別紙1 論 文 審 査 の 要 旨 報告番号 甲 第 2798 号 氏 名 船登 主査 教授 桑田 啓貴 副査 教授 山本 松男 副査 教授 中野 泰子 副査 准教授 岩佐 文則 咲映 論文審査担当者 (論文審査の要旨) 学 位 申 請論 文 「 Extracellular matrix loss in chondrocytes after exposure to interleukin -1 in NADPH oxidase-dependent manner」 に つ い て、 上 記 の主 査 1 名 、 副査 3 名 が個 別 に審 査 を 行っ た。 IL-1 で 刺 激 し た 軟 骨 細 胞 で は 、 活 性 酸 素 産 生 酵 素 で あ る 食 細 胞 型 の NADPH オ キ シ ダ ー ゼ ( NOX)で あ る NOX-2 の 発 現 が誘 導 され る こ とが 報 告 され て いる 。そ こで 本 研 究で は 、軟骨 細 胞 の 細 胞 外基 質 減少 に お ける NOX-2 の 役 割 を 検 討し た 。 ATDC5 細 胞 を IL-1で刺 激 す ると 主 要な 軟 骨 基 質 タ ン パ ク 質 で あ る タ イ プ Ⅱ コ ラ ー ゲ ン と ア グ リ カ ン の mRNA 発 現 が 抑 制 さ れ た が 、 NOX-2 の siRNA は こ れ ら の 遺 伝子 発 現に 影 響 を及 ぼ さ なか っ た。 IL-1は 軟 骨 細胞 に おい て ヒ ア ル ロ ニ ダー ゼ 発現 を 誘 導 し 、 NOX 由 来 の ROS 依 存 性 に細 胞 内・ 外 の 酸性 化 も 誘導 し た。 ま た、 IL-1誘 導 性 の 酸 性 化 は ヒ ア ル ロ ニ ダ ー ゼ 活 性 を 上 昇 さ せ 、 NOX 活 性 に 依 存 し て ヒ ア ル ロ ン 酸 分 解 を 増 加さ せ 細胞 外 プ ロテ オ グ リカ ン の減 少 を 引き 起 こ すこ と が 明 ら か とな っ た 。 本論文の審査において副査の山本委員、岩佐委員、中野委員から 多くの質問があり、その一部 と そ れ らに 対 する 回 答 を以 下 に 示す 。 山本委員の質問とそれらに対する回答: 1.変 形 性顎 関 節症 を 起 こす 原 因 は何 か 。 持続的な負荷や関節の固定は関節軟骨の栄養供給の低下を招く。また加齢によって関 節軟骨中 のプロテオグリカン量、構造水の含有量の低下、組織の代謝活性の低下が生じる。関節軟骨に加 わる負担がその生理的許容範囲を超えると、初期には軟骨表面の軟化、膨化、亀裂、線維化、び らんを生じさせる。これらの反応が進むと正常行の不可でも外傷的に働くようになり、変形性顎 関 節 症 が進 行 する 。 2.細 胞 内と 細 胞外 の pH が 同 時 に同 じ よう に 変 化す る の はな ぜ か。 ROS に よ る 液 胞 型 H+-ATPase の 阻 害 を 通 して 、ラ イ ソ ソー ム の酸 性 化 の抑 制 に おけ る NOX-2 の 役 割 に 関す る いく つ か の文 献 が ある 。液 胞型 H+-ATPase の 阻 害 が 細胞 質の 酸 性 化 に 寄 与し 、二 次 的 に H+を 放 出 す る ことに よ っ て細 胞 外基 質 の 酸性 化 を 起こ す と考 え ら れる 。 (主査が記載) 岩佐委員からの質問とそれらに対する回答: 1.変 形 性 関 節 症 に対 す る NOX-KO マ ウ ス は 存 在す る の か。 Nox-2-KO マ ウ ス で は腹部 大 動 脈瘤 を 憎悪 さ せ るこ と や 、幼少 期 より 重 篤な 感 染 症を 繰 り返 す 慢 性 肉 芽 腫症 に なる こ と が報 告 さ れて い るが 、 変 形性 関 節 症に 関 する 報 告 はま だ な い。 2.AEBSF と NAC は 変 形 性 関 節症 の 治療 に 役 立つ と 思 うか 。 NAC は す で に 喘 息な どの 呼 吸 器疾 患 の治 療 に 使わ れ て いる 。 AEBSF は in-vitro で 使 う 試 薬で あ る 。 新た な Nox 阻 害剤 と Ros 消 去 剤 の 開発は 変 形 性関 節 症治 療 に 有効 で あ ると 考 える 。 中野委員からの質問とそれらに対する回答: 1.ITS を 添 加 す る と ATDC5 細 胞 は な ぜ 分 化す るの か 。 ITS(insulin, transferrin, sodium selenite)イ ン ス リ ン が軟 骨 初期 分 化 の前 提 と なる 細 胞凝 集 領 域 の 形 成に 関 与し て い るこ と が 報告 さ れて い る。作 用 機 序に 関 して は 明 らか に は なっ て いな い が 、 ITS が 血 清 の 成 長 促 進 効果 を 増 強し 、阻害 剤 の効果 を 減 少さ せ てい る 可 能性 に 関 する 報 告も あ る。 2.Fig4 の C は pH6.8 で IL-1を 添加 し てい な い場 合 に もな ぜ 細胞 外 基 質が 減 少 して い るの か 。 本 実 験 にお い て、 IL-1で 刺 激 しな い 場合 でも Fig3 の C の よ う にヒ ア ルロ ニ ダ ーゼ 活 性が 検 出 さ れ て いる の で、 培 地の pH の 酸 性 化 によ っ てヒ ア ル ロニ ダ ーゼ の 活 性が 上 昇 した と 考え ら れる。 三 名 の 副査 は 、 す べ て の回 答 が 、い ず れも 満 足 のい く も ので あ るこ と を 確認 し た 。 主査 桑田委員の質問とそれらに対する回答: 1.ヒ ア ル ロ ニ ダ ーゼ 以 外 に ヒ ア ルロ ン 酸を 分 解 する 酵 素 (メ カ ニズ ム ) はあ る の か。 KIAA1199 と い う 遺 伝 子 が CD44 や ヒ ア ル ロ ニ ダ ー ゼ 非依 存 的に ヒ ア ルロ ン 酸 の分 解 に関 与し ていることが報告されている。関節液中のヒアルロ ン酸を制御する滑膜細胞によるヒアルロン酸 分 解 も この 遺 伝子 が 担 い、健 常 者よ り 変形 性 関節症 患 者 で発 現 が亢 進 し てい る と 報告 さ れて い る。 2.変 形 性 関 節 症 患者 で ヒア ル ロ ニダ ー ゼが 変 化 する と い うデ ー タは あ る のか 。 血清のヒアルロニダーゼ活性はリウマチ患者で変形性関節症患者と正常な人よりも高値であ り、変形性関節症患者と正常な人の間における血清中のヒアルロニダーゼ活性に有意差は無かっ た と い う報 告 があ る 。 主査の桑田委員は、三名の副査の質問に対する回答の妥当性を確認するとともに、本論文の主 張をさらに確認するために上記の質問をしたところ、明確かつ適切な回答が得られた。以上の審 査 結 果 から 、 本論 文 を 博士 ( 歯 学) の 学位 授 与 に値 す る もの と 判断 し た 。 (主査が記載)
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