地域・中小企業研究所 SHINKIN CENTRAL BANK ニュース&トピックス (2016.7.28) 〒103-0028 東京都中央区八重洲 1-3-7 TEL.03-5202-7671 FAX.03-3278-7048 URL http://www.scbri.jp e-mail : [email protected] 最近の中国経済情勢 黒岩 達也 ポイント 16 年1~6月の実質GDP成長率は、最終消費が下支え役となって、前年比 6.7%増となった。 消費が堅調な背景には、自動車販売の好調、ネット通販の高い伸びなどがある。 一方、投資、輸出には回復の兆しがみえず、中国経済は依然として下振れリスクが高い。 1.実質GDP成長率は前期から横ばい 中国の国家統計局によれば、16 年1~6月の 実質GDP成長率は前年比 6.7%増となり、15 年の同 6.9%増からやや低下した。四半期ベー スでみると、4~6月は同 6.7%増と、1~3 月から横ばいとなり、ようやく減速傾向に歯止 めがかかったかたちとなった。 1~6月の需要項目別寄与度をみると、実質 成長率 6.7%のうち、最終消費が 4.9%、総資 本形成が 2.5%、輸出等が▲0.7%となり、消費 (図表1)実質成長率と需要項目別寄与度 (%) 16 月次指標をみても、消費の堅調、投資と輸出 の伸び悩みが顕著となってきている。 1~6月の社会消費品小売総額は前年比 2.6 12 8 9.2 9.6 10 6.0 0.9 10.4 0.4 9.3 5.5 4.4 8.1 4.5 6 7.7 7.7 3.6 4.2 7.4 3.6 6.9 1.4 2 5.6 4.6 4.2 4.5 5.3 4.2 3.8 6.7 2.5 1.3 4 4.2 3.8 4.9 0 -0.4 -2 -4 -0.3 -0.7 -3.5 -6 07 が景気のリード役となっている(図表1) 。 2.自動車、ネット通販が個人消費のけん引役 14.2 14 08 09 10 最終消費 11 12 総資本形成 13 15 14 純輸出 16.1-6 GDP (備考)中国国家統計局資料より作成 トフォン(スマホ)が急速に普及しており、パ ソコンを持っていなくても、スマホから気軽に 商品を注文できるようになったことが、中国の 10.3%増と、2ケタの伸びを維持した。消費の ネット通販市場の発展の追い風となっている。 2大柱となっているのは自動車とインターネ 今後も、ネット通販が消費のリード役を果たし ットを通じた通信販売(ネット通販)である。 ていくものと思われる。 15 年の自動車販売台数は 2,459.8 万台、前年 (図表2)ネット通販売上高の推移 比 4.7%増と伸び悩んだが、今年1~6月には (億元) 45,000 1,283.0 万台、同 8.1%増と復調した。特に、 40,000 6月は 207.1 万台、同 14.6%増と好調だった。 この背景には、15 年 10 月、政府が排気量 1,600cc 以下の小型エンジン搭載車に対する車 (%) 100.0 96.9 35,000 ことがある。 53.7 自動車以上に、個人消費を刺激しているのは 70.0 29,087 67.5 25,000 60.0 56.1 18,636 20,000 22,367 42.2 30.0 28.2 7,826 50.0 40.0 33.3 13,110 10,000 5,000 90.0 80.0 30,000 15,000 両購入税の税率を 10%から5%へ引き下げた 38,773 販売額 伸び率 5,091 20.0 10.0 0 0.0 2010 11 12 13 14 15 16.1-6 ネット通販である。1~6月のネット通販の売 (備考)中国互聯合網路信息中心『2015 年中国網路購物市場研 究報告』16 年 6 月などより作成 上高は2兆 2,367 億元、前年比 28.2%増加した 3.投資は減速傾向。不動産投資も伸び悩み (図表2)。社会消費品小売総額に占める割合 消費が堅調を続ける一方で、投資の減速傾向 は 11.6%に達した。最近では、中国でもスマー が続いている。今年1~6月の固定資産投資は 前年比 9.0%増となり、15 年の同 10.0%増から 鈍化した。とりわけ、月次ベースでは、5月が 同 7.5%増、6月が同 7.4%増と不調だった(図 表3)。 (図表3)固定資産投資の推移 (%) 25 20 この背景には、今年に入って持ち直しの兆し 15 をみせていた不動産開発投資が再び減速した 10 ことがある。住宅価格は 15 年に前年比で約3 5 割下落し、値ごろ感がでていたところに、政府 0 が住宅ローンの融資条件の緩和を実施し、年初 から住宅販売が盛り上がった。1~4月の住宅 販売面積は 36.5%増加したが、その後は物件の 値上がり(6月は前年比 5.7%上昇)で、購買 固定資産投資 不動産開発投資 -5 13/1 (%) 米国 5 インフラ投資は前年比 20.9%増と、固定資産投 -5 -10 5月 11 日、政府は高速鉄道、地下鉄など3 -15 年間で 303 件、総額4兆 7,000 億元の交通イン -20 (%) 50 向けが低迷しており、1~6月は日本向けが前 10 計すると、少なくとも今後3か月程度は、輸出 の低迷が続く可能性があることを示唆してい る(図表5)。 最近の元安は輸出にとっては好材料だが、日 米欧を中心とする世界経済が緩やかな成長に 15/1 16/1 通関輸出の前年比 (3か月移動平均) 40 20 実効為替レートを用いて、中国の通関輸出を推 14/1 (図表5)中国の通関輸出の推計 げ足を速めた。特に、ウエイトの大きい先進国 ちなみに、OECD景気先行指数と人民元の 13/1 (備考)1.すべて3か月移動平均 2.中国海関総署資料より作成 30 けが同 4.4%減となった(図表4) 。 日本 EU 12/1 7.8%減少し、15 年の同 2.9%減からさらに下 年比 6.1%減、米国向けが同 10.0%減、EU向 16/1 10 0 外需をみると、1~6月の通関輸出は前年比 15/7 15 資を支えている。実際、1~6月の政府による 4.長引く輸出の低迷 15/1 輸出全体 20 こうした状況下、政府は積極財政政策で、投 めをかけようとしている。 14/7 (図表4)日米欧向け輸出の動向 始め、住宅建設がペースダウンしている。 フラ整備計画を発表、投資の一段の減速に歯止 14/1 (備考)中国国家統計局資料より作成 意欲が減退し、再び不動産の供給過剰が目立ち 資の 19.0%を占めた。 13/7 予測値 0 -10 推計値 -20 -30 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (備考)1.推計式:CEX=203.33+5.03*OECDLEAD(-5) (6.36) (9.85) -41.72*EER(-5) (-5.99) R²=0.416 推計期間:98 年 6 月~16 年 5 月 CEX=中国の通関輸出前年比(3 か月移動平均)、 OECDLEAD=OECD 景気先行指数前年比、EER=人民 元実効為替レート 2.中国海関総署、OECD 資料、BIS 資料より当研 究所推計 とどまっているなか、輸出の本格回復は難しい、 性が問題である。投資は、企業の投資意欲が低 く、公共投資への依存度が高いことが不安材料 とみられる。 5.当面、経済は低空飛行が続く 1~6月の実質可処分所得は 6.5%増と実質 GDP成長率を下回っており、消費堅調の持続 である。また、輸出は世界経済の行方次第であ る。中国経済は、当面、下振れリスクが強く、 予断が許されない状況が続くであろう。 以上 本レポートは、情報提供のみを目的とした上記時点における当研究所の意見です。施策実施等に関する最終決定は、ご自身の判断でな さるようにお願いします。また、当研究所が信頼できると考える情報源から得た各種データ等に基づいて、この資料は作成されており ますが、その情報の正確性および完全性について当研究所が保証するものではありません。
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