エネルギー材料用電子伝導性 酸化物ナノシート 信州大学 繊維学部 精密素材工学科 准教授 杉本 渉 信州大学 繊維学部 精密素材工学科 教授 高須芳雄 1 従来技術とその問題点 既に実用化されている大容量スーパーキャパ シタ用電極には,ナノサイズの水和RuO2があ るが, 多孔質構造の制御が困難 粒子間の水和量の制御が困難 粒子同士の電子的接触不足が懸念される 粒子内部の希少貴金属は利用されない 等の問題があり,さらなる大容量化,高出力化 が課題である。 2 各種電気化学エネルギーデバイス 8 10 携帯端末(携帯電話,PDA,PC) Capacitors Specific Power / W kg-1 7 10 6 10 5 10 4 10 移動用(自動車,電車) ほか(エレベータ,コピー機,UPS) Supercapacitors 3 10 2 10 1 10 Batteries Fuel Cells 重量エネルギー密度 100 0 10 -2 10 -1 0 1 2 3 10 10 10 10 10 Specific Energy / Wh kg-1 R. Kötz and M. Carlen, Electrochim. Acta, 45 2483 (2000). 1 10-2 EDLC Battery Capacitor 容量エネルギー密度 充放電回数 10-4 充電時間 重量出力密度 容量出力密度 3 電気二重層キャパシタの動作原理 4 RuO2系電極の特徴 RuO2の一般的な性質 ・ルチル構造 ・耐酸性,耐アルカリ性 ・広い電位窓で電気化学的に安定 ・触媒活性 ・レドックス活性 ・良好な電気伝導性(金属的電導) 用 途 ・工業電解における寸法安定性アノード(塩素工業,電解水) ・基材 ・光触媒の助触媒 ・スーパーキャパシタ材料 ・(燃料電池助触媒) 問 題 ・産出量(Ptの不純物として算出),価格 課 題 ・イオン伝導性の付与 ・微細化(高表面積化:ミクロ細孔は電気化学的に利用しにくい) ・異種材料との複合化(酸化物,有機物,炭素材料など:利用効率の増加) 5 酸化ルテニウム系材料設計のポイント 微粒子化モデル 材料設計指針 1500 1500 1000 500 0 0 0 5 10 15 20 Particle Diameter / nm プロトンー電子パーコレーションモデル D. Rolison et al., J. Phys. Chem. B, 106, 12677(2002). σ(H+)paths σ(e-)paths C / F g-1 conductivity Pc(H-) Annealing temperature x mol% H2O in RuO2•xH2O プロトン移動度最適値モデル J. Zheng et al., J. Phys. Chem. B, 106, 3592(2002). 700 Cp / F g-1 500 Pc(e-) ・微粒子=大表面積 ・プロトン伝導性は重要(大容量) ・電子伝導性も必要(高出力) -1 1000 C/Fg 2 0.9 nm; 760 F/g 500 300 100 Ea / kJ mol-1 2000 SBET / m g -1 Y. Takasu et al., Chem. Lett.,1235(1998). 8 6 4 2 0 100 200 300 Annealing temperature (˚C) 6 実証:RuO2/GCモデル電極 1400 担持量 C/Fg -1 1200 キャパシタンス 1000 小 高 800 GC 600 400 GC 200 0 1 10 100 -2 (GC) RuO2 loading / nmol cm 低 GC 大 微細化で限界容量は制御可能 レート特性は水和構造の制御が必要 Y. Takasu et al., Chem. Lett., 1235, 1998. 7 球状粒子vs板状結晶 5 nm H+ RuO2 H+ プロトン: 表面核酸 電子: 粒子内部移動 ~ µm プロトンと電子が 2次元で移動 (別々のパスを確保) HxRuO2+0.5x Electroconducting Oxide Layer e– Proton Conducting Hydrous Layer ~ µm e– ~0.4 nm e– HxRuO2+0.5x Electroconducting Oxide Layer Proton Conducting Hydrous Layer H+ HxRuO2+0.5x Electroconducting Oxide Layer H+ Proton Conducting Hydrous Layer HxRuO2+0.5x Electroconducting Oxide Layer 8 層状ルテニウム酸(HRO;H0.2RuO2.1・nH2O) K2CO3:RuO2=5:8 K0.2RuO2.1 calcination (850˚C, 12 h, Ar flow) grind, H2O wash, dry (120˚C) K0.2RuO2.1 H0.2RuO2.1 proton exchange(1 M HCl, 60˚C) H2O wash, dry (120˚C) H0.2RuO2.1・nH2O a* b* 60 nm W. Sugimoto et al., Angew. Chem. Int. Ed., 42, 4092 (2003) 9 層状RuO2のナノシート化 H0.2RuO2.1 aq.C2H5NH3+OH– Ion Exchange (H+↔C2N+) [RuO2.1]0.2– H+ H+ H+ H+ [RuO2.1]0.2– H+ H+ H+ H+ [RuO2.1]0.2– EA-HRO intercalation compound Carbon particles aq.(C4H9)4N+OH– Ion Exchange (C2N+↔TBA+) TBA-HRO intercalation compound Disperse in H2O Centrifugal collection (2 krpm) HRO N+ nanosheets –+ N – N+ – – Colloidal HRO-nanosheets N+ N+ – W. Sugimoto et al., Angew. Chem. Int. Ed., 42, 4092 (2003) – 30 nm – – N+ 10 ナノシート化の効果 RuO2 Nanosheet 660 F g–1 Layered RuO2 390 F g–1 従来結晶性RuO2比で約10倍の容量増達成 W. Sugimoto et al., Angew. Chem. Int. Ed., 42, 4092 (2003) 11 透明・フレキシブル蓄電素子 15 sec 30 sec 60 sec 90 sec 120 sec E=5V d = 1 cm t = 30 min 15 6 10 4 5 2 Capacitance / mF Capacitance / mF cm -2 8 蓄電素子の透明化に成功 E =10 V d = 2 cm 0 0 20 40 60 EPD time / sec 80 0 100 12 RuO2 µ-Supercapacitor 3 1.0 2 H2SO4 0.8 Nafion 5 μL 0 0.4 -1 0.2 0 -2 0.5 M H2SO4 -3 –––– –––– –––– Nafion 10 μL 0.6 E/V C / mF 1 -0.5 2 mV s–1 50 mV s–1 500 mV s–1 0 20 40 60 80 t / sec 0 E/V 0.5 3 mm2の電極で 1 mF級マイクロスーパーキャパシタ 本研究は早稲田大学の逢坂研究室と 共同で実施したものである 13 透明/フレキシブル素子 n型半導体: ITO等 p型半導体: CuAlO2等 トランジスタ: ZnO,有機 色素増感太陽電池 (桐蔭横浜大,PECCELL) 応用: 帯電防止膜,タッチパネル,色素増感太陽電池, ディスプレイ,ヒーター,デフロスター,スマート窓, ウェアラブル等 http://www.peccell.com/ レインボーセル (岐阜大学) http://apchem.gifu-u.ac.jp/~pcl/special/frame1.htm TFT (東京工業大学) Nomura et al, Nature, 432, 488 (2004). 14 マイクロパワーソース μ-センサ,μ通信デバイス ・µ-DMFC/Supercapacitor Hybrid ・µ-Battery/Supercapacitor Hybrid ・µ-DMFC/Battery/Supercapacitor Hybrid 15 PEFC・DMFC用アノード/カソード触媒 Pt系合金触媒(PtRu,PtCo,PtFe...) 利点 ・高い耐CO被毒性 ・メタノール酸化活性 課題 ・メタノール酸化活性の向上 ・金属触媒の劣化 (Pt,第2金属の溶出による触媒・電解質膜劣化) → 活性向上&耐久性向上 16 高耐久性(アノード) 50 耐久性の向上 j / A (g-Pt) -1 40 30 (c) (d) 20 HROns-Pt/C 10 0 0 HROns-Pt/C:加速試験前 (a) HROns-Pt/C:加速試験後 (b) Pt/C Pt/C:加速試験前 Pt/C:加速試験後 50 100 150 -46% -80% 200 t / min 耐CO被毒性,メタノール酸化活性,耐久性の向上に成功 加速試験条件 0.05-1.2 V vs. RHE, 50 mV s-1 100cycle +1100cycle 電解液:0.5 M H2SO4+1 M CH3OH 17 分極電位:0.5 V vs. RHE、温度:60℃ 高耐久性(カソード) 0 j / A (g-Pt) -1 -50 耐久性の向上 0.85 Vにおける酸素還元活性 -100 (b) Pt/C:加速試験前 Pt/C:加速試験後 (a) -150 -61% (d) -200 (c) HROns-Pt/C:加速試験前 HROns-Pt/C:加速試験後 -26% -250 0 0.2 0.4 0.6 E / V vs RHE 0.8 1.0 1.2 カソード触媒活性向上,耐久性の向上 サイクル条件 電解液:O2飽和 0.5 M H2SO4、温度:60℃、 走査速度:50 mV/s、電位範囲:0.05 ~ 1.2 V vs. RHE LSV条件 電解液:O2飽和 0.5 M H2SO4、温度:60℃、 18 走査速度:5 mV/s、回転数:2000 rpm 新技術の特徴・従来技術との比較 新材料の合成により,従来技術の問題点であった, 多孔質構造の制御 粒子間の水和量の制御 粒子同士の電子的接触不足 粒子内部の利用されない希少貴金属 を改善することに成功した。 19 想定される用途 9 これまでにない高付加価値蓄電素子 ・ フレキシブル ・ 透明 ・ 超小型 9 新規な燃料電池触媒 9 透明電極 など,広範な応用が期待される 20 実用化に向けた課題 現在,さらに薄いRuO2ナノシートを開発中である。 また,RuO2の代替材料探索を実施している。 目下,各種データを取得中である。 実用化に向けて,市場・用途の拡大が課題。 21 企業への期待 電気化学エネルギー変換や蓄積以外の分野での 様々な利用が期待される。 当方にはその設計,評価,解析技術が不足。 新しい分野での用途開発,技術を持つ企業との共同 研究を希望。 22 本技術に関する知的財産権 名称 出願番号 特願2007-11248 出願人 発明者 信州大学, エヌ・イー ケムキャッ ト(株) 杉本 渉・高須 芳雄・伊藤 賢 透明薄膜電極およびそれを 有する電気化学蓄電素子 特願2005-051067 信州大学 杉本 渉,高須 芳雄,村上 泰 層状ルテニウム酸化合物膜 特願2005-044963 信州大学 杉本 渉,高須 芳雄,村上 泰 ルテニウム酸ナノシートお よびその製造方法 特願2004-054577 杉本 US2004-809896 Korea2004-7241 CN10-2004-0020333 CN2004-10031405 ルテニウム酸ナノシートお よびその製造方法 渉 高須芳雄,村上 泰,杉本 渉 23 お問い合わせ先 信州大学地域共同研究センター Tel: 026-269-5620 Fax: 026-269-5630 [email protected] (株)信州TLO Tel: 0268-25-5181 Fax: 0268-25-5188 [email protected] 24
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