長物語絵巻」・「稚児之草紙」を読む―
第13回:怨霊と人神 ―「北野天神縁起絵巻」を読む―
第14回:病気と笑い ―「病草紙」・「疱瘡絵」を読む―
第15回:まとめ ―〈文化〉とは何か、西欧美術館めぐり―
※毎回、授業終了前にコミュニケーションペーパーを配布し、質問や感想を記入する。
※講義では、PowerPointや映像資料を利用する。
授業外学習の指示(予習・復習・課題等)
毎回、予習として、授業で取り上げる絵巻や参詣曼荼羅図を、事前に画集・展覧会図録などで目を通しておくこと。また、復
習として、講義内で興味を持った事柄やキーワードに関して、その関連書籍を読み進めること。特に、下記に記した参考文献
を熟読し、各講義への理解を深めることを理想とする。
評価方法・評価基準
授業への参加30%、期末レポート70%の評価配分による。
履修条件・留意点及び受講生に対する要望
美術鑑賞に興味がある・ないに関わらず、日本の文化や歴史、風土や習慣に関心のある方は、積極的に履修してほしい。本
講義を手がかりに、新たな知見を広め、絵画に限らず、仏像や建築、衣装や道具など、日本のモノや表現に関わる文化や歴
史に深く関心を抱くことを望む。今後、本講義で学習したことを活かして、美術館や博物館へ精力的に足を運び、原物から感
じ・学ぶことを心がけてほしい。
また、一部の講義で、性表現を描いた絵画を取り扱う場合がある。
購入必須テキスト(授業内で配付するプリント類を除く)
必須テキストは特に使用しない。
参考文献・作品等(購入不要:より深く授業内容を理解するための有用資料)
『新修日本絵巻物全集』(全30巻、別巻2)、角川書店、1975年-1981年
『日本絵巻大成』(正続47巻)、中央公論社、1977年-1985年
『イコノグラフィー入門』ルーロフ・ファン・ストラーテン、鯨井秀伸訳、ブリュッケ、2002年
『絵巻で読む中世』五味文彦、ちくま学芸文庫、2005年
『姿としぐさの中世史-絵図と絵巻の風景から』黒田日出男、平凡社ライブラリー、2002年
『仏教説話画の構造と機能-彼岸と此岸のイコノロジー』加須屋誠、中央公論美術出版、2003年
『聖地の想像力-参詣曼荼羅を読む-』西山克、法藏館、1998年
『湯屋の皇后-中世の性と聖なるもの-』阿部泰郎、名古屋大学出版会、1998年
『日本美術の歴史』辻惟雄、東京大学出版会、2005年
参考WEBサイト(サイト名・URL)
特になし