GC1 6101 認知科学 (Cognitive Science) (後半・平賀担当分) 2016/5/24 授業日程 (春学期 AB) • 4月 19, 26日 • 5月 2, 10, 17日 森田(5回) • 5月 24, 31日 • 6月 7, 14, 21日 平賀(5回) • 期末試験: 6月28日 – 平賀・森田とも実施予定 • 小テストないし小レポートを実施 • 他にレポート提出も 2 授業の区分・ねらい • 「概論」科目 .....つ ・ ま ・ り..... – 認知科学についての入門的紹介 – 体系だった理論、詳細な知識というよりは...... – 分野全体の概要を把握し、その背景や取り組 まれる課題、考え方などを理解する – 基礎的・教養的レベルの知識を身につける – 「人間の科学」としての視点・方法論に触れる – そのため、内容的にはかなり自由に進める 3 授業のねらい(2) • 授業内容とは別に …….. – 授業に関連する内容について、関連資料類を 調べる習慣を身につける。 – そのための方法・手段(情報源の所在や探し 方)を会得する。 – 文献の読み方、ポイントの掴み方を会得する。 – 特に英語文献の講読に習熟する。 – 学会、研究活動の在り方に触れる。 – 時間外学習をしっかり行う。 4 授業の進め方 • 授業のスタイル: 講義中心 – プレゼンテーションツール(パワーポイント)や Web ページ資料を 主体に進める。 – リーディングや文献調査などを行ってもらう。 • 成績評価(平賀分) – – – – – 期末試験 レポート(全体で1回出題予定(文献調査等)) 出席状況 (欠格条件) (前回授業復習の小テスト) その他 (授業中の質問・発言等) • 授業ページ(資料・連絡事項等: 平賀担当分) http://www.slis.tsukuba.ac.jp/~hiraga/cogsci/ 5 出席表 出席表は時間中に回覧する – TWINS 登録済みの者は、自分の名前のある 右欄に名前を自署すること。 未登録者は「未登録者欄」に学類・学生番号・ 名前を記入すること。 – 全学 ID 以外のメールアドレスへの連絡希望 の場合にはそれも記入すること。 6 担当者・連絡先(平賀分) • 担当教員: 平賀譲 – 春日研究棟・7B214(学類長室)、7D209 研究室 – email, 授業 Web ページ [email protected] http://www.slis.tsukuba.ac.jp/~hiraga/cogsci/ – オフィスアワー: 本年度は設定しない – 訪問は随時受け付けるが、予約をとることが望 ましい。 7 授業資料、教科書・参考書 • 特定の教科書は指定しない。 • 授業の資料(PowerPoint (PPT) のプリントアウト、文献コ ピーなど)は直接配布するか、各自で適宜プリントアウト してもらう。 • 参考書、関連 Web ページ等については授業とともに 随時紹介するとともに、URL 等を PPT ファイルや授業 ページに掲載する。 (基本的なものはあとのほうでも紹介する。) • Web 掲載資料の [基礎 0] , [基礎 1], [基礎 2]には必ず 目を通しておくこと! 8 配布資料について • 授業の PPT資料は、前週までに授業Web ページ にて公開、ダウンロード/プリントアウトできるよう にしておく。 事前公開するが当日配布予定 – PPT ファイルそのもの – プリントアウト用 PDF ファイル • Web 公開資料についてはこちらからコピーは配布 しない。授業時までに各自プリントアウト and/or ダ ウンロードしておくこと。 • PPT 資料は授業時・授業以降に追加・改変する場 合がある。 • 印刷物のコピーは原則として授業時に配布する。 9 履修方法、他科目との関係 • 概論科目なので、前提知識や特定の授業の履修は 要求しない。 • しかし単に受動的に講義を聞くだけでなく、 それを踏まえて資料調査、文献講読、考察などを行 う必要がある。 – これは本来、自主的に行うべきものだが、課題を課したりレ ポート提出などにより点検を行う。 • 本授業の内容は、専門科目でより特化・深化して扱 われるとともに、そのための基礎知識にもなる。 • またあらゆる場面において、「人間」という要因を考 えていくための基礎ともなる。 10 認知科学(Cognitive Science)とは • 人間の認知、心(mind) の働き、とりわけ知 的・理性的・合理的な思考や行動に関する、 様々なアプローチからの研究の総称。 • それらの研究を有機的に統合し、関連づ け、また研究協力を進めるための学際的 学問分野やコミュニティを指す用語。 • キーワード: 認知、(心)、学際的 11 認知科学とは(2) • 名前を持つことそれ自身が、対象にアイデンティ ティを持たせ、広く意識させる契機になる。 (cf 実在論⇔唯名論) What‘s in a name? That which we call a rose By any other name would smell as sweet; ... • Cognitive Science という語は 1973 年、 Christopher Longuet-Higgins による(らしい)。 (Wikipedia 英語版) • 日本語の「認知科学」(認知心理学、...)の 名付け親は? 12 認知科学とは(3) • キーワード – 認知 (cognition, cognitive) – 心 (mind) – 学際的 (interdisciplinary) 13 素朴な疑問: 認知とは何か? • 人間はなぜ物事を考えることができるのか • そのとき頭の中(?)で何が起きているか • 私が考え、感じることと他人のそれと同じか、それ とも別物か • 人によってなぜ能力の違いがあるか • 人間と動物とは何が違うか – 言語、道具、文明、… • 機械(コンピュータ)は人間と同じように考えること ができるか … 等々 14 「認知」とは(1) • 原語の Cognitive Science ⇒ Cognitive, Cognition cf. recognition, recognize – http://en.wikipedia.org/wiki/Cognitive_science • 日本語、訳語としての「認知(科学)」 – 「子供の認知」、「認知症」 – http://ja.wikipedia.org/wiki/認知 • 関連語: 認識、知覚、判断、解釈、理解、知能、 知識、...... 15 (Oxford Advanced Learner’s Dictionary) • Cognition [noun [U]] (Psychology) The process by which knowledge and understanding is developed in the mind. Child studies centring on theories of cognition. • Cognitive [adj.] Connected with mental processes of understanding. 16 (Wiki: 「認知」 http://ja.wikipedia.org/wiki/認知) • 心理学・言語学・脳科学・認知科学・情報科学などにおける認知とは、人間 などが外界にある対象を知覚し た上で、それが何であるかを判断したり解 釈したりする過程のことをいう。感覚や知覚とならぶ深層の心理を表現し、 外界にある対象を知覚し、経験や知識、記 憶、形成された概念に基づいた 思考、考察.推理などに基づいてそれを解釈する、知る、理解する、または 知識を得る心理過程、情報処理のプロセスで認知科学 では、人間の知的な 働きをその応用側から、工学や医学、哲学、心理学、芸術学などの分野また は学際分野から総合的に明らかにしようとする。また認知距離と いう人間が 対象となる空間や人間などを認知することができる、人間が日分自身を起点 として認知している空間や事象の地理的、心理的な広がりである認知領域 内部の事物に対する距離がある。 – 認知は「統覚」と「連合」の二段階にわかれた処理である。統覚は、風景 などの知覚から形を取り出す働きであり、その形が何であるのかを判断 する働きが連合である。認知の障害が失認であり、見えたり聞こえたり することはできてもそれが何であるか理解できない(連合の障害と統覚 の障害とでは症状には差異がある)。見たものが認知できない視覚失認 のほか、相貌失認・手指失認など様々な症状があり得る。 • 日本の民法における認知(にんち)とは、嫡出でない子について、その父又 は母が血縁上の親子関係の存在を認める旨の観念の表示をすることをいう (民法779条)。法律上、当然には親子関係が認められない場合について、 親子関係を認める効果がある(以下、詳述する)。 一般会話における「認知症」の略称。 • 17 (大辞林) • にんち 【認知】(名)スル (1)それとしてはっきりと認めること。 「目標を―する」 (2)法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれ た子を、親が戸籍法の手続きによって、自分の 子と認めること。自発的に行うことを任意認知、 裁判による場合を強制認知という。 (3)〔心〕〔cognition〕生活体が対象についての知 識を得ること。また、その過程。知覚だけでなく、 推理・判断・記憶などの機能を含み、外界の情報 を能動的に収集し処理する過程。 18 (大辞林) • にんしき 【認識】(名)スル (1)物事を見分け、本質を理解し、正しく判断する こと。また、そうする心のはたらき。 「経済機構を正しく―する」「―を新たにする」 「―に欠ける」 (2)〔哲〕〔英 cognition; (ドイツ) Erkenntnis〕人間 (主観)が事物(客観・対象)を認め、それとして知 るはたらき。また、知りえた成果。感覚・知覚・直 観・思考などの様式がある。知識。 19 というわけで「認知」とは(2) • キー概念: 情報処理 – 人間の活動のうち、情報処理過程として捉え られる側面を指す。 – 認知科学はそのような側面が研究対象。 • 特定の対象(知覚・思考・記憶等々)を指す というよりは、視点・考え方・枠組・方法論 ⇒ 「パラダイム (paradigm)」(cf. Kuhn) 20 「認知」とは(3) • パラダイムシフト: 1950 年代から • 背景:情報処理機械(コンピュータ)の登場と普及 • それまでは: – 「人間=唯一、最高の知的存在」 • それ以降は: – 唯一の知的存在としての人間の地位が脅かされるよ うになる。 – 人間の知を相対化して考える視点、さらには知能一 般を考える視点が生まれた(現実化した)。 – コンピュータは人間の知を映す「鏡」ともなる。 21 「認知」とは(4) • 「様々な知」 – 人間の知 これも文化、能力、背景・経験等によって様々 “Sapir-Whorf 仮説” – 機械の知 そもそも機械は知的存在たりうるか? – 動物の知 (cf. L. Wittgenstein) “If a lion could talk, we won’t understand him.” – ETI (? Extraterrestrial Intelligence) 22 「認知」とは(5):認知の様々な側面 – – – – – – – – – – 知覚(主として視覚・聴覚) 運動、行動、制御、身体知 注意と意識、「質感(qualia)」、自我 (identity) 思考、推論、意思決定 言語と対話 知識、記憶 発達、学習 感情、情動 創造性 社会活動、協調、社会における認知 23 「認知」とは(6) • 「人間の科学」としての認知科学 ⇒ 情報処理システムとしての観点(認知科学) ⇔ 身体、物理的存在としての人間 (医学・生理学、生物学、...) ⇔ 社会的存在としての人間 (社会学、経済学、...) • 応用: 認知工学 (Cognitive Engineering) ヒューマンインタフェース (HMI) 24 心(Mind) • 「心」は mind の訳語として使われる。 – 心の哲学 (philosophy of mind) – 心の理論 (theory of mind) – 「心の社会」 (“society of mind”) • 「心」というのは mind とはちょっと違うので はないか(訳語として必ずしも適切ではな いのではないか)、という話。 25 「学際的」とは...の前に • そもそも学界、研究領域・分野、学会とは? – 新しい研究は、多くの場合、個人の研究者(あるいは 研究グループ)の独創的な取組みから始まる。 – 似たような研究テーマの研究が増えてくると、(ほとん どの場合、自然発生的に)研究者同士の連絡から、 研究コミュニティ(共同体)が醸成されてくる。 – それが大きくなっていくと、1つの研究分野としての自 立性を持つようになる。研究会などの組織が形成され る、セミナー開催などの自主活動が行われる等々。 – そのような活動や組織が社会的に(=学界において) 認知されると、独立した研究分野・領域として扱われ るようになる。 26 学会とは(1) • 研究対象・分野が共通の研究者により形成され る組織で、その分野の研究活動を推進・支援す る役割を持つ。 • おもな活動 – – – – – – 研究発表会の開催 学術論文の受付・査読と論文誌の発行 学会誌、単行本などの出版物の発行 講演会、セミナーなどの開催 教育活動、会員の情報交換、研究機関との関わり 社会的活動(啓蒙活動、広報、規格制定、政策への 関与、社会へのアピール等々) 27 学会とは(2) • 小規模なもの(数百人程度の任意団体)か ら数万人規模の社団法人(専門の事務局 を有する)まで様々。 • 社会的な認知、「お墨付き」 – 日本学術会議 http://www.scj.go.jp/ 「協力学術研究団体」 – 国立情報学研究所・学協会情報発信サービス http://wwwsoc.nii.ac.jp/ – 科学研究費補助金の系・分野・分科 28 日本認知科学会 • http://www.jcss.gr.jp/ • 創立: 1983 年 • 出版物 – 「認知科学の発展」(1988-1993) – 「認知科学」(論文誌) (1994-) – モノグラフ等の単行本 • 大会 – 全国大会(年1回)、冬のシンポジウム 29 日本認知科学会 (Web page より) • 日本認知科学会(Japanese Cognitive Science Society)は「知」の総合的な科学を構築するため の学際的な研究交流の場として1983年に設立さ れました。心理学、人工知能、言語学、脳神経科 学、哲学、社会学などさまざまな背景を持つ会員 が知の総合科学を目指して、活発な研究活動を 行なっています。若さあふれる自由な雰囲気の 中で、知の本質的 な解明を目指して、旺盛な批 判精神と厳密な科学の精神を忘れず、活達な議 論、交流が行なわれています。(以下略) 30 Cognitive Science Society • http://cognitivesciencesociety.org/ • 創立: 1979 年 • 出版物(論文誌) Journal of Cognitive Science (1976 創刊) • 大会 – 年1回、主としてアメリカ(北米)で 31 Cognitive Science Society (top page) • The Cognitive Science Society, Inc. brings together researchers from many fields who hold a common goal: understanding the nature of the human mind. The Society promotes scientific interchange among researchers in disciplines comprising the field of Cognitive Science, including Artificial Intelligence, Linguistics, Anthropology, Psychology, Neuroscience, Philosophy, and Education. 32 「認知科学」の説明・語釈 • (大辞林等の辞書) • Wiki (英語版) http://en.wikipedia.org/wiki/Cognitive_science • Stanford Encyclopedia of Philosophy http://plato.stanford.edu/entries/cognitive-science/ • Encyclopedia.com (< Concise Britannica) http://www.encyclopedia.com/doc/1B1-361093.html 33 (大辞林) • にんち-かがく ―くわ― 【認知科学】 人間や生物およびコンピューター-システムの認知活 動を対象にして、知識の獲得や表現、推論機構、学 習、情報処理のメカニズムなどの研究をする学際的 な科学。人工知能・計算機科学・心理学・言語学・神 経科学など、広い分野とかかわり合いがある。 • にんち-しんりがく 【認知心理学】 客観的行動を対象とする行動主義心理学に対し、行 動の主観的側面を重視し知識獲得の内在的過程を 研究対象とする心理学の一分野。 34 (http://www.encyclopedia.com/doc/1B1-361093.html) • cognitive science (From: Britannica Concise Encyclopedia | Date: 2007 |) Interdisciplinary study that attempts to explain the cognitive processes of humans and some higher animals in terms of the manipulation of symbols using computational rules. The field draws particularly on the disciplines of artificial intelligence, psychology (cognitive psychology), linguistics, neuroscience, and philosophy. Some chief areas of research in cognitive science have been vision, thinking and reasoning, memory, attention, learning, and language processing. Early theories of cognitive function attempted to explain the evident compositionality of human thought (thoughts are built up of smaller units put together in a certain way), as well as its productivity (the process of putting together a thought from smaller units can be repeated indefinitely to produce an infinite number of new thoughts), by assuming the existence of discrete mental representations that can be put together or taken apart according to rules that are sensitive to the representations' syntactic, or structural, properties. This “language of thought” hypothesis was later challenged by an approach, variously referred to as connectionism, parallel-distributed processing, or neural-network modeling, according to which cognitive processes (such as pattern recognition) consist of adjustments in the activation strengths of neuronlike processing units arranged in a network. 35 (http://www.encyclopedia.com/doc/1B1-361093.html) • Cognitive science (From: Britannica Concise Encyclopedia | Date: 2007 |) Interdisciplinary study that attempts to explain the cognitive processes of humans and some higher animals in terms of the manipulation of symbols using computational rules. The field draws particularly on the disciplines of artificial intelligence, psychology (cognitive psychology), linguistics, neuroscience, and philosophy. Some chief areas of research in cognitive science have been vision, thinking and reasoning, memory, attention, learning, and language processing. 36 「学際的」とは(1) • 共通の研究対象に対し、異なる目的、アプローチ、方法 論による研究が行われている領域。 認知科学の場合、「(主として)人間(の認知)」 • ...というだけでは弱くて、異分野の研究・研究者が連 合して、交流・意見交換によって相互に喚起し合う、さら には研究協力、共通目標に向けての取組みなどが行わ れるなど。 △:対象が総合的な取組みを要するため、必然的に学際的 協力が不可欠 ◎:独立に存在していた研究分野が相互の共通性に基づき、 連合・交流する 37 「学際的」とは(2) • 認知科学に関わる分野・領域 – – – – – – – – – – 心理学(認知心理学) 人工知能・コンピュータ科学(情報科学) 哲学 言語学 脳科学・神経科学 文化人類学 社会学 教育学 工学(認知工学)、メディア工学 ・・・ 38 「学際的」とは(3) • 異分野交流は一般に難しい。 「言葉や概念が通じない」というレベルから出発すること になる。 – 再び Wittgenstein: “If a lion could talk, we won’t understand him.” • 初期には大いに刺激になるが、関心や協力が持続する かはまた別の問題。 • 研究者はそれぞれの専門領域という「ホームグラウンド」 を持っている(そちらに重心がある、戻ってしまう)。 • 領域・学会としてどれだけの求心力を持続できるか。 39 認知科学の主要分野 • • • • • 心理学 (Psychology) 言語学 (Linguistics) 論理学 (Logic) 人工知能 (Artificial Intelligence) ヒューマンインタフェース(HI)、ユーザ支援 – 人間工学 (Human Factors / Ergonomics) – 認知工学 (Cognitive Engineering) • 脳科学・神経科学 (Brain Science(s), Neuroscience) (哲学 Philosophy) 40 認知科学の(範疇的な)方法論 • (資料 ID [基礎 2] 2-1 pp.32‐36 参照) – 経験的方法 (empirical method) • 神経科学、実験心理学、(実験物理) – 形式的方法 (formal method) • 理論言語学、人工知能理論、(理論物理) – モデル構成法 (modelling method) • 人工知能、心理モデル、神経モデル、(計算物理) – 生態学的方法 (ecological method) • 文化人類学・社会学、発達心理、知覚、語用論 41 人工知能 心理学 (モデル・理論) (実験・モデル) HI、認知工学 (実験・制作) (理論・モデル) (実験・モデル) 言語学 脳科学 42 心理学 (Psychology) • 心理学の誕生(1870 年代) H.Helmholz, W.Wundt, W.James, H.Ebbinghaus, ... • 行動主義心理学(1910 年代~) J.Watson, E.Tolman, B.Skinner, ... • ゲシュタルト心理学(1910 年代~) M.Wertheimer, W.Köhler, K.Koffka, ... • 発達心理学 J.Piaget, ... • 認知心理学・認知主義(1950 年代~) U.Neisser, G.A.Miller, D.Broadbent, ... 43 心理学 (続) • 「科学」たらんとするための葛藤 ⇒「後発科学」としての宿命(規範:「ハードサイエンス」) • 自分自身の精神状態を観察・内省するー「内観法」 • 実験心理学の創設 • 行動主義 入力(刺激:S)→出力(応答:R)の関係だけを問題とする (後にパラメタ(オペラント)導入による拡張) ⇒ゲシュタルト心理学などとの相克 • 認知主義(認知心理学) 内部過程に目が向けられる 44 言語学 (Linguistics) • Chomsky 革命 ⇒生成文法理論、普遍文法 – それ以前 (Saussure, Jacobson, ...) • 形式的体系としての言語(形式文法理論) • 「生物としての人間」と言語 • 言語の個別性・恣意性と普遍性 ⇒「普遍文法(Universal Grammar)」 • 言語はどの程度規則的か 共時性(synchronic)、通時性(diachronic) • 言語は人間の認知から独立性のある、 閉じた体系として扱えるか。 45 論理学 (Logic) • 古典論理学(?) (ここではアリストテレス以来の論理学のこと) • 記号論理学 (19C~1910年代) Boole, De Morgan, Peano, Frege, Russell • 数学基礎論 (主に 1930年代) – チューリングマシン – チャーチ・チューリングの提唱 (Church/Turing Thesis) • 思考の形式化、機械化 – コンピュータ、人工知能研究の理論的基礎 46 人工知能 (Artificial Intelligence) • 人工知能の2つの目標・背景 – 高度に知的な機能を実現する機械(プログラム、シス テム)を構築する(数学・科学の問題解決、ゲーム等) – 人間が行う活動を実現・模倣するシステムを構築する (ロボット、会話システムなど) – (それらの実現のため、人間の認知を手本とする) • • • • どっちつかず (ambivalent) 問題解決のゴールが明確なら扱いやすい 「強い AI」と「弱い AI」 記号表現(記号主義)、非記号(記号下)表現 最近の進展(復興)と “Technological Singularity” 47 人間工学、認知工学、HI • 「応用認知科学」 • 現在ある機械や道具を評価する。 – どのような観点・方法で? • より良い機械や道具の開発につなげる。 • 特にコンピュータと人間の関係 – Human Interface (HI), Human-Computer Interaction (HCI), ..... – 機械(コンピュータ)と人間はどのように作業を分 担しうるか? – 機械は人間に取って代わるか? 「群盲撫象図」 49 「群盲象を撫でる」 • (Wiktionary) 1. 視野の狭い者が多く集まり、銘々の観点か ら理解したことを述べ、結果として物事の本 質が見失われている状態の喩え。 2. 視野の狭い者は、いくら集まったところで、本 質を理解することは難しいと言うこと。また、 小人物はスケールの大きな人を理解するこ とができないと言うこと。 肯定的な意味で考えると? 50 認知科学の特異性 • 認知科学はいわば「(人間が)考える」ことについ て考える学問である。 • これ自身、循環性・自己矛盾を内包している。 例えば「人間の認知能力には限界がある」とした 場合、その限界性の認識自体、「認知能力の限 界」に支配されているのではないか?等々 • ここらは自然科学のように、対象を完全に客体化 して扱える(ように思える)場合との大きな違い。 51 「考えること」を考える • 「考える自分(人間)」について考える自分 – 自分のことは自分が一番よくわかる – 自分のことほどわからないことはない • 考察・研究する対象としての「自分」 と、考察の主体となる「自分」 → 「循環性」 • ⇔両者が分離されている(ほうが科学では普通) → 物理学(自然⇔物理学者) 「客観性」 52 問題点(1) • 自分自身について、何をどこまで知りうるか – 意識に上る事柄は、頭の中で行われている情報処理 のごく一部にすぎない。 – それだけでなく、それは後付けの辻褄合わせ、 さらには捏造・歪曲であるかもしれない。 – 感覚も外界を忠実に反映している保証はない。 • 色の知覚、 影の色 • 薬物等による幻覚 • cf. Maturana & Valera の構成的・現象学的生物学 “autopoiesis” • 内観報告は、忠実な記述か? 53 問題点(2) • 認識しうる限界はわかるか – 原理的にはわかりえない。 ⇒限界かどうかは、一歩外から眺めないとわから ない。 参考 • ゲーデルの不完全性定理 • チューリングマシンと停止問題 • 万能チューリングマシン、コンピュータエミュレーション • しかし実効的にはいろいろ知ることはできる。 54 問題点(3) • 意識や自我とは何か。我々が生々しく感じる自 分自身の意識は、そもそも研究・解明の対象に なりうるか。 • クオリア(感覚質: qualia)の問題 自分にとっての直接的な感覚・実感についても、 研究・解明の対象になりうるか。 それは納得できる説明を与えてくれるか。 • 他者との同一性・共通性 自分が感じる意識や実感は、他者も同じように持 っているのだろうか? →唯我論 55 問題点(4) • 自由意志、意図の問題 – 自分は自由意志を持っているのか、それはど う判断できるか。 – そもそも自由意志というのは存在する(しうる) のか。 参考 • 「ラプラスの悪魔」 • 決定論的世界観 (Determinism) • 量子力学と確率的決定論(非決定論) 56 問題点(5) • 「認知」は人間特有、固有か – 動物の認知(人間との共通性、相違) – 機械による知能・認知の実現 • 機械(コンピュータ)は人間にとって便利で有益な 道具か、人間と肩を並べる(取って代わる)存在か • 参考: (Technological) Singularity – (前史) A. Turing, J. von Neumann, etc. – Vernor Vinge. Ray Kurzweil – Artificial General Intelligence (AGI) cf. “Strong AI” (J. Searle) 57 課題: Technological Singularity • どういう話か? • 何が「特異(singular)」なのか? • いわゆる「未来論」(SF 等のフィクションも含む)では何 がどう扱われているか? – 過去のものを振り返って、どの程度正しく現在を予言してい るか? – 我々はどこまで予見できるか? • 「自分はどう思うか?」 – 考えるためにはどういう知識が必要か? – 「賢い機械」を作るとはどういうことか? • 何をすればいいか、自分にできそうか? 58 認知科学の成立 • • • • • (web 掲載資料も参照) 先史時代 (1950 年代まで) 「認知革命」 (1950 年代、特に 56-58年) 胎動・成長期 (1960 -70 年代) 自立・成熟期 (1980 年代以降) 発散・転換の危機?チャンス? (1990 年代以降) – – – – WWW の登場 各種 IT 機器の日常生活への爆発的普及・浸透 巨大データ(ビッグデータ)の登場 脳科学の発展 • 「機械との共生」へ? (2000年代後半以降) – いわゆる「人工知能」の急速な進展 – 「人間の領域」 • そして将来は? 59 先史時代 (~1950年代) • 人間が「考えることについて考える」ようになるのははる か昔、少なくとも紀元前の時代から。 その頃は「学問=哲学」、そこから論理学などが独立して くる。 • 17 世紀以降、自然科学が哲学から自立した分野として 成立。 • 心理学・(近代)言語学など、認知に関わる学問分野が登 場してくるのは概ね19世紀、それも後半。 • 20 世紀前半には電子技術の発達、数学的基礎の整備な どを通じてコンピュータの登場が準備され、第2次大戦以 降に大発展を遂げる。 60 「認知革命」期 (1950, 60年代) • 1950 年代、様々な分野で大きな転換が生じる。 – 人工知能の誕生 (1956) – 言語学の「チョムスキー革命」 (1957-) – G.A. Miller の “Magical Number Seven ...” の論文 (1956): 短期記憶の存在の示唆 これを始めとして、この時期に心理学の「認知シフト」 が生じる – 神経生理学における様々な発見 (1940-50 年代) – ニューラルネットの原型(パーセプトロンなど) – Levi-Strauss の構造主義人類学(1940-50年代) 等々 61 その後の展開 (1970年代~) • その後の発展・挫折・展開については、授業 で順次触れていく。 • 1990 年代以降は、認知科学そのものの自 立・成熟とともに、初期の熱意が一段落する 一方、WWW の登場と爆発的普及、脳科学 の発展などにより、今後の進展の岐路に立っ ていると言える。 • 特に近年は「人間と機械の境界」が段々薄れ てきており、これまでとは異なる展開・進展が 生じうる。 62 参考書・関連文献 • 広範な学際的領域のため、全体像を俯瞰するような 本、特に入門的なものは少ない。 • 個別的なテーマのものは入門書、専門書とも多数あ るが、分野的に分散している。それらについては追っ て紹介していく。 • 洋書で翻訳されているものも多いが、情報源として は書籍・論文・Web とも、外国(主として英語)が中心。 ⇒ 英語文献の読解は不可欠!! • 以下はいずれも、大学図書館所蔵。 (TULIPS よりダウンロード) 63 事典・辞典・ハンドブック類(1) • 「認知科学辞典」(共立出版 2002) http://www.kyoritsu-pub.co.jp/shinkan/shin0207_06.html • デジタル認知科学辞典(共立出版 2004) http://www.kyoritsu-pub.co.jp/shinkan/shin0407_05.html • 認知科学ハンドブック. 安西祐一郎 [ほか] 編/日本認知科学会協力. 共立出版, 1992. • The MIT Encyclopedia of the Cognitive Sciences (MITECS) http://mitpress.mit.edu/catalog/item/default.asp?ttype=2&tid=3470 • Wiley Encyclopedia of Cognitive Science, 4 vol. http://as.wiley.com/WileyCDA/WileyTitle/productCd-0470016191.html 64 事典・辞典・ハンドブック類(2) • 人工知能大辞典. Stuart C. Shapiro, David Eckroth [編]/大須賀節雄監訳. 丸善, 1991. • 人工知能ハンドブック, 第1-4巻. (共立出版:田中幸吉, 淵一博監訳) – – – – Avron Barr, Edward A. Feigenbaum編, 1983. Avron Barr, Edward A. Feigenbaum編, 1983. Paul R. Cohen, Edward A. Feigenbaum編, 1984. Avron Barr, Paul R. Cohen, Edward A. Feigenbaum編, 1993. • 人工知能ハンドブック. 人工知能学会編. オーム社, 1990 65 叢書・シリーズ • 岩波講座認知科学(全9巻) 絶版 • 東大出版会認知科学選書(全24巻) – うち12巻は「コレクション認知科学」として 2007 年再刊 • 認知科学モノグラフ(共立出版)(全11巻) • サイエンス社 Cognitive science & information processing (12 + 3 巻) 66 概説書(1) • 認知科学の基礎(岩波講座認知科学 1) 絶版 橋田浩一, 安西祐一郎, 波多野誼余夫, 田中啓治, 郡司隆男, 中島秀之, 岩波書店, 1995. • The Mind's new science : a history of the cognitive revolution. Howard Gardner. Basic Books, 1985. 絶版 • 認知革命 : 知の科学の誕生と展開. 佐伯胖, 海保博之監訳, 産業図書, 1987. 67 概説書(2) • Mind : introduction to cognitive science. Paul Thagard. MIT Press, 1996. • マインド : 認知科学入門. 松原仁監訳, 共立出版, 1999. • Understanding computers and cognition : a new foundation for design Terry Winograd, Fernando Flores. Addison-Wesley Pub. Co., 1987. • コンピュータと認知を理解する : 人工知能の限界 と新しい設計理念. テリー・ウィノグラード, フェルナンド・フローレス著 /平賀譲訳. 産業図書, 1989. 68 概説書(3) • 心のシミュレーション : ジョンソン=レアードの認知科 学入門. フィリップ・ジョンソン=レアード著/海保博之 [ほか] 訳. 新曜社, 1989. • 認知科学入門 : 「知」の構造へのアプローチ. 戸田正直 [ほか] 共著. サイエンス社, 1986 (Cognitive science & information processing:1). • 誰のためのデザイン? : 認知科学者のデザイン原論. D.A.ノーマン著/野島久雄訳. 新曜社, 1990 (新曜社 認知科学選書). 69 概説書(4) • コンピュータは考える : 人工知能の歴史と展望. P.マコーダック著/黒川利明訳. 培風館, 1983. • 人工知能と人間 I, II. M. ボーデン著/野崎他訳. サイエンス社 • 心をもつ機械 : 人工知能の誕生と進化. スタン・フランクリン著/林一訳. 三田出版会, 1997. • 【追加】 知能の物語. 中島秀之、公立はこだて未来大学出版会(近代科 学社)、2015.5.31 発行 70
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