2016・17年度 内外経済見通し(2016年7月緊急改訂) ~ Brexitで内外経済見通しを下方修正、最大の被害者は日本 ~ 2016.7.8 Copyright Mizuho Research Institute Ltd. All Rights Reserved. 見通し改訂のポイント ○ 英国のEU離脱(Brexit)決定の影響を考慮して、ユーロ圏と日本の成長率を下方修正。ユーロ 圏は英経済の失速に伴うマインド悪化、日本は円高・株安といった金融市場の変動が主因 ○ メインシナリオでは世界経済全体への下押し圧力は限定的としたが、更なる政治的混乱や 金融問題への波及などBrexitを契機とした一段の景気下振れリスクには警戒が必要 ○ 欧州は政治リスクや金融セクターの不安がくすぶり、景気拡張期の終焉が意識される米国や 構造問題を抱える中国は外的ショックに脆弱。日本は円高株安が加速すれば景気後退も ○ Brexitを契機に反EU派の更なる台頭など欧州の政治不安は一段と高まるリスクがあり、米国 も大統領選という不安要素を抱えた状況。相対的に政治的安定性が目立つ日本は、政治主 導による構造改革の進展や景気浮揚が期待される ○ 金融政策は世界的に緩和バイアスが強まる方向。緩和観測や先行き不安を映じた投資家の リスク回避姿勢から長期金利は世界的に低下傾向 ○ ポンドやユーロに通貨安圧力が掛る実質的な通貨安競争の中、円高地合いが続く見込みだ が、日本は四面楚歌で介入のハードルは高い。結果として日本は最大の被害者に 1 《構 成》 Ⅰ.全体概要 P 3 Ⅱ.海外経済 P 7 (1)Brexitの今後と英国経済 P 8 (2)ユーロ圏経済 P 10 (3)米国経済 P 12 (4)アジア経済 P 16 Ⅲ.金融市場・各国金融政策 P 17 Ⅳ.日本経済 P 29 2 Ⅰ.全体概要 ~英EU離脱で見通し下方修正、一段の下振れリスクも~ 3 英国のEU離脱(Brexit)決定を受けて、内外経済見通しを下方修正 ◯ Brexitによる不透明感の高まりを受けたマインド悪化や円高進行などから、ユーロ圏と日本の成長率を下方修正 ‧ 欧州経済の減速が貿易などを介して世界経済全体に与える下押し圧力は限定的 ‧ ただし、更なる政治的混乱や金融問題への波及などBrexitを契機とした世界経済の一段の下振れリスクには警戒が必要 【 世界経済見通し総括表 】 (前年比、%) 暦年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 (実績) (実績) (実績) (予測) (予測) (前年比、%) 2016年 2017年 (6月予測) (%ポイント) 2016年 2017年 (6月予測からの修正幅) 3.3 3.5 3.2 3.3 3.6 3.3 3.7 - ▲ 0.1 日米ユーロ圏 0.8 1.5 1.9 1.5 1.6 1.5 1.8 - ▲ 0.2 米国 1.5 2.4 2.4 1.8 2.3 1.8 2.3 - ▲ 0.3 0.9 1.7 1.4 1.1 1.5 1.4 ▲ 0.1 ▲ 0.3 1.4 ▲ 0.0 0.5 0.3 0.5 0.5 0.9 ▲ 0.2 ▲ 0.4 6.4 6.3 6.1 6.0 6.0 6.0 6.0 - - 中国 7.7 7.3 6.9 6.6 6.5 6.6 6.5 - - NIEs 2.9 3.4 1.9 1.8 2.2 1.8 2.2 - - ASEAN5 5.0 4.6 4.8 4.6 4.5 4.6 4.5 - - インド 6.3 7.0 7.2 7.7 7.7 7.7 7.7 - - オーストラリア 2.0 2.7 2.5 2.7 2.5 2.7 2.5 - - ブラジル 3.0 0.1 ▲ 3.8 ▲ 3.4 0.8 ▲ 3.4 0.8 - - ロシア 1.3 0.7 ▲ 3.7 ▲ 1.2 1.0 ▲ 1.2 1.0 - - 日本(年度) 2.0 ▲ 0.9 0.8 0.4 0.7 0.6 1.0 原油価格(WTI,$/bbl) 98 93 49 44 46 44 46 予測対象地域計 ユーロ圏 日本 アジア ▲ 0.2 - - ▲ 0.3 - (注)予測対象地域計はIMFによる2012年GDPシェア(PPP)により計算。 (資料)IMF、各国統計より、みずほ総合研究所作成 4 リスクファクターに注目。Brexit問題が更なる景気下振れにつながるリスクも ◯ 英国のEUへの脱退通告時期やその後の交渉プロセスなど不透明要素は多く、世界経済の下振れリスクは増大 【 各国経済のメインシナリオとリスクファクター 】 国・地域 英国 メインシナリオ 対EU関係を巡る不透明感から内需 を中心に景気が失速、2016年末~ 2017年初にかけてマイナス成長に 対英関係を巡る不透明感の高まりか ユーロ圏 ら投資が抑制され、2016年後半から 2017年にかけて景気は減速へ リスクファクター バイアス ・EUへの離脱通告時期の後ずれや、 EUとの離脱交渉の難航 ・不動産価格の急落 ・反EUの拡散による政治リスクの増大 ・伊不良債権問題など脆弱な金融セク ターを背景とした信用不安の高まり 日本 円高・株安が成長率を下押しするも、 経済対策などで景気後退は回避 ・リスクオフで更に円高、株安が進行 すれば、景気後退の可能性も ・マイナス金利の深堀りは諸刃の剣 米国 更なる市場の混乱がないことを前提 とすれば、貿易などを介したBrexitの 影響は限定的 ・リスクオフによるドル高の進行 ・米国自体の循環的な景気後退リスク の高まり 新興国 更なる市場の混乱がないことを前提 とすれば、貿易などを介したBrexitの 影響は限定的 ・リスクオフによる新興国通貨急落 ・外的ショックに伴う中国を中心とした 新興国債務問題の深刻化 (注)バイアスは今後の見通し修正の可能性。矢印が上向きなら上方修正、下向きなら下方修正バイアスがあることを示す。線の太さはバイアスの強さを示す。 (資料) みずほ総合研究所作成 5 政治的な不安定性が高まる世界情勢、日本の安定度は世界トップクラス ◯ ‧ ‧ ‧ Brexitを契機に欧州の政治不安は一段と高まるリスクがあり、米国も大統領選という不安要素を抱えた状況 欧州は総じて現政権の支持率が低く、反EU派の更なる台頭など政治の不安定性が高まり易い 米大統領選でトランプ氏が当選する事態となれば、金融市場でリスク回避の動きが強まる可能性も 安倍政権の支持率はG7の中でも相対的に高く、政治主導による構造改革の進展や景気浮揚が期待される 【 G7各国のトップの支持率比較 】 米国 カナダ フランス 英国 政権 民主党 自由党 社会党 保守党 トップ オバマ 大統領 トルドー 首相 オランド 大統領 任期 2017年1月 2020年11月 支持率 50% 62% ドイツ イタリア 日本 民主党 自民党 キャメロン 首相 キリスト教 民主同盟 メルケル 首相 レンツィ 首相 安倍 首相 2017年5月 2016年10月 2017年12月 2019年2月 2018年9月 12% 34% 45% 40% 55% (注)各国の調査時点は以下の通り。 2016年4月:ドイツ・イタリア、5月:カナダ・日本、6月:フランス、7月:米国・英国。 (資料)米国:Real Clear Politics、カナダ:Ipsos、フランス:TNS Sofres、英国:Yougov、ドイツ:ARD、イタリア:Le Repubblica、日本:共同通信社、財務省より、 みずほ総合研究所作成 6 Ⅱ.海外経済 ~ Brexitで欧州減速、米国やアジアへの波及リスクも~ 7 (1) Brexitの今後と英国経済 ~ EU離脱は2020年前半、英経済は失速 ◯ EUへの脱退通告は2016年末から17年初に実施され、2年間かけて脱退交渉を行うと予想 ‧ 新協定締結に向けた交渉も同時に行われるが、終了は2019年末ごろまでかかると予想 ――― 新首相は、テレサ・メイ内務大臣の可能性が高い。新政権は実質的には「Brexit政権」に ――― EUでは、国民投票や選挙が断続的に実施され、英国への安易な妥協は見込みにくい。交渉加速は2018年以降 【 英国のEU離脱過程の想定シナリオ 】 2016年 2016年 英下院でEUとの交渉方針協議 12月 2017年 政治イベント 英首相選出 10月 【 欧州の主要スケジュール 】 EUに対してEU条約50条に基づく通告を実施 英・EU間の 脱退協定交渉 6月 EU首脳会議 7月 BOE(14)、ECB(21) 8月 BOE(4) 9月 英・EU間の 新協定交渉 金融政策決定会合 10月 保守党党首決定(9) EU27非公式首脳会合(16) 英保守党党大会(2~5) BOE(8)、ECB(15) BOE(13)、ECB(20) オーストラリア大統領選挙(再実施、2(予定)) 2018年 EU首脳会合(20~21) 年末ごろ イタリア憲法改正を問う国民投票(10月中) 2019年 脱退協定において、新協 定交渉期間中のEU法 適用などについて合意 11月 12月 2017年 2020年 5月 4月 英総選挙 5月 英・第三国間の 通商協定交渉 (資料) みずほ総合研究所作成 3月 英EU離脱 9月前後 2018年 5月 BOE(3) EU首脳会合(15~16) オランダ下院選挙(15) フランス大統領選・初回投票(23) 同決選投票(7) 独連邦議会選挙(8/27~10/22) イタリア総選挙(23まで) ECB(8)、BOE(15) (注) カッコ内は日付。オーストリア大統領選は見込み。金融政策決定会合は2016年のみ掲載。 (資料) 欧州理事会、各種報道等より、みずほ総合研究所作成 8 英国:景気は失速する公算大 ◯ 国民投票前の想定と比べ、英成長率見通しは大幅に下振れると予測 ‧ 対EU関係を巡る不透明感が強まる中、企業は投資計画などを見直すとみられる ――― 国民投票後の企業サーベイでは、離脱は事業活動に負の影響を及ぼし(回答企業の64%)、この結果、投資を 削減(同36%)したり、雇用を抑制(同31%)したりするとの回答が示されている(英経営者協会が6/24~6/26に調査) ‧ EUへの離脱通告時期の後ずれや、EUとの離脱交渉の難航は不透明感を高め、景気下振れリスクとなり得る 【 英経済政策に関する不透明感指数 】 (長期平均=100) 【 英GDP成長率の見通し 】 不透明感は過去最高水準に 500 (前年比、%) 4 EU残留の場合の ベンチマーク (2016年3月財務省) 3 欧州債務危機 400 イラク戦争 300 2 EU離脱の場合の 見通し値 (みずほ総研) 1 世界金融危機 0 2017年に成長率は失速 ▲1 200 ▲2 ▲3 100 ▲4 ▲5 0 1998 2000 02 04 06 08 10 12 14 (注) 英主要紙上の不透明関連ワードをカウントしたもの。 (資料) Scott, R. B., Bloom, N., Davis, B.J.(2015), "Measureing Economic Pollicy Uncertainty", NBER Working Paper, 21633より、みずほ総合研究所作成 16 (年) 2006 08 10 12 14 16 18 20 (年) (注) 2016年以降は予測値。 (資料) 英統計局、英財務省より、みずほ総合研究所作成 9 (2) ユーロ圏経済 ~ 年後半に景気減速へ ◯ ユーロ圏成長率を2016年+1.4%、2017年+1.1%に下方修正 ‧ 4~6月期のユーロ圏成長率は減速した模様。年初の暖冬要因の剥落、油価上昇による購買力の悪化などが背景に ‧ 英国のEU離脱決定を受けて年後半は減速感が強まる見通し。ただし、景気失速には至らず ――― 英景気悪化の直接的な影響がユーロ圏成長率に与える影響は限定的とみられる。一方、今後の対英関係に 関連した不透明感が高まることで、英国と繋がりのある企業を中心に投資が抑制される公算大 ――― 純輸出の増加(輸入の減少) などは成長率を押し上げるが、全体でみれば離脱はユーロ圏成長率にマイナス 【 英国EU離脱がユーロ圏に及ぼす影響の整理 】 要因 英景気 の悪化 マインド の悪化 想定される状況 英国の内需悪化→ 英国向け輸出減少 × 英国向け輸出減少→ 輸出関連業の投資抑制 × 不透明感の高まり→ 投資・雇用・消費の抑制 × 上記の投資・消費抑制に関連した輸入の減少 ○ 英国拠点の縮小→ ユーロ圏内に拠点増設 ○ × × 株価下落→ 逆資産効果 金融市場 の混乱 ユーロ圏成長 率への影響 資金調達コストの増加 ユーロ減価→ 輸出押し上げ、購買力低下 油価下落→ 購買力上昇 (注) ○は成長率を押し上げ、×は成長率を押し下げ。 (資料) みずほ総合研究所作成 輸出を通じて○ 消費を通じて× ○ 【 ユーロ圏見通し総括表 】 国民投票前の見通し 今回の見通し (単位:前年比%、同寄与度%pt) 2015 実質GDP 2016 2017 2016 2017 1.7 1.4 1.1 1.5 1.4 1.8 1.8 1.0 1.8 1.4 個人消費 1.7 1.6 1.2 1.6 1.3 総固定資本形成 2.7 2.1 0.1 2.2 1.4 政府消費 1.3 1.5 0.9 1.5 0.9 在庫投資 ▲ 0.0 0.1 0.0 0.1 0.1 ▲ 0.1 ▲ 0.3 0.2 ▲ 0.3 0.1 輸出 5.1 2.4 4.0 2.6 4.2 輸入 5.9 3.4 4.1 3.5 4.5 内需 外需 (注) 網掛けは予測値。 (資料) Eurostatなどより、みずほ総合研究所作成 10 ユーロ圏:離脱の影響度は各国でまちまち ◯ 英国のEU離脱の影響を相対的に受け易い国はオランダやアイルランド ・ 両国は、英国向け輸出や英国向け直接投資の規模が相対的に大。また、英国向けクロスボーダー与信残高の大きい 国では、英国向け貸出債権の不良化リスクが意識される可能性も ・ 一方、英国から拠点をユーロ圏へ移す動きが強まれば、ユーロ圏景気にはプラス材料 ――― 報道によると、今後の英国・EUの交渉の経過を踏まえ、アイルランドへ拠点を移そうとする企業も現れている 【 ユーロ圏・各国と英国との経済面での繋がり 】 ユーロ圏 オーストリア ベルギー キプロス エストニア フィンランド フランス ドイツ ギリシャ アイルランド イタリア ラトビア リトアニア ルクセンブルク マルタ オランダ ポルトガル スロバキア スロベニア スペイン 貿易 英内需1%減のGDPに対する影響度(%) 0.03 0.02 0.07 0.03 0.02 0.02 0.02 0.03 0.01 0.13 0.01 0.02 0.03 0.04 0.16 0.09 0.01 0.03 0.02 0.02 投資 対英FDI残高のGDP比(%) 3.8 0.6 5.1 17.2 0.0 0.6 2.9 1.4 0.0 5.8 0.2 0.0 0.0 129.8 6.3 21.4 0.2 0.0 0.0 3.5 金融 対英クロスボーダー与信残高のGDP比(%) 11.0 3.0 3.8 0.8 9.5 11.1 4.8 31.3 2.3 11.6 1.5 34.6 (注)1. 白抜きは上位1~3カ国、シャドーは上位4~6カ国。FDIは2014年の値、与信は2015年末の値。 (注)2. 英内需減に対する影響度は、英国の内需が1%減少した場合に、ユーロ圏各国の輸出がどれだけ減少するかを求め、輸出減少額に各国の輸出対GDP比率を乗じ、 GDPへの影響度とした。 (資料) 英統計局、Eurostat、Timmer, M. P., Dietzenbacher, E., Los, B., Stehrer, R. and de Vries, G. J. (2015), "An Illustrated User Guide to the World Input–Output Database: the Case of Global Automotive Production", Review of International Economics., 23, pp.575~605などから、みずほ総合研究所作成 11 (3) 米国経済 ~経済指標は減速傾向が強まり、ショックに脆弱 ◯ 2014年半ば以降の経済指標は、原油安・ドル高、新興国経済の減速を受けて生産関連指標の弱さが目立つ内容 ‧ 全米経済活動DIは2014年半ば以降低下傾向にあり、足元の水準は景気拡張期の終焉を示すレベルに近づく ――― 生産関連指標の悪化が主因だが、構造変化の影響で下方バイアスが存在することに注意 【 シカゴ連銀全米経済活動DI 】 1.0 2014年半ば以降、 ほぼ一貫して低下傾向。 構造変化の影響で下方バイアスが 存在することに注意。 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 ▲ 0.2 リセッション・ライン ▲ 0.4 ▲ 0.6 ▲ 0.8 ▲ 1.0 1980 90 00 10 (年) (注)シカゴ連銀全米活動指数は85の経済指標より構成されており、①消費・住宅、②雇用、③生産・所得、④売上・受注・在庫の4つの分野に分けられる。 リセッション・ライン(▲0.35)は、景気後退入りの可能性を示唆する水準。 (資料) シカゴ連銀より、みずほ総合研究所作成 12 米国:「第4コーナーを回った」「景気後退が近い」との声も囁かれ始めている ◯ 米国の景気拡張期は住宅ブームに沸いた前回を超える長さ。需要の伸び余地や中国・資源バブル崩壊の影響に懸念 ‧ 1980年以降を振り返ると、いずれの景気拡張期もバブル崩壊を伴って終了 ――― XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX 【 1980年以降の米国の景気循環 】 中国・資源バブルの崩壊 ITバブル 住宅バブル + 商業用不動産 の崩壊 の崩壊 Brexit、伊不良債権問題etc バブルの崩壊 (前期比年率%) 10 92カ月 120カ月 73カ月 今年7月で 85カ月目 5 0 ▲5 ▲10 1980 85 90 95 2000 05 10 15 (年) (注) 網掛けは景気後退期。2016年4~6月期は見込み。 (資料) 米国商務省、全米経済研究所(NBER)より、みずほ総合研究所作成 13 米国:製造業の約4割はBrexitによる2016年中のネガティブな影響を予想 ◯ 米製造業はドル高による悪影響を懸念 ‧ 製造業の7%はネガティブな影響を、31%はわずかにネガティブな影響を予想 ‧ ネガティブな影響を及ぼす経路として、ドル高を指摘する回答が最も多く、次いで海外需要の減少 ――― 非製造業の調査結果は製造業とほぼ同様 ‧ 2割弱の企業は設備投資、雇用へのネガティブな影響を予想 【 Brexitによる影響(製造業) 】 【 Brexitによる影響(全産業) 】 (設備投資への影響) 海外の 需要減少 30% ほとんど 影響なし 58% ネガティブな 影響 38% ドル高 51% ネガティブな影響 17% ポジティブな影響 2% (雇用への影響) 雇用を抑制 15% 英国の 需要減少 14% ほとんど影響なし 81% 雇用を抑制しない 85% ポジティブな影響:4% (注)ネガティブな影響は「ネガティブな影響」「わずかにネガティブな影響」の合計、 ポジティブな影響は「ポジティブな影響」「わずかにポジティブな影響」の合計。 (資料) 米サプライマネジメント協会より、みずほ総合研究所作成 (資料) 米サプライマネジメント協会より、みずほ総合研究所作成 14 米国:英国だけでなく、EUを経由した影響に注意 ◯ 英国を含むEU向け輸出は米国全体の2割弱、直接投資残高は約半分 ‧ 米輸出の約半分はカナダや中南米向け、2割弱が英国を含むEU向け ‧ 直接投資残高をみると、英国を含むEUは全体の半分程度を占め、米国にとっての主要な投資先 ――― Brexitによる米産業への影響は、英・EU進出企業の売上減少を通じて、 配当収入など所得収支への下押しと して現れる見込み 【 国・地域別にみた輸出額と直接投資残高 】 輸出額(財) 金額(億ドル) 英国 直接投資残高 シェア 金額(億ドル) シェア 561 4% 5,879 12% EU(英国除く) 2,159 14% 19,268 39% 北米(カナダ+メキシコ) 5,164 34% 4,939 10% 中南米 1,525 10% 1,500 3% 中国 1,161 8% 658 1% 日本 624 4% 1,081 2% ASEAN 750 5% 2,245 5% (注)輸出額は2015年時点、直接投資残高は2014年時点。 (資料) 米国商務省より、みずほ総合研究所作成 15 (4) アジア経済 ~ 貿易面でBrexitの影響は限定的も、相場変調リスクに留意 ◯ アジア各国の欧州向け輸出ウェイトを考慮すると、貿易面からみたアジア経済への影響は限定的 ‧ 対EU輸出の名目GDP比はマレーシア、シンガポール、タイ、台湾、香港で5%超とやや高いが、現時点でBrexitによる欧 州経済の下振れは限定的とみられるため、2016、2017年のアジア経済成長率の下方修正は見込まず ‧ ただし、Brexitを契機とする不確実性の高まりから金融市場が変調を来し、世界全体で景気停滞が生じた場合、輸出依 存度が高い香港やシンガポールを中心に成長率の押し下げが見込まれる ‧ 英国内需が1%下振れした場合、中国、韓国、台湾、インドネシアの英国向け輸出は1%程度低下する計算 【アジア各国の欧州向け輸出(対GDP比、2014年) 】 <対ユーロ輸出> <輸出全体> (名目GDP比、%) 0 100 200 0.0 中国 中国 香港 香港 韓国 韓国 台湾 台湾 シンガポール シンガポール インドネシア インドネシア マレーシア マレーシア フィリピン フィリピン タイ タイ ベトナム ベトナム インド インド 5.0 (名目GDP比、%) 0.0 10.0 5.0 3.7 5.6 2.2 インドネシア 1.6 5.1 3.8 N.A. 1.5 (資料)世界銀行、各国統計、CEIC dataより、みずほ総合研究所作成 N.A. 6.1 タイ ベトナム インド N.A. 2.4 0.2 0.0 7.7 マレーシア フィリピン N.A. 1.2 0.4 7.3 シンガポール 英国向け輸出 0.6 5.8 台湾 輸出全体 0.8 3.6 韓国 2.2 1.4 1.0 5.0 香港 3.8 10.0 3.9 中国 2.7 (英国内需が1%変化した場合の影響、%Pt) <対EU輸出> (名目GDP比、%) 300 【 英国内需減少によるアジア輸出への影響 】 中 国 韓 国 台 湾 イ ン ド ネ シ ア イ ン ド (注)世界産業連関表(WIOT)より生産誘発効果を計算。 (資料)Timmer, M. P. et. al. (2015)"An Illustrated User Guide to the World Input–Output Database: the Case of Global Automotive Production“より、みずほ総合研究所作成 16 Ⅲ.金融市場・各国金融政策 ~金融緩和バイアスの下、低金利・円高傾向~ 17 (1) 各国金融政策 ~ 欧州:BOEは包括緩和へ、ECBは現状維持 ◯ BOEは次回MPC(7/14)で0.25%の利下げ、次々回MPC(8/4)で量的緩和再開と貸出促進策(FLS)強化を予想 ‧ カーニー総裁は、最近の講演で「夏場にかけて」の追加緩和策の必要性を強く示唆 ――― 既に流動性供給は実施済で、今後の選択肢は①利下げ、②QE拡大(量と質の両面)、③貸出促進策強化に集 約され、そのすべてを実施すると予想 ◯ ECBは、次回理事会(7/21)で金融政策は現状維持を予想。Brexitのユーロ圏経済や物価への影響を見極めへ ‧ 欧銀健全性不安再燃への警戒から、追加利下げは取りにくい選択肢。現状ではユーロ相場、株価、油価も安定的 ――― 長期金利の低下によりQEの実施が難しくなる可能性があることから、国別購入シェアの再考は取り得る選択肢 【 BOEのBrexit後の対応と今後取り得る選択肢 】 これまで取られた対応 流動性 中銀間のドルスワップ協定 2,500億ポンドの追加オペ マクロ・プルー デンス政策 【 欧銀のCDSスプレッド 】 (bp) 400 350 イタリア 臨時長期オペ(6M)の期間延長 300 資本におけるカウンター・シクリカル・ バッファーの撤廃(0.5%→0%) 250 今後とり得る対応 伝統的手段 追加利下げ(現在政策金利は0.5% 非伝統的手段 資産購入ファシリティ(現在3750億ポ ンド)の量・質両面の変更 貸出のための資金供給(FLS)スキー ムの強化 (資料)BOEより、みずほ総合研究所作成 英国民投票 150 ドイツ スペイン 英国 100 フランス 200 50 0 15/7 7 9 11 16/1 1 3 5 7 (年/月) (注)CDSはいずれもシニア債5年物。各国主要行の単純平均。 (資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成 18 米国・新興国:FRBの利上げ期待は大きく後退。アジア各国中銀は引き続き緩和的 ◯ ‧ ‧ ◯ ‧ ‧ Brexit決定を受けて、市場の米利上げ期待は大幅に後退 2016年内の利上げ確率は1割程度まで低下し、2017年の利上げも難しいのではといった見方も台頭 みずほ総合研究所では、2017年以降緩やかなペースでの利上げという見通しを維持 新興国では、国によって対応はまちまち 物価が相対的に落ち着いているアジアでは景気下支えのため、利下げを実施する国が散見される状況 Brexit後にメキシコが利上げを決定するなど、インフレや通貨安の懸念が強い中南米などでは引締めバイアスの国も 【 米利上げ確率 】 【 新興国の政策金利動向 】 7月FOMC 9月FOMC (%) 8 11月FOMC 12月FOMC 7 100% 90% 80% コロンビア インドネシア 70% 6 60% 5 50% 4 40% メキシコ 3 フィリピン 2 台湾 1 韓国 30% 20% 10% 0% 16/4 0 16/5 16/6 16/7 (年/月) (注)FF金利先物から計算した、各会合までに1回以上利上げされている確率(累計)。 (資料)Bloomberg より、みずほ総合研究所作成 2013 13 14 15 16 (年) (資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成 19 日本:円高地合いの長期化が見込まれる中、日銀追加緩和の可能性高まる ◯ 日銀が重視する物価の基調を示す指標(生鮮食品・エネルギーを除く消費者物価指数等)は低下基調で推移。円高地合 いが長期化すれば2017年度中の物価目標達成が困難に。早ければ7月会合(7/28・29)で追加緩和が行われる可能性 ◯ 追加緩和策としてETFや社債等の買入れ拡大、ドル資金調達サポートなどを予想。マイナス金利幅拡大のハードルは 高いものの、金融機関向け貸付金利へのマイナス金利適用とセットでの更なる利下げの可能性も ‧ オーバーナイト金利の先行き見通しを示すOISカーブでは、10~20bpのマイナス金利幅拡大を織り込みつつある状況 【 OISカーブ 】 【 物価の基調を示す指標 】 QQE導入 (2013年4月) 追加緩和 (2014年10月) (前年比:%) 1.5 1.0 10%刈込平均値 0.5 0.0 ▲ 0.5 総合 ▲ 1.0 (除く生鮮食品・エネルギー) ▲ 1.5 マイナス金利 (2016年1月) (%) 0.0 2016/7/7 2016/6/23 ▲ 0.1 ▲ 0.2 (%ポイント) 50 40 30 20 10 0 ▲ 10 ▲ 20 ▲ 30 ▲ 40 ▲ 50 ▲ 0.3 ▲ 0.4 上昇品目比率-下落品目比率 11 12 13 ▲ 0.5 14 15 16 (年) (注)10%刈込平均値:値の大きい品目と小さい品目をウェイトベースでそれぞれ10%控除して算出。 (資料) 日銀より、みずほ総合研究所作成 1M 2M 3M 4M 5M 6M 7M 8M 9M 10M11M 1Y 2Y 3Y 4Y 5Y (資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成 20 (2) 金融市場 ~ 先行き不安や緩和観測を背景に金利は低下、為替は円高地合い 【 金融市場の予測 】 2015 2016 2017 年度 年度 年度 2016 4~6 2017 7~9 10~12 1~3 4~6 2018 7~9 10~12 1~3 日本 無担保コールO/N ユーロ円TIBOR 金利スワップ 新発国債 日経平均株価 (末値、%) 0~0.1 ▲ 0.05 ▲ 0.05 0~0.1 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05 (3か月、%) 0.16 0.06 0.06 0.07 0.06 0.06 0.06 0.06 0.06 0.06 0.06 (5年、%) 0.17 ▲ 0.11 ▲ 0.09 ▲ 0.10 ▲ 0.13 ▲ 0.10 ▲ 0.10 ▲ 0.10 ▲ 0.10 ▲ 0.10 ▲ 0.05 (10年、%) 0.30 ▲ 0.13 ▲ 0.09 ▲ 0.12 ▲ 0.23 ▲ 0.15 ▲ 0.10 ▲ 0.10 ▲ 0.10 ▲ 0.10 ▲ 0.05 (円) 18,841 15,700 16,800 16,400 15,100 15,300 15,800 16,100 16,600 16,900 17,500 0.00~0.25 0.50~0.75 1.00~1.25 0~0.25 0.25~0.50 0.25~0.50 0.50~0.75 0.50~0.75 0.75~1.00 0.75~1.00 1.00~1.25 米国 FFレート (末値、%) 新発国債 (10年、%) 2.12 1.58 1.75 1.70 1.50 1.50 1.60 1.70 1.70 1.80 1.80 (ドル) 17,298 17,800 18,100 17,800 17,600 17,800 17,800 18,000 18,000 18,200 18,200 ECB主要政策金利 (末値、%) 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 ドイツ国債 (10年、%) 0.53 0.02 0.09 0.12 ▲ 0.07 0.00 0.02 0.05 0.10 0.10 0.10 (円/ドル) 120 102 105 108 100 100 101 102 104 105 107 (ドル/ユーロ) 1.10 1.10 1.08 1.13 1.11 1.09 1.09 1.09 1.08 1.08 1.07 (ドル/バレル) 45 47 47 46 48 48 45 45 47 48 49 ダウ平均株価 ユーロ圏 為替 ドル・円 ユーロ・ドル WTI原油先物価格 (注) 網掛けは予測値。予測値は期中平均。但し、無担保コールO/N、FFレート、ECB主要政策金利は期末値。 ユーロ円TIBORは360日ベース。スワップ5年は6カ月LIBORに対する固定金利払。為替相場はニューヨーク終値ベース。 (資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成 21 先行き不安による投資家のリスクオフ姿勢を背景に長期金利には低下圧力 ◯ リスクオフ姿勢の高まりに伴い、英国の長期金利だけでなく、日米独の長期金利も低下 ‧ 英国民投票の結果を受け、英国のみならず、日米独の長期金利も低下 ――― 英国民投票前日には独10年国債利回りはプラス圏に戻ったが、国民投票の結果を受け再びマイナス圏に ‧ 英国民投票後に上昇したギリシャ・イタリア・スペイン・ポルトガルの金利も、7月頭にかけて低下 ◯ 世界経済の先行き不透明感が高まれば、長期金利に低下圧力がかかり続ける可能性 【 主要国の長期金利の推移(日米英独) 】 【 欧州長期金利の推移(ギリシャ・イタリア・スペイン) 】 (%) 1.5 (%) 2.5 (%) 2.0 (%) 12 スペイン 米国 1.0 2.0 11 1.5 イタリア 10 英国 0.5 1.5 1.0 9 0.0 1.0 ドイツ(右目盛) 0.5 16/1 16/2 16/3 (注) 10年国債利回り。 (資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成 16/5 8 ギリシャ(右目盛) 日本(右目盛) 16/4 0.5 ▲0.5 16/6 16/7 (年/月) 0.0 16/1 16/2 16/3 16/4 16/5 16/6 7 16/7 (年/月) (注) 10年国債利回り。 (資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成 22 グローバルに長期金利は低下傾向 ◯ 資金逃避の動きから、グローバルに長期金利が低下 ‧ 米10年国債利回りは1.3%台に低下、独10年国債利回りは再びマイナス圏へ ‧ 日本では20年国債利回りが一時マイナス圏に低下 【 世界の金利水没マップ 】 スイス 日本 ドイツ オランダ デンマーク フィンランド オーストリア フランス スウェーデン アイルランド スペイン イタリア 英国 ノルウェー カナダ 米国 ポルトガル オーストラリア 中国 インド 1年 -1.00 -0.34 -0.62 -0.62 -0.58 -0.64 -0.55 -0.57 -0.50 -0.36 -0.24 -0.23 0.19 0.46 0.50 0.44 0.11 1.61 2.39 6.90 2年 -1.04 -0.33 -0.68 -0.63 -0.57 -0.63 -0.57 -0.61 -0.64 -0.38 -0.14 -0.07 0.13 0.45 0.49 0.58 0.66 1.56 2.47 6.99 3年 -1.09 -0.32 -0.70 -0.62 -0.49 -0.62 -0.56 -0.58 -0.58 -0.29 -0.07 0.00 0.23 0.44 0.47 0.67 1.18 1.51 2.56 7.07 4年 -1.04 -0.34 -0.67 -0.61 -0.42 -0.53 -0.53 -0.50 -0.52 -0.25 0.06 0.10 0.29 0.49 0.51 0.81 1.58 1.54 2.69 7.18 5年 -0.99 -0.35 -0.60 -0.47 -0.34 -0.48 -0.45 -0.40 -0.35 -0.17 0.23 0.31 0.35 0.54 0.54 0.94 1.82 1.58 2.81 7.26 6年 -0.92 -0.36 -0.57 -0.45 -0.30 -0.36 -0.41 -0.35 -0.29 -0.10 0.31 0.51 0.47 0.61 0.63 1.07 2.07 1.65 2.83 7.43 7年 -0.87 -0.35 -0.50 -0.34 -0.26 -0.29 -0.38 -0.25 -0.22 0.08 0.53 0.69 0.57 0.68 0.71 1.19 2.31 1.72 2.84 7.42 8年 -0.75 -0.34 -0.43 -0.22 -0.22 -0.16 -0.33 -0.15 -0.10 0.24 0.88 0.90 0.67 0.74 0.77 1.25 2.82 1.79 2.85 7.44 9年 -0.67 -0.31 -0.30 -0.09 -0.08 -0.08 -0.10 0.00 0.00 0.41 1.01 1.07 0.67 0.82 0.86 1.31 2.87 1.83 2.86 7.51 10年 -0.62 -0.27 -0.18 0.03 0.05 0.08 0.13 0.13 0.10 0.48 1.17 1.24 0.77 0.89 0.97 1.37 3.05 1.86 2.88 7.39 11年 -0.58 -0.24 -0.16 0.07 0.07 0.13 0.12 0.20 0.19 0.53 1.24 1.30 0.87 12年 -0.54 -0.21 -0.15 0.11 0.09 0.18 0.12 0.26 0.28 0.59 1.31 1.36 0.97 13年 -0.49 -0.18 -0.14 0.14 0.11 0.23 0.11 0.32 0.36 0.64 1.38 1.42 1.08 14年 -0.44 -0.15 -0.12 0.18 0.13 0.28 0.11 0.39 0.45 0.70 1.44 1.47 1.18 1.03 1.41 3.13 1.94 2.93 7.67 1.09 1.45 3.21 2.01 2.99 7.68 1.15 1.48 3.29 2.08 3.04 7.56 1.20 1.52 3.37 2.15 3.10 7.59 15年 20年 30年 40年 -0.38 -0.24 -0.11 -0.07 -0.13 0.02 0.05 0.07 -0.11 0.09 0.35 0.22 0.28 0.47 0.15 0.24 0.44 0.32 0.38 0.50 0.10 0.34 0.80 0.45 0.70 0.88 0.54 0.97 0.75 0.90 1.20 1.51 1.75 2.23 1.53 1.88 2.25 1.29 1.45 1.58 1.37 1.26 1.56 3.46 2.23 3.15 7.79 1.55 1.75 3.75 2.43 1.55 2.14 3.94 7.65 7.88 0%未満 0%以上0.5%未満 0.5%以上1.0%未満 1.0%超 (注)2016年7月6日の値 (資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成 23 マイナス金利の債券は20兆ドルを上回る水準に ◯ グローバル債券市場において、利回りがゼロ・マイナスのものは21兆ドル。全体の2割に相当する ◯ 日本では、利回りがゼロ・マイナスのものが10兆ドルとなり、日本全体の8割強に高まっている 【 利回りがゼロ以下の債券残高と割合 】 (%) (兆ドル) 83.7 90 80 利回りがゼロ以下の債券の比率 70 59.8 60 57.0 20 56.0 49.3 50 15 37.7 40 30 25 利回りがゼロ以下の債券残高(右目盛) 28.6 26.3 10 27.1 15.9 20 5 10 ベルギー スウェーデン スペイン オランダ 英国 イタリア フランス ドイツ 日本 全世界 0 0 (注) 国債と社債の合計。2016年7月4日現在。 (資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成 24 金融機関のCDSプレミアムは欧州で上昇傾向 ◯ イタリア及び英国を中心に、各国大手行のCDSスプレッドは足元で再度上昇 ‧ イタリアでは、国内銀行の不良債権問題が不安材料に ――― 伊政府は現在、銀行への公的資金注入の可否及びその手法(ベイル・インの有無)等を欧州委員会と交渉中 ‧ 英国は、不動産投資ファンドの償還凍結増加を背景に、銀行の不動産関連融資に対する不安感が膨らんだ可能性 【 各国主要行の平均CDSスプレッド推移 】 (ベーシスポイント) 400 イタリア 350 スペイン 300 英国 日本 250 米国 200 150 100 50 2015年 9月 11月 2016年 1月 3月 5月 7月 6月24日 (注) 2016年7月6日現在。シニア5年物。 (資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成 25 実質的な通貨安競争。ポンド安、ユーロ安圧力で近隣窮乏化 ◯ ‧ ‧ ‧ ◯ 英国のEU離脱派勝利を受け、急激なポンド安とともに円高が進展 ドル高進展は限定的。米国のドル高是正スタンスや、利上げ期待はく落による米長期金利低迷が背景に ユーロは英国のEU離脱影響を見守る展開となり、ポンド対比でみれば緩やかな下落に留まる 先物相場では、ユーロ・ポンドの売り持ち超が続く一方、投機筋による円買い持ち高が再び拡大 英国の離脱交渉長期化はポンド安、ユーロ安圧力に。英国以外でもEU離脱懸念が高まれば更なるユーロ安進展も 【 主要5通貨の為替動向 】 【 IMM通貨先物相場のネットポジション(投機筋) 】 買い (億ドル) 持ち高 100 通貨高 (2016/1/1=100) 120 円(対ドル) 116 ポンド(対ドル) ドル 112 円 ユーロ ポンド ユーロ(対ドル) 元(対ドル) 0 108 ▲ 100 104 100 ▲ 200 96 92 通貨安 88 15/1 15/4 15/7 (注)図表上のドルは名目実効レート。 (資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成 15/10 16/1 16/4 16/7 (年/月) ▲ 300 15/7 売り 持ち高 15/9 15/11 16/1 16/3 16/5 16/7 ((年/月) (資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成 26 人民元は5年半ぶりの安値 ◯ 人民元対ドルレートは、英国のEU離脱ショックを受けたドル高を背景に下げ足を強め、5年半ぶりの安値まで減価 ◯ 中国当局が重視する通貨バスケットをみると、昨年末から当局は一定のペースでの下落を容認している可能性を示唆 ‧ 通貨バスケット下落の大部分は円高によるもの。次いで対ユーロやロシアルーブル、ドルでの下落が寄与 【 人民元レート 】 (2014年末=100) 110 【 資本流出入額 】 (米ドル/人民元) 5.9 6.0 105 (10億ドル) 150 資本流出入額 100 6.1 100 6.2 50 6.3 0 6.4 ▲ 50 95 90 6.5 85 通貨バスケット(CFETS指数) 6.6 米ドル/人民元(右目盛、逆軸) 6.7 80 6.8 13 2013 14 15 16 (年) (資料)中国外国為替取引システム(CFETS)、Bloombergより、みずほ総合研究所作成 ▲ 100 ▲ 150 ▲ 200 12 2012 13 14 15 16 (年) (資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成 27 円高ドル安地合い継続。日本は四面楚歌で介入のハードル高い ◯ ‧ ◯ ‧ ‧ 日米実質長期金利差縮小とともに、ドル円相場は円高ドル安が進展 英国のEU離脱決定後、米利上げ期待はく落などに伴う米長期金利の低迷が円高ドル安圧力に 今後も当面円高ドル安地合いが続く。急激な円高進展時には通貨介入実施の可能性もあるが、ハードルは高い 日銀の追加緩和期待は円安圧力も、米国が利上げに慎重な姿勢を続ける間は円安ドル高への反転は期待しがたい 過去の為替介入は概ね急激な円高進展時、また実質実効ベースで円が高値圏にある際に実施。今後、更に急激な円高 が進めば介入の可能性はあるも、足元円の実質実効レートはいまだ円安水準でありハードルは高い 【 ドル円相場と日米実質長期金利差 】 (円/ドル) 130 【 ドル円相場と円実質実効相場、通貨介入額 】 (%) 1.4 ドル円相場 日米実質長期金利差(米-日)(右目盛) (2010年=100) (円/ドル) 160 介入額(右目盛) 円・実質実効為替レート(2010年基準) ドル円相場 (兆円) 10 1.2 140 8 1.0 120 6 0.8 100 4 0.6 80 2 0.4 60 120 110 100 15/1 15/4 15/7 15/10 16/1 16/4 16/7 (年/月) (注)長期金利は10年国債利回り、期待インフレ率は10年ブレークイーブンインフレ率。 (資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成 0 91 94 97 00 03 06 09 12 15 (年) (資料) 財務省、日本銀行より、みずほ総合研究所作成 28 Ⅳ.日本経済 ~Brexit決定後の円高・株安が景気を下押し~ 29 日本経済見通し ~ Brexit決定を受けて下方修正。公需依存が更に強まる見通し ○ Brexit決定に伴う日本経済への影響は、当面、金融市場の変動を通した影響が中心に。為替 相場・株価の修正により、2016・17年度の成長率はそれぞれ0.2~0.3%Pt押し下げられる 見込み。なお、6月見通し(6/8)後に生じたBrexit決定以外の要因は、16年度成長率の押し上 げ、17年度成長率の押し下げに作用 ○ 2016年度の日本経済は、海外経済の減速や円高などが回復の重石となり、力強さに欠ける見 込み。Brexit決定後に一段と円高・株安が進んだことを受けて、実質成長率は+0.4%と6月見 通し(+0.6%)から更に下方修正。民需・外需の回復の鈍さが続くなかで、公需(寄与度: +0.4%Pt)依存の成長になる見込み ○ 2017年度は、前年の経済対策の進捗が本格化することに加えて、米国経済などの緩やかな持 ち直しもあり、成長率は+0.7%に高まる見通し。もっとも、Brexit決定に伴う欧州経済の下振れ などを踏まえ、6月見通し(+1.0%)からは下方修正 ○ 円高や原油価格下落の影響で、コアCPI前年比は2016年後半までゼロ%近傍で推移。その後 は、エネルギー価格の前年比がプラスに転じ、予測期間後半にはコアインフレ率は1%程度に。 エネルギー価格の影響を除く基調的なインフレ率は、緩やかながらも改善へ 30 日本:2016年度成長率を+0.4%、17年度+0.7%に下方修正 ◯ Brexit決定等を受け、2016年度成長率を+0.4%(6月見通し:+0.6%)、17年度を+0.7%(6月:+1.0%)に下方修正 ‧ Brexit決定による日本経済への影響は、当面、金融市場の変動を通した影響が中心に。為替相場・株価の修正により、 2016年度の成長率は0.3%Pt、2017年度の成長率は0.2%Pt押し下げられる見込み ‧ なお、6月見通し(6/8)以降に生じたBrexit以外の要因は、2016年度の上方修正、17年度の下方修正要因に ――― 石油石炭税(温暖化対策税)増税による燃料輸入の下振れ、非製造業でのソフトウェア投資拡大等が、2016年度 成長率の上振れ要因に 【 日本経済見通しの改訂概要 】 【 実質GDP成長率の見通し 】 (前年比、%) 3 2 主要項目の 改訂幅 予測 外需 公的需要 前回予測値 (実質GDP) 1 0 企業 (設備+在庫) ▲1 家計 (消費+住宅) ▲2 ▲3 2013 2014 2015 2016 (資料)内閣府「国民経済計算」などより、みずほ総合研究所作成 2017 (年度) 2 0 1 7 年度 実質GDP +0.6%⇒+0 . 4 % +1.0%⇒+0 . 7 % 輸出 +1.1%⇒+0 . 1 % +2.8%⇒+2 . 3 % 設備投資 +1.2%⇒+1 . 0 % +1.8%⇒+1 . 5 % 個人消費 +0.7%⇒+0 . 6 % +1.0%⇒+1 . 0 % +0.1%⇒+0 . 1 % +1.1%⇒+1 . 0 % コアCPI 今回予測値 (実質GDP) 2 0 1 6 年度 実質GDPの 改訂要因 2 0 1 6 年度 2 0 1 7 年度 Brexit決定要因 ▲0.3%Pt ▲0.2%Pt その他要因(※) +0.1%Pt ▲0.1%Pt (注) その他要因には、石油・石炭税増税(2016年4月)後の燃料輸入減少、熊本地震によ る消費押し下げ効果が従来の見込みよりも軽微だったこと、非製造業におけるソフト ウェア投資拡大などがある。 (資料) みずほ総合研究所作成 31 日本:金融市場の変動を通じた影響に注意。円高で国内空洞化懸念が再燃する恐れも ◯ 英国の景気後退が日本の輸出に与える直接的影響は限定的も、金融市場の変動を通じた悪影響が懸念材料 ‧ 今回の円高(2016年度:107円/ドル⇒102円/ドル)・株安(2016年度:16,500円⇒15,700円)修正による日本の成長率への 影響は▲0.3%Pt(2016年度) ‧ さらに、金融市場での不確実性の高い状況が長期化すれば、設備投資に一段の下振れリスクも ‧ 足元の為替相場は、産業の生産コストベースでみた均衡為替レートに比べて、円高水準。長期的にみて、企業の海外進 出の機運が再び高まり、国内空洞化懸念が再燃する恐れも 【 金融市場での不確実性の高まりによる 設備投資への影響(累積) 】 (設備投資の累積下振れ率、%) 0.0 (円/ドル) 160 140 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 2016年度の市場レート(見通し) 価格競争力が高い業種でも、 2016年度は均衡レート比円高に 134 2015年度の市場レート 147 145 120 100 113 116 一般機械 輸送機械 80 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 (カ月後) (注)1.Brexitに伴う金融市場での不確実性の高まりがなかった場合と比べた場合の、設備投 資の累積下振れ率を試算したもの。具体的には、6月1日~23日までの株価のボラティ リティ(過去20日間のヒストリカル・ボラティリティ)をベースとし、24日以降のボラティリ ティの高まりによる月間ボラティリティの上昇による設備投資への影響を試算。 2.試算の詳細は、市川雄介「不確実性の増大と景気への影響」を参照。 (資料) 経済産業省、内閣府、日経NEEDSなどより、みずほ総合研究所作成 価格競争力高い ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ 【 業種別生産コストからみた均衡為替レート 】 60 40 20 0 電気機械 金属 化学 (注)各産業の単位生産費用(単位労働費用+単位中間投入費用)を均衡させるような為替レート の水準を推計したもの。2014年時点の推計値。平成21年度経済財政白書、風間春香「円安 はどこまで進むのか」などを参考に作成。 (資料) 内閣府、米国商務省、GGDC Databasesなどより、みずほ総合研究所作成 32 日本:外部環境の悪化から2016年度は減速。17年度は持ち直すも、依然公需依存に 【 日本経済見通し総括表 】 2014 2015 2016 2017 年度 2015 7~9 2016 10~12 1~3 4~6 2017 7~9 10~12 1~3 4~6 2018 7~9 10~12 1~3 前期比、% ▲ 0.9 0.8 0.4 0.7 0.4 ▲ 0.4 0.5 0.1 0.1 0.0 0.1 0.3 0.2 0.2 0.3 前期比年率、% -- -- -- -- 1.7 ▲ 1.8 1.9 0.4 0.2 0.1 0.3 1.1 0.7 1.0 1.3 前期比、% ▲ 1.5 0.7 0.4 0.8 0.3 ▲ 0.5 0.3 0.1 0.2 0.1 0.2 0.3 0.1 0.2 0.3 前期比、% ▲ 1.9 0.7 ▲ 0.0 0.5 0.5 ▲ 0.6 0.2 ▲ 0.0 0.0 ▲ 0.0 0.1 0.1 0.2 0.2 0.3 個人消費 前期比、% ▲ 2.9 ▲ 0.2 0.6 1.0 0.5 ▲ 0.8 0.6 0.0 0.3 0.1 0.3 0.3 0.3 0.3 0.3 住宅投資 前期比、% ▲ 11.7 2.4 1.6 ▲ 1.5 1.7 ▲ 1.0 ▲ 0.7 2.2 0.8 ▲ 0.6 ▲ 0.6 ▲ 0.7 ▲ 0.4 0.2 ▲ 0.0 設備投資 前期比、% 0.1 2.0 1.0 1.5 0.8 1.3 ▲ 0.7 0.3 0.2 0.2 0.3 0.4 0.5 0.5 0.4 在庫投資 前期比寄与度、%Pt 0.6 0.3 ▲ 0.5 ▲ 0.4 ▲ 0.1 ▲ 0.2 ▲ 0.1 ▲ 0.1 ▲ 0.2 ▲ 0.1 ▲ 0.1 ▲ 0.1 ▲ 0.1 ▲ 0.0 0.0 前期比、% ▲ 0.3 0.6 1.9 1.7 ▲ 0.3 ▲ 0.1 0.5 0.6 0.7 0.5 0.4 0.8 0.1 0.1 0.4 政府消費 前期比、% 0.1 1.5 1.6 1.7 0.2 0.7 0.7 0.2 0.3 0.3 0.2 0.5 0.5 0.5 0.4 公共投資 前期比、% ▲ 2.6 ▲ 2.7 2.9 1.7 ▲ 2.4 ▲ 3.6 ▲ 0.7 2.3 2.7 1.1 1.3 2.1 ▲ 1.7 ▲ 1.6 0.1 前期比寄与度、%Pt 0.6 0.1 ▲ 0.0 ▲ 0.1 0.1 0.1 0.2 ▲ 0.0 ▲ 0.2 ▲ 0.1 ▲ 0.1 ▲ 0.0 0.0 0.0 0.0 輸出 前期比、% 7.9 0.4 0.1 2.3 2.6 ▲ 0.8 0.6 ▲ 1.3 0.6 0.4 0.2 0.5 0.7 0.9 0.9 輸入 前期比、% 3.4 ▲ 0.1 0.2 3.0 1.7 ▲ 1.1 ▲ 0.4 ▲ 1.1 1.5 0.9 0.8 0.7 0.6 0.7 0.7 名目GDP 前期比、% 1.5 2.2 1.1 1.5 0.8 ▲ 0.2 0.6 0.0 0.6 0.2 ▲ 0.2 0.5 0.8 0.7 ▲ 0.3 GDPデフレーター 前年比、% 2.4 1.4 0.7 0.8 1.8 1.5 0.9 0.7 0.9 0.9 0.5 0.8 0.8 1.0 0.7 前年比、% 2.1 ▲ 0.2 0.0 0.9 ▲ 0.1 ▲ 0.2 ▲ 0.5 ▲ 0.4 ▲ 0.4 0.1 0.5 0.9 0.9 0.9 0.9 前年比、% 2.8 ▲ 0.0 0.1 1.0 ▲ 0.1 0.0 ▲ 0.1 ▲ 0.4 ▲ 0.2 0.1 0.8 1.1 1.0 1.0 0.8 15,800 16,100 16,600 16,900 17,500 実質GDP 内需 民需 公需 外需 内需デフレーター 消費者物価(除く生鮮食品) 日経平均株価 対ドル為替相場 円 円/ドル 16,273 18,841 15,700 16,800 110 120 102 105 19,412 19,053 122 121 16,849 16,408 15,100 15,300 115 108 100 100 101 102 104 105 107 (注)網掛けは予測値。 (資料)内閣府「四半期別GDP速報」より、みずほ総合研究所作成 33 【経済予測チーム】 武内浩二 小林公司 ・米国/欧州経済 小野 亮 風間春香 吉田健一郎 松本 惇 ・アジア経済 大和香織 玉井芳野 ・日本経済 徳田秀信 有田賢太郎 小西祐輔 宮嶋貴之 松浦大将 川口 亮 (全体総括) (新興国) 03-3591-1244 03-3591-1379 [email protected] [email protected] (総括) (米国) (欧州) (欧州) 03-3591-1219 03-3591-1418 03-3591-1265 03-3591-1199 [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] (総括) (中国) 03-3591-1368 03-3591-1367 [email protected] [email protected] (総括) (雇用・物価) (企業) (個人消費) (外需) (政府・住宅) 03-3591-1298 03-3591-1419 03-3591-1294 03-3591-1434 03-3591-1435 03-3591-1243 [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] 03-3591-1197 [email protected] 03-3591-1249 03-3591-1420 03-3591-1242 [email protected] [email protected] [email protected] ・新興国経済/原油価格 井上 淳 ・金融市場 野口雄裕 (総括) 大塚理恵子 (内外株式) 坂中弥生 (海外金利) 本資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、取引の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、弊社が 信頼に足り且つ正確であると判断した情報に基づき作成されておりますが、弊社はその正確性・確実性を保証するものではあ りません。本資料のご利用に際しては、ご自身の判断にてなされますようお願い申し上げます。 34
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