日照不足・長雨対策

日照不足・長雨対策
(1)普通作
①水稲
1 日 照不 足対 策
〇同 化能 力の 低下 で 、軟 弱徒 長の 生育 と なり やす い。
〇日 照不 足の 影響 が 単独 で発 生す るこ と は少 なく 、長 雨・ 低 温等 と複 合的
に発 生す る場 合が 多 い。
(1)分げつ期:分げつが少なくなるので、浅水(水地温の向上)や間断灌
水( 根の 活力 向上 等 )で 分げ つの 確保 に 努め る。
(2)幼穂形成期:同化デンプン蓄積量の低下により、籾数が減少しやすい
ので 、 生 育を 維持 す る 管 理を 行う 。
( 3 ) 軟 弱な 生育 の ため 、い もち 病が 発 生し やす いの で、 ほ 場を 見回 り、 早
期の 発見 に努 める 。
2 分げ つ期 にお け る低 温対 策
( 1)分げ つ期 の 気 温 が 15 ℃以 上で あ れば、浅水 にし 、水 温の 上昇 に努 め、
分げ つの 発生 を促 す 。
( 2 ) 分 げつ 期の ほ 場水 温が 、2 0℃ 以 下の 時は 、初 期生 育 が劣 るの で、
①か け流 しを し ない 。
②昼 間に 入水 を しな い。
③ 入水 は、 夕方 か ら明 け方 の間 に行 う 。
(3)高冷地域や冷水地域では、昼間の止水、間断灌漑法等により、水温の
低下 防止 に努 める 。
(4 )い もち 病が 発 生し やす いの で、 よ く観 察し 、早 期発 見 に努 める 。
(5 )発 生予 察情 報 等に も注 意を 払う 。
②大豆
ア 排水 対策
( ア )圃 場の 周 囲に 溝を 掘り 、中耕 によ る 畝 溝を 溝に つ なぎ 、排水 に努 める 。
イ 苗立 の確 保
(ア )播 種適 期 を逸 し、 7月 中旬 以 降に 播種 する 場合 は 、株 間を 狭く し生
育量 を確 保す る。
ウ 生育 量の 確 保
条 間や 周 囲の 排水 溝を 確実 に 排水 口に つな ぎ、 表 面排 水と 圃場 の 乾
田化 に努 める 。播 種 期が 遅れ 生育 量が 不 足し てい る 圃 場 で は 、培 土を
行い 不定 根の 発生 を 促す とと もに 根群 域 の拡 大に よる 生育 量 の確 保に
努め る。
ま た、 生 育量 や根 量が 少な い 場合 には 、開 花期 の 窒素 追肥 の効 果が
大き いの で、 窒素 成 分で 1 ~ 2k g の 追 肥を 行う 。
エ 病害 虫の 防 除
(ア ) べ と病
曇 天・ 降 雨状 態が 続く と、 べ と病 の発 生が 多く な るの で、 早期 発見
と速 やか な防 除に 努 める 。
(イ ) 紫 斑病
開 花期 以 降、 曇天 ・降 雨状 態 が続 くと 紫斑 病の 発 生が 多く なり 、著
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しく 品質 を低 下さ せ るの で落 花期 から 若 莢期 の防 除を 徹底 す る。
(ウ ) カ メム シ 類
カ メム シ 類の 発生 は、 落莢 に よる 減収 や粒 吸汁 に よる 品質 を低 下さ
せる ので 、開 花終 期 から 莢肥 大期 の防 除 を徹 底す る。
(2)野菜
① 圃 場 の排 水対 策
雨 天が 続い た 場合 、土 壌病 害に よ る萎 凋 ・ 枯死 を誘 発 しや すく な り 、ま
た、 天候 の回 復に 伴 う地 温の 急上 昇に よ り根 傷み が激 しく な り生 育不 良と
なる 。
そ こで 、明 渠 (排 水溝 等) の施 工 ・ 補 修を 行い 、地 表 面の 排水 を促 す。
また 、マ ルチ を一 時 的に 株元 まで はぐ 等 して 土壌 の乾 燥に 努 める 。
② 生育 回復 対策
草 勢が 低下 し てい る場 合は 、奇 形 果や 不良 果等 を摘 果 し着 果負 担の 軽滅
を図 ると とも に葉 面 散布 や追 肥を 行う 。 これ らの 作業 は天 候 の回 復を 待っ
て行 うが 、液 肥の 施 用は 畝が 乾燥 した 状 態で 行う 。追 肥は 、 少量 多回 数を
原則 とし て、 一度 に 多量 の施 用は しな い 。
草 勢が 回復 す るま では 強整 枝を 避 け、 着果 状態 ・草 勢 を見 なが ら整 枝・
摘葉 等を 行う 。こ れ らの 作業 は 夕 方ま で には 傷口 が乾 燥す る よう な 天 候条
件下 で 行 う。
③ 健苗 育成
育 苗は 苗齢( 生育 ステ ージ )に応 じて 十分 な 鉢 間隔 を とり 採光 に 努 める 。
か ん水 は最 小 限に とど め軟 弱徒 長 を防 ぎ、 育苗 ハウ ス 内の 除湿 を図 り病
害の 発生 を防 止す る 。
④ 病害 防除
日 照不 足に よ る軟 弱な 生長 や施 設 内の 過湿 等が 見込 ま れ灰 色か び病 等の
病害 の発 生が 懸念 さ れる こと から 、 早 期 発見 ・早 期防 除に 努 める 。
なお 、高 温期 は薬 害 が発 生し やす いた め 、早 朝や 夕方 の涼 し い時 間帯 に
散布 する 。
(3)果樹
① 温 州ミ カン の品 質 向上 対策
果実 肥大 (増 糖 )期 の日 照不 足や 長 雨は 果実 品質 への 影 響 が 大 き い た め 、
日照 不足 や長 雨が 続 く場 合に は以 下の 対 策を 徹底 する 。
(ア ) 土 壌乾 燥を 促 すた めの シー トマ ル チの 敷設 がま だの と ころ は早 急に 実施
する とと もに 、マ ル チ下 の土 壌が ぬれ て いる 場合 には 、土 壌 乾燥 を促 すた
めに シー トを 巻き 上 げて 土壌 の乾 燥を 促 し、 降雨 前に 再度 被 覆す る。
(イ ) 収 穫が 早い 極 早生 温州 では 、今 後 の降 雨に よっ て果 実 品質 に及 ぼす 影響
が大 きい こと から 、 株元 から の降 雨流 入 を防 止す る。
(ウ ) シ ート マル チ の敷 設が 困難 な圃 場 では 、刈 草・ 除草 、 敷ワ ラの 除去 等に
より 裸地 化に 努め 、 土壌 乾燥 を促 す。
(エ ) 排 水対 策を 徹 底し 、雨 水が 園内 に 溜ま らな いよ うに す る。 シー トマ ルチ
敷き 設園 では 、雨 水 がマ ルチ 内に 流入 し ない よう にす る。
(オ )樹 勢が 旺盛 な 園地 や、糖度 が低 い 園地 では フィ ガロ ン 乳剤を 2,000~3,000
倍で 散布 する 。
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なお 、樹 勢低 下園 で は散 布を 控え る。
(カ ) 糖 度向 上の た めに は着 果ス トレ ス も必 要で ある 。果 実 の肥 大は 全般 的に
良好 であ るこ とか ら 、仕 上げ 摘果 は急 が ずに 果実 の肥 大状 況 をみ なが ら対
応す る。
(キ ) 果 実の 肥大 に 伴い 枝が 下垂 する の で、 下枝 まで 光が よ く当 たる よう 枝吊
りを 実施 する 。
②中 晩柑
仕上 げ摘 果を 急ぎ 、 大果 生産 に努 める 。
③ナ シ、 ブド ウ
食味 を優 先し 、適 期 収穫 を励 行す る。
④病害虫対策
雨や風による傷口から感染する病害、湿り気を好む害虫の発生が多く
なるので防除に努める。
カンキツ
ナ シ
モモ・スモモ
ブドウ
カ キ
黒点病、かいよう病、カミキリムシ類、マイマイ類
黒星病、黒斑病、輪紋病
灰星病、黒星病
べと病、褐斑病、黒とう病、晩腐病
炭疽病
(4)花き
① 圃 場 の排 水対 策
雨 天が 続い た 場合 、土 壌病 害に よ る萎 凋、 枯死 が発 生 した り、 天候 回復
後の 強日 射に より 上 位葉 の葉 焼け 、 萎 れ が発 生し やす い。
こ のた め、 草 勢回 復ま で晴 天時 に 寒冷 しゃ 等を 被覆 し たり 、畝 のマ ルチ
の裾 を上 げ、 土壌 を 乾燥 させ 根群 の発 達 を促 す。
② 土壌 消毒
太 陽熱 によ る 土壌 消毒 を実 施し て いる 場合 は、 実施 期 間を 十分 確保 し、
防除 効果 を高 める 。
③遮光
日 射量 に応 じ て遮 光ネ ット の開 閉 はこ まめ に行 い、 植 物体 が光 を十 分受
光で きる よう に努 め る。
④温 度管 理
日 照不 足時 に 昼夜 温が 高い 場合 、 花芽 の枯 死が 発生 し やす い。 ハウ ス内
の通 風を 図り 、気 温 の上 昇を 抑え て、 花 芽の 枯死 を防 止す る 。
⑤ 肥 培管 理
通 風を 図り 、 摘芽 、摘 蕾、 整枝 、 下葉 かぎ は、 適期 を 逸し ない よう に行
うと とも に 、 草勢 維 持に 努め る。 また 、 過剰 な か ん水 は控 え る。
⑥ 病害 虫防 除
日 照不 足に よ る軟 弱な 生長 、施設 内の 高温 過湿 等が 見 込ま れ、白さ び 病、
ハス モン ヨト ウ、 ア ザミ ウマ 類等 、 病 害 虫被 害の 誘発 や蔓 延 が懸 念さ れる
ため 、適 切な 農薬 を 選び 防除 を行 う。
な お、薬害 が 発生 しや すい 条件 で ある ため 、早 朝、夕 方の 散布 を心 掛け る 。
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(5)いぐさ
生 育遅 延が 見 られ る 圃 場 で は、 先 枯れ 状態 や充 実度 合 いを 確認 のう え、
収穫 時期 の見 極め を 行い 、刈 急ぎ がな い よう にす る。 長雨 で 日照 不足 とな
れば いぐ さの 生理 機 能の 低下 や、 紋枯 れ 病の 発生 ・蔓 延が 考 えら れる ので
以下 の点 に注 意す る 。
① 排水 対策
い ぐさ の葉 鞘 (は かま )か ら上 の 部位 が長 時間 冠水 す ると 茎に 泥 等 の 付
着や 、茎 の変 色が 生 じや すい ため 、 圃 場 の早 期排 水に 努め る 。
② 受光 体制 の維 持
長 時間 の冠 水 を避 ける と共 に、 倒 伏防 止網 の状 況を 点 検し 、い ぐさ が直
立し た姿 勢を 保ち 良 好な 受光 体制 が維 持 でき るよ うに する 。 いぐ さが 直立
する と 圃 場 内 の風 通 しが 改善 され 紋枯 れ 病等 の発 生抑 制に も つな がる 。
た だし 、倒 伏 防止 網を 上げ すぎ て いぐ さが 風の 影響 等 で網 から 抜け ない
よう 網の 高さ には 注 意す る。
③追肥
長 時間 冠水 し たい ぐさ は生 理機 能 が低 下し てい るこ と が考 えら れる 。そ
のた め、 一度 に多 量 の肥 料を 与え ると 障 害の 発生 が考 えら れ るの で、 一回
の追 肥の 窒素 分は 2 ㎏ /10a 以内 とし 、2 ㎏ /10a 以上 の追 肥 を 予定 して いる
場合 は、 2回 に分 け る。 止め 肥後 は、 収 穫予 定日 が大 幅に 遅 れな い限 り追
肥は 行わ ない 。
④ 紋枯 れ病 対策
圃 場か ら水 が 引い たら 、7 ~ 10 日 後位 を目 途に いぐ さ の株 元に 紋枯 れ病
が発 生し てい ない か を確 認す る。 紋枯 れ 病が 発生 した 場合 は 、蔓 延し た場
合、 薬剤 での 防除 効 果は 低く なる が、 発 生初 期で あれ ば蔓 延 抑制 のた め 薬
剤に よる 防除 を適 宜 行う 。 な お、 紋枯 れ 病が 発病 した いぐ さ 原草 は、 薬 剤
防除 を行 わな かっ た 場合 、 収 穫後 であ っ ても 乾燥 中に 紋枯 れ 病が 広が るこ
と が ある ため 注意 す る。
(6)茶
1) 茶園 管理
(事 前対 策)
長雨 ・大 雨で 土砂 の 流入 が予 測で きる 茶 園に おい ては 、茶 園 の周 囲に 溝を
掘っ て、 濁水 の流 れ 込み を防 ぐ。
(事 後対 策)
大雨 によ り表 土が 流 れて 根が 露出 して い る新 植園 等で は、 早 急に 土寄 せを
行い、敷わら等で根を保護する。また、大雨で溝ができているところでは、
流れ を分 散し て溝 が 大き くな るの を防 ぐ 。
2) 防 除
病害(炭疽病、もち病、網もち病、黒葉腐病など)の多発が予想される 。
病害が多発した茶園は深刈り、浅刈りなどで発病葉を除去する。また、雨の
降ら ない タイ ミン グ を見 計ら って 治療 効 果が 高い 殺菌 剤の 散 布を 行う 。
3) 製茶 工場
雨が 降り 続く と空 中 湿度 が高 くな り、 製 茶機 械内 部に カビ が 生え やす くな
る。機械掃除の時は、茶殻を残さないように注意し、機械の乾燥を十分に行
う。
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(7)畜産
1 ) 飼料 作物
飼料 作物( 特に トウ モロ コシ)は湿 害に 弱く、種子 の腐 敗や 生育 障害 を 起
こす 。ま た、飼料 畑 へ作 業機 械の 搬入 が でき ない ため 、播 種 や収 穫作 業が 適
期に 行え ず品 質を 低 下さ せる 。
( ア) 排水 口の 増 設等 、地 表面 の排 水 が容 易な 圃場 状態 に して おく 。
(イ)生 育が 不良 で 減収 が確 実と 判断 さ れた 場合 は、次期 作 のほ 場を 早め に確
保し 、適 期に トウ モ ロコ シ、 ソル ガム 等 を 播 種す る。
2) 家畜 の飼 養管 理
雨の ため 湿度 が高 い 時期 に高 温が 続け ば 体熱 の放 熱が 妨げ ら れ、体温 が 上
がり、体力 の消 耗が 大き く、発 育や 乳、肉、卵 の生 産に 影響 する。また、ウ
イル ス、細菌 、か び など の微 生物 が繁 殖 しや すい ため 、濃 厚 飼料 など の固 形
化、か びの 発生 など によ る変 敗や 品質 の 低下 がみ られ、摂取 した 家畜 の消 化
器変 調を 招き 、ひ ど い場 合は 栄養 障害 や 中毒 症を 起こ す。
(ア )畜 舎の 雨漏 り 修繕 、畜 舎周 囲の 側 溝、排水 口を 清掃 す る。雨で 湿度 が上
がる ので、風 の方 向 や降 雨の 状態 を考 慮 し、畜 舎内 の 通風、換気 に心 が
ける 。
(イ ) 新 鮮で 乾燥 し た敷 料と 交換 する 。
(ウ)搬出した敷料や家畜排せつ物は、雨に濡らすことなく 速やかに処理す
る。
(エ )運 動場 等は 排 水を 促し 、雨 が上 が れば 生石 灰等 で消 毒 を行 う。
( オ )個 体観 察を 徹 底し 、疾 病の 早期 発 見と 治療 に努 める 。
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