最近の中国経済情勢 - 信金中金 地域・中小企業研究所

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(2016.7.28)
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最近の中国経済情勢
黒岩
達也
ポイント
 16 年1~6月の実質GDP成長率は、最終消費が下支え役となって、前年比 6.7%増となった。
 消費が堅調な背景には、自動車販売の好調、ネット通販の高い伸びなどがある。

一方、投資、輸出には回復の兆しがみえず、中国経済は依然として下振れリスクが高い。
1.実質GDP成長率は前期から横ばい
中国の国家統計局によれば、16 年1~6月の
実質GDP成長率は前年比 6.7%増となり、15
年の同 6.9%増からやや低下した。四半期ベー
スでみると、4~6月は同 6.7%増と、1~3
月から横ばいとなり、ようやく減速傾向に歯止
めがかかったかたちとなった。
1~6月の需要項目別寄与度をみると、実質
成長率 6.7%のうち、最終消費が 4.9%、総資
本形成が 2.5%、輸出等が▲0.7%となり、消費
(図表1)実質成長率と需要項目別寄与度
(%)
16
月次指標をみても、消費の堅調、投資と輸出
の伸び悩みが顕著となってきている。
1~6月の社会消費品小売総額は前年比
2.6
12
8
9.2
9.6
10
6.0
0.9
10.4
0.4
9.3
5.5
4.4
8.1
4.5
6
7.7
7.7
3.6
4.2
7.4
3.6
6.9
1.4
2
5.6
4.6
4.2
4.5
5.3
4.2
3.8
6.7
2.5
1.3
4
4.2
3.8
4.9
0
-0.4
-2
-4
-0.3
-0.7
-3.5
-6
07
が景気のリード役となっている(図表1)
。
2.自動車、ネット通販が個人消費のけん引役
14.2
14
08
09
10
最終消費
11
12
総資本形成
13
15
14
純輸出
16.1-6
GDP
(備考)中国国家統計局資料より作成
トフォン(スマホ)が急速に普及しており、パ
ソコンを持っていなくても、スマホから気軽に
商品を注文できるようになったことが、中国の
10.3%増と、2ケタの伸びを維持した。消費の
ネット通販市場の発展の追い風となっている。
2大柱となっているのは自動車とインターネ
今後も、ネット通販が消費のリード役を果たし
ットを通じた通信販売(ネット通販)である。
ていくものと思われる。
15 年の自動車販売台数は 2,459.8 万台、前年
(図表2)ネット通販売上高の推移
比 4.7%増と伸び悩んだが、今年1~6月には
(億元)
45,000
1,283.0 万台、同 8.1%増と復調した。特に、
40,000
6月は 207.1 万台、同 14.6%増と好調だった。
この背景には、15 年 10 月、政府が排気量
1,600cc 以下の小型エンジン搭載車に対する車
(%)
100.0
96.9
35,000
ことがある。
53.7
自動車以上に、個人消費を刺激しているのは
70.0
29,087
67.5
25,000
60.0
56.1
18,636
20,000
22,367
42.2
30.0
28.2
7,826
50.0
40.0
33.3
13,110
10,000
5,000
90.0
80.0
30,000
15,000
両購入税の税率を 10%から5%へ引き下げた
38,773
販売額
伸び率
5,091
20.0
10.0
0
0.0
2010
11
12
13
14
15
16.1-6
ネット通販である。1~6月のネット通販の売
(備考)中国互聯合網路信息中心『2015 年中国網路購物市場研
究報告』16 年 6 月などより作成
上高は2兆 2,367 億元、前年比 28.2%増加した
3.投資は減速傾向。不動産投資も伸び悩み
(図表2)。社会消費品小売総額に占める割合
消費が堅調を続ける一方で、投資の減速傾向
は 11.6%に達した。最近では、中国でもスマー
が続いている。今年1~6月の固定資産投資は
前年比 9.0%増となり、15 年の同 10.0%増から
鈍化した。とりわけ、月次ベースでは、5月が
同 7.5%増、6月が同 7.4%増と不調だった(図
表3)。
(図表3)固定資産投資の推移
(%)
25
20
この背景には、今年に入って持ち直しの兆し
15
をみせていた不動産開発投資が再び減速した
10
ことがある。住宅価格は 15 年に前年比で約3
5
割下落し、値ごろ感がでていたところに、政府
0
が住宅ローンの融資条件の緩和を実施し、年初
から住宅販売が盛り上がった。1~4月の住宅
販売面積は 36.5%増加したが、その後は物件の
値上がり(6月は前年比 5.7%上昇)で、購買
固定資産投資
不動産開発投資
-5
13/1
(%)
米国
5
インフラ投資は前年比 20.9%増と、固定資産投
-5
-10
5月 11 日、政府は高速鉄道、地下鉄など3
-15
年間で 303 件、総額4兆 7,000 億元の交通イン
-20
(%)
50
向けが低迷しており、1~6月は日本向けが前
10
計すると、少なくとも今後3か月程度は、輸出
の低迷が続く可能性があることを示唆してい
る(図表5)。
最近の元安は輸出にとっては好材料だが、日
米欧を中心とする世界経済が緩やかな成長に
15/1
16/1
通関輸出の前年比
(3か月移動平均)
40
20
実効為替レートを用いて、中国の通関輸出を推
14/1
(図表5)中国の通関輸出の推計
げ足を速めた。特に、ウエイトの大きい先進国
ちなみに、OECD景気先行指数と人民元の
13/1
(備考)1.すべて3か月移動平均
2.中国海関総署資料より作成
30
けが同 4.4%減となった(図表4)
。
日本
EU
12/1
7.8%減少し、15 年の同 2.9%減からさらに下
年比 6.1%減、米国向けが同 10.0%減、EU向
16/1
10
0
外需をみると、1~6月の通関輸出は前年比
15/7
15
資を支えている。実際、1~6月の政府による
4.長引く輸出の低迷
15/1
輸出全体
20
こうした状況下、政府は積極財政政策で、投
めをかけようとしている。
14/7
(図表4)日米欧向け輸出の動向
始め、住宅建設がペースダウンしている。
フラ整備計画を発表、投資の一段の減速に歯止
14/1
(備考)中国国家統計局資料より作成
意欲が減退し、再び不動産の供給過剰が目立ち
資の 19.0%を占めた。
13/7
予測値
0
-10
推計値
-20
-30
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(備考)1.推計式:CEX=203.33+5.03*OECDLEAD(-5)
(6.36)
(9.85)
-41.72*EER(-5)
(-5.99) R²=0.416
推計期間:98 年 6 月~16 年 5 月
CEX=中国の通関輸出前年比(3 か月移動平均)、
OECDLEAD=OECD 景気先行指数前年比、EER=人民
元実効為替レート
2.中国海関総署、OECD 資料、BIS 資料より当研
究所推計
とどまっているなか、輸出の本格回復は難しい、 性が問題である。投資は、企業の投資意欲が低
く、公共投資への依存度が高いことが不安材料
とみられる。
5.当面、経済は低空飛行が続く
1~6月の実質可処分所得は 6.5%増と実質
GDP成長率を下回っており、消費堅調の持続
である。また、輸出は世界経済の行方次第であ
る。中国経済は、当面、下振れリスクが強く、
予断が許されない状況が続くであろう。 以上
本レポートは、情報提供のみを目的とした上記時点における当研究所の意見です。施策実施等に関する最終決定は、ご自身の判断でな
さるようにお願いします。また、当研究所が信頼できると考える情報源から得た各種データ等に基づいて、この資料は作成されており
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