食料生産地域再生のための先端技術展開事業 中小区画土地利用型営農技術の実証研究 〔分類〕網羅型実証研究(研究課題名:中小区画土地利用型営農技術の実証研究) 〔代表機関〕 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(東北農業研究センター) 〔参画研究機関〕 岩手県農業研究センター、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(食品研究部門、 西日本農業研究センター)、 ゾイシアンジャパン(株)、(公社)岩手県農産物改良種苗センター、 (株)ナカショク 1 〔研究実施期間〕 平成25年度~平成29年度 研究の背景・課題 東日本大震災により被災した岩手県の三陸沿岸部は、小区画で不整形な水田と夏季冷涼な気象条件 を特徴としており、農地の集積を通じた経営規模拡大によりコスト低減を図ることが困難である。また、 半農半漁地域では、春先に海藻類の収穫と育苗が重なるなど漁業との労働競合という観点から省力化 を図ることが課題である。そこで、本研究では農業復興のために先端技術を導入し、生産コストの3割 低減とコストに対する収益の倍増を目指した中小区画土地利用型営農技術の実証研究を展開する。 2 研究の目標 鉄コーティング湛水直播等の省力化・低コスト化技術の導入、及び直播適性の高い新品種や地域適 応性の高い品種の導入による生産コスト30%削減 グラウンドカバープランツの導入による畦畔管理作業時間30%削減 夏季冷涼気候に対応した新形質米(低アミロース米・有色素米)の高品質安定栽培技術の実現 新形質米の機能性・物性評価を活かした農産加工品の開発と収益倍増を目指した販売戦略の策定 3 研究の内容 1)分散する小規模水田における省力・低コスト栽培技術の実証 2)ソバなど省力的な土地利用型作物の安定生産技術の実証 3)中山間水田における畦畔法面の省力管理技術の実証研究 4)加工ブランドに適した稲、大豆の新品種の導入と高品質栽培技術の実証 5)加工適性、機能性の解明による加工品の開発と販売戦略の実証 4 研究成果概要 小区画・不整形水田の実証圃場では散播の作業効率が高く、目標の苗立ち本数を確保した。また、 全刈り収量(1.9㎜調整)は408~465kg/10aであり、概ね目標収量( 420kg/10a)が得られた(表1)。 鉄コーティング表面点播に適する肥料を検討した結果、後期により多くの窒素が溶出する緩効性肥 料は、既存肥料に比べて生育が良好で、収量も1割程度増加した。 大豆のディスク式畦立て播種は湿害軽減効果が認められ、生育は良好であった。また、全刈り収量 は203~209kg/10aであり、実証経営全体の平均収量164kg/10aを上回った(表2)。 水田畦畔法面(斜度45度)にイブキジャコウソウの50穴セル苗を使用して40㎝間隔の千鳥植えで定 植したところ、慣行と比べ育苗で約1/3、定植で1/2に作業時間を短縮できた。シバでは、二重ネット工 法による6月施工で、寒冷地においても枯死などは認められず、十分に越冬可能であることが確認で きた(写真)。 夏季冷涼な気象条件(図1)に適した新形質米(低アミロース米・有色素米)の機能性(図2,3)や物 性評価を活かした有利販売を目指し、有色素米を原料に用いて商品化した(図4)。その結果、白米と 比べて変動比率が12%減少し、一個あたりの限界利益44.3円の上昇に成功した。 1)水稲生産の省力化・低コスト化技術の実証 全刈り収量で概ね目標420㎏/10a以上を確保 表1 湛水直播の収量調査結果(平成27年度) 試験区 全刈り収量kg/10a 坪刈り収量kg/10a 玄米千粒重 検査 倒伏 (粗玄米) フルイ1.9㎜ (粗玄米) フルイ1.9㎜ g(1.9) 等級 程度 点播 460 444 601 566 24.5 1中 0.1 散播1 480 465 546 529 24.7 1上 0.8 散播2 423 408 453 436 24.9 1上 1.1 注)点播の全刈り収量は品種比較区を含む、その他の項目は品種比較区は含まない 鉄コーティング種子の散播 2)省力生産を前提にした安定多収栽培技術の実証 全刈り収量で概ね目標150㎏/10a(慣行30%増)を確保 表2 大豆のディスク式畦立て播種の収量調査結果(平成27年度) 試験 区名 全刈り 収量 坪刈り調査結果 収量 百粒重 検査 (kg/10a) (kg/10a) (g) 等級 倒伏 程度 実証1 203 265 39.0 1.7 0.1 実証2 209 278 39.4 2.3 0.0 実証経営体平均 164 - - - - 注:1)実証1は播種量4.0kg/10a、実証2は4.5kg/10a。 :2)水分15.0%換算。全刈り収量は篩目で中粒以上の子実重。 :3)検査等級:1等上(1)~3等下(9)、規格外(10)。 ディスク式畦立て播種 3)畦畔法面の植生転換による管理作業の省力化 水田畦畔の傾斜45度でも、イブキジャコウソウおよびシバを施行可能 二重ネットの敷設作業 写真 イブキジャコウソウ植栽 畦畔法面の植生転換による管理作業と植栽様相 問い合わせ先:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(東北農業研究センター)、TEL:019-643-3540 4)加工ブランドに適した稲の機能性と物性評価 平坦地産よりも陸前高田市産(夏季冷涼な気象条件)は抗酸化色素が多い 図1 陸前高田および平坦地の気温季節推移 1 .5 5 平 :平 坦 地 産 陸 :陸 前 高 田 市 産 陸 4 3 平 平 陸 陸 平 2 平 陸 1 プロアントシアニジン量 (m g / g ) 総 ア ン ト シ ア ニ ン 量 (m g / g ) 注)アメダス地点の日平均気温を5日移動平均値により表示。 1 .0 平 平 :平 坦 地 産 陸 :陸 前 高 田 市 産 平 平 陸 0 .5 0 .0 0 朝紫 あけのむらさき 奥羽紫糯 図2 陸 陸 夕やけもち お くの む ら さ き 紫黒米のアントシアニン含量 図3 奥羽赤糯 紅衣 赤米のプロアントシアニジン含量 5)加工品の販売戦略の策定と実証 機能性や物性評価を活かした商品開発により収益性向上 紫黒米大福 赤米大福 図4 プロトタイピングに基づく商品化プロセス 問い合わせ先:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(東北農業研究センター)、TEL:019-643-3540 食料生産地域再生のための先端技術展開事業 中山間地域における施設園芸技術の実証研究 〔分類〕網羅型実証研究(研究課題名:中山間地域における施設園芸技術の実証研究) 〔代表機関〕 岩手県農業研究センター 〔参画研究機関〕 (独)農業・食品産業技術総合研究機構(野菜花き研究部門、東北農業研究センター、西日本 農業研究センター、農村工学研究部門)、(国)岩手大学、(国)茨城大学、(国)岡山大学、 富士通(株)、東日本機電開発(株)、石村工業(株)、木楽創建(株) 1 〔研究実施期間〕 平成25年度~平成29年度 研究の背景・課題 被災地域は狭隘で傾斜の多い地形のため大規模な施設園芸の適用は困難であること、夏季冷涼な 気象特性を有すること、農地の復旧のための表土除去により作土が不良な農地が多いこと、そして遠 隔地で燃油や農業資材の高騰に対するコスト低減が不可欠であることも考慮し、本実証研究では、地 域の条件に適応した施設園芸生産を進めるための研究開発と現地における実証を行い、施設コストと 暖房コストの削減、新作型や新たな栽培法と情報通信技術を活用した技術の最適化による収益率の向 上を目指す。 2 研究の目標 中山間地域でのイチゴ及びトマト施設園芸を対象として、地域木材を使用した木骨ハウスや建設用足 場を利用したハウスを開発するほか、木質資源を活用した低コスト暖房技術、情報通信技術の導入に よる園芸施設の効率的管理技術などを組合せてコストを低減し、中山間地域に適用性の高い施設園芸 技術を構築する。 園芸施設のイニシャルコスト、ランニングコストを低減するため、坪単価5万円以下の木骨ハウス及 び資材コスト2割削減の建設足場資材利用ハウスを導入するとともに、施設の環境制御システムの 導入コスト3割削減を目指す。 木質バイオマス加温機による暖房および株元(局所)加温によるランニングコストの5割削減を目指 す。 トマトは隔離床栽培による作型の組み合わせと肥培管理の省力化により周年収量30t/10aを目指 す。 イチゴは促成作型と夏秋どり作型を組み合わせた周年生産により周年収量8t/10aを目指す。 地域資源を活用し地域経済を活性化するため、地域を担うリーディング経営体を育成・定着⇒産地 再生・発展へと繋げる。 3 研究の内容 中山間立地に適用性の高い低コスト耐候性ハウスの実用化と設置技術を実証するため、①木骨ハ ウスについて、採光性評価・構造、工法の改良、低コスト化資材を検討を行うとともに、②建設用足 場利用ハウスの内張り構造の開発、③ダブルアーチハウスの保温構造の検討を行う。 地域木質資源を活用した低コスト暖房技術の実用化を実証するため、①木質バイオマス加温機の 燃焼時間と暖房効率の検討、②イチゴ閉鎖型高設栽培における株元(局所)加温方式の検討を行う。 分散する中小規模園芸施設の効率的管理技術の実用化を実証するため、個別に他の機器と調整し ながら環境制御する安価なシステムの開発とその環境制御技術の確立を行う。 中山間立地特性に適した収益性の高い園芸品目の技術を実用化するため、①四季成り性イチゴと 一季成り性イチゴを組み合わせた周年栽培技術及び低コスト安定栽培の実証、②トマトの隔離床栽 培技術の実証を行う。 4 研究成果概要 木骨ハウスのコスト低減と採光性向上を図るため、基礎杭の変更、柱の設置間隔を2.4mに広げ、 被覆資材を骨材に隠れるように設置するなど変更を行い。採光性は鉄骨ハウスと同等に改善、コ ストも6~7万円台/坪となり、資材提供では3万円台/坪が可能となった。 建設用足場利用ハウスの内張り資材の設計を行い、開閉を巻き上げ式のモーターで簡便に出来る 方法を用いた。 木質バイオマス加温機を改良し、薪の投入容量を0.38 ㎥→0.6 ㎥と増加させ、1回の薪投入により 100坪ハウス内の気温5℃以上を12時間維持することが可能となった(図2)。灯油の1日あたり使 用量は12リットル→0.35リットルと97%削減された。今後は、燃焼の余熱を用いて作成した温湯に よる効率的な局所加温方法について実証を進める。 多段階飽差制御法を開発し、効率的なミスト制御を可能にした。また、複合制御を導入することで トマトの収量は倍増した。今後は、UECS(標準化環境制御システム)を中小規模向け対応するた め、多段階飽差制御法を実装した温室管理ソフトウェアと汎用制御盤の開発を行う(図3)。 閉鎖系養液栽培で肥料利用効率が1割向上し、パルス放電による培養液殺菌装置を開発した。 杉樹皮培地を用いた高設栽培によるイチゴの周年栽培作型(2年作)では、年あたり7.44t/10aの収 量を確保できた。今後、電照およびクラウン温度制御により増収を図る。 現場の状況に適応した新たなハウスを作るための工夫(図1) 採光性およびコスト低減を行った 改良型木骨ハウス 天井を高くし、柱の間隔を2.4mに変更で採光性も改善。 耐候性ハウス基準をクリア。 工期短縮が可能なスパイラ ル基礎杭の適用 土台木材の最低地上高を 高くすることで耐朽性を向上 表1 各ハウスの日射量比較 H27/8/14-8/21 H27/9/29-10/6 H27/10/14-10/21 H27/11/10-11/17 日平均 補正値 屋外比 (%) (MJ/m2 ) 日平均 補正値 *1 屋外比 (%) (MJ/m2 ) 日平均 補正値 *1 屋外比 (%) (MJ/m2 ) 日平均 補正値 *1 屋外比 (%) (MJ/m2 ) 11.12 8.59 10.96 19.04 10.05 8.06 10.65 16.53 6.27 5.58 6.04 12.09 11.53 鉄骨 既存木骨 9.44 新規木骨 13.06 20.54 屋外 12.27 10.72 13.90 60 52 68 11.83 9.76 11.66 62 51 61 10.69 9.15 11.33 65 55 69 6.67 6.34 6.43 * 補正値は被覆資材の全光透過量を用い、経年劣化は考慮しない 既存木骨ハウスと鉄骨ハウスではイチゴ、新規木骨ハウスではトマトの栽培条件下での測定結果 *1 新規木骨ハウスは内張りに高断熱資材(100%遮光)設置有 * 固定張 北側 寒冷地対応 建設足場パイプ利用ハウス 固定張 固定張 モーター ガイド軸 Φ48.6 巻上げ用 モーター 南側 Φ22.2 Φ22.2 妻面固定張 エスター 線 55 52 53 コスト6~7万円台/坪 低減努力必要 耐用年数の調査は 今後の継続課題 改良型薪ストーブの熱出力及び現地での必要暖房負荷(図2) 温湯作成 (kWh) 空気加温 50 必要暖房負荷 40 30 20 従来型 薪ストーブ 改良型 薪ストーブ ・薪投入容量 0.38m3 ・発熱量(カタログ値) 40,000kcal/h ・薪投入容量 0.6m3 ・発熱量(カタログ値) 60,000kcal/h 10 0 17 18 19 20 21 22 23 24 1 2 3 4 (時) H27.2.3(最低気温-6.0℃)の薪ストーブ熱出力量 17~翌5時まで、ハウス内を5℃に保つのに必要な暖房負荷 以上の熱出力が得られている。 中小規模向け環境制御装置の開発(図3) 多段階飽差制御法 UECS制御盤 上:中規模施設(新型) 下:大規模施設 培養液殺菌装置(中央:殺菌無 右:殺菌有) イチゴの周年作型における収量推移(図4) ‘なつあかり’ 23ヶ月栽培 総収量 1705g/株 13.6t/8000株/10a 年間総収量 7.44t 問い合わせ先:岩手県農業研究センター、TEL:0192-55-3733 食料生産地域再生のための先端技術展開事業 ブランド化を促進する果実等の生産・加工技術の実証研究 〔分類〕網羅型実証研究(研究課題名:ブランド化を促進する果実等の生産・加工技術の実証研究) 〔代表機関〕 岩手県農業研究センター 〔参画研究機関〕 (国)農業・食品産業技術総合研究機構(果樹茶業研究部門)、(公)大阪府立大学、長岡香料(株)、 (地独)岩手県工業技術センター独立行政法人国立高等専門学校機構沖縄工業高等専門学校 (国)農業・食品産業技術総合研究機構(東北農業研究センター) 山形県庄内総合支庁、(国)茨城大学、(国)岩手大学、明治大学、井関農機(株) (株)ヰセキ東北、味の素(株)イノベーション研究所、岩手缶詰(株) 1 〔研究実施期間〕 平成25年度~平成29年度 研究の背景・課題 被災地の早期復興を図るためには、被災地が希望する収益性の高い果樹の生産体制及び省力的で 高収益な野菜の技術体系モデルを構築する必要がある。このため、リンゴの早期成園化技術と鮮度保 持技術による販売期間の拡大、地域特産物「北限のユズ」の寒冷地における栽培技術体系を確立し、 生産量拡大と商品開発による収益向上、さらに、加工専用ブドウ品種等を新たに導入するとともに垣根 仕立てによる省力生産技術体系を確立することが重要である。 また、野菜においては、地域資源を活用した、より省力的で高収益な技術体系モデルについて、現地 における実証研究を通じて確立を図り、地域へ波及させることで新たな食料生産地域として再生、復興 を加速することが必要である。 2 研究の目標 リンゴにおいては、早期成園・密植栽培技術により収量を2倍、省力技術と新品種の導入により着色 管理時間を半減する。鮮度保持技術を導入し、販売期間を2倍に拡大する。また、果汁などの一次 加工品の品質向上を図り収益の倍増を図る。 地域特産品「北限のユズ」においては、栽培体系を構築し、供給数量を倍増する。併せて、ユズを丸 ごと活用できる加工技術開発を進め、新たな商品づくりにより収益率倍増を図る。 ブドウにおいては、加工専用ブドウ品種の導入と合わせ、省力的な栽培法である垣根仕立て法を導 入し、栽培管理時間の半減と加工による付加価値化による収益率倍増を図る。 露地キュウリと冬春キャベツによる寒冷地高収益モデルの実証研究では、低コストなかん水同時施 肥技術により単収10t/10a、収穫期間を4ヶ月間に拡大、露地夏秋作型における新タイプキュウリ の収量20%増を目指す。また、12月~2月収穫作型のキャベツについては、収量3t/10a、糖度 11度以上を目標とし、機械化体系を導入することで、労働コスト30%減、肥料コスト30%減を図る。 水稲育苗施設等を高度利用したパプリカの栽培技術実証研究では、省力的で高収益な栽培技術を 確立し、施設利用期間4~11月(水稲育苗+パプリカ)、パプリカの収量8t/10a、販売額290万 円/10aを目標とする。 省力的なトマト栽培による高収益モデルの実証研究では、生産から加工品販売までの一連の生産 流通を実証し、収量5.2t/10a、収益2倍(販売額2,000千円/10a)を最終目標とする。また、 未利用資源の地域内流通と活用、機械化体系を確立し、化学肥料の使用量5割削減、肥料コスト3 割削減を目標とする。 3 研究の内容 リンゴについては、①早期成園化を行うために、ポット養成苗とフェザー苗育成技術、②摘葉剤の利 用や黄色品種の導入等により、着色管理時間を削減する技術、③販売期間を拡大するために、鮮 度保持資材の利用技術を開発する。④瞬間的高圧処理した果汁を用いた加工品を開発する。 ユズについては、①ユズの加工原料を供給するために、ポット大苗養成技術と低樹高技術等、②ユ ズを活用した商品を開発するために、効率的搾汁技術や果汁の品質向上技術等を開発する。 ブドウについては、①垣根仕立て法の導入により、省力化労働時間を削減する技術、②ワイン醸造 やブドウ加工品を開発する。 露地キュウリについては、高齢者や新規参入者でも、安定生産が実現できる簡易なかん水装置によ るかん水同時施肥技術の導入及び本技術に適した品種や管理方法も併せて明らかにする。また、 新たな形質を持つ新タイプキュウリについて、食味・食感・栄養に関連する品質にも着目しながら、被 災沿岸部の露地夏秋作型に適した品種を明らかにし、安定生産技術を確立する。 比較的温暖な沿岸部の気象条件を活かし、夏秋キュウリと組み合わせ可能な冬どりキャベツについ て、適品種や収穫期を分散する作型など、県南沿岸地域に適した栽培体系を確立する。 水稲育苗後の施設を利用したパプリカの隔離栽培技術の実証を行い、管理が容易な養水分管理技 術や軒高の低い施設に適した栽培管理技術、接ぎ木苗利用技術など、総合的な栽培技術を確立す る。 ミニトマトの露地における省力的栽培法の開発、加熱調理用トマトの作期拡大技術等の開発を行 い、 低コストで生産性の高いトマト栽培法を確立する。併せて、機能性や加工適性を評価して良食味か つ加工適性の高い品種や栽培技術を導入し、それぞれの用途における付加価値向上を図る。 使用後のシイタケ菌床の施用による土壌改良、肥料効果を得るために適切な施用量、施用方法、施 用時期などを明らかにするとともに、使用後のシイタケ菌床を適切に散布できる作業機を実証する。 4 研究成果概要 りんご1年生苗木を不織布ポット養成する間に、6月~9月上旬にビーエー液剤(植物ホルモン活性 剤)を8~9回処理することで、定植当年から結実可能な優良苗木を養成できることを明らかにした。 実証ほにおいて、定植当年に36kg/10a、2年目には393kg/10aの収量が得られ、1年生苗木利用よ り、早期に収量増加が可能であることを実証(図1)。 ユズのポット大苗養成技術を利用した苗木は、定植後の生育が良好で、2年後には開花、結実が見 られた。また、既存樹の収穫の効率化及び収量増加を図るために、樹高をせん定(切り下げ)し、樹 形改善を行った(図2)。 「北限のユズ」果実の利用を拡大するため、果皮エキスを使った「ゆずヴィット」を開発。販売が開始 された(図3)。果皮乾燥粉末など、更なる商品化に取り組む。 実証地域産の醸造専用品種アルモノワール及びケルナーのワイン醸造試験の結果、醸造適性が高 いことが明らかとなり、実証経営体がワイン生産開始するに至った。また、垣根仕立てにより作業時 間の短縮化が図られることを実証した(図4)。 自作可能で安価な「かん水同時施肥装置」により夏秋キュウリの草勢が維持され、10月までの4ヶ 月間、収穫を継続することができたことから、かん水同時施肥技術の有効性を明らかにすることがで きた(図5)。 ベイトアルファ型キュウリを約1ヶ月間試験販売したところ、消費者、量販店関係者の評 価は良好で あった(図6)。 パプリカの隔離床栽培において、生育初期のかん水方法および培地の改善により初期生育が安定 し、収量はに1.3tから3.1tに増加した(図7)。今後、培地の温度管理、給液管理の改善により更に増 収をめざす。 ミニトマトの露地疎植栽培方法(通称:ソバージュ栽培)において、新たに開発した直立ネット誘引と 定植時期の分散により、収量の増加、作期拡大、作業効率の改善を図ることができた(図8)。 リンゴの早期成園化を実現できる優良な苗木の養成法(図1) 早期成園化には、結実可能なフェザー(側枝)が多く発生した苗木を育成することが必要 早期成園化が可能なポット 養成フェザー苗養成技術の 確立 ポット養成フェザー苗の利用により、1 年生苗に比べ早期に収量が増加 ユズの安定生産技術(図2) せん定後 せん定前 ポット大苗養成技術を 平成25年4月に開始 既存樹の収穫作業の効率化及び収量増加を図るた めに、樹高を6mから3mに、徐々にせん定(切り下 げ)し、樹形を改善 平成26年3月に定植 した若木が結実 ポット大苗養成技術による早期成園化 ユズのブランド新商品の開発(図3) 既存樹の低樹高化 実証圃産醸造専用品種の醸造特性把握(図4) 実証圃産醸造 品種(赤:アルモ ノワール、白:ケ ルナー)の試作 ワインは、酒質 の評価が高く、 実証経営体は ワイン製造の開 始に至った。 果皮エキスを使った製品 「ゆずヴィット」 白ワイン品種の醸造特性評価結果 品種名 1樹当たり 10a当たり 作業時間 作業時間 アルモノワール 1分53秒 ケルナー 1分12秒 対照)長梢平棚 - 6時間16分 4時間3分 26時間6分 垣根仕立ての作業時間削減効果 垣根仕立て栽 培により、管 理作業時間 が短縮化され ることを実証 キュウリかん水同時施肥技術(図5) ベイトアルファ型キュウリ(図6) ~量販店における試験販売状況~ 左)かん水同時施肥装置 右)9月29日生育状況 ・自作可能な10万円以下の簡易かん水装置の開発 ・10月までの4ヶ月間、収穫を継続し作期拡大 パプリカ隔離床栽培技術(図7) 定植時の発根状況 順調な初期生育(7月7日) ・育苗時および定植後の給液を充分におこなうこと、 培地の変更により生育の改善を図り、収量向上につ ながった。 生育状況(10月1日) H27(場内) 収量(t/10a) 販売額(千円/10a) H27(現地) 4.8 3.1 1,978 1,287 ミニトマト(ソバージュ栽培)(図8) 誘引方法の改善と定植時期の分散による収量の増加、作期拡大、作業改善 7月23日 改 善 9月16日 アーチネット誘引(従来法) 直立ネット誘引(改良法) 10月20日 問い合わせ先:岩手県農業研究センター、TEL:0197-68-4419
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