2P22 平面型金属錯体間の距離とその配向角度に関する磁性の理論的評価阪大院理・阪大極限量子科学研究センター * ⃝ 中西康之・齋藤徹・庄司光男・北河康隆・川上貴資・奥村光隆・山口兆 *・笠井俊夫 [email protected] 【序】遍歴電子および磁性イオンによる局在スピンが共存する系，すなわち磁性伝導体に関する研究が近年盛んに報告されている。近年，塩谷らによって hydoxypyridone を核酸塩基として用いてその塩基から構成される DNA中にスピンを有した銅 (II)イオンを一次元上に 1 5つ配列させた人工 DNAが報告された [1]。金属を内包した人工 DNAは天然の DNAで見られるグアニンとシトシンの相補的塩基対などで見られる水素結合を金属による配位結合で置き換えたものになる。配位結合をすることによってこの系に関しては熱力学的に安定になるという報告もされている。一方で D N A においては伝導性に関する報告例も現在までに多数存在する。そこで我々はこの系が磁性伝導体の候補と考え，まず本研究ではデオキシリボースおよびリン酸を取り除いた平面型金属錯体部分に関する磁性を有効交換積分値などを用いて理論的評価を行った。【計算方法】 Fig.１に計算モデルを示した。計算手法は U B 3 LY P を用い，基底関数は C u に Cu HN NH o o 関しては midi +p を用い他の原子に関しては 6-31+G* を用いた。構造最適化は１量体のみ行い，その１量体の最適化構造の結果をもとに２量体に関してはエネルギー計算を行っ o o Cu た。２量体に関しては上下ユニット間の分子 HN NH o o 間距離およびユニット間の回転角度を変え，それによりどのように磁性が変化するのか Fig.１ Structure of Cu(II) を調べた。また，xy平面上に一方の分子ずれ ion-hydoroxypyridone た時の磁性の変化も調べた。 complex (dimer) 【計算結果】計算結果はいずれの系も弱い反強磁性を示す結果が得られ，特に回転角度が 0 および 90 の時に反強磁性が最大になった。また，系の全エネルギーは高スピン状態および低スピン状態が擬縮重しており，その結果，熱励起により容易に低スピン状態から高スピン状態に励起する可能性が示唆される。自然軌道解析の結果，スピンは Cu(II) イオンおよび酸素原子間に分布しておりまた占有数から α 電子および β 電子間の相互作用はほとんどないことが分かった。これらの結果は 0Kでの結果であるため Boltzmann分布を用いて温度効果を調べたところ，室温 ( 3 0 0 K ) 下ではほぼ完全に高スピン状態および低スピン状態が縮重していることが分かり熱励起もこの温度下では容易に起こることが示唆される。結果の詳細に関しては当日発表する。【参考文献】 [ 1 ] K , Ta n a k a , A . T e n g e i j i , T . K a t o , N . T o y a m a , M . S h i o n o y a , S c i e n c e , 2 9 9 , 1212-1213 (2003) [ 2 ] K , T a n a k a , A . Te n g e i j i , T . K a t o , N . To y a m a , S . S h i r o , M . S h i o n o y a , J . A m . Chem. Soc, 124, 12494 (2002) o o