職業適性検査データを用いた質問の有効性に関する考察 ―言語圏間の比較と質問数の適正化― 18110035 主担当教員 1. はじめに 花野義宏 鄭躍軍教授 副担当教員 大田靖助教 表 1 伝える力への肯定的な回答(%) 今回の研究では性別や言語圏別の回答傾向から 言語圏の特徴を明らかにする。そして、言語圏の 文化の違い等の特徴を明らかにすることができる 質問、できない質問を見つけていく。また、回答 傾向の似た質問を抽出し、質問数の削減を目指す。 2. 先行研究 日本人と中国人にコミュニケーションに関する 質問を自己評価してもらった結果、日本人は「改 まっている」「よそよそしい」「無関心な」といっ た相手との距離が遠いことを示す回答を選ぶ傾向 にあり、中国人は「親しい」 「暖かい」 「深い」とい った相手との距離が近いことを示す回答を選ぶ傾 向にあった(園田 2001)。このように言語圏によ って異なる性格を明らかにしていく。 3. 研究方法 3.1. 分析データの概要 データは民間の会社から頂いた。質問数は 227 問であり、調査対象者は英語圏(118 人)、中国語 圏(130 人) 、日本語圏(118 人)の大学生である。 1「そう思わない」2「あまりそう思わない」3「ど ちらとも言えない」4「ややそう思う」5「そう思 う」の 5 件法で評価している。また、本研究では これらを名義尺度として扱った。 3.2. 分析方法 今回の研究では、 「責任誠実」 「学習力」 「コミュ ニケーション力」の 3 つの質問群を扱う。 肯定的な回答(「そう思う」「ややそう思う」の 合計)の割合の比較や性別や言語圏によって回答 傾向がどうように異なるのかを視覚的に明らかに するために多重対応析を行った。 さらに、多重対応分析の結果から回答傾向の似 た質問を見つけ、複数の回答傾向が似た質問を 1 つに絞ることはできないか検討する。 4. 分析結果 表1は伝える力の肯定的な回答(「そう思う」 「や やそう思う」の合計)の割合を表したものである。 「自分の存在や考え方を上手に演出することが 得意」は日本語圏が 41%と最も低く、中国語圏は 70%と最も高い。 「相手の状況や個性に合わせて伝 え方を工夫している」は日本語圏が 77%と最も高 く、英語圏が 63%と最も低い。 「相手から「何を言っているのか分からない」 と言われることが多い」は最も高い英語圏と最も 低い日本語圏の差が 7%しかなかった。 5. 考察 日本語圏の人は他人と調和を図る行動をする傾 向にあった。日本語圏の協調を図る文化が影響さ れたものと考える。英語圏の人は苦手な人でも上 手く付き合っていくことができることが分かった。 これは英語圏の国が異なる国の多くの人と共存し ており、様々な考え方の人と接する機会が多いた めに、苦手な人でも柔軟に対応できるのではない かと考える。中国語圏の人は自分の考えを大切に し、教わることを嫌う傾向があった。これは中国 語圏の個人主義の表れと思われる。 また、文化を明らかにできない質問の特徴は相 手から信用を失う行動を繰り返す、又は頻繁にす ることに関する質問で、すべての言語圏で肯定的 な回答の割合が低かった。信用を失う行動を繰り 返すことは、どの言語圏でも良くないという共通 の考え方が影響したと考えられる。 このような文化差を明らかにできない質問 は 文化の違いを明らかにすることを目的とする、 国際版の職業適性検査には相応しくないと考 える。 参考文献 園田茂人(2001) 『中国人の心理と行動』日本放送出版 協会
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