豪州:QLD 州 じん肺の罹患防止対策を発表

豪州:QLD 州 じん肺の罹患防止対策を発表
2016 年 7 月 28 日掲載
7 月 13 日、QLD 州の Anthony Lynham 天然資源鉱山大臣は、炭鉱労働者のじん肺の罹
患防止のための対策を発表した。同州では 5,500 名の労働者が坑内掘りの炭鉱に従事して
いるが、2015 年以降、11 名の炭鉱労働者がじん肺に罹患したことが確認されている。今回
発表された対策は、新たな罹患者の発生防止、早期発見及びセーフティネットを含む。
このうち、罹患者の発生防止策については、炭じん管理の厳格化、定期的な炭じんレベル
の公表を挙げた。QLD 州では炭鉱の炭じん濃度の規制値は 3mg/m3 である。なお NSW 州
では 2.5mg/m 3 である。
早期発見のための対策については、効果的なスクリーニングの実施を挙げた。全ての坑内
掘り炭鉱では労働者に対するエックス線検査の実施が 2 年以上前であった場合は新たな検
査を行うこととし、検査結果は医師が保管し、じん肺の罹患が確認された場合は政府に報
告することが求められる。また、Lynham 大臣は、連邦政府による国家検査プログラムの
創設に向けて、次回の豪州連邦・州首相評議会で本件を取り上げることを求める予定であ
る。
また、セーフティネットとして、じん肺に罹患した退職者含む炭鉱労働者には労災保険が
適用され補償が行われる。なお、Lynham 大臣は、長期に炭鉱に従事した労働者に対して
実施されたエックス線検査に関し、257 名のうち 18 名は追加の検査が必要であるとした
Monash 大学の調査報告の内容も明らかにした。
7 月 15 日付けの地元紙によれば、QLD 州ではこれまで採用時及び 5 年毎に労働者の検査
を実施することとしていたが、Monash 大学の調査報告では検査制度のシステム的な欠陥
が指摘されている。じん肺は 30 年前に根絶されたと思われていたが、2015 年に罹患が確
認された 72 歳の元炭鉱労働者の男性によれば、30 年に亘る炭鉱での従事においてエック
ス線検査を受診したのは 2 回だけだと述べている。他方、地元紙は、解雇を恐れて検査を
受けない労働者も多くいたことも報じている。
同日付けの地元紙によれば、BMA(BHP Billiton Mitsubishi Alliance)社は坑内掘りの
Broadmeadow 炭鉱における 400 名の労働者と会合を持ち、無料でのエックス線検査の実
施を提案する。同社は独自の基準として坑内の炭じん濃度を 2mg/m3 に設定している。前
述のとおり QLD 州での規制値は 3mg/m 3 、NSW 州での規制値は 2.5mg/m3 である。この
他、QLD 州において坑内掘りの炭鉱を操業する BHP Billiton、Rio Tinto、Vale、Anglo
America 等の 8 社も新たな検査を行う予定である。
一方、NSW 州政府の産業大臣のスポークスマンは NSW 州では新たなじん肺罹患者は確
認されていないと述べ、同州ではじん肺が発生しないよう厳格な管理を行っていると述べ
た。また、建設・林業・鉱業・エネルギー労働組合(CFMEU)関係者は、本件は国家レベ
ルの問題であると述べてじん肺の根絶を求めた。
(シドニー事務所
山下 宜範)
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