数学Ⅱ、数学Ⅱ・数学B 第2 教育研究団体の意見・評価 ○ 公益社団法人 日本数学教育学会 (代表者 藤 井 斉 亮 会員数 約 3, 600 人) TEL 03 - 5988 - 9872 数 学 Ⅱ 1 前 文 総じて基本的な知識・理解を問う出題がなされている。「数学Ⅱ」だけの履修者に配慮した基本 的な問題が精選され、本質的な事柄を通して数学的思考力を正当に評価できるよう出題に工夫が凝 らされている。また選択科目間での難易差が無いようにも配慮がなされている。問題作成関係者の 方々に敬意を表したい。設問に奇をてらわずとも、典型的な問題であっても依然として長年に渡る 課題として解決が望まれる設問が多々ある。今後も継続的に設問を通して提示し続けることで教育 現場における課題解決に資するよう期待する。 2 試験問題の程度・設問数・配点・形式等 第1問 (配点 30 点/〔1〕15 点〔2〕15 点「数学Ⅱ・数学B」第1問と共通) 第2問 (配点 30 点/「数学Ⅱ・数学B」第2問と共通) 第3問 (配点 20 点) ⑴は三角比の加法定理、⑵は2倍角の公式についての知識・理解を問う問題になっている。 ⑶の条件を満たす解の個数を解答させることは、周期がπである余弦のグラフを考えさせるこ ともでき、数学的思考力を適正に評価するための工夫が凝らされている。⑷では誘導の始めに θを求めることが示されており、その前提の下で以下の計算をさせているため、数学的思考力 及び基本的な知識・理解を、計算結果を解答させることを通して適正に評価できる問題になっ ている。 第4問 (配点 20 点) ⑴は複素数の累乗の計算結果から、多項式の複素数を代入した値を答えさせる問題になって いる。誘導を通して、複素数の知識・理解をもとに、実部と虚部の比較により不明な4文字を 2文字まで減らす数学的な処理について示している。⑵は整式の割り算での剰余について知 識・理解を問う問題になっている。⑶は多項式の割り算における商が、一次式の平方になる場 合の必要十分条件を考えさせている。単に二次方程式の判別式や、二次方程式が負でない重解 をもつための条件を求めることに専念させることも必要だが、第2問〔2〕で二次関数の平方 完成の問題と重複する印象が無くなるよう、あらかじめ誘導の冒頭で趣旨を示すなどの工夫が 必要である。総じて本問は整式の割り算についての商や余りを表す多項式について数学的思考 力を問うことも兼ねている問題になっている。 ―153― 数学Ⅱ・数学B 1 前 文 追・再試験と本試験間、選択問題間で難易に大きな差がなく公正に数学的思考力を評価できる設 問になっている。必答問題を「数学Ⅱ」と共通にしたことで教育現場に典型的であっても長年に渡 る教育課題の解決に資する設問が本問題群により提示されている。総じてバランスのとれた設問群 から構成されている。問題作成関係者の方々に敬意を表したい。次年度も、今年度と同様に本試験 と追・再試験間で難易に大きな差がなく、選択問題でもバランスのとれた問題群になることで数学 的思考力を公正に評価できる問題であることを期待する。 2 試験問題の程度・設問数・配点・形式等 第1問 (配点 30 点/〔1〕15 点、〔2〕15 点 「数学Ⅱ」第1問と共通) 〔1〕 指数・対数で関係付けられた実数 x、y を用いた A の最小値を求めることが誘導の冒頭 にある。このため置き換えや、底の変換公式を利用して計算させる場面では、数学的思考力 を踏まえた計算結果を答えさせることができている。後半は正の2数の和の最小値が相加平 均と相乗平均の関係から求められることの知識・理解が問われ、数学的な表現・処理も x、 y の値を答えさせることを通して適正に評価する問題になっている。 〔2〕 ⑴では平面座標における内分点・外分点を答えさせ、円の方程式の基本的な知識・理解 を問う問題になっている。⑵では与えられた円 C と、⑴で求めた円 C´ の二つの交点と原点 O を頂点とする三角形の面積を求めることが誘導であらかじめ示されている。直線の方程式 や、点と直線の距離などについて基本的な知識・理解を問う問題になっている。 第2問 (配点 30 点「数学Ⅱ」第2問と共通) ⑴は辺の長さに文字 a 含むような二等辺三角形の面積を a を用いて表現・処理させる問題で ある。⑵については点 A を頂点とする二等辺三角形の底面 BC に平行な直線で頂点 A を折りた たんだときの元の△ ABC との共通部分の面積について場合分けて考察させている。面積比は 相似比の二乗であることや、面積の関数が x の二次関数となるため二次関数についての基本的 な知識・理解を問う問題になっている。⑶では定義域が0< a <1であるときの a の三次関数 の増減を考えさせる基本的な設問である。場合分けされた面積を表す煩雑な関数の増減を考え させているが、誘導の工夫により総じて個々の知識・理解を問う問題になっている。 第3問 (配点 20 点) 数列の和と領域について、⑴は平面座標で、格子点を文字 k で表させ、与えられた領域内の 格子点の個数を k を用いて答えさせるなどの基本的な表現・処理を問う問題である。⑵は空間 座標において⑴で考察した底面に高さ z が1≦ z ≦2 n となるように設定された領域内の格子 点の個数を n を用いて表現させている。マークシートによる誘導で方針を提示して⑴、⑵と順 に解答させていることで一般化をする態度や基本的な数学的思考力について知識・理解を問う 問題になっている。 第4問 (配点 20 点) ⑴は正八角形の内角や外接円の直径に対する円周角について解答する。⑵は頂点の位置ベク トルを選択肢から答えさえている。⑶は対角線の交点の位置ベクトルを答えさせ、8個の交点 を始点と終点とするベクトルが、もとの正八角形の一辺を表すベクトルの何倍かを答えさせて いる。面積は相似比の2乗に比例することも問うている。本問では誘導からの解答方法でベク ―154― 数学Ⅱ、数学Ⅱ・数学B トルの内積計算の必要が無く、本試験のような基本的なベクトルの知識・理解を問うよりも平 面幾何の知識を評価する箇所が多い問題になっている。 第5問 (配点 20 点) ⑴では母集団に関する標本の抽出と確率について、⑵は標本平均と標準偏差について、⑶は 母平均 m に対する信頼度 95% の信頼区間について基本的な知識・理解を問う問題になってい る。⑷では標本抽出と二項分布、及び標準正規分布に従うような変数変換を誘導で指定して、 正規分布表から解答させる基本的な知識を問う問題になっている。 ―155―
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