分子カプセル/ナノシート超分子複合体を用いた新規人工光捕集系の構築

Elamparuthi
Energy Transfer and Subsequent Electron Transfer of Dyes
on the Inorganic Nano-sheet
1
2
3
(Tokyo Metropolitan Univ. , JSPS Research Fellow , Univ. of Miami ,
分子カプセル/ナノシート超分子複合体を用いた新規人工光捕集系の構築
Hokkaido Univ.4, Tokyo Metropolitan Univ. Center for Artificial
北海道大学大学院工学研究院 石田洋平
Photosyn.5) FUJIMURA, Takuya;
RAMASAMY, Elamparuthi; Ishida,
Yohei; Shimada, Tetsuya; RAMAMURTHY, Vaidhyanathan; TAKAGI
【背景】
Shinsuke光捕集系から励起エネルギー移動反応により励起エネルギーを光反応中
光合成の初期過程では、
心に集め、光反応中心において電子移動反応を行なっている。当グループでは人工光捕集系の構築
を目指し、表面に均一な負電荷を有する無機層状化合物である粘土鉱物 (ホスト)と、カチオン性色
素(ゲスト)からなる有機−無機複合体に着目してきた。1 これまでの検討により、粘土上に共吸着し
(
)
2,3
(
)
た二種の色素間において、高効率なエネルギー移動反応が進行する事を報告している。
また
[1]
Ramamurthy(米 Miami 大)らとの共同研究により、カチオン性カプセル型分子に内包されたゲスト
Ramamurthy(
Miami
)
分子においても、粘土上においてエネルギー移動反応が進行する事を見いだしている。4,5
[2]
この様に粘土鉱物表面は光反応場として非常に興味深
hn
いが、光合成の初期過程のようにエネルギー移動反応と、
e-
電子移動反応が段階的に進行する様な系の構築にはこれ
まで至っていない。そこで本研究では、人工光合成の初
期モデルとして、エネルギードナー、エネルギーアクセ
(
)
プター (兼電子ドナー)、電子アクセプターを粘土上に共
Fig. 1 Ideal image of energy transfer and
存させ、エネルギー移動反応と、電子移動反応が段階的 Figure 1. Schematic illustration of
subsequent
this study.
(Fig. 1)
に進行する系の構築を目指した(Figure
1)。
electron
transfer
reaction
system
2-acetylanthracene(Fig. 2(a),
AA)
8+
OAm )
(
AA@OAm216+) [3] 1H-NMR,
【実験】
(Fig. 2(b),
AA
OAm216+2-acetylanthracene(以下 AA)を選択し、これをカチオン性カプセル型分子
エネルギードナーとして
4+
8+
tetrakis(1-methylpyridinium-4-yl)porphyrinatozinc(Fig.
2(c),
ZnTMPyP
(OAm
)に内包させた(AA@OAm216+)。1H-NMR, 蛍光スペクトルより、AA
が OAm216+)内に導入され
1,1'- is(2,4-dinitrophenyl)-4,4'-bipyridinium(Fig. 2(d),
DNPV2+)
た事を確認した。エネルギーアクセプター兼電子ドナーとして tetrakis(1-methylpyridinium-4-yl)
(
geuest (b)Clay)
(a)
porphyrinatozinc(ZnTMPyP4+))を、電子アクセ
pH1
Oxygen
Silicon or Aluminium
プ タ ー と し て 1,1'-bis(2,4-dinitrophenyl)-4,4'-
Magnesium
Hydroxyl
2+
16+
bipyridinium(DNPV
)を選択した。これらの溶
2
AA@OAm
16
(CEC)
液を粘土分散液に撹拌しながら加え、複合化
を行った(guest∩Clay)。なおカプセル化状態を
O
(c)
(d)
維持し、なおかつ末端のアミノ基のプロトン
化を維持するため、全ての測定は pH1 になる
ように溶液を調整した。
(e)
O
Zn
Figure 2. Structures of (a) Saponite, (b) OAm, (c) AA,
4+
2+
4+, (d) DNPV2+
(e) ZnTMPyP
DNPV .
Fig. 2 Molecular structure of (a) AA,(d)
(b)ZnTMPyP
OAm8+, ,(c)
【結果と考察】
AA@OAm216+
Clay(10%vs. CEC) ZnTMPyP4+ Clay(10%vs. CEC) AA@OAm216+
4+
16+
4+
4+
16+
4+
ZnTMPyP
(AA@OAm
&ZnTMPyP
Clay,
AA@OAm216+∩Clay(10% vs. CEC)、ZnTMPyP
∩Clay(10%
vs. CEC)、AA@OAm
と ZnTMPyP10%vs.
2
2
16+
CEC)
390 nm
Fig. 3
AA@OAm
-ZnTMPyP4+
を粘土上に共吸着した試料を
390 nm で励起したときの、蛍光スペクトルを
Figure 23 左に示す。
AA@OAm216+-ZnTMPyP4+∩Clay においては、エネルギードナーである AA@OAm216+の蛍光は減少し、
代わりに ZnTMPyP4+の蛍光
した。これは AA@OAm216+から ZnTMPyP4+
が増
動反応が進行したことを示している。Fig. 3 左の蛍光スペクトルの
およ 損失効率は それ
のエネルギー移
より、エネルギー移動効率
れ 67%、5%であった。また、ZnTMPyP4+−DNPV2+間の電子移動反応の進
行を確認するため、ZnTMPyP4+と DNPV2+を粘土ナノシートに共吸着させ、蛍光スペクトルを測定
した(励起波長 = 468 nm)。DNPV2+の吸着量を増大に伴い、ZnTMPyP4+の蛍光
4+
Rehm-Weller 式から計算した ZnTMPyP *から DNPV
負である事からも、この蛍光
2+
4+
の電子移動はギ ス
光は ZnTMPyP から DNPV
2+
の電子移動に
16+
光が確認された。
エネルギー 化が
来すると考えられる。
4+
AA@OAm2 (10% vs. CEC (cation exchange capacity of clay)), ZnTMPyP (10% vs. CEC), DNPV2+(0
〜80% vs. CEC)を粘土ナノシート上に共吸着させ、390 nm の光で励起したときの蛍光スペクトルを
Figure 3 右に示す。AA@OAm216+の蛍光 光が 察されたが、上述のとおり、AA*@OAm
DNPV2+
の電子移動反応は抑制されているため、この
16+
2
から
光は AA*@OAm216+から ZnTMPyP4+
の
エネルギー移動反応に 来するものと
考えられる。一方 ZnTMPyP4+においては、DNPV2+の吸着
測 さ れ た 。 す な わ ち AA@OAm216+ が 共 存 す る 系 に お い て も 、
増加に伴い、蛍光 光が
ZnTMPyP4+−DNPV2+間での電子移動反応が進行していることがわかる。以上の結果より、目的に
たエネルギー移動反応と、それに
Fluorescence Intensity/ a. u.
1
電子移動反応が進行していることが明らかとなった。6
*
AA@OAm216+∩clay
(AA@OAm216+−ZnTMPyP4+)∩clay
*
ZnTMPyP4+∩clay
*
400
450
500
550
600
650
700
750
Wavelength / nm
Figure 3. Left: Fluorescence spectra of AA@OAm216+∩clay (blue broken line), ZnTMPyP4+∩clay (red dotted
line) and (AA@OAm216+−ZnTMPyP4+)∩clay (solid yellow line). Symbol *denotes Raman scattering of
incident light. Right: Fluorescence spectra of AA@OAm216+ & ZnTMPyP4+ & DNPV2+ on clay. Reprinted
with permission from ref 6, Copyright 2016 Royal Society of Chemistry.
(1) Ishida, Y. Pure and Applied Chemistry 2015, 87, 3–14. (2) Ishida, Y.; Shimada, T.; Masui, D.; Tachibana,
H.; Inoue, H.; Takagi, S. J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 14280–14286. (3) Ishida, Y.; Shimada, T.; Takagi, S.
J. Phys. Chem. C 2013, 117, 9154–9163. (4) Ishida, Y.; Kulasekharan, R.; Shimada, T.; Takagi, S.;
Ramamurthy, V. Langmuir 2013, 29, 1748–1753. (5) Ishida, Y.; Kulasekharan, R.; Shimada, T.;
Ramamurthy, V.; Takagi, S. J. Phys. Chem. C 2014, 118, 10198–10203. (6) Fujimura, T.; Ramasamy, E.;
Ishida, Y.; Shimada, T.; Takagi, S.; Ramamurthy, V. Phys. Chem. Chem. Phys. 2016, 18, 5404–5411.