上ケ原キャンパス講座 <比較文化学への誘い> 日本とフランスの性意識の変化 ○講師プロフィール 関谷 一彦(せきたに かずひこ) 1954 年、大阪府生まれ。関西大学文学研究科フランス文学専攻博士課程修了、リヨン第 2 大学 で DEA を取得。現在、関西学院大学法学部・言語コミュニケーション文化研究科教授、専門は 18 世紀フランス文学、とりわけディドロやサドを研究している。また、エロティシズムという概念への関 心から、現在はリベルタン文学やエロティックなフランスの版画や日本の春画も勉強している。共著 書に『危機を読む ─モンテーニュからバルトまで─』(白水社)、 Lire Sade (L'Harmattan)、 L’Invention de la catastrophe au XVIIIe siècle (Droz)、『共同研究 ポルノグラフィー』(平凡 社)、翻訳にコルネリュウス・カストリアディス著『人間の領域 迷宮の岐路』(法政大学出版局)、コリ ンヌ・アマール著『愛の行為』(彩流社)、作者不詳『女哲学者テレーズ』(人文書院)、マルキ・ド・サ ド著『閨房哲学』(人文書院)などがある。 ○講義概要 「性」についての概念は、明治に入って大きく変化しました。そもそも江戸時代にはセックスという 意味での「性」はなく、それは「色」という言葉で表わされていました。この講義では、日本の江戸時 代の「色」と明治以降の「性」を比較検討し、性についての意識の変遷を探ります。また、フランスに おいても 18 世紀と 19 世紀では性意識は大きく変化するのですが、性意識の分節点がどこにある のか、なぜ変化したのかについて考えたいと思います。そして、最後に日本の性意識の変化とフラ ンスの変化との結びつきについても検討するつもりです。 ○参考文献等 ・上野千鶴子『性愛論』、河出文庫、1994. ・氏家幹人『江戸の性風俗』、講談社現代新書、1998. ・小田亮『性』、三省堂、1996. ・田山花袋『蒲団』、岩波文庫、1930. ・森鴎外の『ヰタ・セクスアリス』、岩波文庫、1935. ・ディドロ『ブーガンヴィル航海記補遺』中川久定訳、シリーズ世界周航記2、岩波書店、2007. ・サド『閨房哲学』関谷一彦訳、人文書院、2014. ・ルソー『新エロイーズ』安士正夫訳、岩波文庫、1960. ・ルソー『エミール』今野一雄訳、岩波文庫、1962. ***** 格差の日本と階級のイギリス ○講師プロフィール 伊藤 正範(いとう まさのり) 2001 年、東北大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、関西学院大学商学 部・言語コミュニケーション文化研究科教授。専門は 19 世紀末〜20 世紀初頭のイギリス文学で、 特にジョーゼフ・コンラッドや H・G・ウェルズを中心的に扱っている。現在の主な関心は、ジャーナ リズムの発展や労働運動の活発化といった当時の社会文化的な動向にある。主要研究論文に “A Belaying Pin and a Biscuit: Labour Movements and Narrative in The Nigger of the Narcissus” (『英文学研究』英文号第 54 巻)、共訳書にエドワード・サイード『収奪のポリティックス: アラブ・パレスチナ論集成 1969-1994』(NTT 出版)、J・H・ステイプ編『コンラッド文学案内』(研究 社)などがある。 ○講義概要 二宮金次郎の逸話やテレビドラマ『おしん』などを通して、日本人は立身出世の物語に慣れ親し んできました。つい最近では『花子とアン』が記憶に新しいところです。そうした物語に必ず登場す るのが「身分の違い」というテーマです。それを甘受するのか、あるいは乗り越えるのかという葛藤が 物語の焦点になることもしばしばあります。そうした立身出世の物語は、イギリスにおいてはどのよう に展開されるのでしょうか。ここで私たちはイギリス特有の「階級」という概念を、日本の「格差」と比 較して捉えなおす必要があります。この講義では、『マイ・フェア・レディ』、『ハリー・ポッター』、『ダ ウントン・アビー』といった映像作品や、ディケンズ『大いなる遺産』、ハーディー『日陰者ジュード』、 ウェルズ『キップス』といった小説作品を題材に、日本とイギリスの社会構造の違いについて考察し ていきたいと思います。 ○参考文献等 ・新井潤美『不機嫌なメアリー・ポピンズ〜イギリス小説と映画から読む「階級」』 (平凡社、2005 年) ・板倉厳一郎、スーザン・K・バートン、小野原教子『映画でわかるイギリス文化入門』 (松柏社、2008 年) ・D・キャナダイン『イギリスの階級社会』(日本経済評論社、2008 年) ・下楠昌哉『イギリス文化入門』(三修社、2010 年) ・橋口稔編『イギリス文化事典』(大修館、2003 年) ***** 台湾の中の日本語 日本語を通してみる台湾 ○講師プロフィール 大東和重(おおひがし かずしげ) 1973 年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部中国文学専修卒業、東京大学大学院総合文 化研究科比較文学比較文化コース博士課程修了、博士(学術)。近畿大学文芸学部准教授を経 て、現在、関西学院大学法学部・言語コミュニケーション文化研究科教授。専門は日中比較文学・ 台湾文学で、比較文学の手法を用いて日本・中国・台湾の文学史を研究している。著書に、『文学 の誕生 藤村から漱石へ』(講談社選書メチエ)、『郁達夫と大正文学 〈自己表現〉から〈自己実 現〉の時代へ』(東京大学出版会、日本比較文学会賞)、『台南文学 日本統治期台湾・台南の日 本人作家群像』(関西学院大学出版会)、共著に『ドラゴン解剖学・登竜門の巻 中国現代文化 14 講』(関西学院大学出版会)、共訳書に『台湾熱帯文学 3 夢と豚と黎明 黄錦樹作品集』(人文書 院)などがある。 ○講義概要 日本のすぐ近くにある、台湾。近年は台湾への日本人旅行者のみならず、台湾から日本へ来る 旅行者も急増中です。多くの方は、台湾が戦前に日本の植民地だったこと、またいわゆる「親日 的」とされていることをご存知でしょう。しかしそれ以上の知識となると、わずか飛行機で二時間の距 離の土地のことを、日本人はどれだけ承知しているでしょうか? このセミナーでは、台湾でかつて 話されていた、あるいは今も話されている日本語を通して、実は多様で複雑、そして魅力に富んだ 台湾の社会を、スケッチしてみたいと思います。皆さんが次回台湾へいらっしゃるとき、目にされて いる風景の向こう側にどんな世界が広がっているのか、浮かび上がるような講義にしたいと思って います。 ○参考文献等 ・王育徳、『「昭和」を生きた台湾青年―日本に亡命した台湾独立運動者の回想 1924-1949』、 草思社、2011 ・司馬遼太郎、『街道をゆく 40 台湾紀行』、朝日文庫、1997 ・大東和重、『台南文学―日本統治期台湾・台南の日本人作家群像』、関西学院大学出版会、 2015
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