パーツごとの化粧の違いが対人魅力と社会性の評価に与える影響 18120147 主担当教員 1. はじめに 職場では派手過ぎない化粧をし、結婚式では華 やかな化粧をする人がいるように、場面に合った 化粧をすることで印象を変えることがある。顔は、 その人らしさの印象を決定する重要な媒体である。 山田ら(1999)は、顔の各パーツと顔全体の印 象との関連性を検討し、輪郭と目から形成される 印象が顔全体の印象と相対的に一致することを明 らかにした。また、大坊(1991)は、眼が他者を 判断する際の重要な注目部位であることを明らか にした。このように、顔が与える印象は目の特徴 の影響を大きく受けていると考えられる。 本研究は顔のパーツごとの化粧の変化が対人魅 力と社会性の評価に及ぼす影響について明らかに することを目的とした。 2. 実験 2.1. 提示刺激 刺激画像として、7 名の女性の顔画像を平均化 した平均顔を 3 枚用意した。化粧を施すパーツに ついては目元、口元、眉、全体とした。顔全体に 薄い、中程度、濃い程度の化粧を施した画像を用 意し、さらにパーツごとの変化を検討するために、 顔全体に薄い化粧を施した画像を基準として、目 のみ、口のみ、眉のみをそれぞれ中程度、濃い程 度に変化させた顔画像を作成した。上記の手順で 1 枚の平均顔につき 9 枚の刺激画像を作成し、計 27 枚を提示刺激として使用した。 図 1:刺激画像として用いた平均顔 2.2. 実験手続き 参加者は刺激画像について、美しさや道徳性な どのパーソナリティ、共同作業に対する認識を測 定する協同作業認識尺度、対人場面において自己 の行動が社会的であるかを考慮し、自己の行動を 統制する意識を測定するセルフ・モニタリング尺 度の評価をそれぞれ行った。評定終了後、化粧へ 松井 瑞樹 杉尾武志教授 副担当教員 伊藤紀子准教授 の関心度についての質問および付帯質問のアンケ ートを実施した。 3. 結果 分析は全体を通して薄い化粧を基準とし、提示 刺激の印象と薄い化粧を施した刺激画像の印象の 差分を分散分析により算出した。 眉に対する化粧が変化した場合、陽気さと派手 さに関しては他より低く評価されており、真面目 さと道徳性はより高く評価されていた。一方で目 元および口元に対する化粧が変化した場合は相対 する結果が得られた。 内面的特徴である能力面の評価に関して、自意 識尺度における他者の表出行動への感受性の評価 では有意な差が見られた。眉の化粧のみを変化さ せ た 場 合 に 高 い 評 価 が 得 ら れ 、( F ( 1,43 ) =4.50,p=.040,η2p=.095) 。口元および全体的に化粧 の程度が濃い刺激画像では、低い評価となってい た(F(1,43)=3.539,p=.067,η2p=.076; F(1,43) =3.465,p=.070,η2p=.075) 。 4. 考察 顔の各パーツが与える外見的な印象について、 眉が目立っている顔はより堅い印象を与え、口元 や目元が目立っている顔はより明るい印象を与え ると考えられる。ただし、目元と口元のどちらか が目立っている顔ではなく、両者の整合性が取れ ている場合に限って上記の結果が得られたため、 外見的に魅力があると評価されるには、化粧の程 度の統一感が必要であると考えられる。 社会性の評価に関して、眉が濃い顔の場合のみ 人の気持ちが分かりそうで気遣いできそうなどの 印象を与えていたことから、重要視されるパーツ は眉であると考えられる。注視されやすい目に派 手なメイクを施すことは、はっきり物事を発言す るきつい性格を連想させ、協調性が重視される社 会生活に適さない印象を与えたと考えられる。 5. おわりに 外見的魅力および社会性の評価において魅力的 な印象を与えるためには、目元および口元の整合 性が取れており、眉が目立つ化粧を施すことが最 も効果的であると言える。 参考文献 大坊 郁夫.(1997).魅力の心理学-.ポーラ文化研究所. 山田 貴恵・笹山 郁生.(1999).顔のパーツから形成され る印象と顔全体から形成される印象との関連性の検 討.紀要.第四分冊,教職科編,48,229-239.
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