神戸三田キャンパス講座 <東アジアのことばと社会—台湾・香港・シンガポール—> ○講師プロフィール 大東 和重(おおひがし かずしげ) 関西学院大学法学部、大学院言語コミュニケーション文化研究科教授。東京大学大学院総合文化研究科修 了。博士(学術)。2014 年より現職。専門は日中比較文学・台湾文学。 移民社会から香港人意識へ—ことばを通して社会の変遷をたどる— ○講義概要 香港といえば、グルメとショッピング、そして世界でも指折りの夜景を連想する人が多いのではないでしょうか。 日本人にとって身近な観光地である香港は、かつては大英帝国の植民地、現在は中華人民共和国の特別行政 区として、複雑な歴史をたどってきました。広東省を中心とする中国各地からの移民は、出稼ぎ先の香港を仮住 まいの地としていましたが、現在では若者を中心に、自分は香港人、香港こそわが家、という意識が強まっていま す。セミナーでは、この都市で話されてきたことばに注目し、歴史や文化をひもときながら、香港に生きる人々が 自らを何者だと考えてきたのか考えてみたいと思います。 ○参考文献等 山口文憲, 1985,『香港 旅の雑学ノート』新潮文庫 中嶋嶺雄,1997,『香港回帰』中公新書 星野博美, 2006,『転がる香港に苔は生えない』文春文庫 ***** 多民族国家シンガポールの希望と憂鬱—複数のことばを用いる社会とは— ○講義概要 東南アジアの中心に位置するシンガポールは、建国からわずか五十年間で急速な経済発展を遂げ、「東南ア ジアの優等生」と呼ばれてきました。緑豊かな公園のような都市には、数多くの高層ビルがそびえ、行き交う人々 は多様で、複数のことばを用いています。中でも英語を流暢に用いる点で、シンガポールに匹敵する国はアジア にはありません。セミナーでは、この小さな都市国家がいかにして英語を用いる国となったのか、背景にある多民 族社会の成立について紹介しつつ、シンガポールの将来の、希望と憂鬱について考えてみたいと思います。 ○参考文献等 田中恭子, 1984,『シンガポールの奇跡』中公新書 奥村みさ・郭俊海・江田優子ペギー, 2006,『多民族社会の言語政治学 英語をモノにしたシンガポール人のゆら ぐアイデンティティ』ひつじ書房 岩崎育夫, 2013,『物語シンガポールの歴史』中公新書 ***** ことばの宝島めぐり—台湾、琉球諸島における言語と社会の諸相— ○講師プロフィール オストハイダ テーヤ(Ostheider, Teja) 関西学院大学法学部、大学院言語コミュニケーション文化研究科教授。大阪大学大学院文学研究科修了。博士 (文学)。2012 年より現職。専門は社会言語学、言語政策論。 ○講義概要 台湾も日本もことばの宝島でありながら、かつて「国語」政策によって抑圧され、現在は消滅の危機に直面している少 数言語の復興が急務となっている点も共通しています。失いかけている宝を再発見するには、人々の関心が不可欠で す。「台湾語」とは?「琉球諸語」はいくつある?「これがパパク」はどこの日本語?「ウチナーグチ」と「ウチナーヤマトゥ グチ」はどう違う? … 言語政策、言語接触、言語意識など、様々な観点から言語と社会の不可分の関係について事 例を取り上げながら、本講義が少しでも好奇心をそそり、ことばという宝物の維持につながれば幸いです。 ○参考文献等 ハインリッヒ, P.・松尾慎(編), 2010,『東アジアにおける言語復興』三元社.
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