特定のテーマについて,全員による輪講

2014年度法情報学演習
第3回 平成20年度新司法試験
公法系科目[第1問]問題の検討
2014年10月16日(木)
東北大学法学研究科 金谷吉成
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2014年度法情報学演習
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2014年10月16日
今回取り上げるテーマ
平成20年新司法試験
「論文式試験・公法系科目・第1問」
– 試験問題(平成20年新司法試験試験問題)
http://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/shiken_shinshihou_h2021jisshi.html
– 論文式試験出題の趣旨(平成20年新司法試
験の結果について)
http://www.moj.go.jp/content/000006426.pdf
インターネットにおける表現行為に対して、フィルタ
リング・ソフトを用いた表現内容規制の問題
仮想法令としてのフィルタリング・ソフト法
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2014年度法情報学演習
表現の自由と青少年の保護
 青少年をいかに保護するか?
– インターネット上では、青少年にとって好ましくない
とされる情報も大量に流通している
モバイル・インターネットの普及が急速に進み、青少年
の携帯電話・スマートフォンの使用が一般的になった
モバイル端末によるアクセスは大人の目が届きにくいた
め、知らないうちに子どもが悪影響を受けるのではない
かという不安をもつ保護者も多い
– インターネット規制立法の議論も、青少年の保護
が中心のひとつとなっている
 用語の確認
– 児童、青少年…18歳未満の者
– 未成年、少年…20歳未満の者
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2014年度法情報学演習
現実の制度
 青少年が安全に安心してインターネットを利用で
きる環境の整備等に関する法律(青少年インター
ネット環境整備法)(平成20年法律第79号)
– 2008年6月18日公布、2009年4月1日施行
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H20/H20HO079.html
– 現実の法案は、おそらくできるだけ憲法上の問題がな
いように作ってあって、問題文は憲法上の問題がある
ように作ってあるはず
– 成立の経緯
 1999年以降長期間に渡り「青少年社会環境対策基本法」「青
少年健全育成基本法」の制定に向けた取り組みがなされてき
たが、メディア規制につながるとして各方面から強い反対を受
け、包括的な青少年保護のための法律はなかなか整備され
てこなかった
 各地の地方公共団体では、青少年保護育成条例を制定し
「有害図書」を規制
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2014年度法情報学演習
インターネットの有害情報
アダルトサイト(ポルノ画像や風俗情報)
出会い系サイト
暴力残虐画像を集めたサイト
他人の悪口や誹謗中傷を載せたサイト
犯罪を助長するようなサイト
毒物や麻薬情報を載せたサイト
– アダルトサイトでは通常、「18歳未満の入場お
ことわり」として入場制限を行っているが、確実
に年齢を確認する手段がないため、誰でも容
易に入場することができるのが現状
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2014年度法情報学演習
有害ウェブサイトへの対応
 ウェブサイトそのものの規制
– 情報発信者の表現の自由
 フィルタリング
– 情報を受け取る側で有害なウェブページの閲覧を拒否
する
– 有害なウェブページを子どもや見たくない大人に見せ
ないようにするためのソフトウェアが「フィルタリング・ソ
フト」
 パソコンにインストールするもの
 インターネット・サービス・プロバイダ(ISP)が提供するフィルタ
リング・サービス
 日本語対応フィルタリング(財団法人インターネット協会)
http://www.iajapan.org/rating/nihongo.html
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2014年度法情報学演習
フィルタリングの仕組み
 レイティング方式
– ウェブページに対して一定基準で格付け(レイティングという)して
おくことで、情報受信者がそのレイティング結果を利用して、受信
者の価値判断でフィルタリングを行う方式
– 情報発信者が自ら格付けする『セルフレイティング』と、第三者が
格付けする『第三者レイティング』がある
 ブラックリスト方式
– 有害なウェブページのリストを作り、これらのウェブページを見せ
ないようにする方式
 ホワイトリスト方式
– 子どもにとって安全で有益と思われるウェブページのリストを作り、
これらのウェブページ以外のページを見せないようにする方式
 キーワード/フレーズ方式/全文検索方式
– 有害なキーワードやフレーズをあらかじめピックアップしておき、
ウェブページを表示する前にその内容とこれらのキーワードやフ
レーズを照合することで、有害なウェブページを見られないように
する方式
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2014年度法情報学演習
フィルタリング・ソフトの問題点
フィルタリングは、有害なウェブサイトから
子どもたちを効率的に遠ざけることができ
るが、万能ではない
– フィルタリングの方式によっては、無害なペー
ジや有益なページまで遮断してしまう
– フィルタリング・ソフトによっては、遮断されない
有害ウェブサイトもある
– 新たなサイトの立ち上げとのイタチごっこ
– フィルタリング・ソフトによって、無理に子どもの
行動を制限したくないと考える保護者も(イン
ターネットの利用の幅を狭くするデメリット)
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青少年インターネット環境整備法の内容
 ケータイ事業者
– 保護者が申し出た場合を除き、青少年がネットを利用する際にコ
ンテンツフィルタリングサービスを提供する
 18歳未満の利用者が新規契約する場合、親権者の申し出がなければ
フィルタリング・サービスが適用される
 保護者の申し出があれば解除できる
 インターネット事業者
– コンテンツフィルタリングサービスの普及、および利用を促進する
ための措置を取る
 サイト管理者
– 青少年にとって有害な情報が発信されていることを知ったときに、
青少年の閲覧を防ぐように努める(努力義務)
 その他
– 青少年の安全なネット利用に関する基本方針を決める「子ども・
若者育成支援推進本部」を内閣府に設置
– フィルタリングの調査、開発、啓発を行なう団体を第三者機関とし
て認定して、国や地方公共団体が支援
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2014年度法情報学演習
有害情報とは?
 フィルタリング・ソフト法(事例の仮想法令)
– 「インターネット上で流通している情報で、子どもに対し、
著しく性的感情を刺激し、著しく残虐性を助長し、又は
著しく自殺若しくは犯罪を誘発するものとして、内閣府
令で定める基準に該当し、子どもの健全な成長を阻害
するおそれがあると認められるもの」(2条2項)
 基準については内閣府令に委任
 青少年インターネット環境整備法
– 「インターネットを利用して公衆の閲覧に供されている
情報であって青少年の健全な成長を著しく阻害するも
の」(2条3項)
– たとえば、犯罪や自殺につながる情報、著しく性欲を
興奮・刺激する情報、著しく残虐な内容の情報(2条4
項)
 有害情報については例示に留め、民間の自主的な対応を求
める
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2014年度法情報学演習
「有害」の判断は誰が下すのか?
 フィルタリング・ソフト法(事例の仮想法令)
– 内閣総理大臣が指定(5条)
– 内閣府に、フィルタリング審議会を置く(13条)
 国による情報統制や表現の自由の侵害などが懸念
 青少年インターネット環境整備法
– フィルタリング推進機関
– 第三者機関、総務大臣及び経済産業大臣の登録を受
ける
 モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)
インターネットコンテンツ審査監視機構(I-ROI)
– サイト開設者、ISP、国および地方公共団体が協力し
て対応
– 罰則なし
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実効性の問題
青少年インターネット環境整備法に対して
は、以下のようなさまざまな問題点が指摘
されている
– 法規制により青少年の受ける犯罪被害を防ぐ
効果があるとは言いきれない
– フィルタリングがかかったせいで普通のサイト
まで見られなくなる不便さが生じる
– フィルタリングや有害情報のチェック体制を用
意することで企業の負担が増える
– SNSや「ケータイ小説」など、未成年者が関係
しているケータイ文化を萎縮させないか
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青少年インターネット環境整備法への反発
 各方面からの反対
– 楽天、Yahoo!、DeNA、マイクロソフト、ネットスター
は、青少年インターネット環境整備法に対して反
対の立場を表明
– インターネット先進ユーザーの会(MIAU)、WIDEプ
ロジェクト、社団法人日本ネットワークインフォメー
ションセンター(JPNIC)、日本新聞協会、日本民間
放送連盟などの団体も、反対を表明
 青少年インターネット環境整備法は、3年以内
に見直すとされた
– 2009年、子ども・若者育成支援推進法の施行に伴
い一部改正されたが、内容はほぼ公布時のまま
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問題の検討
 フィルタリング・ソフト法の概要
① 立法目的
② 立法目的を達成する手段
– 「有害ウェブサイト」指定制度
③ 立法事実(①・②の合理性を裏づけ支える一
般事実)
– 国民のおよそ4分の3がインターネットを利用
– 有害情報による子どもへの悪影響の懸念
– フィルタリング・ソフトは有効な対応策ではあるが、
実際の普及率は低い
2014年10月16日
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2014年度法情報学演習
問題の検討
Aの起訴にかかわる事実関係
– Aが運営するウェブサイト
– フィルタリング・ソフト法施行による影響
– Aのとった対抗策
– 法令違反による起訴
Aのプログラム提供行為
Aが運営するウェブサイトに掲載されていた画像は、
本法が定める「有害情報」といえるか
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2014年度法情報学演習
「有害ウェブサイト」指定制度の違憲性の主張適格
Aは「有害ウェブサイト」指定制度の違憲性
を主張し得るか?
– Aは、法16条1項2号にいう「適合ソフトウェアの
使用目的に沿うべき動作をさせないプログラ
ム」を提供した罪で起訴されている
– 「有害ウェブサイト」指定制度(法5条)そのもの
が、Aの表現の自由と衝突しているのではない
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2014年度法情報学演習
表現の自由の制約にあたるか?
 Aは、フィルタリング・ソフト法施行後も本件サ
イトで情報発信を行っている
– 表現行為は制約されていない
→ サイト閲覧者の「知る権利」に基づく主張もあり得るが、
本問ではAの弁護人としての主張が求められているた
め、Aの表現の自由の問題として考えるべき
 表現の自由
– 情報を発信することだけでなく、
情報収集→情報提供→情報受領
の全過程が保障されなければならないと考える
受け手への伝達までが表現の自由に含まれる
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2014年度法情報学演習
「検閲」にあたるか?
 「検閲」とは
– 「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象
とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、
対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、
発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるもの
の発表を禁止すること」(札幌関税事件判決:最大判
昭和59年12月12日民集38巻12号1308頁)
 LEX/DBインターネット(法学部内限定)
http://www.tkclex.ne.jp/lexbin/ACLogin.aspx
 フィルタリングによる規制
– 行政権が網羅的一般的に行っていない
 閲覧者の機器において有害ウェブページが表示されないだけ
– 発表そのものは禁止されていない
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2014年度法情報学演習
「事前抑制」にあたるか?
 「事前抑制」とは
– 判例は、行政によって行われる事前の発表の禁
止を表現の憲法21条2項前段にいう「検閲」ととら
え、その他の事前抑制と区別している
例)人の名誉を毀損する内容の出版物の出版を差し止
めるなど、その表現行為を認めると重大な損害が発生
する恐れがあるなどの例外的な場合のみ許容される
– 事前抑制は、それが運用の濫用と発表者への萎
縮効果を伴うことから原則禁止であり、「厳格かつ
明確な要件」のもとでのみ許されると解される(北
方ジャーナル事件判決:最大判昭和61年6月11日
民集40巻4号872頁)
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2014年度法情報学演習
「有害情報」の定義が明確か?
 「有害情報」の定義(2条2号)
– 「インターネット上で流通している情報で、子どもに
対し、著しく性的感情を刺激し、著しく残虐性を助
長し、又は著しく自殺若しくは犯罪を誘発するもの
として、内閣府令で定める基準に該当し、子どもの
健全な成長を阻害するおそれがあると認められる
もの」
弁護人側の主張:過度に広汎な表現規制
– 条文が不明確であるゆえに、本来許されるべき表現行為に
まで規制が及んでいる(Aのウェブサイトは有害指定を受け
るべきサイトではない)
検察官側の主張
– 法2条2号の定義が不明確であったとしても、内閣府令によっ
て詳細な判断基準が示され、明確化されている
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2014年度法情報学演習
法律の委任の範囲を越える内閣府令
「有害情報」の定義(2条2号)
– 具体的基準について、内閣府令(資料2)に委
任している
– 法が委任しているのは、「著しく性的感情を刺
激し、著しく残虐性を助長し、又は著しく自殺若
しくは犯罪を誘発するもの」の判断基準
– 内閣府令は、法律の定める定義よりも広い行
為を含み得る表現となっている?
単なる描写(1条1号イ、ロ)
一定の見解の表明(2号イ、3号イ)
コンピュータ・ゲームの利用(1号ハ、2号ハ、3号ハ)
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違憲審査基準の選択
 「有害ウェブサイト」指定制度の法令違憲を主
張するとして、違憲審査の基準をどう考えるべ
きか?
– 「厳格審査の基準」「厳格な合理性の基準」「合理
性の基準(明白性の原則)」
弁護人側の主張:厳格審査の基準
– フィルタリングは表現内容規制にあたることから、厳格な違
憲審査が行われるべきである
– 「有害情報」が「子どもの健全な成長を阻害するおそれがあ
る」ことについて、客観的根拠が示されていない
検察官側の主張:厳格な合理性の基準
– 子どもの保護のための表現規制には、厳格な審査基準は適
用されない
– フィルタリングは、表現の自由の保障にも配慮したもので、
「有害情報」から子どもの保護を図る上で必要かつ合理的な
手段である
2014年10月16日
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2014年度法情報学演習
合憲性の審査基準①
 基本的人権制約立法の正当性審査
– 制約目的の合憲性
立法目的は何か、それは正当か、それはどのくらい重
要か(やむにやまれない政府利益、重要な政府利益、
合理的利益)
– 制約手段の目的適合性
その手段は目的を達成できるものか
– 制約手段の必要性
必要不可欠、必要最小限度ないし実質的関連性、合理
的関連性
– 制約の具体的適切性
制約により失われる利益と得られる利益を比較衡量し
たとき、後者が上回っていると言えるか
2014年10月16日
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2014年度法情報学演習
合憲性の審査基準②
 二重の基準論
– 精神的自由と経済的自由とで、合憲性審査の基
準を使い分ける
– 多くの学説は二重の基準論をとりながら、経済的
自由の制約に緩やかな合理性根拠テストの適用
に否定的であり、やや厳格な基準による審査を正
当とする。そのため、実質的には3つの基準を利
用している。
 3つの基準
– 厳格審査の基準
– 厳格な合理性の基準
– 合理性の基準(明白性の原則)
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2014年度法情報学演習
合憲性の審査基準③
表現の自由に対する規制
– 表現内容の規制
厳格審査の基準を適用
規制を行う側が表現内容の当否を判断することに
なるために危険性が高いと考えられるため
– 表現の時・場所・方法の規制(表現内容中立
規制)
厳格な基準を緩和してよいと考えられている
→中間的審査基準、厳格な合理性の基準
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2014年度法情報学演習
合憲性の審査基準④
青少年有害図書の販売を規制する条例
– 青少年に有害かどうかという内容に着目した
規制?
– しかし、制度の目的としては、間接的に生じる
弊害(環境の悪化や犯罪の発生等)を抑止す
るために、青少年の目の触れる時・場所・方法
でそのようなものを販売することを制限するこ
とに重きを置いているのであり、特定の表現を
抑圧する目的ではない
– 岐阜県青少年育成条例事件の判決も、このよ
うな立場を前提としているものと考えられる
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2014年度法情報学演習
岐阜県青少年保護育成条例事件①
 最判平成元年9月19日刑集43巻8号785頁
– 青少年有害図書の自動販売機による販売を制限した条例
に対して表現の自由の不当な制約であるとして争われた事
例
– 「条例の定めるような有害図書が一般に思慮分別の未熟な
青少年の性に関する価値観に悪い影響を及ぼし、性的な
逸脱行為や残虐な行為を容認する風潮の助長につながる
ものであって、青少年の健全な育成に有害であることは、
既に社会共通の認識になっているといってよい」として、規
制目的の正当性を是認
– 「有害図書の自動販売機への収納の禁止は、青少年に対
する関係において、憲法21条1項に違反しないことはもとよ
り、成人に対する関係においても、有害図書の流通を幾分
制約することにはなるものの、青少年の健全な育成を阻害
する有害環境を浄化するための規制に伴う必要やむをえな
い制約であるから、憲法21条1項に違反するものではない」
と判示
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2014年度法情報学演習
岐阜県青少年保護育成条例事件②
 伊藤正己裁判官の補足意見
– 「ある表現が受け手として青少年にむけられる場
合には,成人に対する表現の規制の場合のように、
その制約の憲法適合性について厳格な基準が適
用されないものと解するのが相当である。」
 子どもの保護という目的が掲げられれば、表
現の自由制約を審査する際の基準がすべて
緩和されるとしてしまってよいのか?
 青少年以外の者への影響は「付随的な効果」
にとどまるものといえるか?
– 審査基準を緩やかにするという考え方はあらゆる
内容規制に拡散する危険があるとの批判もある
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2014年度法情報学演習
法令違憲?適用違憲?
フィルタリング制度自体は合憲であるとして
も、Aが提供するプログラムは16条1項2号
には該当しないとの主張も可能
– A提供のプログラム=フィルタリングそのものを
無効化するものではなく、Aのウェブサイトを閲
覧できるようにするだけのもの
検察官側の反論
– Aのウェブサイトの閲覧のみを可能するもので
あったとしても、フィルタリング制度の意義を没
却するものであって認容できない
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2014年度法情報学演習
表現の自由と青少年の保護
 表現の自由を制約する規制は慎重に行うべき
と考える
– 厳しい制約を課してから効果と弊害を確かめるよ
うなことは非常に危険
フィルタリング・ソフト法(事例の仮想法令)
– 青少年を保護するための規制は、成人に対する
情報発信も実質的に制約してしまう可能性が高い
ことにも注意が必要
– 規制を導入した際に期待できる効果についても、
合理的な評価を行った上で規制の是非を検討す
べき
「学校裏サイト」などの問題がフィルタリングを義務付け
ることで解決するか?
2014年10月16日
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2014年度法情報学演習
次回予習案内
平成23年新司法試験
「論文式試験・公法系科目・第1問」
– 試験問題(平成23年新司法試験試験問題)
http://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00047.html
– 論文式試験出題の趣旨(平成23年新司法試
験の結果について)
http://www.moj.go.jp/content/000079571.pdf
インターネット道路周辺映像提供サービス(Google
ストリートビュー)について、表現の自由とプライバ
シー保護の調整に関する問題
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2014年度法情報学演習
参考文献、Web
1. 高橋和之, 松井茂記編『インターネットと法』(有斐
閣, 第4版, 2010年)
2. 松井茂記『インターネットの憲法学』(岩波書店,
2002年)
3. 木下智史「公法系科目〔第1問〕の解説」新司法試
験の問題と解説2008・別冊法学セミナー30頁(2008
年)
4. 矢島基美「検証 第3回新司法試験 公法系科目(1)
〔憲法〕」ロースクール研究11号10頁(2008年)
5. 斎藤浩,木下智史,石井昇「新司法試験問題の検
討2008 公法系科目試験問題」法学セミナー644号
37頁(2008年)
6. 大石和彦「公法系科目〔第1問〕(憲法)」受験新報
2008年8月号42頁(2008年)
2014年10月16日
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2014年度法情報学演習
おしまい
この資料は、2014年度法情報学演習の
ページからダウンロードすることができます。
http://www.law.tohoku.ac.jp/~kanaya/infosemi2014/
2014年10月16日
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2014年度法情報学演習