論文内容要旨 論文題名 Extracellular matrix loss in chondrocytes after

論文内容要旨
論文題名
Extracellular matrix loss in chondrocytes after exposure to
interleukin-1 in NADPH oxidase-dependent manner
(軟骨細胞におけるインターロイキン-1刺激後の NADPH-オキシダーゼに
依存した細胞外基質の減少)
掲載雑誌名
Cell and Tissue Research (投稿中)
歯科補綴学
船登
咲映
内容要旨
変形性関節症(OA)は、関節軟骨における軟骨細胞の細胞死と基質タンパ
ク質の減少を主要な病態とする疾患で、発症にインターロイキン
-1(IL-1)などの炎症性サイトカインや活性酸素種(ROS)の関与が指摘
されている。軟骨細胞培養系に IL-1を添加すると、細胞死と細胞外基質
の減少が観察された。共同研究者の安原らは軟骨細胞で活性酸素産生酵素
である NADPH オキシダーゼ(NOX)が細胞外基質代謝の調節に関与すること
を見出している。(第 25 回日本骨代謝学会)さらに吉村らは、IL-1刺激
した軟骨細胞が食細胞型 NADPH オキシダーゼ(NOX-2)の発現を介して細
胞死を誘導することを報告した(J Biol Chem 286:14744-52, 2011)。そ
こで今回、IL-1刺激後の軟骨細胞における細胞外基質の合成と分解にお
ける NOX-2 由来の活性酸素の役割を明らかにすることを目的として研究
を開始した。マウス軟骨細胞様 ATDC5 細胞を IL-1で刺激すると主要な軟
骨基質タンパク質であるタイプⅡコラーゲンとアグリカンの mRNA 発現が
抑制されたが、NOX-2 の siRNA はこれらの遺伝子発現に影響を及ぼさない
ことから、これらの軟骨基質タンパク質の発現低下に NOX-2 は関与しない
ことが明らかとなった。一方、NOX 阻害剤あるいは ROS 消去活性を有する
N-アセチルシステインは、IL-1によって引き起こされる細胞外プロテオ
グリカンおよびヒアルロン酸の減少を抑制した。このことは IL-1によっ
て発現誘導される NOX-2 由来の ROS が、IL-1刺激後の軟骨基質の分解に
関与することを示唆する。さらに、軟骨細胞のヒアルロニダーゼ活性は
NOX 阻害剤により抑制された。NOX 活性に依存して細胞内外の酸性化が起
こったため、酸性に至適 pH を持つヒアルロン酸分解酵素活性が上昇しヒ
アルロン酸分解が亢進していることが示唆された。以上より、IL-1刺激
により NOX-2 活性に依存したヒアルロン酸分解酵素活性の上昇が細胞外
基質分解をもたらすことが示唆された。今回発見した細胞外基質の減少メ
カニズムは有効な治療法がない変形性顎関節症(顎関節症Ⅳ型)の治療へ
の応用が期待できる。